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Entry 2020/04/20
Update

『望み』小説ネタバレあらすじと結末。雫井脩介原作の映画化キャストを大胆予想⁈

  • Writer :
  • 石井夏子

映画『望み』は2020年10月9日に公開予定。

『クローズド・ノート』『検察側の罪人』の著者・雫井脩介。

雫井脩介が執筆時、最も悩み苦しみ抜いたというサスペンス小説『望み』は、2016年に刊行されるや読者満足度は驚異の100%(ブクログ調べ)を記録し、2019年に文庫化後即重版、累計発行部数は15万部超えるベストセラー小説です。

雫井脩介『望み』書影

そんな著者渾身の小説『望み』が映画化され、2020年10月9日に公開予定となります。堤幸彦が監督を務め、堤真一と石田ゆり子が夫婦役で共演。

本記事では小説『望み』のあらすじと感想、映画化への期待とキャスト予想をしていきます。

※2020年4月時点でのキャスト予想になります。

小説『望み』の主な登場人物

石川一登(かずと)

建築デザインの仕事をしており、妻・貴代美、長男・規士、長女・雅、愛犬クッキーと暮らしています。

自宅は建築事務所の隣にあり、モデルハウスのように依頼人に室内を見せることも。

石川貴代美(きよみ)

一登の妻。自宅でフリーランスの校正の仕事をしています。

規士(ただし)

石川家長男で高校1年生。サッカーに打ち込んでいましたが怪我によって断念。

以降夜遊びが増え、顔にアザを作って帰って来たことも。彼がある事件と同時期に行方が分からなくなったことで石川家は大きく動かされていきます。

雅(みやび)

石川家長女。中学3年生で、私立高校受験にむけて勉強中。

内藤

フリージャーナリストの中年男性。戸沢で起こった少年暴行事件を追って、石川家にたどり着きます。

扶美子

貴代美の母。76歳。胃がんの後遺症で体調を崩しており、宗教的な祈りにすがっています。

聡美

貴代美の姉。結婚していましたが夫の浮気が原因で離婚し、現在は実家で母・扶美子と二人で暮らしています。

映画『望み』のあらすじとネタバレ

建築デザイナーの一登と、フリーの校正者・貴代美の石川夫妻。思春期の息子・規士と、高校受験を控えた娘・雅を育てながら、穏やかに暮らしています。

規士は、中学時代から続けていたサッカーを怪我のため諦めてからというもの、夜遊びが増えており、顔に青あざを作って帰ってきたこともありました。

彼と部屋が隣の雅は、規士の電話のやりとりが聞こえてくるそうで、「杏奈」という同級生と付き合っていたが最近疎遠になったこと、「あいつをなんとかしないとこっちがやられる」といった物騒な話をしていたことを両親に伝えます。

一登は、規士のやる気を感じられない生活について説教し、未来のために努力をするよう諭しましたが、無口な規士は答えません。貴代美は規士の心根の優しさや誠実さを信じ、静かに見守っていました。

しかしある日、貴代美は規士の部屋のゴミ箱から、切り出しナイフのパッケージを見つけてしまい、一登に相談を持ちかけます。規士が高校で選択している芸術科目は書道ですし、部屋の中で何かを作っている様子もありません。

規士の机の引き出しに、ナイフは入っていました。規士に顔のあざとの関連や友人関係などを質問しても、はっきりと答えず、自分の部屋に籠もってしまいました。

ナイフは一登が預かり、デザイン事務所の工具棚にしまいます。

それから少し経ったシルバーウィーク初日の土曜の夜に規士は出かけ、翌日の昼になっても帰ってきませんでした。心配した貴代美は規士にメールを送ります。

午後、貴代美の姉・聡美から電話があり、この連休のお彼岸に春日部の実家に帰ってくるか聞かれました。聡美は離婚して実家に戻り、母親の扶美子とふたりで暮らしています。

貴代美は、規士がまだ帰っていないことを打ち明けます。聡美は、お彼岸に規士がきたら自分が言い聞かせると笑い飛ばしました。

電話を切った後も規士から連絡はなく、再びメールを送る貴代美。しばらくすると、規士から返信があります。

「悪いけど、いろいろあってまだ帰れない。でも、心配しなくていいから。またメールする」

電話をかけますが規士は出ず、留守番電話につながりました。貴代美は折り返すよう留守電に吹き込みます。

午後4時過ぎ、雅が塾から帰ってきたため、彼女にも規士に連絡するよう頼む貴代美。雅から、メールの返事がなく、電話をしても電源を切っていることを告げられます。

規士のことは帰ってくるまで放っておくよう言う一登。3人で外食へ向かう途中、パトカーのサイレンが鳴り響いていました。

夜、聡美からまた電話があります。聡美は規士がまだ帰っていないか確認し、ニュースで流れていた戸沢で起こった事件のことを伝えます。道の途中で動けなくなった車から何人かの少年が逃げ出し、その車のトランクから10代の少年の遺体が発見されたそうです。

電話を切った貴代美は冷静さを失っており、一登が宥めます。一登は不安を抱くものの、規士のこと結びつけるには実感がありません。テレビで事件のニュースが流れ、夫婦は息を呑んで観ます。

一登たちの住む家と駅を挟んで対角方向にあたる場所が事件現場でした。目撃者の証言では、車から逃げ出したのは高校生くらいの若い2人。

また、警察の発表によると、遺体には複数の打撲痕や刺し傷があり、激しい暴行が加えられていたこと、昨日から今日にかけて亡くなった可能性が高いこと、外見の特徴からすると高校生くらいの少年であるということが判明します。

規士との関係性を危惧した一登は戸沢警察署に電話をし、息子が昨晩から帰ってきていないと相談します。事件性が認められない限り警察は動けないため、少し様子を見て、規士の友人関係を自身で調べてみてはどうかと担当署員はアドバイスをしました。

翌朝、まだ規士は帰ってきていません。新聞には、事件の被害者の身元が載っていました。被害者は高校一年生の倉橋与志彦。規士が被害者ではなかったことに安堵する石川夫妻でしたが、「ヨシヒコ」という名を規士が電話で口にしているのを聞いたと雅が話したことで、貴代美の中で不安が大きく膨れ上がっていきます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『望み』ネタバレ・結末の記載がございます。『望み』をまだお読みになっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
戸沢署の警察官が昨日の電話の内容を詳しく聞くために、石川家に訪れます。男性は寺沼、女性は野田と名乗り、規士が外出した時の様子や友人関係について聞いてきました。

そして、規士と今回の事件の関連は捜査中と言いながらも、被害者の倉橋与志彦と規士に交友関係があり、そのグループ内で半月ほど前に諍いがあったこと、グループ内には事件前後で行方が分からない少年が複数いることを教えられます。半月ほど前と言うと、規士が顔に青あざを作ったのと同時期でした。

貴代美も一登も、規士がナイフを隠し持っていたことは明かしません。寺沼は規士の携帯番号やキャリアを尋ね、微弱電波から居場所を探してみると言います。規士の部屋も見たいと頼まれましたが、貴代美はきっぱりと断りました。

警察が帰り、一登は塾に向かう雅を車で送ります。一登は、もし規士が加害者だったら、雅の将来はどうなってしまうのかといたたまれない気持ちになってしまいます。家の近くにはマスコミらしき男の姿が見えました。

家に1人残った貴代美は規士が加害者であるという思いを強くします。そこへインターフォンが鳴り、フリージャーナリストをしている内藤と名乗る男性が、倉橋与志彦について聞きたいことがあると訪ねて来ました。

貴代美はマスコミだからこそ知っている情報があるのではないかと、彼の質問に答えていきます。内藤の質問から、倉橋与志彦と規士は通学時代のサッカークラブが一緒だったこと知る貴代美。そして、事件前から行方がわからない少年は規士を含めて3人なのに、車から逃げ出すのを目撃された少年は2人しかいなかったことを聞かされます。

帰って来た一登を、また別のマスコミが捕らえ、家の中に入ってからもインターフォンや電話が鳴り止みません。規士が加害者だったら自分の仕事すら危ういと思い巡らす一登。

そこへ、高山建設の社長から電話があります。被害者の倉橋与志彦は、左官業者・花塚塗装の社長の孫だというんです。高山から、花塚社長の慟哭を聞き事件の凄惨さを知るとともに、規士が本当に事件と関与していたら高山と花塚との仕事もどうなるのかと、一登の心配は膨らみます。

一登と貴代美はそれぞれが知った新たな情報を共有。事件に関わっている少年の人数と、逃げ出した少年の人数があわないということは、規士も被害者かもしれない可能性も指していました。

貴代美は、規士のサッカーへの思いや、怪我による絶望にもっと向き合うべきだったと後悔し、犯人でも構わないから生きていてくれたらと願います。

夕方になって帰宅した雅は、外にマスコミが待ち構えていたことを伝えました。テレビでは、倉橋与志彦をクローズアップしたニュースが流れ、彼が明るく人気者だったと報じられています。

彼の人柄が語られるほど、その加害者の残忍さが浮き彫りにされていき、やりきれない気持ちになる一登。犬の散歩に出た一登を、マスコミは執拗に追います。

マスコミを振り切り、規士との思い出に浸っていると、女子高生に声をかけられました。雅が話していた、規士の同級生「杏奈」です。彼女は規士のことを心配しており、一登に規士の交友関係を知っている範囲で話してくれました。

そこで、規士の膝の怪我は事故ではなく、彼を疎ましく思った先輩に故意にぶつかられたからだと聞かされます。その後先輩は、複数の人間にバットで殴られ、部活に出られなくなったそう。その件に規士が関わっているかは不明ですが、杏奈は規士の様子がおかしかったと言います。

杏奈と別れ、規士が被害者であって欲しいという気持ちを強くする一登。

夕食時、雅はネットに事件のことが書かれており、今後塾でどう振舞ったらいいのかと吐露します。そこで、規士は被害者と思う一登と、加害者だと思う貴代美の意見の違いが明らかになり、口論に発展。

やりきれない気持ちを抱えたまま、貴代美はネットで事件のことを調べます。ネットには、事件に関係があるのは、中学のサッカーコーチだった塩山の息子と、W村という少年、そして規士だと書かれていました。書き込みの無遠慮さに貴代美の心は重く沈んでいきます。

翌朝、石川家の玄関のドアには生卵がぶつけられていました。警察に相談するも、まともな対応はされず、一登は自身で片付けを始めます。そこへまたもマスコミが押しかけ、一登に質問を重ねます。

家に入った一登は再び戸沢署に電話し、寺沼にに事件の進展を問い詰めます。寺沼は、規士や他の少年たちの携帯電話から微弱電波は捕らえられなかったと明かしたのち、事件前に規士がナイフを所持しているのを見たか聞いて来ました。一登は切り出しナイフの一件を打ち明け、取り上げた後は自分が事務所で保管していると伝えます。

その後、高山建設の施工で工事が進んでいる依頼主の家へ向かう一登。塾へ行く雅をついでに送ろうと車に乗せました。雅は車の中で、兄が犯人だったら受験予定だった私立も受からないと不安を抱えていることを打ち明け、兄が犯人じゃなかったらいいのにと呟きます。

雅を降ろしたのち工事現場へ向かった一登は、高山社長から、倉橋与志彦の事件に規士が関わっていると聞いたと冷たく言われます。規士がどういう形で関わっているかはまだわからないと一登が訴えても高山は受け入れず、今後一登の仕事は受けられないと突っぱねました。

一登のデザインした家は、高山建設一社にほぼ任せている状態であり、高山建設や花塚塗装が引き受けてくれなくなると、一登の仕事は立ち行かなくなります。

貴代美が家で1人想いを馳せていると、母・扶美子と姉の聡美が訪ねて来ました。母は事情を知っているようでしたが、多くは語らず、持参した手作りのおにぎりや煮物を振る舞います。母の手料理を食べ、涙がこみ上げる貴代美。

扶美子は、「覚悟すれば何も怖くない。幸せなんて感じなくたって、本当に失ってはいけないものを守っていくのが大事」と優しく貴代美に語りかけます。母に許されたという思いが、貴代美の不安を押し流し、この先の困難も乗り越えられる勇気を得ました。

そこへ一登が帰宅します。規士が加害者だという前提で話を進める扶美子たちに一登は反発。貴代美は、世間体ばかり気にして息子を亡き者にしようとしている一登に突っかかります。

扶美子が間に入り嗜めますが、貴代美は「ナイフを取り上げた私たちにも追い詰めた責任がある」と言いました。

またマスコミがインターフォンを鳴らしたため、聡美が対応に出ます。彼女と入れ替わりで雅が帰宅。規士のことで塾のクラスメイトから色々言われたため、早退したそうです。雅は両親に不満をぶつけ、自室にこもります。

扶美子たちが帰った後、貴代美の携帯にジャーナリストの内藤から電話がかかって来ました。内藤は事件の事実関係が明らかになったら、被害者もしくは加害者の親としてインタビューをさせて欲しいと条件を出し、貴代美の質問に答えます。

内藤は個人名は明かせないとしながらも、一学年上の塩山が主犯格であること、逃走した少年たちが捕まるのは時間の問題であること、きっかけとなったサッカー部の先輩の襲撃に関わっていたのは、塩山・W村・倉橋与志彦という今回の事件の関係者たちであることを明かしました。

一方で一登は、岐阜に住んでいる兄からの電話に出ています。兄の言葉には労いはなく、規士のしたことが一族の恥だと責められる一登。兄だけでなく周囲の人々は規士が加害者だと決めてかかっていました。

翌日、ますます取材に押しかけるマスコミは増え、玄関ドアにはペンキが吹き付けられていました。玄関周りの掃除に出た一登は、マスコミの不躾な問いに口を閉します。

ペンキを落とすための道具を取りに事務所へ行った一登は、規士から取り上げて保管してあったナイフが無くなっていることに気づきます。事務所のアシスタントに聞くと、連休前の金曜日に規士が持って行ったそうです。

午後、行方不明だった少年のひとりである塩山が見つかったと情報が入ります。逃げたもうひとりは別行動をしていたようですが、塩山の供述や足取りからもうすぐ捕まってしまうことでしょう。

貴代美はそのもうひとりかもしれない規士にお弁当を作るため、食材の買い出しに出かけ、そこで規士の中学時代の同級生の涼介と出会います。涼介は規士の真っ直ぐな人柄を信じており、今回の事件は倉橋与志彦を守るために巻き込まれたに違いないと言い、これからそのことを警察に相談しにいくつもりだと語りました。

貴代美は涼介の友情に感謝するも、涼介の意見には反対します。彼の言い分が本当なら、規士は被害者で、もうこの世にいないかもしれないからです。

帰宅した貴代美は、規士の部屋に入ります。机の上には読みかけのリハビリテーションに関する専門書が置いてありました。そこへ雅がやって来ます。彼女も、兄が加害者であるか、亡くなっているかの間で悩み、揺れていました。

夜のニュース番組では倉橋与志彦の通夜の様子や、捕まった少年についてが流れています。当初は加害者であっても生きていて欲しいと願っていた貴代美は、もう生きてはいないのかもしれないと思うようになっていました。反対に一登は、息子は加害者だろうと覚悟を決め始めていました。

翌日も玄関ドアは生卵で汚されており、一登は黙々と掃除します。事務所で仕事をしていると、一登にデザイン案を頼んだ客からキャンセルの電話が入りました。客ははっきりとは言わないものの、事件のことを知り、加害者の親かもしれない一登には頼みたくないと判断をした様子。

貴代美は内藤から、もうひとりの身柄が確保されたことを聞き、一登に伝えます。そのもう一人が誰なのかはまだわかっていないそうです。

一登は規士の部屋に寄りました。虚しさや悔しさが一登に押し寄せ、なんの気はなしに、切り出しナイフがしまわれていた規士の机の引き出しを開けます。

引き出しの中には、あの時と同じように、ナイフがしまってありました。

一登は急いで礼服に着替えると、倉橋与志彦の葬式に向かいます。受付で止められても入ろうとする一登を、高山社長が殴り飛ばします。そこへ、自宅から電話が入りました。

一方、貴代美は、急に葬式へと飛び出した夫の様子から、規士の部屋で何かがあったのかもと考えます。規士の部屋の机の引き出しは開いており、あるはずがないナイフを見つけた貴代美は、悲嘆の声を上げます。それを聞きつけやって来た雅も、ナイフを見て全てを察しました。

自宅に警察から電話があり、規士のことでいくつか話したいことがあると言います。電話を切った後、一登のスマホに電話をかけ、そのことを伝える貴代美。

警察署の野田と寺沼が、石川夫妻を迎えに来ました。さらにひとりの少年の遺体を発見し、これから石川夫妻に確認して欲しいと告げます。寺沼いわく、遺体の着衣や人相から、規士であろうとのこと。

安置所につき、横たわった遺体と対面する石川夫妻。それは紛れもなく、彼らのかけがえのない息子の規士でした。

加害者は塩山、若村という少年たちで、事件の発端となったのは、規士の膝の怪我。怪我をさせた先輩に復讐しようと、規士の預かり知らぬところで、塩山が若村と倉橋与志彦を誘ったんだそう。

塩村は金を脅し取る計画でしたが、倉橋与志彦は友人に怪我させたことを許せず、先輩の足を骨折させてしまいました。先輩は不良グループに解決を頼み、今度は塩山たちが金銭を要求される側になってしまいます。

追い詰められた塩山は、元はお前のせいだと規士にも金を用意するよう言いますが、規士も倉橋与志彦も反抗します。

土曜の夜、塩山は遊びにかこつけて倉橋与志彦を呼び出すと、呼んでいなかった規士もやって来ます。倉橋与志彦に相談されていたからです。

夜半過ぎに塩山、若村、規士、倉橋与志彦の4人は場所を移して金の話をします。いくら話しても出口が見えないやりとりに苛立ち、若村と倉橋与志彦が小競り合いになりました。
 
倉橋与志彦が持っていたナイフをチラつかせたため、恐怖で疑心暗鬼になった塩山は近くにあった鉄パイプで規士の頭を打ち付けます。若村は倉橋与志彦からナイフを奪い、塩山と二人で倉橋与志彦をリンチしました。

その後、遺体を山林に埋めるために知り合いから車を借りたふたりですが、倉橋与志彦の遺体を運ぶ中で事故を起こしてしてしまい、逃走したそうです。事件後に貴代美に送られて来た規士からのメールも、偽装のために彼らが送ったものでした。

規士には初めから落ち度などなかったんです。

規士が発見されてから3日後、棺に入って帰って来ました。その日のうちに通夜が開かれ、姿を見せた高山社長は一登に非礼を詫びます。杏奈や涼介ら友人も大勢が参列しました。

式が終わった後、規士のリハビリ担当だったという青年・宮崎が一登たちに挨拶をします。事件の一週間ほど前に規士は宮崎の元を訪れ、サッカーは諦めたけれど、選手に寄り添ったリハビリの専門家になりたいと告げたそうです。規士の部屋にあった本は、宮崎から借りたものでした。

一登は、規士に何度か「やりたいことそ探せ」と諭していたことを思い出します。一登の言葉は、確かに息子の心に響いていたのでした。

弔問客もいなくなった頃、内藤が式場にやって来ます。規士に手を合わせた後、貴代美と話し合う内藤。彼は、貴代美に頼んだ事件後のインタビューをどうするか悩んでいると言います。

加害者への怒りや憤りはないかと尋ねる内藤に、貴代美は怖いほど無いと答えました。そして、もし規士が加害者だった場合のことへ思い巡らしたのち、自分は規士に助けられたのだと呟きます。

小説『望み』の感想と評価

本著で書かれるのは、シルバーウィークに起こった、たった数日の間の出来事です。そして、サスペンスではありますが、探偵や推理力の優れたヒーローは登場しません。

ただただ、凶悪事件に関わった可能性が高い息子のことで揺れ動く両親と、周囲の人々の心境を丁寧に見つめていく本著。両親も積極的に息子探しが出来るわけではなく、電話や、偶然会った関係者、インターネットの掲示板から情報を拾い集めていきます。

その受動性がリアリティを与えていました。動きたくても動けない、深い底無し沼にはまってしまった両親の心情が読者の胸に迫って来ます。救いようがない状況の中で一喜一憂して、希望とは言えない「望み」を抱いてしまう両親に共感し、自分だったらどうするか、どうしていれば良かったのかと考えさせられます。

規士が被害者であった方が、石川家の「これから」は救われる。一度はそう望んでしまった一登と雅の後悔。そして被害者でも生きていて欲しいと望んだ貴代美ですが、規士の通夜で「規士によって助けられた」と考えてしまう悲しさ。

世間体や自己愛で揺れながら、規士の思いに気づいた時にたどり着いた答えは、絶望でしかありませんでした。

映画『望み』の作品情報

(C)2020「望み」製作委員会

【日本公開】
2020年(日本映画)

【原作】
雫井脩介『望み』角川文庫刊

【監督】
堤幸彦

【キャスト】
堤真一、石田ゆり子、岡田健史、清原果耶、松田翔太、加藤雅也、市毛良枝、竜雷太

【作品概要】
堤幸彦監督と堤真一が初タッグを組み、雫井脩介の同名ベストセラー小説を映画化したサスペンスドラマ。

主人公の妻役に『マチネの終わりに』の石田ゆり子。『八日目の蝉』の奥寺佐渡子が脚本を手がけました。

映画『望み』について

本作の監督を務めるのは堤幸彦。プロデューサーから企画を持ち込まれた堤監督は映画化を熱望し、主要登場人物のキャスティングと脚本作りに4年の歳月をかけたそうです。

特に、一登が手掛けた邸宅にはこだわり抜きました。理想の家に住む、理想の家族が崩壊していく本作において、「家」は大事なポイント。

1Fに8坪ほどの事務所が併設され、建坪40坪程の広く開放的な石川邸を再現するべく、角川大映スタジオに大規模なセットが組まれました。アイランドキッチン、ダイニングテーブルなどの高級家具を配置したリビングルームと、2つの子ども部屋を建て、建築デザイナーの一登がモデルハウスとしても顧客を案内する自慢の家が再現。

外観は、3カ月かけて20件以上の物件を巡り、東京都青梅市に理想のロケーションが見つけられたとのことです。

脚本は『八日目の蝉』『おおかみこどもの雨と雪』の奥寺佐渡子。心理描写が紡がれ、映像化は難しいと思われた原作を、映像だから描ける脚本に昇華させました。

映画『望み』のキャスト

主人公の一登を演じるのは堤監督とは初タッグとなる堤真一。子どもを厳しくも真っ直ぐに育てて来た一登役にぴったりのキャスティングです。堤真一ならば、人には見せない一登の弱さも体現してくれるでしょう。

妻の貴代美は堤真一と初共演の石田ゆりこ。普段は穏やかで感情を表に出さない性格ですが、規士の一件で内に秘めた激しさを見せ、大きな覚悟を決めていく難役です。やわらかなイメージの強い石田ゆりこがどう豹変していくのか、こちらも楽しみです。

気になるのが、2020年4月現在では発表されていない、石川夫婦以外のキャスティング。本作で重要となる、雅と規士を誰が演じるのか予想してみましょう。

まずは中学3年生の雅ですが、勉強熱心で私立の女子高受験を目指しています。愛嬌があり、家の中を明るくしてくれています。勤勉なイメージの強い芦田愛菜が雅を演じているのを見てみたいところです。雅のちょっと打算的な部分も、芦田愛菜が演じるならキュートに映るはず。

そして本作のキーとなる規士。思春期であることから、家の中ではぶっきらぼうな返答しかしません。ですが、愛犬の散歩は欠かさず行き、母の頼みに文句も言わずに手伝ってくれる優しさを持っています。

規士を演じるには、繊細さと、おそらく回想シーンで出てくるであろうサッカー技術が必要になってくるでしょう。また、高校1年生という年齢は、大人にもなれず、子どもにも戻れないという特有の年頃ですから、それに近い年齢の俳優がキャスティングされているはず。

その条件で考えていくと、濱田龍臣か板垣瑞生が有力ではないでしょうか。ふたりとも2000年生まれの19歳で特技はサッカーです。規士より年上ではありますが、演技力でカバーできる範囲内です。

可愛らしい印象の強い濱田龍臣の新たな面も見たいですし、『ソロモンの偽証』で新人賞を獲得した板垣瑞生も納得の演技力で惹きつけてくれそうですね。

そのほか、ジャーナリストの内藤や、貴代美の母・扶美子など、現実にいそうな魅力的なキャラクターのキャストの発表が楽しみでなりません。

※規士役は岡田健史、雅役は清原果耶と発表されました。

まとめ

小説『望み』が描く、事件関係者の家族たち。本著を読んでしまったらとても他人事ではいられません。読み終わった後も規士のこと、石川家のことを考え続けてしまいます。

映画化にあたり堤幸彦監督は、「スリルと感情の揺れをストレートに役者の芝居で描きたい」とコメント。語らずともキャストの眼差しや佇まいから心情が伝わる、そんな繊細な映画になるのではと期待が高まります。

映画『望み』は、2020年2月11日にクランクアップし、10月9日より全国公開予定です。




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