「幸福な装置 田中晴菜監督特集上映」は2024年5月18日(土)~24日(金)池袋シネマ・ロサで1週間限定レイトショー!
あいち国際女性映画祭・Kishhh-Kishhhhh映画祭の短編部門でそれぞれグランプリを受賞した『いきうつし』、第38回トリノ映画祭国際短編コンペティション部門にノミネートされた『ぬけがら』など、国内外の映画祭で高い評価を得ている映画監督・田中晴菜。
現代の映画界では多くの人々が見失いがちな「人々の記憶・心・世界を拾い集める」という行為を、誰よりも誠実に続ける田中監督の作品群には、かつての日本映画が映し出してきた「人の気配」が描かれています。
このたび上映開始が直前に迫る中、田中晴菜監督のオフィシャルインタビューが解禁。今回の特集上映の企画経緯や最新作『幸福な装置』をはじめとする映画制作について、田中監督が自ら語っています。
さらに、自身がプログラミング・ディレクターを務める大阪アジアン映画祭で2023年に田中監 督を特集した映画評論家・暉峻創三、元日本ワイルド協会理事の比治山大学名誉教授・貝嶋たかしらの絶賛応援コメントも到着した。
CONTENTS
「幸福な装置 田中晴菜監督特集上映」とは?
会社員として日々を働きながらも、短編・中編作品を制作し続ける映画監督・田中晴菜。
「生人形」を題材とした『いきうつし』はあいち国際女性映画祭・Kishhh-Kishhhhh映画祭の短編部門でそれぞれグランプリを受賞、傘を通じて人々の記憶が交わる様を描いた『ぬけがら』は第38回トリノ映画祭国際短編コンペティション部門にノミネートされるなど、国内外の映画祭で高い評価を得ています。
映画制作に不可欠ながらも、現代の映画界では多くの人々が見失いがちな「人々の記憶・心・世界を拾い集める」という行為を、誰よりも誠実に続けている田中監督。
彼女が手がけてきた作品たちが描いているのは、かつての日本映画が映し出してきた「人の気配」そのものであり、映画という存在そのものを愛する者であればあるほど、映画監督・田中晴菜の映画にどうしようもなく惹かれるはずです。
そんな映画監督・田中晴菜と作品の魅力に迫る「幸福な装置 田中晴菜監督特集上映」では、オスカー・ワイルド作『幸福な王子』から着想を得て制作された最新作にして、今回が初の劇場公開となる『幸福な装置』など計5作品を上映。
いずれの作品も「失われたもの/失われていくもの」を描くことで、今を生きることの意味を観る者に語りかけてくる「映画」そのものといえる映画ばかりです。
田中晴菜監督プロフィール
栃木県出身・在住。日本女子大学人間社会学部卒業後、栃木県内企業に勤務。
2016年にNCWクリエイターコース修了後、自主映画制作を開始。『いきうつし』『ぬけがら』が国内外の映画祭で高い評価を受け、2021年に劇場公開。
2023年には大阪アジアン映画祭にて《焦点監督:田中晴菜》として『甘露』『Shall we love you?』の2作品が特集上映された。
著名人応援コメント(敬称略・順不同)
特集上映作品『ぬけがら』より
暉峻創三(映画評論家/大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター)
舞台となっている空間に人をどう配置し、どう動かし、どう光を射しこませるか。そしてそこに、役者の声をどんな風に響かせていくのか。映画の基本中の基本と言えるこうした方面の設計に、田中晴菜は天性の素質を持っている。
5作品どれを見ても、派手な動きはない。古典的なドラマ性に頼る度合いもますます薄まっているように見える。それでも一貫して緊張感を失わずに物語を語りきれるのが、田中流のマジックなのだ。
貝嶋たかし(比治山大学名誉教授/元日本ワイルド協会理事)
『幸福の装置』を観て最初に幸福とは何かという問いが胸に突きつけられたような気がした。もし、幸福が快楽を意味するのなら、それは肉体と感情なしには存在しない。主人公のAIのわたしは感情を排して神の似姿として登場する。そこにつばめが通りかかり、心の輪郭が生じ始め、愛を知ることになる。この物語はオスカー・ワイルドの童話『幸福な王子』と深く関わっているように感じた。場所や時間、それから情景などは全く異なるものの、幸福とは何かという問題が共通して問われているのだ。
幸福とは一見自己完結的な感情と思われがちだが、実はそれだけではない。真の幸福とは他者との愛を介して初めて得られるものなのだ。つばめとのコミュニケーションを通じて知った他者への愛から得られる 幸福こそ最も得難いわたしの幸福である。そんなメッセージを『幸福な王子』とのパラレルワールドである『幸福の装置』から受信した。
田中晴菜監督・オフィシャルインタビュー
特集上映作品『幸福な装置』より
これまでの作品を網羅する特集上映
──今回の監督特集上映は、どのような経緯で企画が始まったのでしょうか。
田中晴菜監督(以下、田中):2021年に『いきうつし』『ぬけがら』の2作品で監督特集を池袋シネマ・ロサさんで上映頂いた時に、『幸福な装置』の予告編を上映させて頂いたので、完成したらぜひまた ロサさんで上映をさせて頂きたいと思っていました。
『幸福な装置』が完成し、新作は3作が相互に関係性のある作品群でもあるので、これまでの作品を網羅する形の特集上映として続けてご覧頂ける機会を作りたいという思いがありました。
──今回の監督特集上映でワールド・プレミアを迎える最新作『幸福な装置』の制作経緯、ならびに過去作との共通点と相違点をそれぞれお聞かせください。
田中:今回初公開となる『幸福な装置』ですが、新作3作品中最も制作年は古く、2020年のコロナ禍に、愛する人とほど接触が憚られる今だからこそ撮るべき作品だと思い、制作を開始しました。
そういった経緯から、『幸福な装置』は役者さん同士の接触を極力減らして撮った映画であり、役柄も「小石」「つばめ」「棺桶」と人ではなく、時代設定は明確に指定していませんが、未来を描いています。
そういった部分が過去作との一番の相違点ではありますが、第一作の『いきうつし』も当初朗読を想定して制作を開始した経緯もあり、彼ら無機物に心が宿るのかを問うている点においても共通点があると思います。
自分が一番観たいもの、惹かれるものを
特集上映作品『いきうつし』より
──『いきうつし』の生人形、『甘露』の天から降る甘い露の名でもある実在の菓子・甘露、『Shall we love you?』『幸福な装置』のオスカー・ワイルド作『幸福な王子』など、映画で扱われる題材はどのようにして見つけられているのでしょうか。
田中:いわゆる書きたいもの、撮りたいもののストックは常にあって、調べ物が好きなので、元々興味のあるものについては既に資料を集めていたりする分書きやすいということはあります。『いきうつし』の生人形については小学生の頃に知って、当時観に行けなかった熊本の展覧会の図録を古本屋で探し続けて20年越しに手に入れたり……何かに惹かれる時、その背景が気になるので、そこから掘り下げて拡がっていくことが多いです。
外的な要因(企画の募集や誰かとこういうのどう?それやろう!と発展したり)から生まれることも多いですし、ロケーションやキャストさえ決まれば、それに合わせて書けますが、自主制作なので、枠の中でも基本自分が一番観たいもの、惹かれるものを題材にしています。
特集上映作品『甘露』より
──田中監督の複数作品に出演されている岡慶悟さん、田中一平さんをはじめ、ご自身の監督作品におけるキャスティングはどのように決められているのでしょうか。
田中:初めての出会いはオーディションだったり映画祭だったりするのですが、映画や舞台の出演作を観て、普段その俳優さんがやらない役や、この方にこんな役を私なら差し上げたいと思って当て書きをすることもあります。
『甘露』についてはキャスティングありきの企画・脚本ですし、『ぬけがら』の田中一平さんや、『幸福な装置』の岡慶悟さんについても脚本執筆時点から想定して書いています。
事前に想定しないキャスティングについては、その役に合う人か、その人が持つ気質や魅力をより活かせるか、一緒にものを作りたいと思うかの順で考えることが多いです。
撮りたいものを撮るために撮る
特集上映作品『Shall we love you?』より
──田中監督が映画制作を始められ、現在に至るまで続けられている理由とは何でしょうか。
田中:始めたきっかけは、就職をしてから学生時代までは創作で昇華していたことが発散出来なくなって、観るのも好きなのですが、いいものを観ると何で自分は作っていないんだろうとフラストレーションが溜まってしまい、堪らず作ることを再開しました。なので作っていられるうちは作り続けたいと思っていて、長期的な目標としては『いきうつし』を長編時代劇として撮りたいとずっと言っていますが、撮りたいものを撮るために撮っています。撮らせてください!
──特集上映が2024年5月18日より池袋シネマ・ロサでの劇場公開を迎える中、現在のご心境をお聞かせください。
田中:2021年から3年ぶりに再び池袋シネマ・ロサで監督特集上映を上映頂けることはとても光栄です。5作品この組み合わせでなければ感じられないこともあると思っていて、ぜひこの機会にご覧頂けたら嬉しいです。
まとめ
2024年5月18日(土)~24日(金)池袋シネマ・ロサにて1週間限定レイトショーされる「幸福な装置 田中晴菜監督特集上映」。
特集上映ではオスカー・ワイルド作『幸福な王子』から着想を得て制作された最新作にして、今回が初の劇場公開となる『幸福な装置』をはじめとする5作品が上映されます。
解禁されたオフィシャルインタビューでも本人が言及している通り、田中監督のこれまでの作品を網羅できる、今回の池袋シネマ・ロサでの特集上映。
また応援コメントを寄せた映画評論家・暉峻創三いわく「舞台となっている空間に人をどう配置し、どう動かし、どう光を射しこませるか。そしてそこに、役者の声をどんな風に響かせていくのか」という映画制作の基本において「天性の素質」を持っている田中監督。
そんな田中監督が生み出してきた映画とは、果たしてどのようなものなのでしょうか。