映画『いずれあなたが知る話』は2月10日(土)より、広島 横川シネマにて公開、以後、全国順次公開中!
「自分の娘が誘拐されたのに、迎えに行かない母親ってどう思う?」そんな発想から描かれたサスペンス映画『いずれあなたが知る話』。
この作品の脚本及び主演を担当した小原徳子が、2024年2月10日(土)に広島の映画館・横川シネマにておこなわれた初日の映画上映後の舞台挨拶イベントに登壇しました。
広島に駆けつけた俳優・小原徳子の舞台挨拶イベントの模様をお届けします。
映画『いずれあなたが知る話』舞台挨拶リポート
2023年12月2日(土)に広島の横川シネマでおこなわれた、映画『いずれあなたが知る話』の公開後舞台挨拶では、本作で脚本・主演を手がけた小原徳子が登壇しました。
作品は2023年5月13日より東京で上映、以後全国での順次公開がおこなわれています。今回の横川シネマ上映は、10日より16日まで一週間限定上映されます。
「役者が発信する映画」であることが特徴ともいえる本作のプロジェクト発足は、コロナ禍発生より1年が過ぎたころ。「俳優同士で『映画を作る』という思いが、ふつふつと沸いてきたんです」と回想します。
また本作の脚本を書くにあたり感じたのが、「怒り」みたいなものが映画作りの大きな原動力となったと振り返る小原。
「『男はこうあるべき』『女は…』『大人は…』という、(世間で)何かを決めつけるようなことに怒りを感じたんですが、その意味で『俳優だからオファーを待つべきだ』ではなく、『俳優から監督をオファーしに行こうよ』みたいな、『あるべき』を壊していく映画を作っていきたい」と、自身から発信していくことへの動機が生まれたと語ります。
その経緯により、キャスティングは自分たちにつながりのある役者に声を掛けたと回想、小原は靖子が働くデリヘルの待機部屋で彼女と衝突してしまう女性さおり役の伴優香と、勇雄の母親役を務めたオノユリに、それぞれ過去の共演をきっかけに声を掛けたことを明かします。
特に素の伴については「YES/NOがはっきりしていて、凛とした素敵な女の子」というイメージを抱いていることを明かしつつ、その役柄を与えたことに対し「素敵な女性に辛辣なことを言わせたいという傾向が私にはあるんだな、と脚本を書いていて思いました」と振り返ります。
また、映画作りという点において演出面では不安があったため、やはりつながりのある古澤健監督に演出を頼んだと、本作起用の経緯を明かしながら、冒頭に聴こえてくる背景音など含め「人物によっているというよりは、遠くから物語を俯瞰して見ている」という雰囲気を作りたかったという小原の要望した。
また、古澤健監督とともに何度も検討したと回想し、「(私の要望を)しっかりと読み取り、思いをくみ取ってもらえた」と、その出来栄えに感謝の言葉を贈りました。
そして、その女性を見つめるもう一人の主人公・勇雄という人物の発案に関しては、もともと自分が役者として人を演じる際に考えていたことがベースとなっていたと明かします。
そのやり方としては、自身が役を演じるにあたって「この女性はどんな人生を歩んできたのか」「親は?」「どんな人がまわりにいるのか」などといった背景を深く想像するということ。
本作の脚本においても、その手法を同様に行ったなかで「このような母親が『気になる人』ってどんな人だろう?というところから、勇雄のキャラクターを作り上げていったんです」と、二人の視点で展開する本作の人物構成が生まれた経緯を語ります。
一方以前、長野の松本シネマセレクトで本作が上映された際に、劇中で一人の人物が町中の公園にて煙草を吸っているのを、他者がその人に注意するという場面に対し、「なぜこの展開が?」と観客より質問されたことを振り返ります。
その時、はじめて「公園の中で喫煙は禁止されている」というルールが都会では常識となっていることが、地方部では特に厳しいことを言われていないというギャップがあることで、「東京という常識にとらわれていたんだ」ということに気が付かされ、新鮮な気持ちになったことを小原徳子は回想していました。
映画『いずれあなたが知る話』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【監督・脚本・プロデューサー】
古澤健
【キャスト】
大山大、小原徳子、一華、大河内健太郎、蓮池桂子、穂泉尚子、蓮田キト、伴優香、はぎの一、オノユリ、小川紘司、久場寿幸、奥江月香、中村成志ほか
【作品概要】
テレビドラマ『鉄オタ道子、2万キロ』(2022)や映画『一礼して、キス』(2017)『走れ!T校バスケット部』(2018)などの古澤健監督が、シングルマザーの親子と、それを見つめる一人の男性の姿より日常に潜む孤独と愛情を描いたサスペンス。
主演はテレビドラマなどで活躍するする大山大と、『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)などの小原徳子。本作は大山がプロデューサーを務め。小原が自ら脚本を執筆しました。
映画『いずれあなたが知る話』のあらすじ
ある古びたアパートに娘と住むシングルマザーの靖子。隣の部屋には、自称カメラマンで無職の男・勇雄が住んでいます。
靖子は弁当屋でパートとして働いていましたがその生活は苦しかったため、風俗で働き始めます。一方、隣人の勇雄は靖子たちの様子が気になり、ストーカーのように尾行し逐一その姿を盗み撮りします。
仕事から疲れて帰って来る靖子は、つい娘の綾にも冷たく当たるようになります。
そんなある日、綾が行方不明となってしまいます。心配し必死に娘を探した靖子は、ついにその居場所を突き止めました。
しかし綾が無事な姿を見た靖子は彼女を取り戻そうとはせず、その日から奇妙な生活行動を始めます。そしてその行動を、勇雄はさらに隠れてじっと見つめていました……。
まとめ
どこまでも闇に落ちていく人たち。そして闇は闇を呼ぶ。
おぞましいシーンはないはずなのに、どこか眼をそむけたくなるような現実、しかし人はこれを「大切なこと」として見るべきものでもある。
本作の主人公である靖子と勇雄の生きざまは、そんな複雑な気持ちを見るものの中に醸していきます。
小原がこの日語った「怒り」という意味の本質も、この物語のテーマには重なる部分が感じられるようでもあります。
コロナ禍はクリエイティビティの世界にも大きな影を落とし、道半ばで志をあきらめる人も少なくありませんでした。
そんな中で小原たちクリエイターによるこのプロジェクトは、作品作りにおける一つの新しい方向性を提唱しているようでもあります。
その挑戦は「ピンチをチャンスに」などといった軽い表現では収まらない、これからの映画作りに対して大きな課題を投げかけているものといえるでしょう。
映画『いずれあなたが知る話』は