世界で初めて劇場公開される、ブータン人作家によるドキュメンタリー映画が日本劇場公開されています。
映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』は8月18日(土)よりポレポレ東中野にて上映中、ほか全国劇場順次ロードショーです。
本作のあらすじ紹介と、映画館で開催予定のイベント情報をお届けします。
CONTENTS
映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』とは
“幸福の国ブータン”のゆくえは
映画の舞台はブータンの巡礼の地、中部ブムタン。
ブムタンに暮らすある家族が代々受け継いできた古刹チャカル・ラカンは、1000年以上の歴史を持つ重要な寺院のひとつです。
その寺院を引き継ぐべきか悩む長男のゲンボ(16歳)と、自らを男の子だと思っている妹のタシ(15歳)。
GNH(国民総幸福量)を提唱し、それを目標に建国を進めてきたブータンの人々は、急速な近代化に伴い、多様な価値観を持つようになりました。
仏教と共に在る人生を送り、GNHを求めることを大切にしてきた親世代に対し、子世代は多様な価値観を持ち、自分たちらしい生き方があると信じているのです。
伝統社会の急激な変化に戸惑いながらも決断せねばならない最後の仏教王国ブータン。
ゲンボとタシの家族が直面している寺院の継承問題は、ブータンで暮らす人々だけの問題ではなく、どの世界にもある家族の葛藤でもあります。
解剖学者であり、東京大学名誉教授の養老孟司氏は、本作に次のようなコメントを寄せています。
ネットを典型として変わりゆく社会、その中での父と子、性同一性、個人の選択、こうした人生の普遍的な問題を、ブータンの風土を背景に上手に描いています。
強いて結論を出さない、とても気持ちのいい映画です。
日本人が百年以上前に、良かれ悪しかれ通過した時代を、アジアの国々がいま通っているという気がします。
ではわれわれは真摯に過去に向き合ってきたか。
それをあらためて考えさせる作品でもあります。
世界で初めて劇場公開されるブータン人作家によるドキュメンタリー
共同監督を務めるブータン出身のアルム・バッタライとハンガリー出身のドロッチャ・ズルボーは、若手ドキュメンタリー制作者育成プログラム「ドック・ノマッド」で出会いました。
そして、世界7つのドキュメンタリー・ピッチング・イベントに参加し、国をまたがる6つの財団から資金を獲得して、国際共同製作の枠組みで本作品を完成させました。
文化背景の異なる若手作家が手を取り合い、世界を旅し、世界中の支援者に支えられて完成した、友好と情熱に満ちた“クロッシング・ボーダー”な映画、それが本作『ゲンボとタシの夢見るブータン』なのです。
ドック・ノマッズとは
ドック・ノマッズとは“ドキュメンタリーの遊牧民”という意味で、ポルトガル、ハンガリー、ベルギーという欧州3カ国の3大学から成るコンソーシアム(大学間連合)によって運営される、2年間の国際修士コース。
参加者は20代後半~30代前半が多く、作家、学者、ジャーナリスト、弁護士、アーティストなど職業は様々。
2年間、実践と座学のプログラムを学び、共に国を移動しながらドキュメンタリーを制作することで、協働性を育み、コース修了後も様々な共同制作プロジェクトを生み出しています。
映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の作品情報
【公開】
2018年(ブータン、ハンガリー合作映画)
【原題】
The Next Guardian(英題)
【監督】
アルム・バッタライ、ドロッチャ・ズルボー
【キャスト】
ブータンの小さな村ブムタンに暮らすゲンボとタシ、その家族たち
【作品概要】
世界7つのドキュメンタリー・ピッチング・イベントで企画提案され、国をまたがる6つの財源から資金を獲得し、国際共同製作の枠組みで完成した作品。
世界で初めて劇場公開されるブータン人作家による“ブータン・ドキュメンタリー”映画。
2017年、世界最大のドキュメンタリー映画祭、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭(idfa 2017)のコンペティション部門でワールドプレミア上映されて以降、ブダペストやアメリカ、ポーランドなど世界の名だたるドキュメンタリー映画祭に正式出品された。
映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』のあらすじ
ブータンの小さな村に暮らす長男ゲンボ(16歳)は、家族が代々受け継いできた寺院を引き継ぐために学校を辞め、戒律の厳しい僧院学校に行くことについて思い悩んでいました。
自らを男の子だと思い、ブータン初のサッカー代表チームに入ることを夢見る妹のタシ(15歳)は、自分の唯一の理解者である兄に、遠く離れた僧院学校に行かないでほしいと願います。
父は、子供たちが将来苦労することなく暮らせることを願い、ゲンボには出家し仏教の教えを守ることの大切さを説き、タシには女の子らしく生きる努力をすることを諭します。
思春期の子供たちは自分らしい生き方を模索しますが、それが何かはまだわかりません。
急速な近代化の波が押し寄せるブータンで、子供たちの想いと、親の願いは交差し、静かに衝突します…。
上映劇場イベント情報
第七藝術劇場 大阪公開記念トークイベント
場所:第七藝術劇場
8/25(土)12:20の回上映後 松尾茜/元ブータン政府観光局
8/26(日)12:20の回上映後 草郷孝好/関西大学社会学部 教授
9/6(木)時間未定 川瀬慈/国立民族学博物館
【第七藝術劇場タイムテーブル】調整中
【お問い合わせ】06-6302-2073
出町座 京都公開記念特別講演会
場所:出町座
9/1(土)「ブータンの伝統と現代」/熊谷誠慈(京都大学こころの未来研究センター)
時間:12:30の回上映後、13:50頃より3Fサロンにて実施。
対象:12:30の回をご鑑賞いただいた方と、17:45の回をご覧になる方で鑑賞券をお持ちの方
*スペースに限りがあるので、初回上映をご覧になったお客様を優先して入場していただきます。
【出町座タイムテーブル】12:30/17:45
【お問い合わせ】075-203-9862
ポレポレ東中野 劇場ミニトークイベント
場所:ポレポレ東中野
8/26(日)12:20の回上映後 松本紹圭/浄土真宗本願寺派光明寺僧侶、一般社団法人お寺の未来代表理事
8/29(水)19:10の回上映後 天城靱彦/Tokyo Docs 実行委員会委員長
8/30(木)19:10の回上映後 関健作/写真家、元ブータン日本人教師
9/2(日)12:20の回上映後 関野吉晴/探検家、医師
9/3(月)19:10の回上映後 石川直樹/写真家
9/5(水)19:10の回上映後 南のえみ/Be Inspired! 編集者
9/7(金)19:10の回上映後 加部 一彦/埼玉医科大学総合医療センター小児科
【ポレポレ東中野タイムテーブル】12:20/14:10/17:40/19:10
【問い合わせ】03-3371-0088
※2018年8月21日(火)時点。各劇場の上映予定・登壇日は変更となる場合があります。必ず、劇場にお問い合わせのうえお出かけください。
まとめ
ブータンといえば「幸せの国」というイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。
2011年にブータン国王夫妻が日本に国賓として来日された際、連日マスコミが大きく報道し、ブータンブームが起こったことも記憶に新しいですね。
しかし、実際ブータンの国民がどのような暮らしをしているかはなかなか知る機会がありません。
本作『ゲンボとタシの夢見るブータン』は、ここ20年程で急速に近代化が進んだブータンの姿を、お寺の継承問題を抱える家族にスポットを当てて描いたドキュメンタリー映画です。
伝統と近代化の間で、どのようなブータンの未来が見えてくるのでしょうか。
8/18(土)よりポレポレ東中野にて公開中の映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』は、全国順次ロードショーです。
ぜひ、劇場でご鑑賞ください。
本作を上映する劇場情報
【関東地域】
東京 ポレポレ東中野 8月18日(土)~
神奈川 シネマ・ジャック&ベティ 時期調整中
栃木 宇都宮ヒカリ座 10月27日(土)~11月9日(金)
【近畿地域】
大阪 第七藝術劇場 8月25日(土)~9月14日(金)
京都 出町座 9月1日(土)~
兵庫 元町映画館 時期調整中
【九州地域】
福岡 福岡アジアフィルムフェスティバル2018 近日発表
*上記の情報は8月21日現在のものです。作品の特性からセカンド上映や順次公開されることが予想されます。お近くの映画館をお探しの際は必ず公式ホームページを閲覧のうえお出かけください。