第32回東京国際映画祭「最優秀芸術貢献賞」受賞作。
内モンゴルのフルンボイル草原に暮らす一組の夫婦が、ともに生きていきたいと願いながらも時代の変化や価値観の多様化の中ですれ違っていく様を描いた映画『Chaogtu with Sarula』(中国語原題、白雲之下)。
第32回東京国際映画祭コンペティション部門で『チャクトゥとサルラ』の題名で上映され「最優秀芸術貢献賞」を、第33回中国金鶏奨で「最優秀監督賞」を受賞した中国映画です。
この度、邦題を『大地と白い雲』改め、2021年8月21日(土)より岩波ホール他全国順次ロードショーされます。
公開に先駆け、ワン・ルイ監督のコメントの発表と予告編が解禁されました。
映画『大地と白い雲』について
ワン・ルイ監督が、自身の過去の痛みに向き合い、亡き妻に捧げた夫婦の愛の物語『大地と白い雲』。
内モンゴル出身の作家・漠月(モー・ユエ)の小説 『放羊的女人』を原作に、10年の歳月をかけて映画化しました。
愛する人と生きていきたい、ただそれだけのことがうまくいかない不器用でまっすぐな夫婦を演じるのは、ともに遊牧民の家庭で生まれ育った俳優のジリムトゥと歌手のタナ。
草原と都会、二つの異なる世界を知る二人が、遊牧民としてのアイデンティティと現代的な価値観の間で揺らぐ若い夫婦の心の機微を繊細に捉え、圧倒的な自然の中で生きてきた人間のたくましさと、強い存在感を放っています。
監督は北京電影学院の教授も務める俊英ワン・ルイ。
草原の生活の質感と四季の美しさにこだわり、内モンゴル出身の俳優やスタッフたちとともに、モンゴル語で挑んだ本作は中国映画に新たな可能性と多様性を提示し、中国最大の映画祭である金鶏奨で最優秀監督賞を、東京国際映画祭では最優秀芸術貢献賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
ワン・ルイ監督からのコメント
ワン・ルイ監督からのコメントは以下の通り。
『大地と白い雲』はお互いに異なる希望を持ちながら内モンゴルに暮らす、チョクトとサロークという平凡な夫婦の生活に起こるジレンマを描いた物語です。妻のサロールは夫でなるチョクトと共にずっと草原で暮らしていくことを望んでいます。一方で、チョクトは遊牧民であることを誇りに思っていますが、その伝統が崩れてきている中で、羊飼いとして、また夫としてこれまでのような役割を果たすことが難しいと思い始めているのです。このように、個人的な幸せの追求と、社会的な属性が調和せず、対立する背景には、社会が引き起こした生活様式と文化的な価値観の急速な変化に遊牧民が適応できていないことを示しています。
この映画では、自然でリアリティーのあるスタイルを貫きたいと思っていました。目新しさや上辺だけでなく、草原と遊牧民たちの日々の暮らし、その美しさこそがこの映画の基調となるようにしたかったのです。ある平凡な遊牧民の夫婦の別れと再会の物語を通じて、彼らの追究心や潜在的な考え、また変化する環境の中で生きている現代の遊牧民が経験するジレンマを映し出しているのです。
映画『大地と白い雲』の作品情報
【日本公開】
2021年(中国映画)
【原題】
白云之下
【原作】
『羊飼いの女』漠月著
【監督】
ワン・ルイ
【脚本】
チェン・ピン
【キャスト】
ジリムトゥ、タナ、ゲリルナスン、イリチ、チナリトゥ、ハスチチゲ
【日本語字幕翻訳】
樋口裕子
【日本語字幕監修】
山越康裕
映画『大地と白い雲』のあらすじ
内モンゴルに広がるフルンボイル草原に暮らす一組の夫婦。
夫のチョクトは都会での生活を望んでいますが、妻のサロールは今の暮らしに満足していました。
ここではないどこかへ思いを巡らせ、ふらりといなくなるチョクトに腹を立てながらも、彼を愛するサロール。
どこまでも続く大地、空を流れる白い雲。羊は群れをなし、馬が草原を駆けぬけていきます。
ですが、自由なはずの草原の暮らしにも少しずつ変化が訪れ、徐々に二人の気持ちがすれ違いはじめます。
そして、ある冬の夜、大きな喪失を経験する二人。
その日を境に、サロールと草原で生きる覚悟を決めたチョクトでしたが…。
まとめ
遊牧民としての誇りと新しい世界への憧れ。
内モンゴルの圧倒的な自然の中で揺れうごく若き夫婦の愛の物語が劇場公開となります。
映画『大地と白い雲』は、2021年8月21日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー。