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Entry 2020/11/27
Update

映画『あのこは貴族』原作文庫ネタバレあらすじと感想。結末ラストとキャスト配役も山内マリコの小説から解説

  • Writer :
  • 石井夏子

映画『あのこは貴族』は2021年2月26日より公開。

同じ都会に暮らしながら全く異なる生き方をする2人の女性が自分の人生を切り開こうとする姿を描いた山内マリコの著書『あのこは貴族』。

本著を原作とした同名映画が、2021年2月26日より公開されます。

箱入り娘の華子を門脇麦が、自力で都会を生き抜く美紀を水原希子が演じました。監督は『グッド・ストライプス』の岨手由貴子。

映画公開前に、原作小説『あのこは貴族』をあらすじネタバレ有りでご紹介します。

小説『あのこは貴族』の主な登場人物

小説『あのこは貴族』書影

榛原華子
東京生まれ、東京育ちの根っからの箱入り娘。26歳で恋人と別れ、結婚に焦りを感じて婚活を始めます。
映画版のキャストは門脇麦。

時岡美紀
東京のIT企業に勤める32歳の女性。大学時代に地方から上京してきました。ある男性と腐れ縁が続いています。
水原希子が映画では美紀役を務めました。

相良逸子
華子の小中高の同級生でヴァイオリン奏者。大学からドイツに留学し、いまではドイツと日本を行ったり来たりしています。
映画では、石橋静河が演じます。

青木幸一郎
華子がお見合いで出会った弁護士。32歳。ハンサムで家柄も良い幸一郎と華子の結婚はとんとん拍子に進んでいきます。
映画では高良健吾が幸一郎役を演じました。

小説『あのこは貴族』のあらすじとネタバレ

華子は東京生まれ、東京育ちの根っからのお嬢様。父は、都内で代々続いてきた整形外科病院を開いており、なに不自由なく暮らしてきました。

まもなく27歳になろうとした華子は、恋人から振られてしまいます。華子の「重さ」に愛想を尽かされてしまったようです。

30歳までに結婚、出産をしたいと漠然と考えていた彼女は焦りに駆られ、婚活を始めました。

父や友人や姉の紹介で様々な男性と会ってみるも結婚したいと思える人物には巡り会えず、焦りを募らる華子。

そんな中、姉の夫の会社で顧問弁護士を務めている、青木幸一郎と出逢います。

父と同じ慶応出身で育ちがよく、ハンサム。幸一郎こそ運命の相手だと華子は確信しました。

幸一郎も華子が気に入ったようで、二人はすぐに婚約。ですが、華子には気がかりなことがありました。

ある夜、幸一郎のスマホに「時岡美紀」という女性から連絡が。華子は、幸一郎と美紀の関係について気になったものの、本人には聞けずにいました。

華子は婚約の挨拶のため、幸一郎の実家に行くことに。そこは、華子の家と比べられないほど大きく、華子の実家以上の上流の家系でした。

結婚をするにあたり、自分のことを興信所で調べられていたことを知った華子は違和感を覚えますが、幸一郎と幸一郎の親族にとっては当たり前のことのよう。

挨拶も済み、結婚への準備を進める華子の元に、友人の逸子から連絡があります。

ヴァイオリニストの逸子はパーティーでの演奏後、ある女性から声をかけられました。その女性と連絡を先を交換しようとしていたところに、女性の連れの男性がやってきて、自分の名刺を差し出しました。

ふたりは長年連れ添ってきた恋人のような空気。逸子が手渡された男性の名刺には「青木幸一郎」と書かれており、名刺の裏には「時岡美紀」とメモ書きがありました。

華子の婚約者の名前を知っていた逸子は、華子にそのことを知らせました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『あのこは貴族』ネタバレ・結末の記載がございます。『あのこは貴族』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

今から十数年前。時岡美紀は大学進学のため、地方の港町から上京してきました。

入学した慶應義塾大学で、小学校から上がってきた本物のエリートたちとの格差を目の当たりにします。

さらに、もともと美紀の進学を良く思っていなかった父が職を失ってしまい、仕送りはカット。さらには学費まで自分で稼がなくてはならなくなってしまいました。

効率の良いバイトを探していた美紀は、クラブやラウンジで働くようになり、どんどん洗練されていきますが、大学は中退。

数年後。美紀の働くラウンジに、慶應出身の男性グループが入店。その中には、美紀が一度だけノートを貸したことがある、青木幸一郎がいました。

そこから、幸一郎と美紀の関係は始まります。恋人ではないけれど、体の関係はありました。美紀は水商売を辞め、IT関係の関係の会社に就職。

頭がよく気が利く美紀を幸一郎は気に入っているようですが、家柄の違いから、決して結婚はできないと美紀は知っています。

ただの都合の良い女になっているとわかっていながらも、美紀は彼のステイタスにひかれ、ずるずると10年近くも関係を続けていました。

美紀は幸一郎に誘われて参加したパーティーで、ヴァイオリニストの相良逸子と出逢います。逸子は「会わせたい子がいる」と、後日美紀を呼び出しました。

やって来た美紀に、逸子は幸一郎との関係を聞き出し、自分の友人と幸一郎が婚約していることを話します。

修羅場にしたいわけでも、美紀を責めたいわけでもなく、大ごとになる前に友人としてできる限りのお節介をしたかったと語る逸子。

そこへ華子もやって来て、3人はこれからのことを話し合います。

まさにお嬢様といった上品な華子を見て、美紀は自分がなぜ幸一郎とずるずる付き合っていたのか、その理由に思い当たりました。

コンプレックスの塊だった大学時代。当時の王子様だった幸一郎と一緒にいることで、華子のようなお姫様の人生を追体験したかっただけだったんです。

それに気づいた美紀は、幸一郎の連絡先を消し、二度と合わないことを華子と逸子に誓います。

華子と幸一郎の結婚式当日。新婦の友人席に、逸子と美紀が並んで座っていました。

美紀の姿を見て、驚く幸一郎。

実は、美紀にあっさり捨てられたことで、幸一郎は未練がましく美紀を追いかけるようになっていました。そんな彼を思い知らせようと、女性3人は手を組んでいたんです。

結婚後、幸一郎はますます忙しくなり、華子は家で一人で過ごす時間が長くなりました。苦手な家事を勉強して、幸一郎を支えようとしても、お礼ひとつなく、文句を言われる始末。

ですが華子はうまく自分の感情を吐き出すことができず、幸一郎とは向き合えないままでした。

そんな彼女が頼ったのは美紀。華子は美紀に、幸一郎のことを相談します。

東京で何不自由なく育って来た華子と、上京して東京での居場所を築いて来た美紀。

華子は、空っぽな自分の中身と人生について吐き出し、美紀に謝ります。初めて感情を見せた華子に、美紀は「その調子で幸一郎にも自分の気持ちを話したら」とアドバイスしました。

数ヶ月後。華子は幸一郎に離婚届を突きつけます。幸一郎はじめ周囲から大反対の末の離婚でしたが、華子に後悔はありませんでした。

1年後。華子は、日本で活動を始めた逸子のマネージメントをしていました。招かれた演奏会で、華子は幸一郎に再開。華子は彼と本音で話し合えるようになっていました。

一方、美紀は、東京と地元を往復しながら、友人と立ち上げた会社で、地元の活性化のために働いています。

彼女たちはそれぞれ、自分の足で前に進んでいました。

小説『あのこは貴族』の感想と評価

いきなり世間知らずのお嬢様、華子が主人公で始まる本著。あまりに庶民とはかけ離れた彼女の日常に度肝を抜かれました。

華子は、育ちがよく素直で柔らかな人物なんですが、友人や婚活相手を悪気なく格付けしています。

それもそのはず、華子はいままで、自分で何かを選んで来たことがなく、誰かが用意したレールに乗っていただけだから。夢中になれる趣味も大きな夢もなく、親のステイタスに頼って生きて来た華子。

そのせいで、人を中身ではなく、見た目や学歴、家柄などのパッケージでしか見ることができないんです。

そんな華子のパートが終わると、次は美紀に主人公が変わります。東京にコンプレックスを抱き、しかし地元の閉鎖的な空気にも戻れない美紀。

美紀の孤独には共感してしまう読者も多いでしょう。

二人を繋ぐ、逸子の立ち位置も絶妙で、新しい三角関係の解消方法を打ち出してくれました。

また、物語の結末で彼女たち選んだ人生がとても前向き。

空っぽな自分に気づきながらも甘んじていた華子が、天職とも言える仕事を手に入れたのは意外でした。

コンプレックスから解き放たれた美紀が、寂れた地元の活性化のために動くようになったのも、華子と出会ったからこそ。

もう彼女たちの人生は交わることはないかもしれませんが、きっと心の片隅にお互いが生き続けることでしょう。

映画『あのこは貴族』の作品情報

(C)山内マリコ/集英社・「あのこは貴族」製作委員会

【日本公開】
2021年(日本映画)

【原作】
山内マリコ『あのこは貴族』集英社

【監督】
岨手由貴子

【キャスト】
門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ

【作品概要】
監督は、初のオリジナル長編作品『グッド・ストライプス』で、新藤兼人賞金賞を受賞した岨手由貴子。

主人公の箱入り娘・華子には、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』でヒロインを好演した門脇麦。

地方から上京し、自力で生きる美紀役に、女優、モデル、デザイナーと多彩に活躍する水原希子。

奇しくも二人を繋ぐことになる、弁護士・幸一郎役に高良健吾ほか、石橋静河、山下リオと、若手実力派俳優が集結しました。

まとめ

(C)山内マリコ/集英社・「あのこは貴族」製作委員会

生まれも育ちも違う、華子と美紀。二人の出会いは、ひとりの男性と関係を持ってしまったから。

どろどろとした関係を全く感じさせない、シスターフッド小説『あのこは貴族』。

本著を映画化した『あのこは貴族』は、2021年2月26日より公開されます。

映像化するにあたり、美紀の乗り物は自転車、華子はタクシーなど、移動手段ひとつとっても、ふたりの階層の違いが現れるように撮影されているそう。

華子や幸一郎の豪邸や、東京の高級ホテルなど、なかなかお目にかかれないような豪華な撮影場所もみどころになることでしょう。

キャストも、華子役に門脇麦、美紀役に水原希子、幸一郎役に高良健吾、逸子役は石橋静河と、若手実力派俳優が揃いました。

イメージぴったりな女優陣はもちろん、高良健吾がいかに「人当たりの良い悪い男」を演じるか、期待が高まりますね。

映画『あのこは貴族』は2021年2月26日よりロードショーです。


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