毎年のように新作映画を発表している名匠ウディ・アレン監督。
これまでにアカデミー賞に史上最多の24回ノミネートされ、監督賞を1度、脚本賞を3度受賞している世界を代表する映画監督です。
2017年5月、ハリウッド黄金時代が舞台の最新作『カフェ・ソサエティ』が公開されましたね。もうご覧になりましたか?
ウディ・アレンの映画には、思い通りにならない人生への皮肉、哲学的で深い台詞、そして彼のニューヨーク愛、映画愛がたっぷりと込められています。その世界観とお洒落な雰囲気にハマってしまった方も多いはずです。
ウディ・アレン監督は、1935年12月1日生まれ、米ニューヨーク州出身です。
1965年初めて映画の脚本を手がけた『何かいいことないか子猫チャン』で俳優としてもデビューし、1969年『泥棒野郎』が単独での初監督作となりました。
当時恋人だったダイアン・キートンをヒロインに迎えた『アニー・ホール』で、アカデミー監督賞と脚本賞を受賞しました。しかし授賞式には欠席、その時間にニューヨークのパブでクラリネットを演奏していたことはひとつの伝説となっています。
その後、私生活でもパートナーになったミア・ファローをミューズに『ブロードウェイのダニー・ローズ』、『ハンナとその姉妹』などを撮り、『ハンナとその姉妹』ではアカデミー脚本賞を再び受賞しました。
これまでニューヨークを舞台にした作品がほとんどでしたが、近年はイギリス・ロンドンを舞台にした『マッチポイント』、『タロットカード殺人事件』、『ウディ・アレンの夢と犯罪』、またスペイン・バルセロナを舞台にした『それでも恋するバルセロナ』、フランス・パリを舞台にした『ミッドナイト・イン・パリ』など、ヨーロッパの都市を舞台にした作品も増えています。
『ミッドナイト・イン・パリ』では、アカデミー賞脚本賞を受賞し、自身最大のヒット作となりました。
ウディ・アレン監督が今まで世に送り出した作品は40以上にものぼります。今回はその中からおすすめの5作品をピックアップしてお届けします!
CONTENTS
1.ウディ・アレンワールドが堪能できる1本『アニー・ホール』(1977)
『アニー・ホール』の作品概要
1977年のアメリカ映画。
ウディ・アレンが監督・脚本・主演を務めています。
出演は、ウディ・アレン、ダイアン・キートン、トニー・ロバーツ、キャロル・ケイン、ポール・サイモン、ジャネット・マーゴリンほか。
第50回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞を受賞。
『アニー・ホール』のあらすじ
ニューヨークで優雅な独身生活を送っていた40歳でナイトクラブの漫談芸人アルビー(ウディ・アレン)は、歌手志望のアニー(ダイアン・キートン)と出逢い、“自由な交際”という約束で彼女と付き合い始めます。
なんとなくうまくいっていた2人でしたが、人気歌手のトニー(ポール・サイモン)からハリウッド行きを勧められたアニーは、引きとめるアルビーも虚しく旅立つ決意を固め…。
『アニー・ホール』のおすすめポイント
ウディ・アレン作品のなかで最も人気がある作品の1つで、アカデミー賞を含む数々の映画賞を受賞した作品です。
ニューヨークに生きる男女の出会いや別れがウディ・アレン独特のユーモアとセンスによりシニカルに描かれています。
洗練された台詞や、アニーを演じたダイアン・キートンのオシャレなファッションや笑い方は公開当時に話題になりました。
監督はこの作品で長回しを初めて利用しており、大きな転機となった作品だといわれています。日常のシーンを切り取ったような些細な出来事が次々と映し出されていて、その描き方が特徴的で面白く映画の見どころの一つとなっています。
共演したダイアン・キートンとは実際に恋愛関係にあったこともあり、ウディ・アレンの自伝ともとれるような情感にあふれた作品です。
2.自堕落な生活を送るジャズギタリストの恋の行方を描く『ギター弾きの恋』(1999)
『ギター弾きの恋』の作品概要
1999年のアメリカ映画。
ウディ・アレンが、監督・脚本を務めています。
出演は、ショーン・ペン、サマンサ・モートン、ユマ・サーマン、アンソニー・ラパーリア、ブライアン・マーキンソンほか。
ショーン・ペンが第72回アカデミー主演男優賞に、サマンサ・モートンが助演女優賞にノミネートされました。
『ギター弾きの恋』のあらすじ
1930年代のニューヨークはジャズ全盛期。才能溢れるギタリストのエメット・レイ(ショーン・ペン)はジャズクラブでも人気者。その演奏に誰もがうっとり聞き惚れていました。
演奏とは裏腹に自堕落で身勝手な生活を送っていたエメットでしたが、小柄で口のきけないハッティ(サマンサ・モートン)と出会い、次第に愛するようになります。
ところが、上流階級の女性ブランチ(ユマ・サーマン)に出会い惹かれた彼は、ハッティと別れ突然結婚。しかし2人の共通点は派手好きなところくらいで愛には乏しく、ブランチはいつしかジャズクラブの用心棒アル(アンソニー・ラパーリア)と不倫するようになっていき…。
『ギター弾きの恋』のおすすめポイント
“ジャズ黄金時代”を背景に、破滅的なジャズギタリストと口のきけない少女との恋の行方を描いた、ショーン・ペン主演で贈るドラマ映画です。
ドキュメンタリータッチで描かれていますが、主人公のエメット・レイは架空の人物です。
ショーン・ペンが自己中で不器用な男を好演していて、サマンサ・モートンの口をきけない(表情だけの演技)も素晴らしいです。
ストーリーもわかりやすくて、“本当に大切なものは失ってから気づく”というもの。鑑賞後にじわりじわりと心が温まるような作品です。ジャズが好きな人にもお勧めです!
3.3姉妹をめぐる人々の人生を描いたコメディ『ハンナとその姉妹』(1986)
『ハンナとその姉妹』の作品概要
1986年のアメリカ映画。
ウディ・アレンが監督・脚本・主演を務めています。
出演は、ウディ・アレン、マイケル・ケイン、ミア・ファロー、ダイアン・ウィースト、バーバラ・ハーシー、キャリー・フィッシャー、マックス・フォン・シドーほか。
第59回アカデミー賞助演男優賞(マイケル・ケイン)、助演女優賞(ダイアン・ウィースト)、脚本賞受賞。また、第44回ゴールデングローブ賞最優秀作品賞(コメディ・ミュージカル部門))受賞。
『ハンナとその姉妹』のあらすじ
ニューヨーク・マンハッタン、アッパーサイドのアパートメントに投資顧問の夫・エリオット(マイケル・ケイン)と幸せに暮らすハンナ(ミア・ファロー)。妹のホリー(ダイアン・ウィースト)は女優志願でオーディションを受ける日々。末妹のリー(バーバラ・ハーシー)はソーホーで年上の画家フレデリック(マックス・フォン・シドー)と同棲していました。
毎年恒例の感謝祭の夜は両親の家に家族全員が集まってお祝いする決まりになっていますが、楽しいパーティの裏でハンナの周囲には小さな波紋が広がりつつあるのでした。
両親の間に揉め事は絶えず、エリオットは義妹のリーに恋して密会を重ね、建築家にふられたホリーはハンナの前夫ミッキー(ウディ・アレン)とデートして大失敗…。ミッキーは神経症で病院めぐりをしているのでした。
『ハンナとその姉妹』のおすすめポイント
大都会を舞台に、三姉妹と彼女たちに関わる人々の人間模様を、詩、音楽、演劇、絵画、建築、哲学、宗教などをモチーフに、シニカルにユーモラスに描いた作品です。ウディ・アレン作品の中でも最高傑作の声も高い秀作といわれています。
それぞれの夫婦関係、家族関係などを軸に、人の愚かさや弱さを描きながら、人生の喜びや幸せを表現しています。ウディ・アレンは、よく練られたシナリオで脚本賞を受賞しています。知的な会話や思わずメモを取りたくなるような風刺のきいた台詞がちりばめられていて、ウディ・アレンの恋愛観をたっぷり感じることができます。
4.“運”に翻弄される人々の姿を濃密かつスリリングに描く
『マッチポイント』(2005)
『マッチポイント』の作品概要
2005年のイギリス映画。
ウディ・アレンが監督・脚本を務めています。
出演は、ジョナサン・リース=マイヤーズ、スカーレット・ヨハンソン、マシュー・グッド、エミリー・モーティマー、ブライアン・コックスほか。
第78回アカデミー賞脚本賞ノミネート。
『マッチポイント』のあらすじ
ロンドン。野心家の元プロテニス・プレイヤーのクリス(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は大金持ちの息子トム(マシュー・グッド)と親しくなり、トムの妹クロエと付き合うようになります。
ある日、トムの別荘に招かれたクリスは、トムの婚約者であるノラ(スカーレット・ヨハンソン)と出会い関係を持ってしまいます。
ノラを忘れられずにいるも、クリスは上流階級への道を選び、クロエ(エミリー・モーティマー)と結婚します。しかし偶然ノラと再会し、再び関係を持ち始めます。
欲望と野望の狭間で、クリスの想いは激しく揺れ動き…。
『マッチポイント』のおすすめポイント
英国の上流社会を舞台に、愛欲の衝動や裏切りに翻弄される人々の姿を描くエロスサスペンスです。
ウディ・アレンの作品では初めてロンドンが舞台になり、全編ロンドンで撮影されています。
若々しいスカーレット・ヨハンソンはセクシーな魅力を存分に発揮し、ジョナサン・リース=マイヤーズの狂気を感じさせる眼差しが見事で、破滅に突き進んでいく若者という役柄がハマっています。
男性にとっては、サスペンスというよりむしろホラーに近いような恐ろしいストーリー展開といえるかもしれませんね。
作品の最初の部分で主人公クリスが、ドストエフスキーの「罪と罰」を読む場面がありますが、これが後の展開の伏線となっていきます。
ウディ・アレン監督作品の初心者にもお勧めできる作品です。
5.アカデミー賞で3度目の脚本賞を獲得!『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)
『ミッドナイト・イン・パリ』の作品概要
2011年のイギリス・スペイン合作映画。
ウディ・アレンが監督・脚本を務めています。
出演は、オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス、カート・フラー、ミミ・ケネディ、マイケル・シーン、マリオン・コティヤール、キャシー・ベイツ、エイドリアン・ブロディほか。
ウディ・アレンは、第84回アカデミー賞で脚本賞、第69回ゴールデングローブ賞で最優秀脚本賞を受賞。
『ミッドナイト・イン・パリ』のあらすじ
ハリウッドの脚本家ギル(オーウェン・ウィルソン)は、婚約者のイネス(レイチェル・マクアダムス)とその両親と共に憧れのパリをおとずれます。
そんな彼がある夜、0時を告げる鐘の音に導かれて迷い込んだ先は、芸術花開く1920年代でした。これは夢か幻かと驚くギルの前に、次から次へと偉人を名乗る面々と、妖艶な美女アドリアナ(マリオン・コティヤール)が現れ…。
『ミッドナイト・イン・パリ』のおすすめポイント
アメリカ人の脚本家の男が1920年代のパリにタイムスリップし、様々な人たちと出会い幻想的で夢のような時間を過ごす様子を描いた至福のロマンティック・コメディです。
オーウェン・ウィルソンやレイチェル・マクアダムス、キャシー・ベイツなどハリウッドを代表する豪華スターが出演して話題となり、ウディ・アレンがアカデミー賞で脚本賞を獲得した作品です。
パリの風景や街並みがとても美しくて、見る者をパリ旅行に行っているかのようなとてもワクワクした気持ちにさせてくれます。
とにかくゴージャスでお洒落で見ていて幸せになれるラブコメなので、どなたにもお勧めできる作品です。
まとめ
ウディ・アレン監督の作品の中からおすすめの5作品をピックアップしてお届けしました。お気に入りの作品はありましたか?
近年は作品への出演は減りましたが、監督、脚本、俳優の3役を見事にこなす数少ない映画人のひとりだと思います。
年1本のハイペースで映画を作り続け、80代になってもその手腕は衰えることなく発揮されています。今回ご紹介した以外にも傑作がたくさんありますので、ぜひご覧になってみて下さいね!