“悪い予感だらけの今日と明日が、少しだけ、光って見えた。”
優しくてぶっきらぼうな、最高密度の恋愛映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』をご紹介します。
CONTENTS
映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の作品情報
【公開】
2017年(日本)
【監督】
石井裕也
【キャスト】
石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン、市川実日子、松田龍平、田中哲司
【作品概要】
『川の底からこんにちは』、『舟を編む』など現在最高の評価を受けている気鋭の若手監督石井裕也さんがメガホンを取り、最果タヒさんの原作詩集を見事映像化。
主演に石橋静河さん、池松壮亮さん、共演に松田龍平さん、田中哲司さん、市川実日子さんら実力派俳優が脇を固めた恋愛映画。
第67回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品。第41回香港国際映画祭Award GALA招待上映。
映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』のキャスト一覧
美香 / 石橋静河
1994年東京生まれの石橋静河さんは、石橋凌さんと原田美枝子さん夫妻の娘さん(次女)ということですでに有名ですよね。
4歳の頃からクラシックバレエを始め、15歳の頃にアメリカ留学後2013年に帰国し、コンテンポラリーダンサーとして活動を始めたという石橋さん。
クラスメイト役で映画初出演と振付補佐を担当した『少女』(2016)
2016年からは女優業にも進出し、野田秀樹さん演出の舞台『逆鱗』に出演、CMなどでも露出が多くなっている他、2016年に湊かなえ原作の映画『少女』に映画初出演と振り付け補佐を担当。
2017年には映画『PARKS パークス』も公開を控えていますね。
そして、初主演映画となるのが本作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』でヒロインの美香役に抜擢された石橋さん。
看護師をしながら夜はガールズバーで働き、不安と孤独に苛まれている少女・美香を最強のDNAを有する石橋静河さんが一体どのような演技を見せてくれるのかに注目が集まっています!
慎二 / 池松壮亮
10歳の頃(2001年)にはすでにミュージカル『ライオン・キング』のヤングシンバ役でデビューを果たしていた池松壮亮さん。
2003年にはトム・クルーズ主演、渡辺謙さんも出演した映画『ラストサムライ』に出演し、一気に注目を集めます。
ハリウッド映画に飛源役でデビュー!『ラストサムライ』(2003)
この作品が映画自体初出演だったにも関わらず(しかもハリウッド映画?!)、堂々たる演技を見せつけて、第30回サターン賞では若手俳優賞にノミネートされるほど世界的に高評価を得ることに。
その後もNHK大河ドラマ『風林火山』(2007)や、2014年の映画『海を感じる時』、『紙の月』、『ぼくたちの家族』などで様々な賞レースを席巻し、若手実力派俳優の筆頭としてその名を轟かせていますね。
本作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』で池松さんが演じているのは、建設現場で日雇いとして働いている慎二。
左目がほとんど見えず、社会にも上手く適応できない日々を生き抜いている慎二の姿を池松さんがどのように表現しているのかに注目です!
*池松壮亮主演『セトウツミ』お薦めですよ。
智之 / 松田龍平
名優・松田優作さんと松田美由紀さん夫妻の息子で、松田翔太さんの兄として知られる松田龍平さん。
俳優としては大島渚監督の『御法度』(1999)の加納惣三郎役でデビューを果たします。
映画デビューは美男剣士!その目で人を斬る⁉︎『ご法度』(1999)
この作品では、日本アカデミー賞やキネマ旬報、毎日映画コンクールやブルーリボン賞をはじめ、その年度の新人賞を総嘗めにし、一気に注目を集めることに。
2002年には『青い春』、翌年には『ナイン・ソウルズ』(2003)など話題の映画に次々と出演。
その後も『探偵はBARにいる』シリーズや本作でも監督を務める石井裕也監督作の『舟を編む』(2013)など、映画を中心に活動する一方で、2017年にはTBSドラマ『カルテット』にも出演するなど、テレビドラマでも活躍していますね。
そんな松田龍平さんが演じているのは、慎二の年上の同僚である智之。彼を襲う運命と、慎二に一体どんな影響を与えるのかが注目ポイントになりそうです!
岩下 / 田中哲司
2014年には女優の仲間由紀恵さんと結婚したことが非常に話題となった田中哲司さん。
1994年にTBSドラマ『ぽっかぽか』でデビューしてから主に舞台の世界で活躍します。
テレビドラマで最初に注目を集めたのは、2004年のNHK大河ドラマ『新選組!』で松本良順役を演じたことでしょうか。
スペックホルダーの冷泉役!『劇場版SPEC ~結(クローズ)~ 漸(ゼン)ノ篇/爻(コウ)ノ篇』(2013)
その後もTBSドラマ『SPEC』シリーズや『ATARU』、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』(2014)などに出演し、脇役としてテレビドラマや映画においても欠かせない存在となっていますね。
本作で田中さんが演じているのは、慎二と智之の同僚である中年の岩下。どういった役回りとなっているのか注目して見ていきたいと思います!
佐藤玲
蜷川幸雄さん演出の舞台『日の浦姫物語』で娘役に抜擢されて女優デビューを飾った佐藤玲さん。
ゆうばり国際映画祭で注目された映画にも出演!『リュウグウノツカイ』(2016)
2014年には坂本悠花里監督の映画『おばけ』で初主演を務め、同年『リュウグウノツカイ』が、ゆうばり国際映画祭北海道知事賞を受賞するなど、高評価を獲得。
その後も堤幸彦監督の『イニシエーション・ラブ』(2015)、『少女』(2016)、2017年にはマーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』に出演するなど、若手ながら実力派女優としての地位を確立しつつありますね。
本作での役どころに関してはまだ不明ですが、一体どのような演技を見せてくれるのか…注目ですね!
三浦貴大
2014年の錦織良成監督作『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』で俳優デビューを果たした三浦貴大さん。
この作品でいきなり、第34回日本アカデミー賞新人俳優賞、第35回報知映画賞新人賞を受賞するなどの高評価を得て一躍脚光を浴びることに。
三浦貴大主演の隠れた名作‼︎『ローリング』(2015)
その後も映画を中心に活動し、近年では『進撃の巨人』(2014)や『シン・ゴジラ』(2016)、『怒り』(2016)、『淵に立つ』(2016)など、数々の話題作に出演し続けています。
そんな三浦貴大さんが本作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』でどんな役を演じるのかはまだ明らかにされておりません。一体どんな役で登場するのか、注目してみていきましょう!
市川実日子
ファッションモデル・女優として有名な市川実和子さんの妹である市川実日子さんは、『Olive』や『CUTiE』『Zipper』『spoon.』などのファッション誌でモデルとして活躍していました。
女優としてデビューしたのは、1998年のホンマタカシ監督の短編映画『How to 柔術』。2001年には『とらばいゆ』で毎日映画コンクールのスポニチグランプリ新人賞を獲得するなど、高評価を獲得します。
2003年には初主演となった映画『blue』で第24回モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞し、実力派女優としてその名を轟かせることに。
最近でも『シン・ゴジラ』(2016)で毎日映画コンクール女優助演賞しており、今後は是枝裕和監督の『三度目の殺人』(2017年公開予定)や吉田大八監督の『羊の木』(2018年公開予定)の公開が控えているなど、常に引っ張りだこの女優さんといった感じですね。
さて、本作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』では一体どのような演技を見せてくれるのか…非常に楽しみですね!
映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の監督紹介
映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の監督を務めるのは石井裕也さんです。
2005年に大阪芸術大学の卒業制作として『剥き出しにっぽん』を発表し、第24回そつせい祭グランプリを受賞した他、第29回ぴあフィルムフェスティバルにおいてもグランプリを受賞するなど、早くからその才能は注目を集めていました。
その後『反逆次郎の恋』 (2006)、『ガール・スパークス』(2007)、『ばけもの模様』(2007)を発表。
『剥き出しにっぽん』を含めたこの4作品は様々な(海外も含めた)映画祭で公開され、石井監督が24歳の時、アジア・フィルム・アワード第1回「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督大賞を受賞し、国際的にも高い評価を得ることに。
2009年製作の『川の底からこんにちは』では、日本映画史上最年少となる28歳という若さで第53回ブルーリボン賞監督賞を受賞するなど、様々な賞レースを席巻し、その名を轟かせます。
石井裕也監督の代表作‼︎『舟を編む』(2013)
さらには、『舟を編む』(2013)で第37回日本アカデミー賞最優秀作品賞や68回毎日映画コンクール日本映画大賞、第38回報知映画賞作品賞を受賞した他、第86回アカデミー賞外国語映画部門日本代表作品に選出されるなど、最高の評価を獲得しました。
2014年には『ぼくたちの家族』や『バンクーバーの朝日』を発表し、どちらも高評価を得ており、日本だけでなく世界から多くの注目と期待を集め続けている気鋭の若手監督ですね。
長編映画12本目となる本作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』で石井監督が挑むのは、“詩”の世界観を映像表現するということ。
本作は、2016年には発売されて累計27,000部の売り上げを記録している(現代詩集としては異例)最果タヒさんの『夜空はいつでも最高密度の青色だ』という詩集を原作としており、一体どのようにその世界観を表現するのかに非常に注目が集まっていますね!
【最果タヒ(さいはて・たひ)プロフィール】
1986年に神戸市生まれる。2006年現代詩手帖賞を受賞。2007年詩集『グッドモーニング』刊行で中原中也賞受賞。2012年詩集『空が分裂する』。2014年詩集『死んでしまう系のぼくらに』刊行で現代詩花椿賞受賞。
また、池松壮亮さんは『舟を編む』以降、石井監督作品には常連(本作で4作連続の出演となる)であることや、松田龍平さんとも『舟を編む』でタッグを組んでおり、キャストとの相性も良さそうで、ますます期待が高まっていくばかりです!
映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』のあらすじ
看護師として働く美香は女子寮で一人暮らし。
朝の出勤時、バスを待って列を作る人々は、皆一斉にスマホをいじっています。上空を行く飛行船に気づく人は美香以外誰もいません。
病院では、担当していた37歳の女性が亡くなりました。泣きじゃくる夫、まだよくわからない子どもたち。廊下を去っていく彼らを見送りながら、「大丈夫、すぐ忘れるから」と心の中で呟く美香。
部屋に戻った美香は空手のポーズで気合を入れた後、夜の街を自転車で移動します。向かう先はガールズバー。そこでアルバイトをしているのです。
建設現場で日雇いとして働く慎二はボロアパートで一人暮らし。彼は左目がほとんど見えません。
少し年上の智之、中年の岩下、フィリピン人のアンドルスらといつもなんとなくつるんでいます。
岩下は腰を痛めていて、重い建材を運ぶのもままならず、アンドルスは半ば騙されて日本にやって来ました。二百万ほどの借金に縛られているという噂です。
喋りだしたら止まらなくなる慎二に「うるさいんだよ。お前は」と突っ込むのが智之です。
岩下は次の現場に行くのを断念。移動する車の中から岩下がしょんぼり公園に座っている姿を観て、「いやな予感がする」と慎二は騒ぎ、智之に注意されるのでした。
慎二がアンドレスの住むアパートに寄ると、音楽が大音量で流れ、まるでパーティーのようです。フィリピン人の仲間数人と共同で暮しているのでしょうか。ここを訪ねると毎回こんな調子なのです。
隣の住人は毎晩の騒音にノイローゼ気味。そんなことも知らずに彼らの部屋だけが夜の静寂を乱し、赤く輝いているのでした。
建設現場で昼の休憩をとっていた慎二たち。「なんだ、今日は全然しゃべらないな」と智之が声をかけてきました。
その時、慎二は、智之の首元に、古い傷跡をみつけるのでした。「どうしたんだ?」と聞かれ、いつものように「うるさい」と応える智之。中学生の頃の古傷なのだそう。
いよいよ腰の痛みに耐えられなくなってきた岩下は「この仕事が出来なくなったら死ぬしかない」と呟きます。
慎二はアパートの隣の独居老人を定期的に訪ねていました。ドアの前に座って煙草を吸う二人。老人は慎二にいつも本を貸してくれるのです。
ある晩、慎二は智之と岩下に誘われてガールズバーにやってきました。カウンターに現れたのは美香でした。
智之は美香から連絡先を聞こうとしますが、「ここはそういう店じゃないんだよ、って向こうで客が注意されているのを聞いたよ」と慎二が喋りだします。いつものように「うるさいんだよ」と慎二を戒める智之はちゃっかり、美香のメールアドレスをゲットするのでした。
数日後、美香は同僚と一緒に知り合ったばかりの男たちと居酒屋で食事をしていました。トイレに立った美香は入り口に近い席に慎二が座っていて文庫を読んでいるのに気付きます。二人の目があいますが、美香は自分の席に戻っていきました。
慎二は駅で電車を待っていましたが、人身事故で遅れているとのアナウンスが入り、再び夜の街に引き返し、歩いて帰ろうとしていました。
そこでばったり美香と会います。「なんでこんなに何度も会うの? どうでもいい奇跡だね」と美香が言いました。
「しゃべってないと不安なんだろうね」という美香に「俺が変だから」と応える慎二。「私と一緒だ」と美香。
ふと見上げると月が見えました。「月ってあんなに青かったっけ?」
「いやな予感がする」と慎二が言うと「わかる」と美香は応え、「さよなら」と去っていきました。一人残った慎二は月を見上げ「でも綺麗だ」と呟くのでした。
昼休み、休憩している慎二たち。智之は美香に「またデートしよ」とメールを送ります。「わかった」と返信が来て嬉しそう。
智之は美香とデートした時の写真を慎二にみせて「応援してくれるか」と聞きました。応援しない理由がない」と慎二は笑って応えます。
ところが、休憩時間が終わって立ち上がった途端、急に智之が倒れてしまいます。そのまま彼は返らぬ人となってしまいました。
智之の葬式はほとんど建設会社の人間ばかり。会社の社長は「仕事中に死ぬなとみんなに言っておけ」と情も何もあったものではありません。
美香が喪服でやって来ました。慎二と美香は夜の東京を喪服姿で歩いていました。路上ミュージシャンが「がんばれ~」と声を張り上げて歌っています。
看護士の美香は智之の首の古傷が脳卒中の原因だろうと考えていました。
「俺にできることがあればなんでも言ってくれ」という慎二に、美香は「死ねばいいのに」と言い放ちます。
”死ねといえば簡単に孤独を手に入れていた”。美香は心の中で呟くのでした。
ある日、仕事中に慎二は腕に怪我を負いました。病院で治療を受けて廊下を歩いていると隣に並んで看護士の制服を着た美香が並んで歩いているではありませんか。驚く二人。なんという偶然でしょう。
いつも美香が休憩している場所で、黙って煙草をふかしている二人。何もしゃべらない慎二にしびれを切らし、その場を去ろうとした美香に慎二は「また会えないか」と尋ねました。美香はメールアドレスを教えるのでした。
久しぶりに実家に戻った美香は、田園風景の中をボーイフレンドと自転車で二人乗りしている妹とすれ違います。
妹は彼と一緒に東京の大学に行くことに決めたと無邪気に話し、美香は無性に腹立たしく、泣きたくなってしまいます。
父親に母の死の原因を聞いても、いつもと同じように病気だと応えるばかり。本当は自殺だとわかっているのに。捨てられたってわかったらその方が嬉しいのに。
都会の生活で抑えていたものが、実家では抑えられなくなってしまいました。外にでてしゃがみながら涙をながす美香。「大丈夫。すぐに忘れるから」。目の前には光ひとつない暗闇が広がっていました。
携帯、9,700円。ガス代、3,261円。電気、2,386円。家賃 65,000円、シリア、テロリズム、食費 25,000円、ガールズバー 18,000円、震災、トモユキが死んだ、イラクで56人死んだ、薬害エイズ訴訟、制汗スプレー 750円、安保法案、少子高齢化…。
「会いたい」。慎二は美香にメールを送っていました。
映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』感想と評価
本作は東京という大都市に暮らすある男女とその周辺を描いた物語です。
親元を離れ、かつての友人たちも側にいない。依存できる相手はおらず、頼れるのは自分だけ。夜になればネオンのまたたく荒野に若者たちは一人で生きています。
そんな物語なんてこれまでもいくらでもあったじゃないか、孤独を抱えたもの同士のボーイ・ミーツ・ガールなんて手垢にまみれた主題じゃないかと思われるかもしれませんが、煌々と輝き続ける都市の中で、生活に追われ、不安に囚われながら生きる、彼、彼女たちの姿は、今、この時代を生きる私たち自身の物語でもあるのです。
一人暮らしの男性が、家賃や電気代やガス代の請求書を手にして困惑している映画なんてそうないのではないでしょうか。
生活感が漂う演出に一瞬、成瀬巳喜男監督作品を連想していました。田中絹代主演の『おかあさん』で子どもにお使いを頼む際の出費を抑えるための細かい指示などが思い出されたのです。
成瀬の映画にはよくお金の話が出てくるのですが、本作も盛んにお金の話が出てきます。時代は若者たちに経済的不安をもたらしています。
不安はそれだけではありません。地震、放射能、テロ、孤独死、etc…。美香は不安を口にせずにはいられません。
本作はアニメーションも登場し、彼らの不安を映像化していますが、慎二が「とてつもなくよいことがありそうな気がする」という発言をしたあとで、以前、彼が出逢ったまだ幼い野良犬が、保健所につかまり、殺処分されることを描いたアニメーションが挿入されます。
これは非常にショッキングです。実際、子犬がこのような運命をたどったかはわかりませんが、こんなちっぽけな生き物も救うことができないのだ、つらい話から目をそらすことしかできないという罪悪感がもたらした慎二の心情を表しているようにも思えます。
時々、頭の中で無意識にこんな映像を人は展開しているのではないでしょうか。
「いやな予感」は忘れた時にやってくるといってもいいかもしれません。
不安でいっぱいの美香の問いを慎二が一つ一つ誠実に応え、彼女の心が落ち着きをみせるラストの展開にはぐっとくるものがありました。
不器用な二人が、同時に目撃する飛行船、宣伝カー、花という道具立てが素晴らしいです。
人は一人では生きていけない。しかし、寄り添いあえる人を見つけるのに、なんとたくさん傷つかなくてはならないのでしょうか。
それにしてもこの作品で描かれる東京の美しさはどうでしょう! ちょうど同時期に公開された『美しい星』(監督:吉田大八)で、「地球が美しいのではない。人間がそれを美しいと思うのだ」という台詞が出てきたのですが、まさに其の言葉をここで引用したくなります。
東京が美しいのではない。人間がそれを美しいと思うのだ。
黒さを持たない東京の夜。ネオンを映す川の水面、信号のライトに微かに映って見える車の群れですら美しい。
“都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。塗った爪の色を、きみの体の内側に探したってみつかりやしない” 。 映画は原作になった最果タヒの言葉を美香に語らせていますが、既に彼ら、彼女たちは都会を好きになってしまっているのです。
田舎にはもう自分の場所もなく、仕方なく都会に生きているように見えて、実は都会に魅了され、不安にかられ、もがき苦しんでいる。これはそんな若者と、東京という都市を暖かくも魅力的に描いた傑作です。
まとめ
早くも石井裕也監督の最高傑作として呼び声の高い本作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』。
若手実力派俳優の池松壮亮さんとまだ女優としては経験の浅い石橋静河さんがどのように共鳴するのか…非常に注目が集まっていますね!
注目の劇場公開は2017年5月13日(土)新宿ピカデリー・ユーロスペースで先行上映、2017年5月27日(土)より全国ロードショーとなっています!ぜひ劇場でこの最高密度の恋愛映画をお楽しみください!