永遠の妖精オードリー・ヘプバーンが、パリを舞台に歌って踊るミュージカル映画。
ミュージカル映画の金字塔『雨に唄えば』のスタンリー・ドーネン監督と、オードリー・ヘプバーンが初めて組んだ作品です。
オードリー・ヘプバーンが演じる古本屋の店員ジョーが、ニューヨークのファッション雑誌のトップモデルへと変身していく、シンデレラストーリー。
カラフルでポップな映像と、ゴージャスな衣装。パリの素敵な風景に、オードリー・ヘプバーンのキュートな表情。どこを切り取っても、ポストカードのようにオシャレです。
ファッション界の華やかな世界に一緒に飛び込みましょう。永遠に愛されるミュージカル映画の名作『パリの恋人』をご紹介します。
映画『パリの恋人』の作品情報
【公開】
1957年(アメリカ映画)
【原題】
Funny Face
【監督】
スタンリー・ドーネン
【衣装】
エディス・ヘッド
【キャスト】
オードリー・ヘプバーン、フレッド・アステア、ケイ・トンプソン、ミシェル・オークレール、ロバート・フレミング、ドビマ
【作品概要】
『雨に唄えば』など多くのミュージカル映画を手掛けたスタンリー・ドーネン監督が、オードリー・ヘプバーンと初のタッグを組んだミュージカル映画『パリの恋人』
オードリー・ヘプバーン本人の歌声と、モダン・バレエを習っていた彼女のしなやかなダンス姿に注目です。
共演は、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーの看板俳優、フレッド・アステア。彼のブロウドウェイ仕込みの華麗なダンスも魅力的です。
オードリー・ヘプバーンとフレッド・アステアの息の合ったダンスが、見る者の心を惹きつけます。
映画『パリの恋人』のあらすじとネタバレ
ニューヨークにある、ファッション誌「クォリティ」のオフィスでは、編集長マギー(ケイ・トンプソン)が、ひらめきの真っ最中。
「雑誌には、ひらめきが必要」と言う、彼女のひらめきとは?
「次のトレンド色は❝ピンク❞に決まり」彼女の一声でスタッフが、動き出します。
洋服に帽子、バックに靴、シャンプーに歯磨き粉まで、ニューヨーク中がピンク一色になりました。
いかに、ニューヨーク市民が、流行のファッションに敏感かが伺えます。
街がピンクで溢れる中、黒のドレス姿の女性を撮影しているカメラマン・ディック(フレッド・アステア)の姿がありました。
彼はモデルに知的さを求めています。
撮影に苦労するディックは、撮影場所を変えることを提案。街の古びた本屋を探します。
良い感じの本屋を発見した雑誌「クォリティ」の撮影クルーは、許可もなく本屋に押しかけます。
そこには、古本屋の店員、ジョー(オードリー・ヘプバーン)がいました。地味なジョーは、いきなり入ってきたピンク軍団に嫌悪感を露わにします。
「ファッションは、自己欺瞞」と非難する彼女でしたが、本をモデルに渡す役として撮影に巻き込まれていきます。
撮影後、ぐちゃぐちゃになった店内を片付けるジョーとディック。会話は、憧れのパリについて。
「同感とは他人の感情を理解すること。共感とは他人の感情をそのまま自分も感じること」
ジョーは、パリで「共感主義」を唱える哲学教授のフロストルの信者でした。
ディックは、ジョーの知的さに惹かれていきます。思わず、ジョーが登っていた梯子を引き寄せ、キスをするディック。
気持ちが共感したと言うディックに、ジョーは違うと全否定します。
ディックが立ち去り一人残されたジョーは、解放出来ない胸の内を歌で表現します。
古本だらけの薄暗い店内で、残されたカラフルな女優帽を手に取り、恋への憧れ、揺らぐ気持ちをのせて踊ります。
残ったのは、自分に不釣り合いの女優帽と、虚しさだけでした。
ファッション誌「クォリティ」は、新しいモデルの発掘に乗り出していました。
スカウトをまかされたカメラマンのディックは、古本屋で出会ったジョーを推薦します。
「彼女はファニー・フェイス。こんな変わった顏はダメ」と言う編集長のマギーに、ディックは「彼女は個性あるインテリだ」と引きません。撮影に移り込んでいたジョーの顔をモノクロのポスターに仕上げてみせます。
それを気に入ったマギーは、早速ジョーを呼びつけます。
何も知らず、本の注文と聞いてやってきたジョーに、マギーは無理やりモデルに変身させようとします。まずは、髪を切りましょう。
慌てて逃げだすジョー。迷い込んだのは、ディックが写真の現像作業をしていた暗室でした。
モデルになりたくないジョーに、ディックはモデルになると「パリに行けて、憧れのフロストル教授にも会える。君は魅力的だ。個性の輝きだよ」と誘います。
パリに行きたくてモデルを引き受けたジョー。
舞台はオシャレな街、憧れのパリへ。
凱旋門、シャンゼリゼ通り、セーヌ河、ノートルダム大聖堂、ルーブル美術館、エッフェル塔。
歌い踊り出したくなるパリの美しい風景に、マギー、ディック、ジョーは存分にパリを称え、踊ります。
チームワークも良くなった所で、大事なのは仕事です。デザイナーのポール・デュバルとの打ち合わせ、パリの街での写真撮影、そして最後のマスコミへのお披露目ショーと予定が詰まっていました。
しかし、初日のデザイナーとの打ち合わせに顔を出さないジョー。
心当たりのあるディックは、街の共感主義者が集まるカフェに向かいます。
そこには、言葉の通じないフランス人を相手に共感主義を語り、お酒を酌み交わすジョーの姿がありました。
無理やり連れ帰ろうとするディックに、抑圧されたと、自分の気分を表現するジョー。
ディックはそんなジョーに「共感主義者なら、仕事をほっぽかされた身にもなれ」と諭します。
翌日、真面目に仕事場へ現れたジョー。
デザイナーのポール・デュバルの洋服に身を包み、エレガントに変身したジョーを見て、「ただの喋ではない。まさに極楽鳥よ」と、マギーは大喜びです。
パリの街での撮影もスタートしました。
時には、プリンセスのように。時には、アンナ・カレーニアのように。時には、可愛らしい釣り師に。時には、サモトラケのニケのように。
ジョーは持ち前の知的さと想像力を発揮し、ディックの理想を超える素晴らしい写真を作り出していきます。
写真撮影の最後のシーンは、教会の花嫁。でも、ウェディング姿のジョーはどこか寂しそう。
「ずっとディックといたい」自分の気持ちに気付いたジョーは、愛を歌で告白します。
それに答えるディック。2人は幸せあふれる瞬間を共に踊ります。
映画『パリの恋人』の感想と評価
映画『パリの恋人』は、邦題を『Funny face』と言います。
「Funny face=奇妙な顔」と書かれた横には、白黒で輪郭はなく顔のパーツがハッキリと映し出された、クールな表情のオードリー・ヘプバーンの写真。
オープニングのクレジット映像は、この一枚のポスターから始まります。その後は色彩鮮やかで、オシャレな写真が次々と登場します。
女性はこのシーンだけでテンション上がること間違いなしです。
そして、なんと言ってもこの映画の見どころは永遠の妖精オードリー・ヘプバーンの魅力です。
クルクル変わる表情に、キラキラ光る大きな瞳、小鹿のような可愛らしい顔、骨格そのものが芸術作品と言える美しさ。
どの瞬間を切り取っても美しい凛とした佇まいは、生き生きとした表情と首筋までもが印象的です。
また、彼女のモダン・バレエ経験を活かしたダンスは、とてもしなやかで華麗です。時を経ても古臭くない、コンテポラリーダンス。
小柄な体全体を使ったパフォーマンスは、表現力が豊かで可愛らしく、最強の美の集大成です。
映画の中で「ファニー・フェイス」と言われるオードリー・ヘプバーン。
たとえ個性的な顔であっても、滲み出る知性と、純粋な心を持っていれば、それが表情に現れ美しさにつながるということを教えてくれます。
それでも、オードリー・ヘプバーンの可愛らしさに、こんな顔に産まれたかったと思ってしまうのは仕方ないことですけど。
まとめ
ミュージカル映画の金字塔『雨に唄えば』のスタンリー・ドーネン監督が、オードリー・ヘプバーンと初めて組んだ映画『パリの恋人』を紹介しました。
オードリー・ヘプバーン本人の歌声と、彼女の体全体を使った表現力豊かな踊りに魅せられます。
また、魅せられる物の一つとしてゴージャスなファッションにも注目です。
オードリー・ヘプバーンをミューズと称え、公私にわたり友情を築いた、フランスの高級ファッションブランド「ジバンシィ」の創業者ユベール・ド・ジバンシィが2018年3月に亡くなりました。
ジバンシィは、『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘプバーンが冒頭で来ていた黒のドレスをはじめ、『愛しのサブリナ』『シャレード』『パリで一緒に』『おしゃれ泥棒』と彼女の衣装を手掛けてきました。
そして、『パリの恋人』ではアカデミー賞衣装賞にノミネートされています。
オードリー・ヘプバーンが女優としてだけではなく、ファッションモデルとしても魅力を輝かせたのは、彼の力があってこそ。
ジバンシィを着こなすオードリー・ヘプバーン。
今もなお色褪せないキュートな姿をご覧ください。