映画『ナラタージュ』の監督である行定勲が、三浦春馬を主演に向かえ、ほぼ全編を中国を舞台にしたミステリー調のラブストーリーです。
原作は日本の作家・本多孝好で、日本が舞台だった原作を、大胆に脚色し、雰囲気たっぷりの大人なラブストーリーとして仕上げています。
1.映画『真夜中の五分前』の作品情報
【公開】
2014年(日本・中国映画合作)
【原作】
本多孝好
「真夜中の五分前―five minutes to tomorrow〈side‐A〉」(新潮文庫)
【監督】
行定勲
【キャスト】
三浦春馬、リウ・シーシー、ジョセフ・チャン
【作品概要】
本多孝好のベストセラー小説を映画化し、舞台を日本から中国に変更したことでも話題となった作品。
青年リョウが知りあったばかりのルオランは、双子の妹ルーメイが、自分が好きだった男性と婚約したことで、大切な妹に嫉妬心を抱くことに苦しんでいます。
そんな彼女を良はすこしずづ受け入れていきますが、良の気持ちを大きく揺れ動かす事件が起きてしまいます。
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2.映画『真夜中の五分前』のあらすじとネタバレ
中国で時計の修理技師として働く日本人・良は通いつめのプールで美しい泳ぎをする女性に見とれます。
するとプールを後にするとき、その女性から突然、「プレゼントを選んで欲しい」と声をかけられます。
良は高価な雰囲気のある腕時計専門店を一緒に訪れるも、予算に合うものは見つかりません。
そこで良は、自分が修理した置時計を女性に渡します。
女性は時計を受け取り、良に送ってもらいます。
途中に、女性に瓜二つの人が映った大きな看板が目に入ります。
ルオランと名乗るその女性は、礼を言って帰って行きました。
日は変わり、再びプールで良はルオランと出くわします。
彼女は良を食事に誘うと、レストランで一度席を立ちます。
戻ってきた彼女を見て何も反応しない良に、彼女は何も気付かないのかと聞きます。
ルオランには双子のルーメイがおり、たった今プールであったのはルオランではなく、ルーメイでした。
ルーメイはモデルをしており、婚約者もいます。
ルオランが用意したプレゼントは、2人への婚約祝いでした。
ルーメイは、中国では「時計を贈る」と「死を看取る」は同じ発音なので、プレゼントにすることは滅多にないと言います。
2人は見た目こそ瓜二つですが、性格は似ていないといいます。
そんな2人を見ると、良は双子にはテレパシーにも似た能力がありそうであこがれると話します。
ルオランも、今日の服装は打ち合わせていないのに、靴が一緒だった。それも買ったことなんて知らないのにといい、どこか物憂げな様子でした。
実際、2人は性格だけでなく生き方も大きく異なっていました。
良が次にルオランと再開したのは、ルーメイも彼女の婚約者ティエンルンも一緒でした。
映画監督を務めるティエンルンと、あわせて4人でゴルフを行っているとき、ルーメイは今の幸せな自分があるのはルオランの事だと良にいいます。
ルオランはフリーライターとして働いており、その関係でティエンルンと知り合い、ルーメイは彼と引き合うことができました。
別荘のようなところで、4人で酒を飲んでいると、どうして良はルオランに気持ちを抱いたのか、ルーメイに聞かれます。
良は泳いでる姿に見とれたと説明しますが、ルーメイは自分がカナヅチだったのでルオランが泳げたことに驚きます。
良いが回ったルーメイは音楽をかけて、良と踊ります。
ティエンルンはルオランと踊ろうと、手を差し出しますが、彼女はその誘いを断り、外へ出て行きます。
後を追ってきた良に、まるで自分の人生は常にルーメイに奪われているかの気分だといい、最初にティエンルンに出会ったのも自分なのにと、実は彼に行為があることを告白します。
しかし一方のルーメイも、心の自由さや、無意識に人をひきつけるルオランを羨んでいました。
良とルオランは、良の職場兼自室へ戻ります。
良の部屋の時計は5分遅れており、過去に付き合った女性が世界に追いつける程度の5分を楽しめたほうが得だからと言っていた名残でした。
しかし、過去の彼女は他界しており、良はそんな5分前を楽しんだ彼女は罰が当たったのかもしれないと冗談交じりに話します。
ルオランはその5分で、ルーメイと違う世界にいければとつぶやきます。
2人は一緒に映画を見て、人知れず手を取り合います。
そんな彼女に、良は5分遅れの腕時計をプレゼントします。
翌日、その時計のせいで映画館で映画を見逃してしまいます。
良が飲み物を買いに行っている最中に、ルオランは他の客にルーメイと勘違いされ、さらに通りがかったティエンルンにも間違われてしまいます。
ルオランはティエンルンから服をプレゼントされますが、黙って受け取ります。
良がルオランを見つけると、貰った服を着ており、ルーメイと2人きりでモーリシャスへ旅行へ行くことになったと告げます。
それから数日、職場のラジオからはモーリシャスで観光クルーザーと漁船の衝突事故が発生し、中国人女性1人が事故でなくなったことを、良は耳にします。
3.映画『真夜中の五分前』の感想と評価
中国やアジア系の国はどうしても(いい意味で)雑多な雰囲気が先行しがちですが、設定やストーリーを工夫するだけでこうも優雅な雰囲気が漂うのかと驚きました。
ミステリー調といえど、決してスリリングになりすぎず、登場人物それぞれに感情移入できる余地がある余裕すら漂っているようです。
また、今作を見る人全員が気になるであろう、「生き残ったのは本当にルーメイ」なのかという答えは終始曖昧なまま、映画は終わります。
大事なのは、ルーメイと対面している人物が、彼女を本当にルーメイとしてみているのかという点だと思います。
ティエンルンは、自分に好意を持っているルオランが、ルーメイに成りすましているのではという狂気にも似た疑念を抱きます。
一方良は、意識が戻って最初に手を取ったのがティエンルンだったのだから、彼女はルーメイだといいますが、それはあくまでそうであって欲しいという思いの表れだと感じます。
もし彼女が本当はルオランだとしたら、まだティエンルンのことを諦めていなかった事実は、良にとってはかなりショックでしょう。
ティエンルンにあおれほどルーメイだと言い放つのは、良の現実逃避なのでは無いかと思いました。
そう考えると、今作はなかなか経験することのない出来事でありながら、切なさを共感させる異色作だとビシビシ感じました。
まとめ
私自身、原作者・本多孝好のファンということもあり、ずいぶん前に読んだ原作を、もう一度読み直してみたくなるほど引き込まれる話でした。
「真夜中の五分前―five minutes to tomorrow〈side‐A〉」
気付いたら本多孝好氏は、超人バトル小説を書いていて(しかもシリーズもの)おったまげましたが、またこういう作風の小説が、映画ならではの描き方で実写化してほしいなあとも感じました。
それにしてもゴルフシーンの三浦春馬のスイングの下手さは、ガチなのか演技なのか。個人的に生き残ったルーメイが本人なのかルオランなのかと、同じくらい気にしながら映画を見ていました。
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