2017年1月24日に第89回米国アカデミー賞はノミネート作品を発表されました。予想通りの作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞など、13部門に14ノミネートは、『ラ・ラ・ランド』は他の追随を許さないですね。
今回は、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーン共演したミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』の13部門14ノミネートという結果と、また、1月27日に、初来日したデイミアン・チャゼル監督を祝して映画の感想!
そして独自の解釈など、いつもより情報満載大特集でご紹介したします!
CONTENTS
映画『ラ・ラ・ランド』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ)
【脚本・監督】
デイミアン・チャゼル
【キャスト】
ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス、ジェシカ・ローゼンバーグ、ソノヤ・ミズノ、ローズマリー・デウィット、J・K・シモンズ、フィン・ウィットロック、ジョシュ・ペンス、ジョン・レジェンドキース
【作品概要】
『セッション』で注目の的になったデイミアン・チャゼル監督が、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーン共演で描いたミュージカル映画。
第89回アカデミー賞ノミネート発表!「ラ・ラ・ランド」が最多14ノミネート。第73回ベネチア国際映画祭にてエマ・ストーンが最優秀女優賞。第41回トロント国際映画祭にて観客賞受賞。第74回ゴールデングローブ賞作品賞(ミュージカル/コメディ部門)ほか、同賞の映画部門で史上最多の7部門を受賞しています。
映画『ラ・ラ・ランド』のあらすじとネタバレ
【冬】WINTER〜嫌な男!出会いは最悪!〜
憧れの女優になるのを夢見て、田舎からロスアンゼルスにやって来たミア。映画撮影所にあるカフェで働きながら、チャンスを求めてオーディションを受ける日々を過ごしていました。
しかし、いっこうに映画関係者からのチャンスが訪れる気配はありませんでした。
ある夜。ピアノの調べに誘われたミアは、レストランに入ってピアニストの演奏に心を動かされます。しかし、レストランのオーナーは、彼の選曲した音楽が気に入らず、ピアニストをクビにします。
ミアは素晴らしい演奏を聴かせていたピアニストに一言でも声をかけようとするが、クビになった彼はそれどころではなく、無礼な態度でミアを無視。
しかもそのピアニストは、数日前に高速道路の渋滞で、ミアの運転する車に激しくクラクションを鳴らした嫌な男、セブだったのです。
【春】SPRING〜季節萠ゆれば、恋におちて〜
なぜか?あちらこちらで偶然とはいえ、まるで運命的に再会するミアとセブ。いつしか2人は言葉を交わすようになっていきます。
セブにも夢がありました。今では人気の無くなってしまったジャズを愛していた彼は、自分のジャズ・バーを持って、好き曲を好きな時に自由に演奏することです。
はじめのうちは、互いに嫌味を言い合っていた2人でしたが、それぞれが夢についてを語り合うちに惹かれあっていくのです。
ミアがオーディションの通過できるように演技を学ぼうと、映画館に『理由なき反抗』を観に行く約束する2人。
しかし、ミアは付き合い始めたばかりのグレッグと、仲間たちでディナーの食事を先に入れていました。ミアには関心のない退屈な会話ばかりをするグレッグで。ミアはセブのことが気になって仕方ありません。
その時、レストランにあったスピーカーから、セブが引いていた曲が流れたのです。運命を感じたミアは映画館へと駆け出していきます。
スクリーンに映し出された映画『理由なき反抗』を並んで観るミアとセブ。スクリーンに映し出された「グリフィス天文台のシーン」で急接近した2人は手を握り、唇を寄せようとした瞬間。
古くて劣化していたフィルムが発火。焼けて溶けてると、館内に灯りが点いて映画上映は中止。セブはミアの手を引くと本物の天文台へと向かいます。
2人はプラネタリウムの満開の星座に見守られながら、天に舞うような恋心を燃やしていくのです。
幸福感に満ちたミアは翌日から「一人芝居」のための脚本を書き始めます。自作自演ならオーディションのように、嫌なディレクターとの面接ともおさらばが出来るという、セブのアドバイスに導かれたのです…。
映画『ラ・ラ・ランド』の感想と評価
デイミアン・チャゼル監督は、初来日を果たした記者会見の席で、自ら何度も「愛を込めて作った」、「優秀な撮影チームと一緒に仕事が出来て、今も夢の中にいるようだ」と語りました。
もともと、彼は大ヒットした前作『セッション』よりもずっと前、ハーバード大学在学中にアイデアを思いついていたのです。
とはいえ、監督の思うように制作プロセスが進めず、映画の企画は先送りになっていました。
夢の企画が動いたのは、才能の溢れる俳優ライアン・ゴズリングと出会い、さらには歌唱力のあるエマ・ストーンの参加によって、夢が実ったのが最新作『ラ・ラ・ランド』なのです。
さて、この映画のポイントを大きく3つあげると、「1.俳優の魅力、2.音楽とダンス、3.映画の伝承」になるでしょう。
1.俳優の魅力
主人公のセバスチャンことセブ役を演じたライアン・ゴズリングは、デイミアン監督から「ジンジャーとフレッド」のようなミュージカル映画を作りたいと聞いた瞬間、強い感銘を受けました。
彼はジャズピアニストの役を演じるため、撮影に入るクランク・イン前の3ヶ月間、一心不乱にピアノの練習をしたそうです。
それに嫉妬したのは、この作品で共演を果たした著名なミュージシャンのジョン・レジェンドさえも腕前に大絶賛!
ジョンは、「本当に上手くてゾクゾクした、ピアノを始めて数ヶ月とは思えない腕前だ。正直悔しかったし、感動したよ!」と述べたそうです。
また、セブと恋に落ちたミア役を演じた、ミュージカル経験のあったエマ・ストーンについて、デイミアン監督は、「彼女のレベルは本当に高い。歌とダンスで感情の波を表現するのが凄く上手いんだ」と称賛しています。
また、今回はその主役セブとミアを見事に演じた2人の俳優が、華やかにも合計して100回の衣装チェンジは圧巻!
衣装担当のメアリー・ゾフレスは、ミュージカル映画の『シュルブールの雨傘』や『バンドワゴン』、『有頂天時代』を衣装研究を行ない、全編を色で溢れさせるようにしたそうです。
ライアンとエマの高い演技力を活かしたスタッフチームとのコラボレーションにも注目ですね。
2.音楽とダンス
『ラ・ラ・ランド』は、ミュージカル映画であることから、当然、過去のミュージカル映画をに共鳴し合うような印象付けの工夫はされています。
例えば、撮影所を舞台にしたミュージカル映画と言えば、すぐに思い出すのは、傑作『雨に唄えば』(1953)。
他にもハリウッドの『バンドワゴン』『パリのアメリカ人』、またフランス映画のミュージカル映画『シュルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』、さらには近作『ロック・オブ・エイジズ』、人気ドラマ『giee/グリー』まで…いとまがありませんね。
『シュルブールの雨傘』(1964)
デイミアン監督を中心にスタッフチームが一致団結。楽しくミーティングを交えながら、サービス精神旺盛にあらゆる世代の映画ファンが映画館に集まって、共に楽しさをシェアできる工夫を盛り込んだのです。
過去に作られたミュージカル映画のモチーフを巧みに用いて、多くのオマージュ構築を成功させたデイミアン監督の実力、それはジャズファンとして、場にある情熱や空気感を即興的に組み合わせるミュージシャン的手法とも読めます。
また、忘れてはならないのが、この映画の主人公セブが自宅での取り憑かれたように聴き、練習を重ねてミアに聞かせた楽曲は、ジャズピアニストのセロニアス・モンクの「ジャパーニーズ・フォーク・ソング」。
日本人なら誰もがよく知る滝廉太郎の名曲「荒城の月」をモンクがカヴァーした名曲。
ライアンがミアや観客のためにも猛特訓した華麗なる演奏する姿は必見です!
3.映画の伝承
『理由なき反抗』(1955)
『ラ・ラ・ランド』は、ミュージカル映画のみにオーマジュした映画ではありません。
あなたも気が付かれているとは思いますが、セブとミアのデート・シーンがありましたね。
俳優志望のミアの演技力を育むために、セブが誘った映画館で流れていた映画は、あのジェームス・ディーンが主演を果たした代表作『理由なき反抗』です。
セブとミアが唇を重ねキスすると、スクリーンに映写されていた映画のフィルムが燃えてしまい、2人は実際のグリフィス・パーク天文台に駆け出して行きます。
あの場所も実際に『理由なき反抗』の撮影ロケが行われた場所だということは、言うまでもありませんね。
『理由なき反抗』を引用した隠喩の意味は、”苦悩する若者の成長する物語”を観客に示しているのでしょう。
また、他にも重要な過去の映画へのオマージュがあります、それは、恋愛映画の傑作中の傑作として名高い、マイケル・カーティス監督の『カサブランカ』です。
『カサブランカ』(1942)
デイミアン監督が、『ラ・ラ・ランド』のテーマを、「叶う夢もあれば、叶わない夢もある」としたこと。そして、悲恋のラブ・ストーリーであると明確にさせるために用意した隠喩の記号と見ることができます。
ミアのいるワーナー・ブラザースのカフェへとセブは会いに来ます。スタジオ内にまんまと潜り込んでやって来てくれたセブに、撮影所を案内しながら『カサブランカ』で実際に撮影された窓を紹介するシーンがあります。
あの場面を脚本の台詞に、あえて盛り込んだ点からも、『ラ・ラ・ランド』の恋の行方の結末が悲恋になることに想像がついた方もいたのではないでしょうか。
また、『カサブランカ』という作品に見られたモチーフ「主人公はバーのオーナー、ピアノ、忘れられない思い出の曲、パリの別れ、ラストの悲恋」と、上手に『ラ・ラ・ランド』では昇華させていましたね。
このように、『ラ・ラ・ランド』を観客に観てもらった後も、デイミアン・チャゼル監督は、一緒に感想を述べ合ったり、語り合うことで映画をより楽しんでもらえるように、意識的に映画ファンとプレゼントしてくれたのです。
まとめ
日本に初来日したデイミアン・チャゼル監督は、ライアン・ゴスリング(13年ぶりの来日)とは、息の合ったツー・ショット記者会見の様子でした。
この作品が『雨に唄えば』や『オズの魔法使い』と同じレコーディング・スタジオで録音が行われたことを、ライアンの教えてくれたリト、トークを先走って話す監督のお茶目な一面に会話の花咲かせていました。
最後になりますが、デイミアン監督が愛してやまない「ミュージカル映画」そして「ジャズ」。どちらも現在では、”下火になってしまったジャンル”です。
だからこそ、この作品は輝かしき頃の「ミュージカル映画へ哀愁ではなく、演劇でもない」とあえて語り、スタッフチーム一丸となって、「みんなが分かるような作品にした。バランスを話し合った」と、愛を持って自作を語っていました。
デイミアン・チャゼル監督の最新作『ラ・ラ・ランド』は、いよいよ2017年2月24日全国ロードショー。
米国アカデミー賞発表前と盛り上がりも最高潮!ぜひ、デイミアン監督が話していたように、映画館で観て、誰かと一緒に会話をシェアしてほしい作品です!
ぜひ、お見逃しなく!