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Entry 2023/07/24
Update

『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』あらすじ感想と評価解説。名作オペラをパンデミック下の現代に蘇らせたミュージカル

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』は2023年10月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開

オペラ最高傑作として長らく愛され続けている「ラ・ボエーム」を、<1830年代のパリ>から<現代のニューヨーク>に置き換えたミュージカル映画『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』が2023年10月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショーとなります。

レイン・レトマー監督がメインキャラクターにアジア人を据えるなど大胆にアレンジし、まったく新しい作品として生み出しました。

さまざまな生きづらさを抱えながらも青春を謳歌しようとする若き芸術家たちや恋人たちの姿を、現役のオペラシンガーたちの圧倒的な歌唱と独創的な映像美で情感豊かに魅せます。

ヒロインのミミをビジョー・チャン、ロドルフォをシャン・ズウェンが演じます。

夢にあふれ、熱い恋を生きる若者たちが直面する厳しい現実と、その苦しみにさえも宿る美しい魂に胸打たれる名作です。

映画『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』の作品情報


(C)2022 More Than Musical.All Rights Reserved.

【日本公開】
2023年(香港、アメリカ合作映画)

【作曲】
ジャコモ・プッチーニ

【監督・脚本】
レイン・レトマー

【出演】
シャン・ズウェン、ビジョー・チャン、ルイス・アレハンドロ・オロスコ、ラリサ・マルティネス、井上秀則、アンソニー・ロス・コスタンツォ、イ・ヤン

【作品概要】
ブロードウェイミュージカル『RENT』(2006)の原作となったことでも広く知られる、オペラ最高傑作として知られるプッチーニ作曲の「ラ・ボエーム」を、<1830年代のパリ>から<現代のニューヨーク>に置き換えたミュージカル映画。監督・脚本はレイン・レトマー。

メインキャラクターにアジア人を据えるなど大胆にアレンジし、まったく新しい作品として生まれ変わりました。オペラの名曲の数々を、現役のオペラシンガーたちが見事に歌い上げます。

格差、貧困、マイノリティ、さまざまな生きづらさを抱えながらも夢と情熱で青春の日々を謳歌しようとする若き芸術家たちや恋人たちの姿を、圧倒的な歌唱と独創的な映像美で情感豊かに魅せます。

ヒロインのミミをビジョー・チャン、ロドルフォをシャン・ズウェンが演じるほか、ルイス・アレハンドロ・オロスコ、ラリサ・マルティネス、井上秀則らが出演。

映画『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』のあらすじ


(C)2022 More Than Musical.All Rights Reserved. 

パンデミックで閑散とした真冬のニューヨークで暮らす画家のマルチェッロ、詩人のロドルフォら4人のアーティストたち。

屋根裏部屋で凍るような寒さに耐えながら、己の芸術の道を求めその日暮らしをしていました。

大みそか。友人たちが食事に外出するなか、仕事のためにひとり部屋に残っていたロドルフォのもとに、隣人のミミが火を借りに訪れます。ロドルフォとミミは、瞬く間に恋に落ちました。

一方、マルチェッロは新年パーティで元恋人のムゼッタと偶然に再会します。派手で浮気性なムゼッタはマルチェロの気をひこうと誘惑。

マルチェロは彼女の魅力に抗えず、恋心を再燃させ…。

映画『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』の感想と評価


(C)2022 More Than Musical.All Rights Reserved. 

ジャコモ・プッチーニ作曲の人気名作オペラ『ラ・ボエーム』は、1830年代のパリを舞台に描かれた悲恋物語です。主人公のお針子のミミと詩人のロドルフォを中心に、芸術家を志すボヘミアンたちの群像劇が繰り広げられます。

本作はミュージカルの枠を超え、本格オペラを現代のパンデミック下にある極寒のニューヨークに蘇らせたラブストーリーです。オペラの楽曲を見事に芝居に溶け込ませた演出に唸らされます

主人公のミミとロドルフォがアジア人に設定され、より身近でリアルなドラマに生まれ変わりました。

オペラに忠実な内容となっており、キャストがオペラと同じように歌いながら物語は進行していきます。オペラ初心者でも楽しめる一作です。ドラマチックなオーケストラではなく、ピアノだけで奏でられるシンプルな音色の伴奏が、語り掛けるかのようにドラマをやさしく導きます

寒い寒いニューヨーク。人々の口から吐き出される濃く白い息が、厳しい寒さを物語ります。燃やす薪もない貧しさに苦労しながらも、芸術の道に邁進する若者たち。苦しい生活の中でも彼らはいつも笑いを忘れず、助け合って暮らしていました。

ヒロインのミミと初めて出会った詩人のロドルフォが、「貧乏だけど幸せなんだ 愛を賛美する言葉があふれ出て」と自分の仕事を紹介する言葉からは、幸せを生み出せるのは自分の心だけという真実がひしひしと伝わってきます

ロドルフォが語る温かで真実の愛の言葉に、満ち足りた表情で聞き入るミミ。ここでミミが歌う有名なアリア「私の名はミミ」は大きなみどころのひとつです。恋に落ちた瞬間の恋人たちの姿は、初々しい美しさに輝いています。

熱い恋に芸術と幸せを見出していた若者たちが、やがて厳しい運命に翻弄されていくさまに胸が締め付けられることでしょう。

舞台芸術であるオペラと違い、映画の利点は酒場のシーンなら酒場で、屋外のシーンは凍てつくような寒い街で撮影できることにあります。

彼らの苦しい生活をリアルな映像で見ることで、なぜミミが残酷な人生に翻弄されることになったのかが、手に取るように伝わってくることでしょう。

オペラ音楽の素晴らしさと、映画ならではの光る演出が融合した名作を、どうぞたっぷりと堪能してください

まとめ


(C)2022 More Than Musical.All Rights Reserved. 

芸術家を目指す若者たちの夢と恋を熱く描く『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』

雪の降りしきる極寒のニューヨークを舞台に、切ない恋模様が素晴らしい名曲とともに映し出されます。オペラファンもオペラ初心者も一緒に楽しめる珠玉の一作です。

ミミとロドルフォの悲恋、派手な姿の裏に真心を隠し持つムゼッタとマルチェッロとの恋、彼らを見守る友人たち。貧しいボヘミアンたちの固い絆に胸打たれます。

ミュージカル映画『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』は、2023年10月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショーです。



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