Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

『星と月は天の穴』映画原作ネタバレ結末と感想評価。大人の恋愛小説として描かれた”中年男と女子大生”の細やかな恋愛感情を切なくも滑稽に描く

  • Writer :
  • 星野しげみ

小説『星と月は天の穴』が映画化決定!

作家・吉行淳之介の芸術選奨文部大臣受賞作品『星と月は天の穴』。

過去の離婚経験から女を愛することを恐れる主人公ですが、その反面愛されたい願望を募らせ、女性を見ればその身体を想像してみるという悪癖を持っています。

そんな、40代の小説家の日常が、エロティシズムと哀愁に満ちた文章で描かれます。

ヴァイブレータ』(2003)『共喰い』(2013)などの脚本や、『火口のふたり』(2019)などの監督作で知られる荒井晴彦が、『花腐し』(2023)でタッグを組んだ綾野剛を再び主演に迎え、映画化に。

映画『星と月は天の穴』は、2025年12月19日からテアトル新宿ほかで公開されます

映画公開に先駆けて、小説『星と月は天の穴』をネタバレありでご紹介します。

小説『星と月は天の穴』の主な登場人物

【矢添克二】
結婚に失敗した40歳の作家。

【瀬川紀子】
女子大生。

【千枝子】
矢添のなじみの娼婦。

小説『星と月は天の穴』のあらすじとネタバレ


吉行淳之介『星と月は天の穴』(講談社文芸文庫)

結婚生活に失敗し、独り暮らしをしている小説家の矢添。アパートの一室を借り、書斎兼寝室に使っている部屋で、矢添は机に向かって小説を書いています。

主人公は40歳の男・A。副主人公はB子という女子大生です。あるパーティでAはB子と初めて出会います。

Aは女性と出会うとまずその身体の線を眺めて、その女性と寝ることを考えるような男です。

B子にもそんな気持ちが湧くのですが、そこへCという人物が現れ、一緒にタクシーで帰ることになりました。

このあたりまで書いて、矢添はAのB子の少女風のはじらいと清潔感を大切にしたいと思う気持ちをそのまま持たせなければならないと、考えを巡らせます。

ですが、矢添はそこでペンを置き、休憩することにします。ふらりと外出をして友人と話しをする矢添。こんなふうに矢添は毎日気ままに過ごしています。

時々は、心に空いた穴を埋めるように 娼婦がいる店にいき、馴染みの娼婦・千枝子と時折り体を交えています。

彼には恋愛に尻込みするもう一つの理由がありました。それは、誰にも知られたくない自身の“秘密”にコンプレックスを抱えていたからです。

ある日、矢添は画廊で偶然出会った大学生の瀬川紀子と親しくなりました。

タクシーで瀬川を送っている途中、なぜか瀬川は粗相をしてしまいます。それがきっかけで、矢添は彼女をホテルに連れて行くことになり、奇妙な情事へと発展。

そんな矢添は、自身が執筆する恋愛小説の主人公に自分自身を投影することで「精神的な愛の可能性」を自問するように探求するのが日課でした。

矢添が現在執筆中の小説の主人公Aは自分と同じような年恰好で、お相手のB子は瀬川と同じようなタイプです。

矢添は自身の体験を小説にするように、B子にのめり込んでいきます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『星と月は天の穴』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『星と月は天の穴』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

そんなある日、久しぶりの訪れた娼婦の店で千枝子と情事をした時に、千枝子から「あなたは入歯でしょう」と言われビックリ仰天!

これこそ、矢添の秘密であり、コンプレックスだったからです。分からないようにしていたのに、バレていたとは……。矢添は少なからずショックを受けました。

矢添の執筆中の小説では、AとB子のなかは瀬川と自分のように、とりとめない会話をしながらも愛が芽生えているような感じになってきました。

ですが、現実世界では、千枝子に弱点を指摘され、瀬川にもわかっているのではないかと矢添は不安になりました。

瀬川に会うたびに、矢添は自分の部屋ではなく、ホテルに行きます。瀬川との関係はこれでいいのかと、矢添は頭の中で小説の中のAに相談します。

AはB子に会って、自分自身を恋愛状態に置きました。瀬川に会った矢添は、自分たちを牡犬と牝犬との関係に置こうとしています。

矢添はことさら瀬川を手荒く扱っていました。それは、女性との間の濃密な人間関係への憎悪と恐怖のためだったのです。

ある日、旅行に行った瀬川が帰って来て、「会いたい」と言ってきました。矢添が久しぶりに会うと、「あたしはあなたの何?」と聞かれました。

「牝犬だ」と答えると、瀬川は「犬でもお妾でもなんでもいいから、自分の部屋が欲しい」と言います。

答えをはぐらかす瀬川に、「はい、お土産」と言って、固い岩石飴を矢添の口に入れました。矢添は、自分の入歯のことを瀬川は知っているのだと思いました。

それでも自分に寄って来る瀬川。おもいっきり情事を楽しんだあと、車で彼女を送っている途中で、事故にあいました。

軽い怪我をした矢添は、瀬川に付き添われて病院へいきました。頭を打ったので、念のためにと、頭蓋のレントゲンをとったとき、入歯であることがはっきりと証明されました。

「今まで、まるで反対のことを考えていたわ。ああいう髑髏を持っている矢添さんに、おもいきり虐めてもらいたいと考えていたのよ」

「そう言う君を許してくれる若い男も、きっと見つかるはずだ」

矢添は、身体のそこからはげしい欲情が付きあがってくるのを感じながら、瀬川と向かい合っていました。

小説『星と月は天の穴』の感想と評価

本作は、中年男性と女子大生の色恋模様を、男性目線で描いた作品です。

主人公の矢添という男は、結婚に失敗して恋愛には臆病なのに、女性を追っ手しまう、しまりのない男性です。

なじみの娼婦がいるのに、ある画廊で女子大学生と知り合って、深い中に陥ります。しかもそのきっかけが、女性の粗相ときています。

果たしてこの作品が「恋愛小説」かどうか、疑問の残るところだと、著者自らが述べていました。けれども、この小説が昭和42年の芸術選奨文部大臣受賞しましたから、著者もビックリしたそうです。

相手に対しての愛情表現もないのに、会うたびにホテルでむつみ合う矢添と瀬川。胸がときめく恋愛物語とは、確かに言えず、単なる大人の情事と思える内容です。

情事に明け暮れる日々を過ごす矢添の心理描写が、矢添の部屋から見える小さな公園の景色、そこで揺れるブランコなどのささやかな風景に描き出されています。

そして、矢添の執筆中の小説の男女の行動もまた、矢添の代理人のようにその胸中を表していました。

男女の恋愛ドラマよりも、ひたすら自分の欲望と向き合って、正直に生きる中年男の哀愁の方が強く感じられる作品でした。

映画『星と月は天の穴』の見どころ


(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会

中年男性と女子大生の一組の男女の次第に深まる愛の形を、冷徹な視線で書き上げた原作小説を、『火口のふたり』(2019)などの荒井晴彦監督が映画化しました。

主演の矢添には、荒井晴彦監督と『花腐し』(2023)でもタッグを組んだ綾野剛。過去のトラウマから、女を愛することを恐れながらも求めてしまう、心と体の矛盾に揺れる滑稽で切ないキャラクターを演じます。

矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じる田中麗奈や、女子大生の瀬川紀子を演じる咲耶。矢添を取り巻く実力派の女性陣の演技にも注目。

本作は、愛すること、愛されることを恐れながらも求めてしまう、矢添の“愛をこじらせた”切なくも可笑しい日常が映し出される一風変わった恋愛映画となるでしょう。

ただただ、エロティックな映画だけに終わらない、荒井晴彦監督の手腕に期待が高まります

映画『星と月は天の穴』の作品情報


(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会

【日本公開】
2025年(日本映画)

【原作】
吉行淳之介『星と月は天の穴』(ブックマン社刊)

【監督・脚本】
荒井晴彦

【エグゼクティブプロデューサー】
小西啓介

【キャスト】
綾野剛、咲耶、岬あかり、吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈

まとめ

小説『星と月は天の穴』をネタバレ有りでご紹介しました。

親子ほど歳の違う女子大生と関係を持ち、結婚をほのめかす彼女におろおろする主人公に可笑しさも感じるラブストーリー。

男と女の腐れ縁のような関係が、著者の澄み切ったきれのよい文章で描かれ、男女の嫌みのない正直な気持ちがストレートに伝わってくる作品でした。

小説『星と月は天の穴』は映画化され、2025年12月19日からテアトル新宿ほかで公開されます

主人公の矢添を演じる綾野剛の中年オヤジぶりが見ものです。




Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/demachi2026/cinemarche.net/public_html/wp-content/themes/stinger8-child/single.php on line 150

関連記事

ラブストーリー映画

映画『ロングショット僕と彼女のありえない恋』ネタバレ感想とレビュー評価。デキる女とダメ男のシンデレラストーリー

格差カップルが繰り広げる、少々カゲキなラブストーリー 才色兼備の国務長官と世にでることのないジャーナリストとの恋愛模様をシニカルに描いた、シャーリーズ・セロンとセス・ローゲンの映画『ロングショット 僕 …

ラブストーリー映画

映画『火口のふたり』感想とラスト結末の考察。崩壊した時代に性とともに蘇る亡霊

映画『火口のふたり』は2019年8月23日(金)より新宿武蔵野館を皮切りに全国順次公開 直木賞作家・白石一文が2012年に発表した同名小説を基に、男女の性と生を貪欲に突き詰めてきた名脚本家にして映画監 …

ラブストーリー映画

映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

邦画恋愛ファン必見の映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 七月隆文の同名小説を、『ストロボ・エッジ』の福士蒼汰と『バクマン。』の小松菜奈共演した映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』。 (C …

ラブストーリー映画

映画『勝手にふるえてろ』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

中学生の頃から思いを寄せている“イチ”と告白された同僚の“二”。 好きな人と好きになってくれた人の間で揺れる、不器用で精神不安定気味な女の子の恋の物語。 主人公良香の妄想力が炸裂している愉快な作品をご …

ラブストーリー映画

実写映画『覆面系ノイズ』あらすじとキャスト!中条あやみ演技評価も

福山リョウコ原作の累計100万部突破の人気気No.1恋愛コミックを実写映画化! 『覆面系ノイズ』は主演のニノ役を中条あやみが演じ、三木康一郎監督の演出で制作され、11月25日(土)より、全国公開がロー …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学