恋人と家族どっちが大切⁉︎恋人は超リッチ!
全米で大ヒット中のオール・アジアンキャストムービー『クレイジー・リッチ』をご紹介します。
映画『クレイジー・リッチ!』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
Crazy Rich Asians
【監督】
ジョン・M・チュウ
【キャスト】
コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディング、ジェンマ・チャン、リサ・ルー、オークワフィナ、ハリー・シャム・Jr.、ケン・チョン、ミシェル・ヨー、ソノヤ・ミズノ
【作品概要】
ケビン・クワンが自らの経験を基にして書き上げた小説の映画化作品。ケビン・クワン自身が製作総指揮を務めている。
シンガポールの超リッチな人々の恋愛模様をダイナミックに描くラブコメディ。
オール・アジアンキャストで制作された本作は、全米で大ヒットを記録。監督を務めたのは『G.I.ジョー バック2 リベンジ』(2013)、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』(2016)のジョン・M・チュウ。
映画『クレイジー・リッチ!』のあらすじとネタバレ
1995年、ロンドン。
雨の中、ある高級ホテルにアジア系の親子が到着します。女性は「エレノア・ヤン」と名乗って、スイートを予約していると言いますが、ホテル側は「予約ははいっておりません。満席です」と彼女を拒否します。
あげくに「チャイナタウンでも散策されては?」と付け加えるありさまです。
「電話くらいお借りしても?」と女性は尋ねますが、その電話すら外の公衆電話に行かされる羽目に。やがて、ホテルのエレベーターのドアが空いて、カルソープ卿があわてて飛び出してきました。
「今、ご主人と話したよ。私は代々所持した事業を手放す。このホテルの経営権はシンガポールのヤン家が買ったので、今日からオーナーは彼女だ」
唖然とする従業員を前に、ヤン家の親子はエレベーターに乗り込むのでした。
2018年 ニューヨーク。
ニューヨーク大の経済学の教授であるレイチェル・チュウは、恋人ニック・ヤンから、親友の結婚式に出席するため、故郷のシンガポールに帰るのだが、一緒に来ないかと誘われます。
この際、親にも紹介しておきたいからと言う彼の言葉にうなずくレイチェル。そんな二人の姿を「ラジオ女」と呼ばれるゴシップ好きの女がSNSで拡散。
二人が結婚するのではという噂がまたたく間に拡散されます。それはシンガポールのニックの母親にも伝わってしまいます。
飛行機に搭乗すると、専任バトラーが待機する超豪華なVIP席に案内され、レイチェルは初めてニックが大変なお金持ちであることを知るのでした。
初めてのアジア旅行に胸をときめかせながらも、ニックの家族に会うことに緊張するレイチェル。シンガポールに着くと、ニックの親友のコリン・クーとフィアンセのアラミンタ・リーが迎えてくれました。
四人は屋台で飲んだり食べたりして、楽しい一時を過ごしました。
ホテルで一泊した翌日、レイチェルは付添人の打ち合わせがあるというニックと分かれ、大学時代の友人、ペク・リン・ゴーの自宅を訪ねました。
彼女も裕福な家の娘ですが、ペクは独特のファッションセンスと、冴えたトークをする個性的な女性です。
ペクはレイチェルがレイチェルの母親のアドバイスで選んで持ってきたドレスにダメ出しし、自分のクローゼットからドレスを選んでくれました。
ペクの運転する車でニックの家に行くと、そこは迷子になるような広大な土地に建つ、豪勢なお屋敷でした。
ニックはアジア屈指の不動産王の御曹司だったのです。ニックの家族との初めての対面は驚くことばかりでした。
結婚前のバチェラーパーティーの会場はなんと海上に浮かぶタンカーの甲板。水着姿の大勢の女性が集まり、派手な音楽が鳴り響いていました。
パーティーの主役のはずのコリン・クーは、「親友とビールを飲んでサッカーできればよかったんだけど」と苦笑い。すきをみて、ニックとともに会場をヘリコプターで脱出します。
筏でくつろいでいた二人でしたが、コリンはニックに「君は将来は家に戻る身だ」と語りかけます。ニックとレイチェルのことを心配しているのでした。
「レイチェルはニューヨークを愛している。立派な仕事も持っている。ニコラス・ヤン夫人になれば毎日が闘いになるんだぞ」
その頃、レイチェルはアラミンタ・リーによる「バチェロレッテ・パーティー」に招待されていました。
しかし、そこで、彼女は嫉妬する女性陣から、様々な嫌がらせを受けるはめに。
レイチェルは「富豪の財産を狙う悪役扱い」されたことに腹をたてます。
ニックになぜ家のことを今まで話してくれなかったのかと怒って尋ねると、ニックは「君はぼくの家族のことを聞こうとしなかった。そこが他の人と違うところなんだ。君といる僕が好きだ。自分勝手だったよ。これからは二人で闘う」と応えるのでした。
彼は彼女にぞっこんなのです。
しかし、いくら二人が相思相愛であろうと、ニックの母親も、祖母もレイチェルを息子の嫁にすることを認めようとはしません。
ニックの母親自身、第一候補でも第二候補でもなかったことから、代々伝わる結婚指輪も継承されず、随分と苦労したことを打ち明け、「あなたには無理よ。あなたはアジアの習慣をわかっていない。あなたはアメリカ人よ」と厳しい言葉を投げかけるのでした。
すっかり落ち込んだレイチェルは、ペクに「式も出たくない」と愚痴りますが、ペグは「ビビってるだけじゃん。あなたはゲーム理論の教授なんだから、そこを見せなくちゃ」と叱咤し、レイチェルをセレブ化させるため、最高のドレスとスタイリストを用意するのでした。
コリンとアラミンタの結婚式当日、見違えるほど、美しく着飾ったレイチェルに、人々は驚きます。しかし、案の定、エレノアから同じ列に座ることを拒否されてしまいます。しかし、負けじと、前の席を陣取るレイチェル。
遠巻きにその様子を見ながら、ニックはレイチェルを頼もしく思い、微笑みました。
結婚式は総費用4000万ドルも書けた豪華なもので、花嫁のアラミンタは大変美しく、新郎新婦はとても幸せそうでした。
結婚式も無事に終わりましたが、レイチェルには大変ショックなことが起きてしまいます。エレノアがレイチェルの身辺調査をしたのです。
映画『クレイジー・リッチ!』の感想と評価
1993年に制作された『ジョイ・ラック・クラブ』以来25年ぶりのオール・アジアンキャストで制作された本作は、全米で大ヒットを記録。
アジアンキャストの映画が今のアメリカで受け入れられるというのが画期的ですが、何が人々をそれほどひきつけたのでしょうか!?
まず驚かされるのは、登場人物がヒロインを除いて皆、超絶お金持ちという設定。まさに現代のチャイニーズマネーの威力を象徴しているともいえますが、何よりスケールの大きさが魅力です。
飛行機のゴージャスなファーストクラスから始まって、ヴェルサイユ宮殿と“トランプ大統領のトイレ”を模した友人のお屋敷。車で迷ってしまうくらいの恋人の大豪邸(俯瞰で見せてくれます)。
バチュラーパーティーに参加する男たちがワーグナーの「ワルキューレの騎行」をBGMに、ヘリコプターで行き着いたのは海上に浮かぶ巨大タンカー。美術品とも言えるイヤリングの購入、4000万ドルかけて教会を飾り立てた結婚式等々…。
嫌味でないあっけらかんとした豪華絢爛ぶりが爽快です。
また、シンデレラストーリー的物語は、ハリウッドのラブコメの伝統を受け継いだ“王道”なもの。身分違いの恋という点でビリー・ワイルダー監督の『麗しのサブリナ』などの古典的名作を思わせます。
主役二人の恋の行方と同時に、脇のカップル(今回はニックの従姉妹夫婦)の恋愛模様が並行するのも往年のMGMミュージカルなどによく見られたパターンです。
そうした懐かしのハリウッドの香りが、エキゾチックな現代のアジアの世界で蘇っている面白さが魅力の一つとなっているといえるでしょう。
さらには家長制度的な古いしきたりと新しい価値観の衝突という、普遍的な問題がテーマになっているのも、多くの人々に関心をもたれたのではないでしょうか。
やりたいことを封印して、家族のために生きてきたニックの母親と、専門職につき自立しているレイチェルとの衝突が、女性が如何に生きるかというテーマを内包しているのです。
そして何より、この作品を魅力的にしているのは、ヒロインのレイチェル・チュウを演じたコンスタンス・ウーの存在でしょう。
一見、映画の中の台詞にもあるように「決して特別な美人というわけではない」し、派手さもなく、どちらかというと平凡なキャラクターに見える彼女なのですが、物語が進むにつれ、金持ちでイケメンの文句のつけようのない御曹司が、彼女に惚れるのも納得だという気持ちにさせられていくのです。
人格や家族や生まれさえも全否定されて深く傷つく彼女が、何度も何度も立ち直り、明るく微笑む朗らかさが、作品の全体のトーンとなっていて、温かい気持ちを呼び起こします。
そして『オーシャンズ8』でも大活躍だったオークワフィナ扮する親友のペク・リン・ゴーを始め、脇を固める個性的なキャラクターたちがまたいいのです。
ニックの母親だって、自分自身が、家柄が足りず長年苦労してきた経験から、レイチェルには無理だと言っているわけで、ただの悪人として描いていないところが共感できます。この母親役を演じるミシェル・ヨーの貫禄はさすがといわざるをえません。
また、本作には「移民」という視点があるのも忘れてはいけません。「移民」としての誇りをレイチェルが口にする姿に、全米の多くの移民(中華系に限らず)の方々が共感したことは想像に固くありません。
まとめ
本作品のヒットがきっかけで、早速様々な動きが起こっています。
オークワフィナとミシェル・ヨーが再び共演するかもしれないというニュースが駆け巡ったり、今作でブレイクしたニック役のヘンリー・ゴールディングがポール・フェイグ監督作品に出演決定など、出演者の次回作が話題になっています。
アメリカのテレビ放送局ABCが、中国系アメリカ人女性を主人公にしたドラマを計画中という話もあるようです。さらに映画の続編も予定されていて、『クレイジー・リッチ!』フィーバーはまだまだ続きそうです!
ところで、本作のエンドロールが非常にポップな作りとなっていて、是非そこにも注目してみてください。
作品のモチーフ(シンクロナイズド・スイミングやシーライオン、麻雀牌など)をデザイン化した可愛いアニメーションが流れます。
また、オークワフィナの歌声も聞けますので、最後まで席を立たないことをオススメします。