本当の愛を知った青年の成長記
『トップガン』(2022)シリーズで知られる大人気スターのトム・クルーズが主演を務める青春映画です。
野心ある主人公が喪失や再生を経験して本当の愛にめぐりあうまでを、『追いつめられて』(1987)のロジャー・ドナルドソン監督が描き出します。
大金を手に入れることを夢見ていた主人公・ブライアンが、ひとりの女性との真実の愛に出会ったことから人生の本当の幸せを知るようになります。
愛と死に苦悩しながら成長していくブライアンを演じるトム・クルーズに魅了される作品です。演技派のブライアン・ブラウン、エリザベス・シューらが共演します。
映画『カクテル』の作品情報
【公開】
1989年(アメリカ映画)
【原作】
ヘイウッド・グールド
【監督】
ロジャー・ドナルドソン
【編集】
ニール・トラビス
【出演】
トム・クルーズ、ブライアン・ブラウン、エリザベス・シュー、リサ・べインズ
【作品概要】
ヘイウッド・グールドの同名小説を、『追いつめられて』(1987)のロジャー・ドナルドソン監督が映画化。
『トップガン』(2022)シリーズで人気のトム・クルーズ演じる主人公・ブライアンが、一攫千金を夢見てバーテンダーとなり喪失や再生を経験して本当の愛にめぐりあうまでを描きます。
『普通の女』(1987)、『光をくれた人』(2016)のブライアン・ブラウン、『愛が微笑む時』(1994)、『リービング・ラスベガス』(1995)、のエリザベス・シューら実力派が共演。
映画『カクテル』のあらすじとネタバレ
兵役から戻ったブライアンは、大金を稼ぐことを夢見てニューヨークにやって来ました。
しかし、学歴と経験のない彼にとって都会での就職は簡単ではありませんでした。ブライアンはビジネススクールに通いながら、バーテンダーのアルバイトを始めますが、教授に嫌われて悪い成績をつけられてしまいます。
その一方で、ベテランバーテンダーのダグとの派手なパフォーマンスが人気となった彼は、ダグに一緒に店をもとうと持ちかけました。
しかし、ブライアンはその後自分の彼女に手を出したダグと仲違いし、店をやめてしまいます。
映画『カクテル』の感想と評価
愛と喪失から得たものとは
スター俳優のトム・クルーズが悩み深い青春期の青年の苦悩と喜びを演じる映画『カクテル』。子どものようにわがままで自分本位だった野心家の青年が、愛する女性と出会ったことで成長し幸せをつかむまでを綴ります。
カクテルをシェイクするカッコいい姿に加えて、喜び、苦しみにくるくる変わるトム・クルーズの豊かな表情も大きなみどころです。
また、本作ではもう一つ、男同士の友情という胸に迫るテーマも丁寧に描かれます。
主人公のブライアンは一攫千金を狙う野心家の青年で、ニューヨークでバーテンダーのバイトをしながらビジネスについて学んでいました。
バイト先にいたのはベテランバーテンダーのダグです。ダグはやんちゃなまま年を重ねた年かさの男性で、自分と同じやんちゃさを持つ年下のブライアンをとてもかわがります。
揃って派手で楽しいパフォーマンスをして客を沸かせ、ハイタッチで喜び合うふたりはまさに青春真っただ中にいました。しかし、青春には甘さと苦さがつきものです。ダグがブライアンの彼女に手を出したことでふたりはケンカ別れしてしまいます。
ジャマイカでバーテンダーとなったブライアンは、運命の女性・ジョーダンと出会いました。そんな彼の前に、逆玉婚で金持ちになったダグが現れます。
すると今度は、金持ちの年上女性をブライアンが口説けるかどうか賭けを始めます。ダグもブライアンもまったく成長していませんでした。目の前に面白そうなおもちゃがあれば手を出さずにはいられない幼児と何も変わりません。
恋人のジョーダン、遊び半分で心を奪われたボニーがどれほど傷つくかなんてほんの少し想像すればすぐにわかることですが、彼らは相手に心があることには思いをはせずに、面白い遊びをすることだけに夢中になります。
それが何より自身を傷つける行為であることに気づくまで、彼らには長い時間が必要でした。
ブライアンはジョーダンの妊娠をきっかけに、自分の心がジョーダンへの愛に満たされていることに気づくことができました。
しかし一方のダグは、重すぎる代償を払うことになります。彼は妻が自分だけを愛しているわけではないことに気づいていました。周囲の人々の気持ちを振り回してきた彼は、愛を弄ばれる苦しみを初めて知ったことでしょう。
金を手放してまでほかに愛を求める人生を選ぶ勇気はなかった彼は、事業に失敗して拠り所だった金からも見放されます。追い詰められたダグは、そのまま命を絶つしかありませんでした。
ダグが本当に愛していたのは、気の合うブライアンと笑い合って過ごす時間でした。しかし、人は成長しなければなりません。いつまでも同じ場所で同じ過ちを繰り返すことは許されないのです。
彼らが現実をみつめ、周囲の人たちへの当たり前の優しさを持てる大人に成長していたなら、避けられた悲劇だったかもしれず本当に残念です。
ダグの悲劇から多くを学んだブライアンは、麻薬のように人を狂わせる金への執着を振り捨て、資産家の実家と縁を切ったジョーダンと結ばれます。
ブライアンが真実を見誤ることはもうないでしょう。ブライアンとジョーダンとかわいい双子たちの幸せな未来を予感させて、爽やかに作品は幕を閉じます。
まとめ
青春の光と影を映し出すトム・クルーズの魅力満載のヒューマンラブストーリー『カクテル』。
誰もが青春期に経験する迷いの中での苦悩と喜びが、甘く苦くリアルに描かれます。
迷いながらも正しい道に戻れる者、脱落して戻って来られない者、まったく違う新たな道を見出して歩み続ける者。さまざまな人間が存在する奇跡と残酷さを見せつけられる一作です。
少し古い作品なので、本作を観るとご自身の青春時代を思い出すという方もきっといらっしゃることでしょう。
いろいろな思いを抱きしめながら、ぜひゆっくりご覧になってください。