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Entry 2021/07/01
Update

映画『キンキーブーツ』ネタバレ感想と結末あらすじの解説。ドラァグクイーンと優柔不断な若社長が出会うハートフルコメディ

  • Writer :
  • くろみずし

優柔不断な若社長×ド派手なドラァグクイーンのハートフルコメディ『キンキーブーツ』。

イギリスの田舎町の小さい靴工場の実話を基にジェフ・ディーンとティム・ファースが共同脚本。

『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』や『ジェイン・オースティン 秘められた恋』など、イギリスカラーの強い作品を生み出したジュリアン・ジャロルドが監督を務めています。

ブロードウェイでミュージカル化され、2013年トニー賞で13部門ノミネートの年間最多記録となりました。そして日本でも日本人キャストで公演、更に2021年にはブロードウェイ・ミュージカルを映画の劇場画面で公開されました。

2005年にアメリカとイギリス合作で制作され、ジュリアン・シャロルド監督の長編劇場デビュー作品『キンキーブーツ』をご紹介します。

映画『キンキーブーツ』の作品情報


(C) Buena Vista International.

【公開】
2005年(アメリカ・イギリス合作映画)

【原作】
Kinky Boots

【監督】
ジュリアン・シャロルド

【キャスト】
ジョエル・エドガートン、キウェテル・イジョフォー、サラ=ジェーン・ボッツ、ジェミマ・ルーパー、リンダ・バセット、ニック・フロスト、ユアン・フーパー、ロバート・ピュー

【作品概要】
『ジェイン・オースティン 秘められた恋』(2007)『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』(2015)やジュリアン・ジャロルドの初長編映画デビューとなった作品。イギリスで100年以上の歴史をもつ靴工場「ブルックス社」がモデルとなっています。

この工場では実際にドラァグクイーン用の商品を開発し経営を改善させ、そのストーリーを基にジェフ・ディーンとティム・ファースが共同で脚本しました。

笑いあり、涙ありのハートフルコメディとなりイギリスから世界へと発信。映画に留まることなくブロードウェイでミュージカル化も果たし現在も人気の作品です。

映画『キンキーブーツ』のあらすじとネタバレ


(C) Buena Vista International.

舞台はイギリスの田舎町ノーサンプトンにある小さな靴工場プライス社。そこでは伝統的な紳士靴を作ってきていました。

三代続く家業でしたが、三代目の息子チャーリーは父のプライス社を継いで欲しいという願いに反し、婚約者のニコラの転勤を機に共にロンドンに引越し、マーケティングの仕事を始めようとしていました。

ロンドンに引っ越した矢先、父の訃報が届きます。突然チャーリーはプライス社の社長になることに、更に最悪なことに工場の経営が倒産寸前の危機であることが発覚します。

唯一の取引先も無くなっており、靴は在庫の山だったのです。優柔不断で頼りないチャーリーがこの経営危機からプライス社を救うことはできるのか?

継いで直ぐに発覚した経営危機に愕然としたチャーリーはロンドンのパブでやけ酒をしていました。

店を出てお金を恵んで欲しいと頼むホームレスにプライス社の靴を渡しましたが、サイズが違うと言われてしまいます。その時、不良に絡まれていた女性を見かけ、チャーリーは助けに行きました。

しかし、その女性は自分が履いていたブーツを武器に不良と戦おうとしていたのです。運の悪いことにそのブーツがチャーリーに当ってしまい、気絶。

チャーリーが目を覚ますとそこが、ドラァグクイーンの控室。とても体の大きい女装したローラが居たのです。

ローラはヒールが何度も壊れてしまうことに「人生の重みに耐えられないのよ」と呟きました。その呟きから後にチャーリーはアイディアを見出すことになります。

ロンドンからノースサウサンプトンに戻ったチャーリーは、15人のリストラを始めました。気弱で優柔不断な性格からリストラも上手く伝えられず、「What can I do?(どうしたらいい?)」と寧ろ従業員に訪ねてしまうほど頼りないチャーリー。

リストラを伝えていくなかで女性従業員のローレンから、「どうしよう、と嘆いてばかりでなく、新しいことを考えるべきよ」と助言されます。そこで、チャーリーはロンドンで出会ったドラァグウイーンのローラを思い出しました。

女性用のヒールを男性が履いたら壊れてしまう。そこにニッチな市場がある、工場の立て直しに希望を見出したチャーリー。

設立から代々紳士靴を作ってきていたプライス社が、ドラァグクイーンのブーツを作るのは簡単なことではありませんでした。

チャーリーとローレンはロンドンで出会ったローラに助言をもらおうと再会しました。そして、ローラの足を寸法させてもらい、ミラノの展示会を目標にブーツ作りが始まりました。

昔ながらの工場で女装した男性は目立ってしまうことを懸念したチャーリーは、ローラに出来上がり次第ブーツを届けることを約束しました。

しかし、ローラはノースサウサンプトンまで取りに来てしまったのです。案の定工場内では目立ち、工場内のボス的存在のドンから受け入れられず、棘のある言葉を投げかけられてしまうローラ。

取りに来た試作品のブーツにローラは「こんなもの私が求めているものではない、私はRedがいいの!Red!Red!」と激怒。

従業員の女性にも試作品のブーツを履きたいか聞くローラ、そして全員が履くことを望まなかったのです。

そこでドンは「ローラなら似合う」と心無い言葉を投げかけます。「女性が履きたくないものはオレだって履きたくないのよ」と威圧的に対抗。

ローラと従業員の関係性は縮まらないなかで、ブーツの作成は続いていきます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『キンキーブーツ』ネタバレ・結末の記載がございます。『キンキーブーツ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C) Buena Vista International.

なかなかローラが工場で受け入れられないなか、チャーリーは婚約者ニコラとの関係も悪くなっていました。

ある日ニコラは赤い素敵な靴を見て、この靴を結婚式で履きたい。とチャーリーにお願いします。しかし、経営悪化のなか派手な結婚式はできないことを伝えましたが、ニコラはそれを受け入れることができませんでした。

そして、ニコラは工場を売り払い、ロンドンで自宅を購入する計画を密かに立てていたのです。それを知ったチャーリーは計画に反対し、プライス社立て直しに更に力が入ります。

ローラはドンに「男らしくなれる方法」を教えてと持ち掛けました。それに対し、ドンが提示したのは腕相撲対決でした。ドンはパブで3連勝した強者。しかし、ローラは元ボクサー。いざ戦いが始まるとローラはドンに勝ててしまうことがわかります。

腕相撲対決で勝つこともできたローラでしたが、幻滅されるドンを見たくない。そんな思いからわざと負ける。ドンもそれに気がついていました。

パワーを男らしさと捉えていたドンの考えが少し変わり、「偏見を捨てる」が男らしくなる方法だと示したローラを受け入れ始めました。

チャーリーは自宅を抵当に入れミラノ出店に人生をかけました。力が入るあまり従業員に対して厳しい態度をとってしまい、「先代は人間としてできていた」と言われ、ミラノを目前に従業員が帰ってしまう危機的状況になります。

この危機的状況にさらに悪運がやってきます。自宅を抵当に入れたことを婚約者に知られてしまったのです。

婚約者は激怒し工場にやってきます。そこで口論をする二人でしたが、その口論が工場に聞こえるように放送ボタンをこっそりローラが押します。

その口論でチャーリーは「プライス社は家族だ、手放せない」と熱く訴えかけます。口論を聞いていたのはドン。

今までローラやブーツを作ることに対し前向きではなかったのですが、チャーリーの熱意に心撃たれ、帰ってしまった従業員たちに声をかけて危機的状況を救ってくれました。

希望が見えたのも束の間、今度はチャーリーとローラが喧嘩をしてしまいます。きっかけはニコラが隠れて男性に会っていたことで、男性としての自信を失いローラにきつく当ってしまったのです。

翌朝ミラノに発つ時にローラは姿を現さず、舞台に履いて歩いてくれる存在を失います。チャーリーはローラに留守番を残し、なんとか説得するものの現れず、本番がスタート。

チャーリーがブーツを履きランウェイを歩くことに。ヒールを履きなれていないチャーリーは舞台で転んでしまいます。

お客さんも見てられない状況のなか、ローラ率いるドラァグクイーン集団が表れ舞台を飾り、ミラノ出店は大成功で収めることができました。

最後はローラのショーにチャーリーやドン従業員を招き、パフォーマンスを披露し作品のラストを飾りました。

映画『キンキーブーツ』の感想と評価


(C) Buena Vista International.

「紳士と淑女、そしてまだどちらか迷っているあなた!」ローラがショーの始まりで放つこのセリフは、まさに映画の観客全員に向けているメッセージでもあります。

どんな人でも受け入れてくれるキンキーブーツは、見た人全てに感動と幸福感を与えてくれます。差別や偏見を扱いながらもコメディ要素が強く、見る者に抵抗感を持たせない作りになっています

チャーリーとローラは一見真逆の人間に見えますが、実は共通点が多かったように感じるでしょう。父親の期待に反し生きてきたことや、周りから少し浮いてしまっていたこと。表面から見えない共通点が二人を強く結びつけたのではないでしょうか。

表面で見えているものは本当にわずかなことであり、偏見で壁を作ってしまうことで素敵な人と関わるチャンスを逃しているのです。

生まれたままの自分を愛することの重要性を感じ、それと同時に周りの人も同じように愛し受け入れていきたいと思うことができました。

この作品のもう一つの魅力は、なんといってもローラが歌い踊るドラァグクイーンのシーンです。

ショーはとても色鮮やかでパワフル、圧倒されてしまいます。ブロードウェイで舞台化されているのも納得のショーパフォーマンスで、映画を見た人は舞台にも足を運びたくなるでしょう。

そして、ローラ演じたイジョフォーは独特でユーモラスなキャラクターを見事に演じ、ゴールデングローブ賞主演男優賞のミュージカル(コメディ)部門にノミネートされました。

実話を基に作られた作品はどうしても演出の視点から考えると“どこまでが実話なのか気になってしまう”ところ。しかし、本作はそのようなことに左右されることなく、楽しくと面白さを踏まえたハートフルさで、このような素敵な実話であるということを堪能できるはずです。

まとめ


(C) Buena Vista International.

ジュリアン・ジャロルド長編映画デビュー作品。

田舎町の小さな靴工場の若社長と都心で暮らすドラァグクイーン。けして交わるように思えない異色な二人は周囲の人の心を打ち、そして引き込んでいく。

笑いながら感動する主人公のタッグと同じように不思議だけど温かい、そんな感情が観客の心に染み渡るものになっています。

ローラは女性の心を持ちながら芯があり男らしく、チャーリーは男性の心を持ちながら優柔不断で男らしくない性格。

“男らしく”ある必要はなく“その人らしく”いられれば人生は幸せなのだと見る者に気付きを与えてくれます。

偏見を捨てて人生を楽しみたい!ありのままの自分を愛したい!心の底にある思いがこみ上げてくる作品です。

また、自宅で気軽にミュージカルを楽しめるものにもなっており、家族や恋人、友達と一緒に観て気持ちを共有するのに最適な映画です。

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