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Entry 2020/03/18
Update

【リエン・ビン・ファット インタビュー】映画『ソン・ランの響き』プロの俳優として進む覚悟ができた初主演作

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

映画『ソン・ランの響き』は2020年2月22日(土)より全国順次公開中

レオン・レ監督の長編監督デビュー作にして、ベトナム映画協会最優秀作品賞、北京国際映画祭最優秀監督賞、サンディエゴ・アジアン映画祭観客賞など、国内外で現在までに合計37の賞を受賞している映画『ソン・ランの響き』。

ベトナムの伝統歌舞劇カイルオンで用いられる民族楽器ソン・ランの響きにのせて、借金の取り立て屋・ユンとカイルオン役者のリン・フンの“二人の男”の出会いを描く感動作になっています。


photo by 田中舘裕介

本作の劇場公開を記念して、今後最も活躍が期待されるベトナム人俳優の一人であるユン役のリエン・ビン・ファットさんにインタビューを行いました。

自身にとって初の映画主演作となる本作への思い、自身と演じた役との相違点、レオン監督に対する印象など、貴重なお話を伺いました。

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当初は実感が持てなかった映画初主演作


(C)2018 STUDIO68

──本作がリエンさんにとって初の映画主演作であるとお聞きしました。オーディションなどご出演に至るまでの経緯について、改めてお聞かせください。

リエン・ビン・ファット(以下、リエン):オーディションを受けるときはすごく気楽に参加しました。とにかく結果は考えず、自分にできること考え、自分らしく演じただけなので全くプレッシャーを感じることはなかったですね。しかし、5ヶ月程続いたオーディションが進行していくにつれ、大きなチャンスを掴めそうと実感しました。するとプレッシャーはだんだんと大きくなり、緊張していきました。

撮影後も「本当にこの映画は上映されるのか」「今までの撮影は嘘だったんじゃないか」と内心疑っていました(笑)。公開初日に新聞記者や映画評論家の方々とドキドキしながら一緒に鑑賞しました。上映終了後会場の全員がスタンディングオベーションをしてくださったので、そこでやっと一息つくことができましたね。今までの自分の努力を思い起こし、初めて安心したことで感極まって涙が出たことを覚えています。

傷を持つがゆえに心が深い男


(C)2018 STUDIO68

──ユンという役を演じるに当たって、意識されていたことや監督から役についての説明はありましたか。

リエン:ユンが私に似ている一面もあるので、私自身がありのままで演じることもあれば、ユンの自分とは異なる一面を演じる際に、様々なことを意識してました。例えば、物語の中でユンはカイルオンが好きで、楽器の演奏もすごく上手にこなしていますよね。しかし、私自身はカイルオンにそれほど詳しくはないですし、楽器も下手なんです(笑)。

そして何よりも、ユンはロマンチックな心を持っています。残念ながら私自身はロマンチストではないですが(笑)。ユンは色々なものから傷を負い、色々な経験を積み重ねている。それゆえに様々なことを考えていて、本当に心が深いんですよ。私自身はそのような人間ではないので、深い心を持つユンを演じることは非常に難しかったですね。

またユンを演じるため、撮影の1ヶ月前にレオン監督から「孤独なユンを演じるために、周りの人と関わらないようにしてください」と頼まれました。そのため家族や友人とも極力連絡やコミュニケーションを取らず、自分だけの孤独な世界で生活するように努めました。

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主演俳優から見たレオン監督の魅力


photo by 田中舘裕介

──主演俳優であるファットさんの目から見たレオン監督の魅力を教えていただけませんか?

リエン:初めてレオン監督と出会ったのはオーディションでした。その時の第一印象はオープンでフレンドリーな方だと思いました。しかし実際撮影を始めると、真剣で真面目でしっかりしている方だと分かりました。

どれだけ長くなろうとも、クオリティが良くなるまで何度も撮影を行いました。演技指導時もとても柔軟で、役者の演技に幅を持たせるように説明したのち、俳優の持っている個性に合った演技を読み取って、多くを提案してくれましたね。そこからはレオン監督の熱意や愛情を非常に感じられました。監督のそういった熱意や愛情があったからこそ、私から素晴らしい演技を引き出してくれたんだと思います。

“今”思う自身の俳優としての変化


photo by 田中舘裕介

──『ソン・ランの響き』の完成と劇場公開を迎えた「今」だからこそお聞きしたいのですが、現在のリエンさんに目標はありますか?

リエン:本作の撮影を終え、私の中には大きな変化が生まれました。それは、今まで不明瞭だった映画に対する自分自身の思いです。無論、まだ答えそのものはハッキリと見出せていませんが、今後も映画と向き合っていくために不可欠な「私の中の“映画”とは何か?」という哲学的な問いは自覚することができました。

また、今までは「アマチュア」として曖昧に活動してきた俳優という道も、本作のおかげでこれから「プロ」として進んでいこうと決意することができました。そして本作をきっかけに様々な方々に声をかけていただくことも増えたので、このチャンスを逃さないよう、今後も映画に関する仕事を続けていきたいと思っています。

この仕事を続けていく中で、様々な経験を積んでいきたいです。そして自分の中にある私自身が知らない私を見つめることで、まだ答えを出せていない問いの答えを探していきたいと思います。

インタビュー/河合のび
撮影/田中舘裕介

リエン・ビン・ファットのプロフィール

1990年生まれ、キエンザン省出身。在学中に人気バラエティ番組「Running Man Vietnam」に出演、人気を博す。その後3ヶ月のオーディションを経て本作『ソン・ランの響き』にて映画初出演を果たし、第31回東京国際映画祭ジェムストーン賞(新人俳優賞)、ベトナム映画協会最優秀男優賞を受賞した。

2020年2月にはフランスの舞台劇『Mr.レディ Mr.マダム』(1978)をリメイクした主演映画『The Butterfly House』の公開が予定されているなど、今後最も活躍が期待されるベトナム人俳優の一人。

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映画『ソン・ランの響き』の作品情報

【日本公開】
2020年(ベトナム映画)

【原題】
Song Lang

【監督】
レオン・レ

【キャスト】
リエン・ビン・ファット、アイザック、ミン・フーン、スアン・ヒエップ

【作品概要】
80年代のサイゴンを舞台に、孤独なふたりの男性の出逢いと交流をベトナム伝統芸能『カイルオン』を背景に描いたレオン・レ監督の長編デビュー作。

取り立て屋の主人公を演じたリエン・ビン・ファットは第31回東京国際映画祭にてジェムストーン賞(新人俳優賞)を受賞。また「カイルオン」役者のリン・フンには、元ベトナムのトップアイドルグループ「365daband」のリーダーで、グループ解散後は俳優として活躍しているアイザックが扮しています。

本作はベトナム映画協会最優秀作品賞、北京国際映画祭最優秀監督賞、サンディエゴ・アジアン映画祭観客賞など国内外の映画祭で数々の賞を受賞し、高い評価を得ました。

映画『ソン・ランの響き』のあらすじ


(C)2018 STUDIO68

1980年代、サイゴン(現・ホーチミン市)。ユンは借金の取り立てを生業とし、その気性の荒さゆえに周囲からは“雷のユン兄貴”と恐れられていました。

ある日、借金の取り立てでカイルオンの劇団の元へやってきたユン。団長が金を支払えないと見るや、舞台衣装にガソリンをふりかけ始めました。ライターで火をつけようとしたその時、劇団の若きスターであるリン・フンがやってきて彼の前に立ちはだかりました。

リン・フンは腕時計と金の鎖飾りと共に差し出し、自身が借金を肩代わりしようとしますが、ユンはそれらを受け取らず無言で立ち去りました。

次の日の夜、ユンは劇団の公演にて「ミー・チャウとチョン・トゥイー」という芝居を客席で観ます。そして彼は、主役のチョン・トゥイーを演じるリン・フンの妖しい美貌と歌声に次第に魅せられていきました。

芝居を終えた後、町の食堂で一人食事をしていたリン・フンは、些細な理由から酔っぱらいに絡まれます。役者の仕事を馬鹿にされ、怒ったリン・フンが男に殴りかかったことで乱闘に。そこにたまたま居合わせたユンが加勢し、酔っぱらいを追い払います。

気絶してしまったリン・フンはやがてユンの家で目覚めますが、時計を見て驚きます。自身が出演するはずだったその日の公演が、すでに終わりつつある時刻だったのです。リン・フンは急いで劇場へと向かいますが、部屋の鍵を失くした事に気付き、再びユンのところに戻ってきます。

リン・フンがどこを探しても鍵は見つかりません。そんな彼に、ユンは「今日はここに泊まっていけ」と提案しました。思わぬ提案にリン・フンは警戒心を解きませんでしたが、TVゲームに興じるうちに次第に打ち解けてゆきます。

同じ時間を過ごしてゆく中で、二人は自然と相手に自身の境遇を打ち明けました。ともに悲しい過去を持つ彼らは、孤独な心を埋め合わせるように共鳴しあいます。そして劇場で再び会うことを誓い別れた二人でしたが、思わぬ出来事が待ち受けていました……。

映画『ソン・ランの響き』は2020年2月22日(土)より全国順次公開中!


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