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Entry 2019/10/23
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【塚地武雅インタビュー】ドラマ『死亡フラグが立ちました!』お笑い芸人と俳優の仕事をつなげて考える自分自身

  • Writer :
  • 桂伸也

ドラマ『死亡フラグが立ちました!』は2019年10月24日(木)より、カンテレで放送、25日(金)よりU-NEXTで配信開始!

売れないミステリーライターのしがない日常が一変!彼らはちまたをにぎわす伝説の殺し屋「死神」が仕掛ける、用意周到な罠の数々から逃れられるのか!?

2002年に創設されたミステリー小説の新人賞『このミステリーがすごい!』大賞に関連する作品から計5タイトル、40エピソードの映像作品を放送する「『このミス』大賞ドラマシリーズ」。その第三弾として制作されたのが、シリーズ累計54万部を誇る七尾与史・原作のドラマ『死亡フラグが立ちました!』です。


(C)Cinemarche

“偶然を装って24時間以内に必ずターゲットを殺す”という謎の殺し屋「死神」の正体を暴くために、一人のミステリーライターが周囲の人を巻き込み奔走する姿を描いたコメディー・ミステリーである本作。

そして主人公とともに「死神」の謎に迫っていく敏腕デイトレーダーの本宮昭夫役を、お笑いコンビ・ドランクドラゴンの塚地武雅さんが演じます。

今回のインタビューを通して、塚地さんには自身が演じられた役への印象やメインキャスト陣とそれぞれが演じる役柄の関係性、「お笑い芸人」と「役者」という二つの仕事に対する認識などを語っていただきました。

自分としては最高の役


(C)2019 U-NEXT/カンテレ

──今回の作品は事前に脚本を読まれた際に、どんな印象を受けましたか?

塚地武雅(以下、塚地):コメディー色が強いので面白いなとも思いましたし、何より僕の役柄が「敏腕デイトレーダーで頭もよく、女性にモテて喧嘩も強い」という、本来なら僕には回ってこない役だというのがいいです(笑)。その一方で「このルックスなのに…」という落としどころもある。

本宮は、すべてが面白いことにつながっている役なんです。それに出てくるキャラクターはみんな変な人だし。他方でミステリーの部分もあり、犯人が誰で、どういった仕掛けをしてくるのかという謎解きの要素もある。

そういう具合に、しっかりとミステリーではあるんですが大半の部分はコメディーな作品であるため、まさしく自分のフィールドという感覚でした。

今までたくさんコメディーリリーフ的な役どころをやってきましたが、今回はかなりボケまくったり。「ここまで自由に、数多く、変なことをやることは無いんじゃないか」というくらいに思えました。


(C)2019 U-NEXT/カンテレ

──撮影現場は非常に自由で和やかな雰囲気だったとお伺いしましたが、塚地さんの目からはどのように見えましたか。

塚地:吉原通克監督から、まず「自由にやってください」とおっしゃっていただきまして。「脚本以外のことも全然言っていただいて構いませんから」と言っていただけたこともあり、自分が面白いなと思ったことをたくさん足してみたりしました。

それに対して吉原監督も「なるほど、そっちもありましたか」という感じで、役者のアイデアも受け入れてくれましたし。

そしてそうしていく中で、一話目から自分の役のキャラクターは「こういう奴だ」という膨らみがたくさんできてきて、かつ面白いことなどもついてくるから、全話を通してブレずに演じられたとも感じています。

本当にコントキャラクターのような感覚で最後までやらせてもらいました。実際に演技をやっていても、本当に「ロングコントをさせてもらっている」と思えたり。その一方で、ちゃんと役柄のポジションとして話の運びも進めているんです。

アクションシーンや“女性にモテる”など、いろんなエッセンスを一つのキャラでさせてもらったので、僕としては「こんないいドラマはないだろう」という感じでした(笑)。

──今回演じられた本宮という役柄については、ご自身との共通点や似ているところなどはありましたか?

塚地:実際にはそうはいかないのが世の中ですけどね(笑)。「こうなりたいな」と憧れる人物ではありますが。

実際にはモテないですし、デイトレーダーなんて絶対無理。僕はケチだし(笑)。投資家のようにギャンブル的なことはできないし、意外に堅実な感じなんですよ。

コメディー/ミステリーのバランス


(C)2019 U-NEXT/カンテレ

──本作はコメディーとミステリーが共存する作品ということですが、その雰囲気の違いを演技の中で切り替え続けるのは難しいのではとも感じました。

塚地:確かに話の内容もそうですし、緊迫したシーンではみんな一気に表情なども変えるということもありました。ですが、演技の振り幅を大きくつけられるところもあって、それ自体はやりやすかったと思います。

本作は「対極にあるものを一緒に見せている」という意味で「コメディーミステリー」と銘打っているので、言葉としては真逆のことを言っているけれど、その分変なことをすればするほど、シリアスな方にも持っていきやすいと感じました。

シーンのセリフひとつでミステリーへと展開を運んでいくには、ずっとミステリーの状況になっているよりはふざけている状態で急に「なんだろう?」という疑問を提示した方が、ミステリーという形にはなりやすいと思うんです。

もちろんベースとしては、全編を通してミステリーとなっていますし、誰が犯人でどんな仕掛けをしたのかは毎話に出てきます。そういった意味ではコメディーである一方で謎解きのようなところもあったり、とても面白い物語になっていると思います。

小関裕太は「愛されキャラ」


(C)2019 U-NEXT/カンテレ

──今回共演された主人公・陣内トオル役の小関裕太さんには、どのような印象を持たれましたか?

塚地:人懐っこくて可愛らしい、愛される人だなと。それでいて多趣味だし、語学も堪能。楽器もほぼ全部弾けて乗馬もされるとか。もちろん健康面なども気をつけていて、あらゆることに「底がない」と思える方ですね。

いろんなジャンルにも精通しているし、誰からも愛される人だとも思う。画面越しでもそれがにじみ出てくるから、それが陣内というキャラクターにフィットした気もします。

今回彼が演じられた陣内という役柄は、例えば「都市伝説ライター」とか「好きな女優さんにオタク的愛情を寄せている」といったところは違うかもしれませんが、「人が寄ってくるタイプ」といったところはすごく似ている気がします。

物語は結局陣内を取り巻いての話になっていくし、そうなると寄ってくる人物も「陣内のために何とかしてあげよう」と思い始める。そんな風に人を惹きつける面がすごく似ているし、人への接し方も役とすごくリンクしていました。

「変なこと」をやり続ける撮影


(C)2019 U-NEXT/カンテレ

──今回のキャスティングについて、出演されたみなさんとそれぞれが演じられた役柄は似ているように感じられました。

塚地:確かに。根本の性質は違うのかもしれませんが、例えば寺脇さんはメインキャストの中では一番年上で、「組の幹部、兄貴分のポジションに僕らがついていく」という物語の雰囲気とよく似ている気がします。

笠原(秀幸)くんも幹部演じる寺脇さんの子分役であり、「陣内や本宮と同等の立ち位置にいる」という点は共通しています。そう考えると、メインキャスト陣は本当に役柄と似たような立場と役割を持つ4人で演じていました。

4人での行動も多くて和気あいあいとしていましたし、本編でもそういった面白い空気もあって、カットがかかっても変わらなかった感じがありました(笑)。

──それほどまでにキャストと役柄の関係性が似ていると、撮影における気持ちのオン/オフが難しくなってしまうこともあったのではないでしょうか?

塚地:テンポよく演じていたので、オン/オフをせずとも楽しく撮影を進められたように感じています。「全8話で毎回30分」という時間枠のおかげかもしれないですが。

キャストみんなが常に変なことを言い続けるんです(笑)。一話を通してワンシーンずつ、変なことを言って次のシーンへ移動する。そうして一区切りしては移動して、また変なことが起こって…その流れをつなぎ合わせ続ける形でドラマが展開されていくので、オン/オフをつけるというよりは、常に変なことを撮影中も続けていたという具合です。

撮影のカットがかかってもずっとそんな雰囲気のままだったので、「そうやれちゃった」という印象ですね。

お笑い芸人と役者をつなげて考える「自分」


(C)Cinemarche

──塚地さんにとって、お笑い芸人としての仕事と役者としての仕事に境目のようなものはあるのでしょうか?

塚地:僕自身は、大きくいうとその二つを切り替えてはいないんです。コント番組、バラエティ番組における素喋りから、ドラマの仕事に向かう中で「このときにスイッチを切り替えて」というようなことは全くしない。

ただ二つの仕事で大きく違う点は確かにあって、それは自分の“素”と関わっています。

例えばコントだと、NHKの「LIFE!」などでもやらせていただいたおじいちゃんや女の子、子どもの役、或いは「イカ大王」のような突拍子もない役など、本来の自分を踏まえるとあまり現実的でないキャラクターをやらせてもらっているんです。

そういう意味では、コントにおける演技は自分をより遠いところに持っていこうとしている。できるだけ自分が出ないよう、意識的に自分じゃないように演じている気がします。

ですがドラマは、演じているのは人間であり、一人の人間として生きてきた自分自身をベースとしたキャラクターを演じているからこそ、役を自分の近くへと寄せているように感じています。

自身が共感する部分などを作って「こいつはこういう奴だ」というイメージを形作ったところで「じゃあ、僕がやるならこうだな」とさらに考え直して演じています。

──あくまで自分自身を根幹にしているからこそ、二つの仕事に対する認識の違いは感じられないというわけですね。

塚地:やっているのは僕自身ですし、「“面白い”というベクトルが何になるか?」はいろいろあると思うけれど、結局は全部楽しいので、その点では二つに違いはないです。

ただ、お笑い芸人の職業病と言えるところなんですが、実はコント番組とかって、本当のテンションなどは本番まで見せず、「これはウケるだろう」と思うことも隠して、基本は本番まで取っておくんです。

でもドラマは、「リハーサルから全部を本気でやる」と考えています。特に撮影については、全部を見てもらい、それからカメラワークとかを決めるみたいなところがありますよね。つまり「こう動き、話す」といったことを全部作り上げ、完成されたものをカメラに収めるという感じです。

お笑い芸人は“一発本番”という精神を持っている職業だからこそ「本番まで取っておこう」と思う。対して役者さんたちは本番に向けて完成させるために最初から見せる。そういった違いはあるかもしれません。

ヘアメイク:田中裕子
スタイリスト:森下彩香(ニューメグロ衣裳)

塚地武雅(つかじむが)のプロフィール

1971年生まれ、大阪府出身。

大学を卒業後、一時サラリーマンとして働くも、1996年にお笑いコンビ「ドランクドラゴン」を結成し頭角を現していきます。

また2003年ころからは役者としての活動を開始。ドラマ『仔犬のワルツ』(日本テレビ系)や映画『間宮兄弟』などでその演技力の高さを評価され、お笑い、バラエティで活躍する一方で、ドラマ、映画でもその独特なキャラクターと演技力でコンスタントな活躍を続けています。

インタビュー・写真/桂伸也

ドラマ『死亡フラグが立ちました!』の作品情報

【放送・配信日時】
(カンテレ)2019年10月24日より、毎週木曜・深夜0時25分〜0時55分
(U-NEXT)2019年10月25日より、毎週金曜・10:00分独占配信

【放送地域・配信サイト】
カンテレ(関西ローカル)、U-NEXT

【原作】
宝島社文庫:『死亡フラグが立ちました!』(七尾与史)

【監督】
吉原通克

【キャスト】
小関裕太、塚地武雅、笠原秀幸、明星真由美、林田岬優、高崎翔太、寺脇康文

【作品概要】
カンテレ、U-NEXTによるミステリードラマシリーズ「『このミス』大賞ドラマシリーズ」。その第三弾にあたる作品です。

七尾与史原作のミステリー小説を基に、“偶然を装って24時間以内に必ずターゲットを殺す”という殺し屋「死神」の謎をめぐり、しがない一人のミステリーライターが周囲の人々とともに奔走する姿を描きます。

主人公・陣内トオル役を小関裕太、陣内の先輩で敏腕デイトレーダーの本宮役を塚地武雅が担当。さらに組長の死の真相を追うとあるヤクザの組員・松重役を寺脇康文、松重を慕いどこか笑えるが一途な子分役を笠原秀幸が演じます。

ドラマ『死亡フラグが立ちました!』のあらすじ


(C)2019 U-NEXT/カンテレ

都市伝説を特集している雑誌「アーバン・レジェンド」にフリーライターとして雇われている陣内トオル。

ある日陣内は、売り上げ低迷のために雑誌が廃刊の危機にあることを編集長から告げられ、売り上げが回復するような美味しい記事を書いてくるようハッパをかけられます。そして、売り上げを伸ばすためのとっておきの“命令”を押しつけられてしまいます。

それは、陣内がこれまで記事に取り上げてきた、「死神」と呼ばれる殺し屋の正体を暴くこと。

「死神」はターゲットに対し周到な罠を張り巡らせて偶然を装い、事故死に見せかけてターゲットを24時間以内に殺すことができると、その筋の人間からは非常に恐れられている存在でした。

陣内は先日起こったヤクザの組長の死が実は「死神」によるものだったことを知り、高校の先輩で破天荒な天才投資家・本宮、組長の敵討ちを誓う組員の松重らとともに組長の死の真相を調べ始めます。

そしてその道のりにはさまざまに不可解な出来事が現れ、陣内たちの行方を阻んでいきます。果たして陣内たちは、「死神」の正体を暴くことができるのでしょうか?

ドラマ『死亡フラグが立ちました!』は2019年10月24日(木)より、カンテレで放送、25日(金)よりU-NEXTで配信開始!



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