映画『最果てリストランテ』は2019年5月18日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開。
舞台はとあるレストラン。ここは三途の川を渡る前に、最後の晩餐をとる特別な場所。料理人は韓国人のハン(ジュンQ)、給仕は日本人の岬(村井良大)が努めています。
来訪客は、現世からあの世へ旅発つ前に、一度しか訪れることの出来ないこのレストランで、最愛の人と最後の晩餐をとり、死出の旅に向かいます。
公開に先駆けて、このレストランに訪れるひとりの女性を演じる真宮葉月さんにインタビューを行いました。
本作が映画デビューとなった真宮葉月さん。
役作りと撮影でのエピソードから女優としての学び、また今後の意気込みなど、多岐にわたりお話を伺いました。
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映画初出演にむけて
──映画初出演ということですが、クランク・インにむけて準備をされてきたことはありますか?
真宮葉月(以下、真宮):映画の撮影に入る前から2年間ほど演技の勉強をしてきました。
そのレッスンの中で、内側から出る内圧みたいなものを大切にすること、自分で受け取ったもの以上のことを観客は受け取ることは出来ないということを学ばせていただきました。
演技をはじめてから3年くらいですが、今回は内側からかける圧力を大切にしながら撮影に挑みました。
私の役は泣く場面があって、撮影もタイトなスケジューリングでしたので、この時間で泣けなかったらどうしようと、かなりプレッシャーも感じましたが、割とスムーズに相手からの演技を受け取り、返しのリアクションを対応できたように思います。ご教授頂いた先生方のおかげです。
──真宮さんはモデルなどでも活躍されていますが、役者を始めようと考えたきっかけは?
真宮:映画女優になりたいという想いは大学生の頃からありました。
ですが役者って他人の人生を生きる仕事なので、色んなことを知らなきゃいけないなと思いました。
語学を勉強しに大学に入ったので、その大学を卒業することも必要だと考え勉強だけはしっかりやりました。
その間に紆余曲折しても、モデルの仕事やダンスは続けました。ダンスの仕事も何かを考えて作り出すというのは役者と同じですので、そんな今まで積み重ねた経験が、今でも自分の中の糧になっていると思います。
役作りについて
──真宮さん演じるジュンコは、ジュンQさん演じる恋人のハンが昏睡状態となり、他の人との結婚を選択をします。ジュンコとはどのような役柄ですか?
真宮:25歳の日本人女性で、交際相手の男性を立てつつ、実は芯がしっかりしていて自分の意見をちゃんと持っている人です。
映画では55歳のジュンコが死を迎えてレストランに訪れます。生前にジュンコは結婚し出産して、歳を重ね病気になり、最後にレストランへ来る。今までの選択が正しかったのか葛藤している。そして私が演じる25歳のジュンコに立返ります。
ですので、恋人のハンがいるレストランにやって来た時に、過去の自分の後悔や信念みたいなものをしっかりと持っている女性として見てもらえたらという気持ちで挑みました。
──役作りで特に気をつけたことはありますか?
真宮:役作りではいつも心がけていることですが、演じる役の生きてきた歴史みたいなものをしっかりと感じ取りたいと考えています。
私自身の考えではなく、ジュンコの立場で、こんな時はどうするだろうと1ヵ月間くらいずっと考えて生活していました。
──ジュンコは多くを語らない役ですが、選択の勇気だったり心の揺れみたいなものが強く伝わってきました。それは真宮さんが本来持っているもののように感じます。
真宮:やっぱりそういった感情がないと、自分の中で葛藤を生まないですし、自然な表情ができないのではと思います。
松田圭太監督も自分の気持ちに正直になってくれればいいと仰ってくださいました。松田監督は、私に限らず俳優さんたちを信頼して現場を作ってくださる方でしたので、とても安心して演じることが出来ました。
──また真宮さん演じるジュンコは芳本美代子さんの若かりし頃の姿でもあります。
真宮:芳本さんは若い頃からご活躍されている方ですので、自分でも大分リサーチをしました。
また撮影の際に、午前中が芳本さんの本番で、午後は私が演じる順番だった時など、午前中から参加させていただきました。芳本さんがどのように役柄の語りをするのか、その中に含まれている感情みたいなものを、25歳のジュンコである自分が受け取めて反映出来たらと、芳本さんが演じる姿勢からも学ばせていただきました。
ジュンQさんについて
──相手役のジュンQさんはいかがでした?
真宮:初めてお会いした時、とても笑顔が素敵で、凄く純粋で真面目な方なんだなという印象を受けました。
私自信は、ハン・ジソクという役柄の男性を1ヵ月間、投影しながら自分の心にハンを染み込ませていきました。それと同時にジュンQさんの作品を観ながらジュンQさんについても自分の中に落とし込んでいきました。
──ジュンQさんとは日本語でコミュニケーションをされたのですか?
真宮:8年間日本で活動されているので通常会話はとても流暢な日本語でお話されます。私は韓国映画が好きなのもあって、今ちょっとだけ韓国語を勉強していて、挨拶程度ですけど韓国語でお話もしました。
韓国映画からの学び
──韓国映画はどのようなところが好きなのですか?
真宮:韓国映画を観ると、食事しているショットや歩くショットなどでも情緒的に見せるのが凄い上手だなと感じます。
所作によって、その瞬間だけで考えさせるような役者になりたいので、どうやって見せたら演じている役の想いが伝わるんだろうと考えたり、役柄や職業によっても振る舞い方は違いますし、役者としてそういう目線で映画を観ています。
──真宮さんが演技レッスンで受けた内面を出すというのは、それこそ韓国の役者さんは途轍もなく強いものを出しますよね。
真宮:はい。途轍もなく強くて、それが見て取れるから凄いなと感じます。内面からの感情の圧力のかけ方が日本人よりも豊かに思いますね。
──そんな中でジュンQさんと共演されたというのは何か縁を感じますね。
真宮:私は海外を旅するのが好きで、韓国へも行った事があるんですが、その時に韓国の方たちのとっても温かな心に触れました。
ジュンQさんとお会いした時にも同じような感覚を受けて、勝手な言い方ですが、初めてお会いした感じがしなかったんです。
言葉を超えたコミュニケーション
──海外は他にどんな場所に行きましたか?
真宮:北京から寝台列車に乗ってモンゴルに行ったり、ミャンマーや、タイ、ベトナム、ラオスなど、バックパッカーのように1000円くらいの宿に泊まって、恋をしたり救急車に運ばれたりしながら旅をしました(笑)。
──とても素敵な経験をしていますね。語学を学んでいたこともあり、コミュニケーションのあり方などもきっと堪能なんでしょうね。
真宮:あまり言葉で壁を作りたくないとは考えています。
子供の頃は外国に行ったことがなかったので、他の国を知らなかったんですが、勉強するうちに様々な歴史があって、日本との繋がりもあったりということを知りました。
昔の人は今に比べたら言葉に堪能じゃなかったと思います。それなのにコミュニケーションがちゃんと取れていたということは、言葉ってあまり関係ないのかもなとも思わされます。
映画でもフランス語は分からないけど、フランス映画が好きで、吹き替えでは観たくないと思うように、その言語の雰囲気でしか伝わらないものを感じ取りたくて、言葉はその後についてくるものかなと感じたりします。
ですのでジュンQさんとコミュニケーションを取るのも、韓国語でもいいし、日本語でもいいしって思っていました。でもジュンQさんは日本語で話しかけてくださいました。
──それはジュンQさんが、日本で撮って日本語でやるということに対しての意識やリスペクトの気持ちがあったのかも知れませんね。
真宮:そうだと思います。日本語の発音も聞いてきてくれたりしました。どうしても韓国語はイントネーションがついくるので。日本語の発音ってモノトーンじゃないですか。
それが結構違うってご自分でわかってるみたいで「これあってる?」と私に聞いてくれたりしていました。
逆にカタコトの方がアイドルだから可愛いみたいに言われたりしていたこともあったみたいですけど、映画に出る側としてそれは違うと思っていたみたいで、しっかり練習されていました。
贅沢な時間
──撮影時の思い出は何かありますか?
真宮:この映画は食がテーマなので、1日中コーヒーの香りや料理に触れられて、レストランも三途の川に相応しいような独特な雰囲気だった事がとても印象に残っています。
料理の香りを劇場で味わうことはできませんが、観てる人は香りも味わえるのではと思えるくらい、1日中色んな素敵な香りが充満していて、初めての現場にして贅沢な経験をさせて頂きました。
スタッフの方の一人が料理人の方で、全ての料理の監修をしているんですが、撮影でも食べるシークエンスが多いのに、ちゃんとスタッフの方たち用とキャスト用の食事の料理も作ってくださって、1日中食事みたいな状況でした(笑)。みんな本当に美味しくて幸せでした。
──因みに真宮さんはどんな料理が好きですか?
真宮:お肉料理が好きです(笑)。それと私のお母さんが作った和食も好きです。私は「食は大切だ」という家庭で育ったので、そういう意味でもお母さんの手料理がやっぱりいちばんですね。
今後について
──役者をやるために色んなことを学んでいきたいと仰っていましたが、これから何か学びたいことはありますか?
真宮:アートに興味を持っています。今は19世紀、20世紀の第2次世界大戦を生きた人たちのアートとか、その前の1900年代の人たちから勉強しています。
アートに出会ったのは、原田マハさんという小説家がいらっしゃるんですが、50歳くらいから小説家になっていて、面白い小説家だなと思って読み始めたのがきっかけです。
原田さんは小説以外にも、エッセイを書いていたり、キュレーターもされていて、原田さん自身が面白い方だなと感じたのと同時に、アーティストたちの生涯ってものすごく気になると感じさせてくれました。アートを通して戦争や歴史なども知れるなとも思い、今勉強している途中です。
──女優として今後、どのようなことをやって行きたいですか?
真宮:ずっと女優をやるためには、あまり自分で出来ない役を作りたくなくて、観てる人にとって自分の人生と投影させて観ていただけるような役者になりたいと考えています。
悪い役をやった時には「本当に嫌いっ」と思って欲しいですし、嫌われても良いからその人の人生を生きられるような役者になりたいなと思っています。
ですので悪い役とかにも挑戦してみたいです。
──最後にこの映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。
真宮:本作は人にとっていちばん大切な「食」を通して人と人を繋ぐストーリーです。大切な方と観に行ったり、観ているうちに大切な方を思い出して、一緒に食事がしたいと感じたり、大切な人との思い出に触れながら観ていただけたら嬉しいです。
真宮葉月(まみやはづき)プロフィール
1990年10月17日生まれ。東京都出身。
趣味は映画鑑賞、読書。特技は語学(英語、フランス語、韓国語)、水泳、ピアノ。
2013年にタイ:バンコクにて4人組ガールズユニット『ヒップ・スター』として活動。2017年にはCM「吉野石膏株式会社『タイガーハイクリンボード ダンス篇』」に出演。2017年に耐久レースTeam221のレースクイーンとして活躍。
本作で映画デビューを果たし、次回作には今関あきよし監督『恋恋豆花』への出演が決まっています。
インタビュー・撮影/大窪晶
映画『最果てリストランテ』の作品情報
【日本公開】
2019年
【製作国】
日本
【監督・脚本】
松田圭太
【キャスト】
ジュンQ(MYNAME) 、村井良大、真宮葉月、鈴木貴之、今野杏南、井澤勇貴、酒井萌衣、苅田昇、芳本美代子、山口いづみ、堀田眞三
【作品概要】
「死」はこの世での命がいったん終わることで、すべてが終わるわけではない。
人がこの世に生を受けたとき、未知の未来に対しての祝福と愛で迎えられたように、それは新たなる世界への旅立ちの瞬間。
2018年4月に大成功を収め、2019年1月と2月に再演を果たしたフォトシネマ朗読劇と言う新たなるジャンルのエンターテインメント『最果てリストランテ』の主要キャストを再び起用しての映画化作品。
人生最後の晩餐を演出する2人を日本のチャートにもランクインするK-POP グルーブ、 MYNAMEのジュンQと、舞台で活躍中の村井良大が務めます。
共演は真宮葉月、芳本美代子、山口いづみ、堀田眞三など若手、中堅、ベテランと魅力的な顔ぶれが揃いました。
映画『最果てリストランテ』のあらすじ
ここはとある場所の小さな、小さなレストラン。営業時間は決まっておらず、人生でたった1度しか訪れることが出来ません。
三途の川を渡る前、最後の晩餐をとるためのそのレストランでは、料理を選び注文をするのではなく、最後の晩餐の相手を選びます。
選べる人の条件は既にこの世に存在しない人物、1人に限り、相手が決まれば料理も自然に決まります。
料理するのは韓国人のハン、給仕は日本人の岬。
レストランに訪れる人達の思い出の料理を振舞い、その料理を口に運んだ人達はみな笑顔になり饒舌になり、食後には新たな旅路へと向かっていきます。
そんなレストランで料理人を務めるハンは、記憶の全てを現世に置き忘れてきてしまっていました。
ハンは、そして岬は、なぜここで料理を振舞っているのか。そもそも、ハンも岬もこの世の住人なのか…。