Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

インタビュー特集

Entry 2022/10/12
Update

【羽住英一郎監督インタビュー】映画『カラダ探し』を通じて“仲間たち”と爽快感あるアトラクションを楽しんでほしい

  • Writer :
  • ほりきみき

映画『カラダ探し』は2022年10月14日(金)より全国ロードショー!

6人の高校生たちが “赤い人”によって殺される日を繰り返す。死のループから逃れるには、高校にいるはずのない幼い少女のバラバラにされたカラダを見つけ出すしかない……。

小説投稿サイト「エブリスタ」で人気ナンバーワンの携帯小説として話題となった「カラダ探し」を映画化した本作。恋愛やコメディ、アクションと幅広いジャンルで活躍する橋本環奈が主人公・森崎明日香を演じ、本作でも同級生役の俳優とともにアクションに挑みました。


©︎2022「カラダ探し」製作委員会

監督を務めたのは映画『暗殺教室』シリーズ(2015,2016)で橋本環奈とタッグを組んだ羽住英一郎。壮絶なアクションホラーである本作に、エモーショナルな青春群像劇を巧みに盛り込んでいます。

今回の劇場公開を記念し、羽住英一郎監督にインタビューを敢行。自身にとって初のホラー映画を監督するにあたって、本作に対する思い、そしてメインキャスト6人に対する思いなどを語っていただきました。

「若者が主人公のジュブナイル・ホラー」を撮るために


(C)2022「カラダ探し」製作委員会

──ワーナー・ブラザース映画による日本映画初のホラー作品プロジェクトとして企画された映画『カラダ探し』ですが、羽住監督は本作で初めてホラー映画を手がけられました。

羽住英一郎監督(以下、羽住):プロデューサーの原祐樹さんからお話をいただいた時、「いわゆるジャパニーズホラーではなく、1980年代以降にアメリカで作られた若者が主人公のジュブナイル・ホラーのように、若い人が大勢で観に行って、ラストで強大な敵を倒すという爽快感を得て劇場を出る作品にしたい」と言われたのです。ホラー映画に挑戦するのは初めてでしたが、そういうテイストにすごく興味を持ちました。

原作小説は、オファーを受けてから読みました。映画を観終えたお客さんに気持ちよく帰ってもらうためには、どの要素をどうやって膨らませるか。頭の中では常にそのことを考えていたのですが、「それまでつながりのなかった若者たちが、カラダ探しを通じて少しずつチームになっていく」という展開を青春の要素とし膨らませていこうと思いました。

──原作小説を映画化されるにあたって、特に苦労されたのはどのような点でしょうか。

羽住:この作品は主人公たちが夜になると“赤い人”に襲われて、無残に殺される1日を何度も繰り返す恐怖を描いています。つまり死んでも、死んでも、生き返り、また同じ日の朝に戻る。

そのタイムループが起きていることを伝えないといけないので、ある程度同じ展開を描いた映像を繰り返す必要があるのですが、その反面タイムループと分かった瞬間から、繰り返しの映像が観客にとって退屈になってしまう。そこをどうするかを考えました。

飽きずにいろんな感情を楽しんでもらうよう、殺される映像を分割画面にしたり、6人の友情関係の変化と、毎晩殺されるコントラストのバランスを意識して構成しました。

「この6人にまた会いたい」と思ってほしい


(C)2022「カラダ探し」製作委員会

──橋本環奈さん、眞栄田郷敦さん、山本舞香さん、神尾楓珠さん、醍醐虎汰朗さん、横田真悠さんがそれぞれ演じられた登場人物の性格は見事にバラバラですが、作中では全員が魅力的に描かれています。

羽住:メインキャストの皆さんとは脚本を渡してから会ったのですが、最初はバラバラだった6人が仲良くなっていく様をお客さんに楽しんでほしいと考えていたため、「映画を観た人が劇場を出る時、『この6人にまた会いたい』という気持ちになるように、とにかく6人で撮影を楽しんでほしい」と6人全員に伝えました。

明日香役の環奈とは『暗殺教室〜卒業編〜』以来ですが、その間に俳優としての経験値が上がったので、当時と比べても断然タフだし、大抵のことでは物怖じしない。びっくりするほど成長していました。

郷敦は彼がまだ俳優デビューする前に(新田)真剣佑から『OVER DRIVE』(2018)の初号試写の時に紹介されました。すでに「オーラ」や「華」を持っているけれどスレてはいない、真っすぐな子だなと思ったことをよく覚えています。彼が演じた高広は真っすぐないいヤツなので、その説得力を持たせられる郷敦はピッタリだった。こんなに早く一緒に仕事ができるとは思っていませんでした。

神尾さんが演じた篤史は、斜に構えてクールな役。実際の神尾さんは明るくにぎやかな人ですが、そういう雰囲気を持っており、みんなと混じらなくても存在感があるので、篤史役をお願いしました。


(C)2022「カラダ探し」製作委員会

横田さんとは初めてのお仕事でしたが、怖がったり、殺されたりする時の表情が本当に豊かで、まさにホラークィーンといった感じでした。また本人は「違う」と言うかもしれませんが、僕から見ると非常にしっかりしている方で、立ち居振る舞いが「学級委員」という役どころにうまくハマってくれました。

舞香には『暗殺教室』の時にもアクションをたっぷりやってもらいましたが、大抵のことはできる女優さんなので、本作でも期待通りでしたね。撮影がない時にも顔を出し、ムードメーカーとして現場を盛り上げてくれました。6人が仲良くなっていく過程において、彼女がいてくれて本当によかったと思います。

また当初から「メインキャストは男3人・女3人」と決めていたのですが、虎汰朗は早い段階から名前を挙げていました。彼が演じた翔太は、“カラダ探し”についてみんなよりも少し詳しく、それゆえに自分たちが陥った状況に恐怖する様子をクイックに表現していかないとならないので、エンタメとしては大事な役です。虎汰朗とは『太陽は動かない』(2021)のオーデションの時に出会ってから大好きな俳優さんなので、彼ならその役どころをうまく演じてくれるだろうと思えた。実際、期待以上にやってくれました。

「仲間たち」と一緒に楽しんでほしい


(C)2022「カラダ探し」製作委員会

──本作はアクションシーンも大きな見どころの一つです。

羽住:アクションシーンは事前の訓練が必要ですし、撮影の時も時間がかかるので大変です。それでもバラバラだった6人が最終的には一緒に戦うようになるために、そして「殺される」という恐怖への共感だけではなく、みんなで協力して肉体的に抗っていく中での連帯感を生み出すためにも、アクションは不可欠でした。

撮影期間は1ヶ月でしたが、クランクイン前はもとより撮影の合間もアクションの練習をするという状況でした。ただその練習も、6人が仲良くなっていくのに一役買ってくれました。。

またアクションシーン自体はやればやるほど経験値が上がり、スタッフにもさまざまなノウハウが貯まってくるので、これまで手がけてきた作品での経験が活きた場面もありました。

ただ僕もびっくりしたのですが、プールのシーンでの水中撮影では「海猿」シリーズの頃は水中撮影用の大きな機材を使って撮影していましたが、今回の映画ではiPhoneを使用しています。ジップロックのような専用のケースに入れ、水の中に沈めると撮れるのです。技術の進歩は本当に凄いですね。

──北九州市でのオールロケだったと伺いましたが、「高台に礼拝堂のある学校」は本作の雰囲気にピッタリのロケーションでした。

羽住:北九州フィルムコミッションに相談したところ、かなり早い段階で西南女学院さんを紹介していただけました。学校にご相談したところ、新校舎と旧校舎のうち、旧校舎なら授業中でも貸してもらえることになりました。西南女学院さんのご協力がなかったら、この映画は成立しなかったと思います。通学時間は避け、生徒さんが新校舎で授業をしている時に旧校舎で撮影を進めました。

礼拝堂は外観だけでなく、堂内でもアクションシーンの撮影をさせていただきました。ただ、現在も礼拝などで使用されている学校の本物の礼拝堂をお借りしたので、建物を傷つけずにアクションを成立させないといけない。そこで「工事中」という設定のもと養生(工事などでの破損防止用の手当て)を施した上で、工事作業用の足場などを美術装飾として活用しつつ、その足場にワイヤーを掛ける形でアクションを撮影しました。本来ならばワイヤー用の支点となる足場は見えないようにしなくてはいけませんが、「工事中」ならばイントレが見えても不自然ではないですからね。

──最後に、これから本作をご覧になられる皆様にメッセージをお願い致します。

羽住:近年では映画の配信も増え、劇場ではない場所で観るという楽しみ方もより広がり続けています。ただこの映画は、劇場の暗闇の中、大音量で観る楽しさにあふれています。

例えば“赤い人”の足音は、まだ得体の知れない段階で足音だけがピチャピチャと聞こえてくる。それは劇場の音響設備、そして暗闇の中で観ることで、より恐怖感が増してきます。アミューズメントパークのお化け屋敷的なアトラクションを、気が置けない仲間たちと楽しむ感覚でご覧いただければと思います。

インタビュー/ほりきみき
構成/河合のび

羽住英一郎プロフィール

1967年3月29日生まれ、千葉県出身。ROBOT所属。

『海猿 ウミザル』(2004)、『LIMIT OF LOVE 海猿』(2006)、『THE LAST MESSAGE 海猿』(2010)、『BRAVE HEARTS 海猿』(2012)の「海猿」シリーズを手がけ大ヒット。

近年の監督作は『劇場版 MOZU』(2015)、『映画 暗殺教室』(2015)、『暗殺教室〜卒業編〜』(2016)、『OVER DRIVE』(2018)、『太陽は動かない』(2021)他。またアニメーション作品では「バイオハザード:インフィニット ダークネス」(2021/Netflix)がある。

映画『カラダ探し』の作品情報

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
ウェルザード『カラダ探し』(エブリスタ)

【監督】
羽住英一郎

【脚本】
土城温美

【キャスト】
橋本環奈、眞栄田郷敦、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠、柳俊太郎、西田尚美、柄本佑

【作品概要】
原作はウェルザードの同名小説。小説投稿サイト「エブリスタ」でホラーランキング1位を獲得し、複数の出版社から書籍化・漫画化されている。

主人公の森崎明日香を橋本環奈、幼なじみの伊勢高広に眞栄田郷敦。山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠が明日香と一緒にカラダ探しに挑む同級生を演じる。

監督は、「海猿」シリーズなど多数のヒットシリーズを手がけてきた羽住英一郎。さらに主題歌「行方知れず」と劇中歌「リベリオン」を人気アーティストのAdoが歌う。

映画『カラダ探し』のあらすじ


(C)2022「カラダ探し」製作委員会

7月5日、明日香の高校生活は一変した。いるはずのない幼い少女から「ワタシのカラダ、探して」と言われたその日から……。

深夜0時を迎えた瞬間、気付くと明日香は、高広たちクラスメイトと共に学校にいた。そこに現れた全身が血で染まった少女“赤い人”によって、6人は次々と殺されてしまう。

そして目が覚めると、そこはまた同じ7月5日……その日から、6人は何度も“赤い人”に殺され、永遠に同じ日をループすることに──。

明日を迎える唯一の方法は、校内に隠されたバラバラのカラダを探し集めること。

性格も異なる6人は、次第に力を合わせはじめ、仲間として友情が芽生えていく。終わらない死のループから抜け出し、明日を手に入れろ!

堀木三紀プロフィール

日本映画ペンクラブ会員。2016年より映画テレビ技術協会発行の月刊誌「映画テレビ技術」にて監督インタビューの担当となり、以降映画の世界に足を踏み入れる。

これまでにインタビューした監督は三池崇史、是枝裕和、白石和彌、篠原哲雄、本広克行など100人を超える。海外の作品に関してもジョン・ウー、ミカ・カウリスマキ、アグニェシュカ・ホランドなど多数。




関連記事

インタビュー特集

【クリス・フォギン監督インタビュー】映画『フィッシャーマンズ・ソング』コーンウォールのコミュニティで歌い明かした素晴らしき日々

映画『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』は、2020年1月10日(金)より新宿ピカデリー・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー。 (C) FISHERMAN FI …

インタビュー特集

【末永賢監督インタビュー】映画『zk/頭脳警察50』伝説は“未来への鼓動”として続き人々も歴史もつながっていく

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』は2020年7月18日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開! 音楽の世界から産声を上げて50年、いまだ衰えぬその力強いメッセージによって人々を …

インタビュー特集

【ヤングポール監督インタビュー】映画『ゴーストマスター』で描いた“愛憎という呪い”の真相を語る

映画『ゴーストマスター』は2019年12月6日(金)より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー! 映像企画発掘コンペ「TSUTAYA CREATERS’PROGRAM FILM 2016」で準グラ …

インタビュー特集

【仲野太賀インタビュー】映画『静かな雨』中川龍太郎監督との同世代タッグを通じて“普遍的な人間”を演じる

映画『静かな雨』は2020年2月7日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー! 事故により新しい記憶を一日で失ってしまうようになった女性と、足に麻痺がある青年の出会い、そしてともに人生を歩んで …

インタビュー特集

映画「怪談新耳袋Gメン」田野辺尚人×山口幸彦インタビュー| 若手監督の活躍はシリーズ前作の打倒からはじまる

2019年8月23日(金)よりキネカ大森で開催される、毎年恒例となった「夏のホラー秘宝まつり2019」。 「夏のホラー秘宝まつり」を夏のイベントとして定着させ、様々なホラー映画を送り出し、日本のホラー …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学