映画『LET IT BE -君が君らしくあるように-』は2019年10月4日(金)より、池袋HUMAXシネマズにて2週間限定公開!
2.5次元に存在する架空の芸能事務所としてメディアミックスを展開する「ツキノ芸能プロダクション(通称:ツキプロ)」初の実写映画作品して、ツキプロ所属の音楽ユニット「SOARA」の高校時代を描く青春ドラマ『LET IT BE -君が君らしくあるように-』。
そして主人公・大原空役としてオーディションに参加し、みごと主演の座を射止めたのが本作にて俳優&映画主演デビューを果たした堀田竜成さんです。
このたび本作の劇場公開を記念して、堀田竜成さんにインタビューを行いました。
オーディションの経緯や初の演技経験での苦労、演じられたキャラクターと自身との共通点はもちろん、看護師とシンガーソングライターという異色の経歴、そして俳優への挑戦によってたどり着いた“言葉”に対する思いなど、貴重なお話を伺いました。
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やりたいことを見つめ直して
──はじめに、本作の主演として抜擢されるまでの経緯、特にオーディションを受けられるまでの経緯をお聞かせ願えませんか。
堀田竜成(以下、堀田):大阪で僕は救命救急の看護師として三年間務めたんですが、いつも患者さんたちに接し続けていました。そして救命救急という現場だったこともあり、亡くなる患者さんたちも多くいらっしゃった。高齢の方だけでなく、僕の年齢に近い方たちの死とも向き合い続けたんです。
その中で、自分は五体満足で夢に向かって進めるはずなのに毎日同じ生活を続けていることに疑問を感じ始めました。そして「自分の夢ややりたいこととは何だろう?」と自身を見つめ直した時、「シンガーとして活動したい」という思いに至りました。
1ヶ月後には東京に上京し、新たな職場に就いたのちに路上ライブでの活動を開始しました。その路上ライブを始めて1ヶ月経った頃にスカウトされたんです。
やがて、僕をスカウトしてくださったプロデューサーさんは「竜成君に少し近いものがあるから行ってきて」と本作のオーディションを勧めてくださいました。ただその時はまだ正社員として職場で働いていたので、オーディション前日の夜中に内容を知らされ、当日も朝から夕方まで会社で仕事をした後というタイトなスケジュールの中でオーディションを受けることになりました。
ギター演奏と演技、そして歌という三つの項目で審査され、半ば茫然としたまま帰宅したんですが、すぐに合格通知をいただいて本作での主演が決まりました。
キャラクターの「内面」との共通点
──オーディションでは先ほど触れられた3つの審査項目以外に、精神面などをはじめ、どのようなことが求められていたように感じられましたか。
堀田:本作のキャスティングおよびオーデションで、「SOARA」ひいては「ツキプロ」の原作を手がけられたふじわらさんはビジュアル面もそうですが、キャラクターの内面との共通点を特に大事にされていました。
その点において、僕は今回演じさせていただいた大原空というキャラクターと非常にマッチしていると感じられたらしく、結果合格へと至ることができました。
──特にどのような点が、“大原空”というキャラクターとマッチしていたのかはお聞きになられたのでしょうか。
堀田:とにかく元気といいますか、誰とでも話ができる明るさと社交性があり、かといってとても繊細な一面もある。また音楽に対する熱量など、そういったところが空と似ていると感じてくださったようです。
伊藤監督も、僕の“素”の部分が空に似ていること、僕自身が演技も初めてだったことから「無理に演技を意識すると空からかけ離れていってしまう」と考えられていました。そのため監督からは「ありのままの竜成で、名前だけが“大原空”に変わったぐらいの心構えで演じてほしい」と指導されました。
「セリフに気持ちをのせる」という難しさ
──本作にて堀田さんは“初の映画主演”のみならず“初の演技”も経験されたわけですが、その中での苦労についてお聞かせ願えませんか。
堀田:何よりセリフ量がすごく、脚本のどのページを開いても僕のセリフばかりという状態だったので、最初はそれらを覚えることに必死でした。
共演した他のキャストさんたちにも「いつもどうやってセリフを覚えているの?」と尋ねたこととがありましたが、各々によってその覚え方も違うんですよね。そのため、ひとまず全員の覚え方を試してみて、現在の自分に一番有効な方法でセリフは覚え切りました。
ですが今度は、“セリフに気持ちをのせることができない”という課題にぶつかりました。共演者の方からも「気持ちをのせてセリフを伝えてくれないと、こちらも次のセリフで応えようとしても“会話”にすることができない」と指摘されたんです。
その「セリフに気持ちをのせる」という行為が、僕には中々できなかったんです。映画の撮影直前あるいは撮影が始まった直後にようやく「これかな?」という感覚をつかみ始めましたが、それには一番苦労しました。
──ちなみに、その“セリフに気持ちをのせる”という感覚を最も感じることができた場面などはご自身の中であるのでしょうか。
堀田:僕が演じさせていただいた空は中学生の時に偶然作った曲で人気者になり、同時に多くの心ない言葉によって傷ついて音楽を挫折してしまいます。その中で「またみんなで音楽を始めよう!」というきっかけとなる場面があります。
石渡真修君が演じる守人君が空を説得しようとするんですが、まさにその場面の撮影では、思わず演技の中で本当の涙を流しつつも、お互いに相手へ気持ちを伝え合うことができた場面だと感じています。
「俳優」という仕事への姿勢を学ぶ
映画『LET IT BE -君が君らしくあるように-』メイキング映像
──初の演技経験という挑戦の中で、「SOARA」のメンバーたちを演じられた共演者の方々とはどのように接していましたか。
堀田:植田慎一郎君は主に舞台で活動されている俳優さんですが、演技に対して非常にストイックで、僕にも多くの演技に関する指導をしてくださったんです。そのご指導の中で自身の俳優としての技術面を向上させることができましたし、俳優という仕事に対してもっと興味を持つきっかけの一人となりました。
また真修君はとても優しい方で、ただ優しいだけでなく、演技に関する指導も非常に的確でした。特に先ほど触れたセリフへの気持ちののせ方なども、真修君のおかげでその感覚を掴むことができたと感じています。
千春さんは共演者陣の中でも一番芸歴の長い大先輩で、原作のドラマCDでも声優さんをされている方だったんですが、一言でいえば「良い人」なんです。
技術面はもちろん、スタッフさんや年齢の離れている共演者陣と向き合う姿勢や心配りなど、一人の人間として素晴らしい方でした。そのため彼は、僕にとっての俳優、ひいては芸能界でのお仕事におけるプロの理想像となっています。
そして知央君は僕に近い年齢で演技経験もほぼ初めてに等しかったんですが、実写版「SOARA」のメンバーの中で一番の努力家だと感じています。
セリフに関しては僕や他のキャストさんのものまで覚えてしまっていたほどで、演じられるキャラクターの役作りも徹底されていました。演技上で分からないことについても先輩たちへ積極的に尋ね、本作を通じて俳優として成長しようと努力を続ける姿は強く覚えています。
シンガーソングライター/俳優としての「言葉」
──堀田さんはシンガーソングライターとしての活動も続けられていますが、作詞・作曲を手がける人間の目から本作はどのように映りましたか。
堀田:本作に使用されている曲自体はじょんさんが制作されたんですが、原作としてはあくまで空君が作った曲であり、「空君は何のためにこの曲を作ったのか?」という物語もしっかり形作られています。
だからこそ、自身がライブの場面で歌う時や「SOARA」のメンバーたちに曲のことを伝える瞬間の場面などで、これまでの挫折も含めての「一つの形にできた」という喜びを表現することは、俳優として、そしてシンガーとしても熱を込めて演じた場面となりました。
──堀田さん自身はどのようなテーマや題材を歌で表現し続けているのでしょうか。
堀田:看護師として働く中で多くの死を見つめてきたことで「シンガーになろう」と思い至ったという経緯もあり、特に「命」を主題としています。
そして、僕の曲を聴いて少しでも他の人が元気になったり、つらい気持ちが少しでも和らいでほしい。それが実現できる曲を生み出せるよう、現在も曲作りを続けています。
──曲作りにおいて、堀田さん自身はどのような点を重視されていますか。
堀田:やはり言葉選びですね。「どの言葉を使えば、つらい思いをしている人たちや下向きに悩んでしまっている人たちをポジティブにできるんだろうか?」と考えながら言葉を選ぶようにしています。そしてそれは、「どう人々に寄り添っていくべきのか?」という課題にもつながっています。
人って、救うことは難しいんだと感じているんです。いきなりマイナスからプラスへ心情を変化させることは、とても難しい。ですがそれでも、マイナスをプラマイゼロにすることは多分できると思うんです。
だから僕は曲や演技を通じて、それを聴いたり観たりする方たちが少しでもポジティブになれるよう、一つ一つの言葉に気持ちを込めたいと考えながら活動しています。
また本作での演技のように、すでに形作られている言葉と接する際には「この人はどういう気持ちでこの言葉を選んだのだろう?」と逆算して考えることで、その言葉に込められた気持ちを探るようにしていました。
そして「こういう気持ちによってこのセリフは書かれているから、僕だったらそれをこうやって表現しよう」と考え続け、さらに脚本家さんや監督さんの思いと擦り合わせることで最終的な演技を仕上げていく。本作を経て、そのような形で演技と向き合えるようになりました。
「マイナス」によって生まれるポジティブ
──堀田さんは先ほどご自身と空の共通点に「ポジティブ」を挙げられていました。確かにお二人はポジティブであるものの、お話をお聞きしてゆく中でそこには“性質”の違いがあるように受けとれました。
堀田:空君は常にポジティブであり続けるんですが、僕自身はあくまで「マイナスからプラスへ」という変化で成り立っているポジティブなんです。
僕は直面した問題に対し、「この人は何でこんなことを考えているんだろう?」「この人は何のためにこういうことをやっているんだろう?」と向き合った上で「僕は何をすべきなんだろう?」という思考に行き着くタイプなんです。
ですが、空君は「自分が元気になることで周囲も元気にしたい」「自分が元気だからこそ周囲を引っぱっていきたい」と考えるタイプであり、仰る通り同じポジティブでも少し性質が異なるんです。その性質の違いは、演技の中でも意識していました。
──そのポジティブの性質についてより深く理解するためにも、堀田さんにとっての“マイナス”を具体的に教えていただけますでしょうか。
堀田:僕は子どもの頃、日常において他者があまり経験しないようなことも経験してきました。そういった“マイナス”はもちろん、成長し看護師として働き始めた中でも多くの“マイナス”を経験しました。
看護師として働いていると、亡くなっていく患者さんの死だけではなく、遺された家族さんたちの姿も見つめなくてはならない。そして目の前で亡くなった人がいるのに、「大丈夫」なんて言葉は決してかけられない。
そうして様々な経験を続けてきた中で、「いかに遺された人たちの心のケアをするのか?」あるいは「この人にはどういう言葉をかけることが大切なのか?」と常に考えてきました。そして歌詞やセリフにおいても、聴いたりは観たりする方へどう優しく、どう真っすぐ気持ちを伝えられるかを心がけています。
「言葉」とは何か
──劇場公開を迎える本作に対して、現在どのような思いを抱かれていますか。
堀田:本作は僕にとって多くの“初”がつまった作品でもあり、ただただ楽しみと感じています。その一方で、原作を知った上で本作を楽しみにしてくださっている方に、アニメーションとはまた違う「SOARA」、同時に原作へ寄り添っている「SOARA」の魅力をより多くの方にお届けできたらと思っています。
映画館で「SOARA」を原作以上に好きになってもらい、映画である本作と繋がっていく今後の舞台作品などにも足を運んでいたただけら一番嬉しいです。
──最後に、堀田さんにとっての“言葉”とはいったい何でしょうか。
堀田:言葉って、“愛”だと思うんです。
一言発するだけで相手を傷つけることもできるし、救うこともできる。一つ一つの言葉が愛情表現であると認識していますし、だからこそ言葉を大事にして、演技や歌を通じて僕自身の愛情表現ができたらいいなと思っています。
言葉が愛にもなるし、愛が言葉にもなる。そう感じています。
インタビュー・構成/河合のび
インタビュー・撮影/出町光識
堀田竜成プロフィール
1994年生まれ、愛媛県出身。
看護師として働きながら路上アーティストとして活動していたところ、新宿駅前での路上ライブにてスカウトされます。
その直後に受けた本作の出演オーディションにて見事主役の座を射止め、俳優&映画主演デビューを果たしました。
映画『LET IT BE -君が君らしくあるように-』の作品情報
【公開】
2019年10月4日(日本映画)
【原作】
ツキノ芸能プロダクション『ALIVE』シリーズ(ムービック)
【監督】
伊藤秀隆
【脚本】
ふじわら
【主題歌・楽曲提供】
じょん(滝沢章)
【キャスト】
堀田竜成、石渡真修、吉田知央、植田慎一郎、沢城千春、江口拓也、土岐隼一、おかやまはじめ
【作品概要】
2.5次元に存在する架空の芸能事務所としてメディアミックスを展開する「ツキノ芸能プロダクション(通称:ツキプロ)」初の実写映画作品して、ツキプロ所属の音楽ユニット「SOARA」の高校時代を描く青春ドラマ。
大原空役としてオーディションに参加、みごと主演の座を射止めたことで本作が俳優&映画主演デビューとなった堀田竜成をはじめ、在原守人役には舞台「テニスの王子様」出身で数多くの舞台に出演している石渡真修。
また、神楽坂宗司役をモデル・舞台・CMなどで活躍中の吉田知央。宗像廉役をジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストを経て、声優・舞台という場で注目を集める植田慎一郎。
また原作であるドラマCD・アニメで七瀬望のボイスを担当してきた沢城千春みずからが七瀬望役を演じ声優・江口拓也と土岐隼一がカメオとして友情出演したことでも話題となっています。
そして監督はあらゆるメディアジャンルの作品を制作し、2.5次元ダンスライブ「ツキステ。」の演出も手がけた伊藤秀隆が務めました。
映画『LET IT BE -君が君らしくあるように-』のあらすじ
音楽が大好きな少年・大原空は、中学二年生の時に授業の課題として「LET IT BE」という曲を作りました。それを軽い気持ちで動画サイトにアップしたところ、一夜にして大ヒット。ニュースにも取り上げられ、一躍時の人となります。
おもいがけない反響によって自信を持った空は、楽曲制作に夢中になっていく。ですが、その後作った歌の評判はどれも芳しくなく、ついには空を攻撃するようなコメントも飛び交うようになりました。
心ない言葉たちによって傷ついた空は、ついに音楽に触れることをやめてしまいます。
時は流れて空は高校二年生となり、「三年生を送る会」のメンバーとして校内を忙しく走り回っていました。会の目玉の一つとして、在原守人、神楽坂宗司、宗像廉、七瀬望と即席バンドを組んでライブをすることになったのです。
「この歌は俺だけの歌じゃない。みんなで一緒に作った最強の歌だもんな。だから…… さぁ、音楽をはじめよう!」。
果たして、5人が奏でるライブは成功するのでしょうか。
編集長:河合のびプロフィール
1995年生まれ、静岡県出身の詩人。2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、2020年6月に映画情報Webサイト「Cinemarche」編集長へ就任。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける。
2021年にはポッドキャスト番組「こんじゅりのシネマストリーマー」にサブMCとして出演(@youzo_kawai)。