映画『それいけ!ゲートボールさくら組』は2023年5月12日(金)より“笑顔満開”ロードショー!
2023年5月12日(金)より全国ロードショーを迎える映画『それいけ!ゲートボールさくら組』。
「人生100年時代」となった日本で、ゲートボールを通じて困難に立ち向かおうとする人々の“青春”を描いた笑いあり・涙ありの人情コメディです。
このたびの映画の劇場公開を記念し、映画『愛のコリーダ』(1976)やテレビドラマ『大追跡』(1978)などで知られ、本作が80歳を超えて初の主演映画となった俳優・藤竜也さんにインタビュー。
俳優というお仕事の“冒険”としての魅力、2023年現在の藤さんが思うお仕事の“これから”についてなど、貴重なお話を伺うことができました。
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俳優を続けられた秘訣は
──『それいけ!ゲートボールさくら組』の出演オファーを受けられた際の、作品に対する第一印象を改めてお教えいただけませんでしょうか。
藤竜也(以下、藤):今はだいぶ落ち着きつつありますが、2020年にコロナ禍になり、自分もリモートという形で人と会うようになったり、誰かに「飯食いに行きましょう」と気軽に言えなくなったりと、寂しい思いをしていたわけです。
その中で「ゲートボール映画」という変わり種だけれども、中身はとても王道なコメディで、スパッと勢いのある楽しそうなホン(脚本)が来たんです。それが今回の映画であり、「コレは、演らせてもらいたいな」と思いましたね。
──本作は、藤さんが80歳を超えられて初の主演映画でもあります。藤さんにとって、これまで俳優として第一線で活躍し続けられた一番の秘訣は何でしょうか。
藤:人より、体が丈夫なんだと思うよ(笑)。
ただ若い頃は、「80歳」なんて本当に特別な人しか生きられないと感じていましたし、まさか自分がここまで俳優を続けられるとは思ってもいませんでした。
それも、この体が丈夫だったおかげです。
俳優の仕事という“冒険”
──「体が資本」というべき俳優を続けてこられた秘訣を、藤さんが最も痛感されたのはいつ頃だったのでしょうか。
藤:僕は元々日活の出身だったので、アクション映画に一番多く出ています。ただやっぱり、石原裕次郎さんや人気の俳優さんが演るような大きい役を、最初からもらえはしない。むしろ当時は、階段から転げ落ちる役など、スタントの危険手当が付くような役が多かったわけです。
またスタントにも色々な種類があったんですが、いくら技術を磨いても、どうしても筋肉をつけておかないと怪我をしちゃう。そのために始めたトレーニングが習い性となり、30歳を過ぎた頃にはテレビで刑事物のアクションドラマを演らせてもらえるようになったんです。
そんなことをやっていたから、今でも体を動かすのは全然億劫じゃないんです。とは言っても、今の自分がしているトレーニングは、鉄棒での懸垂などサーキットメニューをしながらのウォーキング程度ですが。
そもそもアクションだけではなく、どの作品であっても、自分の体をしっかり整えておかないと1本の映画を演じ切れる自信はないですね。そのためにも、体作りは今でも続けています。
──俳優として一つの作品と向き合うことは一つの“未知の世界”と向き合うことと同義で、心にも負担が生じる仕事であるからこそ、それを支えるための肉体を常日頃から“戦える状態”に保っているということでしょうか。
藤:本当に好きなんですよ、人間を演じるのが。それは今も同じで、どうしたって飽きないんです。
また、何も仕事がない時はあっという間に日が暮れてしまうのに対して、俳優の仕事があると「この1ヶ月は、一体いつ終わるんだ」と思うほどに、体感する時間が延びていく。そして仕事が終わった後に家へ帰ると「自分は、うんと“遠く”から帰ってきたんだ」という感覚を味わうんです。
俳優の仕事は、“冒険”そのものです。だからこそ、この仕事はいつまで経っても楽しい理由ですし、冒険を乗り切るためにも体は大切なんです。
これまでも、これからも“最後”を演じる
──「人生には、遅すぎることなんてひとつもない」そして「だからこそ、生きることは面白い」と観る者に感じさせてくれる本作ですが、藤さんが「生きることは面白い」と感じられる瞬間はどのような時なのでしょうか。
藤:毎日、ですね。
詩人のゲーテは死の間際に「もっと光を!」と口にしたなんて話がありますが、日々を生きる中で「“明かり”って、“光”っていいな」とその言葉の真意が分かるようになりました。
ただ、そんなものも、もうすぐ終わる。それは皆がそうで、長いようで本当に短い時間が人生ですよ。だからこそ、何もしてない人はあっという間に日暮れになっちゃうんです。
──最後に、2023年現在の藤さんにとっての、俳優という仕事の“これから”をお教えいただけませんでしょうか。
藤:あまり、大げさに捉えてはいないんです。お仕事をいただけるうちは続けられたらと思っていますが、これまでもずっとそうだったように、一本一本、そして一日一日が「これが最後になるだろう」と考えているんです。
若い頃はスタントありきのアクション作品への出演が中心でしたし、そのスタント撮影の中で人が亡くなる瞬間を目撃することもありましたから、「明日は我が身かもしれない」と感じる時はいくらでもありました。「この一本だけでいい」「この仕事が終わるまで生きていれば、それでいい」の積み重ねが、今までの仕事なんです。
怪我をすることも多々ありましたが、それでも俳優は、続けるに値する仕事だと思えた。僕は小さな存在だけれども、そんな僕の命を、この仕事に懸けていいと思えた。だから、俳優をずっと続けてきたような気がするんです。
インタビュー/河合のび
撮影/田中舘裕介
藤竜也プロフィール
1941年8月27日生まれ、神奈川県出身。
『愛のコリーダ』(1976)で報知映画賞最優秀主演男優賞を受賞、『村の写真集』(2003)で上海国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞、『龍三と七人の子分たち』(2015)で東スポ映画大賞主演男優賞受賞。
ほか『愛の亡霊』(1978)、『アカルイミライ』(2002)、『台風家族』(2019)など100本以上の映画に出演。第一線で活躍し続ける名優。
映画『それいけ!ゲートボールさくら組』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【脚本・監督・編集】
野田孝則
【音楽】
安部潤
【主題歌】
Rei「Smile!with 藤原さくら」(Reiny Records/Universal Music)
【キャスト】
藤⻯也、石倉三郎、大門正明、森次晃嗣、小倉一郎、田中美里、本田望結、木村理恵/赤木悠真、川俣しのぶ、中村綾、直江喜一、毒蝮三太夫(特別出演)、三遊亭円楽(友情出演)/山口果林
【作品概要】
「人生100年時代」となった日本で、ゲートボールを通じて困難に立ち向かおうとする人々の“青春”を描いた人情コメディ。主人公・織田桃次郎役を、本作が80歳を超えて初の主演映画となった名優・藤竜也が演じる。
桃次郎の元ラグビー部仲間たちを石倉三郎、大門正明、森次晃嗣、小倉一郎らベテラン俳優陣が演じるほか、山口果林、田中美里、本田望結が出演。また特別出演の毒蝮三太夫にくわえ、生前はゲートボール愛好家として知られ、本作が遺作となった故・三遊亭円楽が友情出演を果たした。
映画『それいけ!ゲートボールさくら組』のあらすじ
織田桃次郎(藤竜也)76歳。学生時代にラグビーで青春を謳歌したのはもう60年ほど昔の話で、光り輝いていた青春時代は、はるか遠い記憶の彼方だ。愛する妻が遺したレストランをカレー専門店「MoMo八番屋」として続けてはいるが、寂しさと物足りなさを感じる日々を送っていた。
そんなある日、かつてラグビー部で、いつも自分たちを励まし続けてくれたマネージャー・木下サクラ(山口果林)と再会。彼女が経営するデイサービス「桜ハウス」が倒産の危機と知り、元ラグビー部の仲間を集結させて、何かできないかと模索する桃次郎たち。
桜ハウスを立て直すため銀行から融資を受けるには、加入者を増やすことが必要条件。そこで、試行錯誤の末にたどり着いたのは、ゲートボール大会に出場して優勝を目指し、施設の知名度を上げることだった!
とはいえ、ラグビーで培った肉体は見る影もなく、今やただのポンコツのジジイたち。しかもボールをゲートに通すだけだけと小バカにしていたゲートボールは、実はなかなか奥深いスポーツで、練習段階から早くもギブアップ寸前?
それでも、かつて青春を捧げたラグビーが持つ「ワン・フォア・オールオール・フォア・ワン」の精神がゲートボールにも通じることに気づき、衰えなんてなんのその、友情復活!青春復活!体力復活?熱血ジジイたちの快進撃がはじまった。
ところが、思わぬ強敵が立ち塞がる。桜ハウスのライバル施設「漆黒の杜(もり)」もゲートボール大会に出場するため、最強チームを結成していたのだ。彼らの企みは、桜ハウスを倒産に追い込み、その土地に新しい温泉センターを作ること。
悪徳ゼネコン企業の陰謀が渦巻く中で、ジーサンたちそれぞれにも乗り越えなければならない問題が浮上し、あっちもこっちもピンチの大連続!固いチームワークで困難を乗り越え、桜ハウスを救うことはできるのか?
ライター:河合のびプロフィール
1995年生まれ、静岡県出身の詩人。
2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、映画情報サイト「Cinemarche」編集部へ加入。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける(@youzo_kawai)。