ホラー映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』は、2018年初夏TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。
カリフォルニア州サンノゼに実在するウィンチェスター・ミステリーハウスは、今も幽霊屋敷と噂されています⁈
全米で語り継がれる実話に隠された恐怖の物語が、この夏、日本公開です。
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映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』の作品情報
【公開】
2018年(オーストラリア・アメリカ映画合作)
【原題】
Winchester
【監督】
マイケル&ピーター・スピエリッグ
【キャスト】
ヘレン・ミレン、ジェイソン・クラークエリック、サラ・スヌーク、アンガス・サンプソン
【作品概要】
『クィーン』でアカデミー主演女優賞を獲得したヘレン・ミレンを、主演にサラ・ウィンチェスター役に迎え、『ジグソウ ソウ・レガシー』や『プリデスティネーション』などで知られるマイケル&ピーター・スピエリッグ監督が、実在する幽霊屋敷ウィンチェスター・ミステリーハウスにまつわる実話を映画化したホラー映画。
精神科医エリック役に『ターミネーター:新起動 ジェニシス』のジェイソン・クラーク。
映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』のあらすじ
“西部を征服した銃”とまで呼ばれる名高いウィンチェスター銃。
それを開発したことによって莫大な資産を築き上げたウィンチェスター一族。
しかし、その成功とは裏腹に、娘と夫を次々に失ってしまった未亡人サラ・ウィンチェスターは、残された遺産とともにカルフォルニアに邸宅を構えました。
そこでは大工や黒人労働者たちが、毎日24時間交代制で家の増改築を続けていました。
サラが住む屋敷は、その数500の部屋を所有する怪奇な屋敷へと変貌遂げていきます。
自ら不遇は人の命を奪う道具を作ったことで、霊的な原因があると考えたサラは、高名な霊媒師に相談をしました。
一族に身に起きる不幸は全てウィンチェスター銃によって命を落とした亡霊たちの仕業であり、彼らを閉じ込めるために屋敷を拡大し続ける必要があると告げられたためでした。
妄信的に増改築を続けるサラをウィンチェスター社の経営陣はいぶかしく思い、精神不安症を理由にサラから経営権を奪うため精神科医エリックを屋敷に送り込みます。
サラの屋敷に到着したエリックは、黒衣を纏うサラと面会しますが、彼女は見るからに頭脳明晰であり、逆にエリックについて興味を持ち彼の精神状態について意見をしてきました。
滞在中にエリックは毎晩のように怪奇な現象に苦しめられ、次第に精神を追い込まれていきます。
不審に思ったエリックが屋敷を調べだすと、厳重に閉ざされた部屋を発見してしまいます。
そんな矢先、サラの姪マリソンの息子ヘンリーが、何者かに取り付かれるようになり、命の危険にさらされます。
ウィンチェスターハウスに現れる亡霊の正体とは何か、一方でエリックの過去に隠された秘密とは何か。
次々に起こる戦慄の恐怖は、思いも寄らない事態に拍車をかけていく…。
映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』の感想と評価
サラ役の女優ヘレン・ミレンとは
映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』で、重要な役柄を演じたのは、演技派女優でオスカーにも輝いたヘレン・ミレン。
ヘレンは映画だけでなく、テレビや舞台など幅広く活躍しているイギリスのロンドン生まれの女優です。
1963年にナショナル・ユース・シアターでデビューした後、1967年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに入団すると、そこでの演技で高い評価を得ます。
映画で活躍を見せるようになったのは60年代後半ですが、注目を浴び始めるようになったのは、1980年の『長く熱い週末』や1981年の『エクスカリバー』でしょう。
1984年に『キャル』のマーセラ役でカンヌ国際映画祭の女優賞受賞を受賞します。
その後、テレビ映画『第一容疑者』(1991~2006)への出演でも人気を博しました。
そして1994年にシャーロット王妃を演じた『英国万歳!』で再びカンヌ国際映画祭の女優賞受賞。
さらに、2007年の『クィーン』ではエリザベス女王を演じ、アカデミー主演女優賞ほか数々の賞を受賞しました。
近年の作品では、2014年に『マダム・マロリーと魔法のスパイス』のマダム・マロリー役、2015年に『黄金のアデーレ 名画の帰還』のマリア・アルトマン役、2016年に『素晴らしきかな、人生』のブリジット役、2017年に『ロング、ロングバケーション』でヘラ役を演じています。
きっと、あなたも何かの映画で、ヘレンをご覧になっているのではないでしょうか。
名女優ヘレン・ミレンだから適役
参考映像:『ロング、ロングバケーション』
2018年に日本でも公開されたヘレンの前作『ロング、ロングバケーション』では、彼女はドナルド・サザーランドと共演。
コミカルな老夫婦の愛の逃避行?とも言えるユニークな作品でも、意志の強いヘラ役を演じていたヘレン。その際に強盗たちにライフル銃を構えていたの勇姿を覚えていらっしゃるでしょうか。
今回の『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』でも、ヘレンは強い意志を持った未亡人サラ・ウィンチェスター役を演じています。
なぜ、カンヌ女優賞やオスカー女優賞を得たヘレン女が、幽霊の出るホラー映画に出演したのか。
それこそが本作を理解するのに重要なポイントになっています。
女優賞に輝いた『英国万歳!』ではシャーロット王妃、また『クィーン』ではエリザベス女王を演じきったヘレンだからこそ、『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』では、サラ・ウィンチェスター役に、まさにピッタリ!と言えるでしょう。
本作のプロデューサーであるティム・マクガハンは、「ヘレン・ミランとサラ・ウィンチェスターには共通点が多い。ヘレンにはサラと同じ強さと危うさがある」と述べています。
また、映画『ジグソウ ソウ・レガシー』の共同監督の1人であるマイケル・スピエリッグは、このように語っています。
「ヘレンは、サラの発明家としての情熱と進んだ考え方に惹かれたらしい。サラをに感じるところがあったのだろう、幽霊屋敷やホラーといったジャンルの映画にこれまで出演したことなかったからね。僕は最初に思ったよ、“ヘレン・ミランがこの映画見ててくれたらすごいんだけどな”と」
製作担当のティムやマイケル監督たちがここまで言わせのには、本作が実際の人物を扱った物語であるとともに、そこに真実味を与えることに名女優ヘレン・ミランが最適であるが、1番はあげられる理由でしょう。
その他にも、彼女のこれまで過去作で演じてきた意志の強い女性のイメージや貴族社会のキャラクターを演じた品格にあります。
そのことが、“西部を征服した銃”と言われたウィンチェスター銃を世に出した経営者一族の風格やバイタリティ、そして、夫や娘を次々に亡くし莫大な遺産を抱える未亡人の心情を品を持って表現しています。
また、ヘレン・ミランはサラ役を演じるにあたり、事前に関係者にサラという人物の聞き取りを入念いおこなったそうです。
しかし、サラ本人の日記があるわけでもなく、また、人によってサラの印象は異なり、真相に辿り着くのは無理だったと語っています。
それでもヘレンはこのように述べています。
「サラと関わった人のところに聞きに行って、彼女の人となりを感じるのは大切なことよ。彼女は他人に大いに共感ができる、感情豊かな女性だったんじゃないかしら」
ヘレンはサラ本人の真実をどのようだったかよりも、関係者にリサーチした上で、「他人に大いに共感ができる、感情豊かな女性だったんじゃないかしら」と判断しています。
本作『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』の鑑賞ポイント「他人に共感できる感情豊かな想像力」なのです。
ヘレンの演じたサラは誰に想いを馳せていたのでしょう。
また、誰と共感しようとしたでしょう。
そのサラがそのような気持ちを抱いた原因とは何か。
そこに寄り添うことが本作のテーマを読むことができますよ。
ホラー映画好きも苦手な人も見て!
この作品に登場するアメリカに実在する世界で最も有名な幽霊屋敷“ウィンチェスターミステリーハウス。
映画の登場する際に、昼夜問わず、大工や黒人労働者たちによって増改築を絶え間なく続けたこの屋敷は、確かにディテールも凝られていて面白い造形を見せてくれます。
ウィンチェスター銃を世に送り出したことで、莫大な財産を相続したサラは、いったい何のために7階建ての屋敷に500もの部屋を作ったのでしょう。
「どこにも行き着かない階段」や「床に向かって開く窓」、「迷路のようなホール」、「至る所にある数字の13にまつわる装飾」などを、この作り続けた訳は要チェックですよ!
そこが「他人に共感できる感情豊かな想像力」に繋がっていきます。
そのようなことで、幽霊屋敷を扱ったホラー映画はないように思います。
その理由こそが、ホラー映画ファンのみならず、現代のアメリカ社会の状況をも突いた作品に仕上がり、ホラー映画を苦手な人にも、ぜひ、オッかなビックリ見て欲しいポイントです。
ここからは少し本作の映画からは脱線しますが、あなたの“心と体で”感情豊かに想像してみてくださいね。
例えば、写真は“全てが遺影”であり、死した魂をミイラのごとく残しておくもの。人は先に亡くなった者に想いを馳せてしまうのか。
電話や交信管は、姿の見えないものと会話する道具であるなら、霊媒師と同じではないか。
精神科医が診察する際に実際に病んでいるのは患者なのでしょうか。
見えない恐怖とは実社会において、どのような存在を示すか。
屋敷の主人が女性であるとき、最も強い女性とはアメリカにおいてどんな人物か。
日々、奇怪に肥大し続けるする屋敷とは、何を象徴しているのか。
そんなことに想像力を膨らませると、本作『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』は、ジャパニーズホラーといった借り物ではなく、アメリカが自国らしいホラー作品を体現して作られたと理解できるかもしれません。
また、だからこそホラー映画を苦手な人も楽しめるはずです。
その語り部の中心に名女優ヘレン・ミランは、とても適任で存在感を示しており、申し分のないキャスティングです。
また、共演の『エベレスト3D』のジェイソン・クラークや『プリデスティネーション』のサーラ・スヌークなども、それぞれが物語の中で何かと対峙するので、そこも注目してくださいね。
さて、「ホラー映画を苦手な人も楽しめるはず!」とは言うものの、『ジグソウ ソウ・レガシー』のマイケル・スピエリッグ&ピーター・スピエリッグ監督の怖がらせ方は、ズラし上手なので、女性のあなたは要注意でご覧ください。
また、あなたが大邸宅に住んでいなくても、家に“ドア”や“階段”、また“廊下”のあるなら、なおさら鑑賞は注意です…。
まとめ
幽霊屋敷を扱った作品は過去に幾つもありました。
1963年にロバート・ワイズ監督の『たたり』、1979年にスチュアート・ローゼンバーグ監督の『悪魔の棲む家』。
1980年にスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』、1982年にトビー・フーパー監督の『ポルターガイスト』。
近年でも『死霊館』や『ダークハウス』などもありました。
それはホラー映画史のなかでは、古典中の古典、あるいは伝統的だといっても良いかもしれません。
しかし、今の時代性を“実在の幽霊屋敷”や実在した人物”にメタファーを盛り込んだ映画は、本作ならではのホラー作品の味わいいえます。
この“奇怪な屋敷”には、来る者が迷い込んだのではなく、居る者が招いたのです。
それは心の内にあるものや、体という肉体を持つ故の恐怖心なのかも知れません。
映画館で本作の実在した人物を描いた姿を目撃したあなたは、招かれた故に何かを感じてみるのもよいかもしれません。
怖くて!驚いて!震えて!今のアメリカ社会について考えさせる作品かも?
ホラー映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』は、2018年初夏TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。
ぜひ、お見逃しなく!