悪魔と刑事が端正に向き合った恐怖の根源『NY心霊捜査官』
エクソシズムという心霊恐怖の犯罪捜査というスリラー的要素の『NY心霊捜査官』は、実際にニューヨークで発生した事件を基にしています。
原作は、これらの衝撃的な事件を全て実際に経験した刑事ラルフ·サーキが、20年間警察に勤務しながら経験した事件を集めた小説『Bewar the Night”』。
「パイレーツ·オブ·カリビアン」(2003~)や「CSI」(2000~)ジェリー·ブラッカイマー製作、『フッテージ』(2012)のスコット·デリクソン監督、『トロイ』(2004)のエリック·バナと『X-ミッション』(2015)のエドガー·ラミレス主演で、ニューヨークの都心で発生したカルト的な奇怪な事件を追跡していく刑事の物語を描きだします。
CONTENTS
映画『NY心霊捜査官』の作品情報
【公開】
2014年(アメリカ映画)
【原題】
Deliver Us from Evil
【監督】
スコット·デリクソン
【キャスト】
エリック·バナ、エドガー·ラミレス、オリヴィア·マン、ショーン·ハリス、ジョエル·マクヘイル、クリス·コーイ、スコット·ジョンセン、ルル·ウィルソン、オリヴィア·ホートン、ドリアン·ミシック
【作品概要】
『NY心霊捜査官』は、典型的という言葉がよく似合うハリウッドホラー映画。ホラーの大筋であるエクソシズムと、見る人を驚かせる装置を積極的に活用し、悪霊から市民と家族を守ろうとする刑事の話を展開します。
スコット·デリクソン監督は、『フッテージ』(2012)の監督を迎え、同様の作品を製作しました。そして、原作の数多くの事件の中で、最も衝撃的で劇的でミステリーな事件を、映画『NY心霊捜査官』に描きました。
数多くの事件が実話だという事実に衝撃を受けたスコット·デリクソン監督は、自らシナリオを書いてから映画化作業に取り掛かり、原作の中の物語から最も衝撃的でミステリーな事件を選び、脚本に盛り込み、実際に事件が起きた場所で撮影しながら、映画の中の刑事ラルフ·サーキが経験する事件現場を生々しく再現。現場のリアリティーを生かしています。
映画『NY心霊捜査官』のあらすじとネタバレ
2010年のイラクにて。ヤシの木の多いイラク熱帯地域、傭兵なのか職業軍人なのか不明である3人の軍人サンティノ、グリックス、ジミーが、敵を発見し、交戦しています。そして、軍人たちが発見した奥深い地下洞窟で敵の捜索をしていると、録画中のカメラが突然暗くなり、火災になりました。
時は流れて、2013年。雨の降るニューヨークの路地に、ラルフ·サーキ刑事の姿がありました。
サーキは冷たい風呂敷に包まれているモノを抱きしめて、何かを考えています。その中には、命の花も咲かせずに散ってしまった赤ん坊の硬直した死体がありました。
清掃員がゴミ箱に捨てられていた幼い新生児の遺体を発見し、通報したのです。医療チームが人工呼吸をしましたが、既に息を引き取ってしまっていました。
サーキは、裕福な家庭の家長として、バトラーと素晴らしいパートナーを組んでいます。
彼らが警察署に戻る途中家庭内暴力の通報が入り、バトラーとその家庭を訪問すると、妻の顔には殴られた跡がありました。夫ジミーが妻に暴力を振るった為、サーキが逮捕しようとしますが、ジミーはサーキを殴って逃げてしまいます。
逃げる途中に、バトラーは走って追い掛け、サーキは車で近道で向かい、容疑者を現場で逮捕することに成功しました。その時、容疑者の爪に自傷の痕跡を発見するサーキ。
一方で、ある女性の写真を見ながら悩んだ挙句、ランニングに出掛けた男がいました。彼は、お酒を飲んだりタバコを吸ったりしている神父メンドーサです。もちろん、喫煙と禁酒をしないのは神父と思うかも知れませんが、必ずしもそうでなければならないわけではありません。
再び、動物園から通報を受けて訪ねたサーキとバトラーは、子供を檻の中に放り投げてしまった女性が、行方不明になったということを聞きます。
サーキとバトラーは、車から外に出て周囲の暗い状態で、一人の女性を捜すために、動物園を捜索しました。そして、行方不明の女性らしき人が独りぼっちで、泣いたり、うわ言を話したりしているのを見つけます。誰がどう見ても、精神不安定な状態です。
すると、女性は口から泡を吹き出し、「突き抜けろ」と連呼します。バトラーを始め警官達は、彼女を薬物中毒だとみなしますが、サーキは多少気になっています。
「突き抜けろ」というのは、ジム·モリソンの曲である”ドアーズ”の歌詞の引用からでした。
実は、サーキは勘が非常に鋭く、鼻が利く長所がありました。その上、霊感がありました。警察署内では有名であり、バトラーはサーキのその能力に、彼を”レーダー”と呼んでいます。
その時、ライオンの檻の壁面にペンキを塗っていたフードを被った男を見つけました。彼はペイント工で、壁に何かを消していたと話す警備員たちの話から、サーキは暗闇の中に隠れた男を呼ぶと、フードをはずし彼の顔を現わしました。
すると、一人で呟いていた女性が、急に静かになりました。
サーキは、彼から目撃者の陳述を受けようとしますが、男は急にライオンの檻の中に消えてしまいます。サーキは、追い掛ける為にライオンの調教師に、檻を開けてくれるよう指示し、ライオンの檻の中へ入って、男の行方を追います。
しかし、出て来たのはライオン2頭。驚いたサーキは銃を向けながら、ゆっくりと出口へ下がって行きます。
一方、遠くからこの危険な状況を確認したバトラーも銃を向けます。調教師がタイミング良く、檻を閉じてくれたお陰で、非常に大ピンチの危機を免れたサーキ。
朝になり、サーキは妻ジェンと娘クリスティーナが待っている家へと帰りました。
このような出来事が偶然に起こるのではなく、何かあることと関連があると直感したサーキは、本格的に事件を暴き始めます。2つの事件の共通点は、犯人たちが何かを掻いて手がすり減っているということです。
警察署に出勤したサーキとバトラーは、前日に、ライオンの檻に赤ん坊を投げたジェーンの保護者と名乗るメンドーサ神父が現れ、今起きている出来事が悪霊と関連があることを聞かされます。
そして、メンドーサは、ジェーンを精神病院に連れて行きました。
警察署では、また別の事件が寄せられていました。ベン·モントに住む女性が、地下室にペンキを塗り直してから物が動いて変な音が聞こえると言うのです。
即ち、‟地下室に怨霊が住んでいる”という情報を得たことで、サーキの‟レーダー”というニックネームを持たせる能力が、前日の事件との関連性を推測させます。
7年前に亡くなった父親が、「ドアを閉めろ」という言葉を口にするということでした。サーキは、ジェーンが口ずさんでいた”ドアーズ”の歌を思い出します。
サーキとバトラーは、ベン∙モント家を訪ねました。到着した家は薄暗くて、そこに住んでいる家族は、「地下室には幽霊がいる」と言います。
この家族は、夫のアルバゲッティと妻のセラフィナと、マリオという息子の3人です。セラフィナはスペイン語しか話せない為、息子のマリオが通訳してくれます。
妻のセラフィナが通報したようで、家族は恐怖に怯えており、新しい電球をつけても電気が消えるというテナントの変な兆候を見せると言いました。
彼らを地下室に案内する家主は「ここに悪魔がいる」と言い、サーキとバトラーは、真っ暗な地下室に下りて行きます。
暗い所を捜索して聞こえる雑音に、変な音が聞こえて来ました。何かが動いたと思えば、ネズミだと分かったサーキとバトラーですが、恐怖と驚きから落ち着こうと外の空気を吸いにバトラーは、地下室から出て行きます。
1人残ったサーキは、捜索を続けますが、突然サーキの後ろから死体が落ちて来ました。死体からは無数の羽虫が飛び出しり、腹部からは腸がはみ出ていました。腐敗してかなり経っているようでした。
サーキは、彼の身元を確認するため、「ペイントをしに2人が来ていた」と言う家主に、人相や着衣を尋ねます。
死体は、ペイント工の一人で、彼の名前はグリックスでした。家主は、もう一人のペイント工は、黒いフード帽を被った人だったと供述します。
グリックスの部屋を捜索すると、そこに家族写真がありました。グリックスの妻が赤ん坊を捨てた女性・ジェーンであることを知り、また別の写真ではグリックス、ジミー、フードトレーナーの男3人が軍服を着て撮ったのを発見しました。
軍服の名札から黒いフード帽の男性が、サンティノであることが判明し、サンティノを捜しに行くことになります。
グリッグスの部屋の奥には、ドーベルマンがベッドに繋がれており、ベッドの横には、腹を引き裂いた猫の遺体が十字架に磔にされていたのです。
朝になり、家に帰って来たサーキは、捜査の混乱に陥っており、ジェンの妊娠の知らせにも喜んでやれません。
申し訳ないという言葉だけのサーキです。彼にとって、今週はあまりにも大変な一週間だったからです。家族の面倒を見て欲しいジェンに、すまない気持ちばかりです。
動物園のCCTVを調査するサーキのもとへ、ジェーンの行動に疑問を抱いたメンドーサが、「彼女の行動を観察する為にも監視カメラを見たい」と提案します。
「ジェーンは悪霊に憑依されたもの」と話しますが、超自然的な現象を理解出来ないサーチは、悪霊や幽霊に関するこの話も信用出来ず、ジェーンを助けようとするメンドーサに「何かあったら教える」と、背を向けてしまいます。
国防省が、グリックス、ジミー、サンティノの軍服務資料を送って来たのですが、彼らはイラク派兵軍人で同じ小隊員で、最初洞窟で何かがあった後、突然牧師に暴行を加え、ナイフで刺して不名誉な除隊をしたことが分かりました。
また、グリックスの剖検結果、彼はペイントの希釈薬品を飲んで自殺したことが判明します。有力な容疑者として、サンティノに決定されました。
そして、サーキとバトラーは、監視カメラを見ながら事件を確認しようとします。
映像では、壁にペンキを塗っていたサンティノが、ベビーカーを押して来たジェーンの前に近付くと、ジェーンは赤ん坊を檻に放り投げます。そして、何事もなかったように再びペイントするサンティノ。その上、ライオンたちはサンティノを攻撃せず、まるで彼と会話をしているように見えました。
そして、サンティノが壁に書かれた文字を消す時、何処からか異様な雑音の音が聞こえて来て、バトラーに聞きますが、「何の音も聞こえない」と言います。
そしてサンティノは、CCTVに挑発的な視線を向けます。檻を開けライオンに声をかけては、檻の中に入って行くサンティノの姿を見ている途中、突然現れた血塗れの男の顔に、サーキは驚きます。
しかし、バトラーは何も見えなかったようです。早戻しして再生しても、何も出て来ませんでした。
映画『NY心霊捜査官』の感想と評価
スコット·デリクソン監督は、エクソシズムに関するテーマで作った映画『エミリー·ローズ』(2005)でも、素晴らしい映画を作り上げました。
スコット·デリクソン監督が作った二番目のエクソシズム映画『NY心霊捜査官』も、このような実話素材の映画です。
最初に『エミリー·ローズ』(2005)を出した時も、実話と宗教を結びつけたので、それほど新しくなかったです。むしろ実話だということを言及せずに見せたら、ぞっとする奇怪なホラーだったからです。
20年勤続したニューヨーク警察出身のラルフ·サーチの、自分の経験談を書いたノンフィクション”Bewar the Night”を読んだジェリー·ブラッカイマーが、関心を持って映画化しようと考えたといいます。
映画は、場面と演出がとても怖い映画でしたが、最後まで没頭して見る程、没頭感は相当なものだった映画でした。
スコット·デリクソン監督のホラー物が悪くないのは、『エミリー·ローズ』(2005)と『フッテージ』(2012)でも、明らかになりました。
実話を基にした『エミリー·ローズ』(2005)を通じてエクソシズムの恐怖、『フッテージ』(2012)を通じてぎっしりと配列されたストーリーの恐怖を、よく見せてくれたスコット·デリクソン監督は、スリラーとホラーをフィクションではなく実話の中に溶け込みながら、この全ての物語が私の周囲で実際に起こり得る話だということを説得し、恐怖感を直調します。
映画館や居間で見守る観客らが、どの時点でどのように驚いたり、怖がるかを予測しながら作り出すトリックやエクソシズムの過程は、ホラー物の公式を守りました。
CCTVを通じて、びっくり恐怖を披露することや、ダイナミックでありながら奇怪なエクソシズムを目にし、驚く観客の反応を期待して作ったに違いない、そのようなシーンです。
また、視覚的な恐怖と聴覚的な効果を効果的に使い、緊張感を高めます。その映画の殆どが、暗闇に包まれた夜です。
闇の中でやっと識別可能な顔が、人の顔か幽霊の顔か見分けがつかない瞬間に飛び出す場面や、周波数がずれた雑音、突然の子供達の笑い声など、神経をひく音と映像が劇的な緊張感を張りつめています。
映画の前半はミステリーな事件を解いていくスリラーの雰囲気に、身震いがするのでなかなか面白かったです。
退魔儀式が素材として登場しただけに、劇のクライマックスは退魔儀式へと突っ走ります。
後半部の警察署の取調室で行われる4段階の攻防を繰り返すエクソシズムは、密室恐怖のピークに達します。今まで殆どのエクソシズム映画が、弱い少女の体に宿った悪霊を退治するものだったとすれば、『NY心霊捜査官』に登場する悪霊に取り憑かれた男は、丈夫な男性です。
当然、体が引き裂かれる退魔儀式の水位はハードゴア的です。非常に、迫力溢れる場面を演出していました。
特に、1段階で悪霊が叫ぶ場面は、最近見た映画の場面の中で、指折り数えられる程、迫力溢れる印象的な場面でした。
オカルト映画でありながら、刑事が主人公で、捜査を通じて事件を進行する方式の独特な映画『NY心霊捜査官』のエリック·バナを始め、エドガー·ラミレス、ショーン·ハリスなど、俳優陣の演技は大変素晴らしいです。
この映画で、主演を引き受けたとエリック·バナとエドガー·ラミレスは、現実味のような恐怖を見事に見せてくれました。ショーン·ハリス、個性的な彼の演技をこの映画で、改めて感じました。
心理的に圧迫していくスタイルの演出も、満足出来ます。物語の構成が細かく、より実感出来る映画でした。ただ、刑事捜査物として見ても、なかなかうまく出来た映画ではないかと思います。
過去の秘密の記憶から抜け出せないラルフ·サーキの苦悩は、エリック·バナを通じて真剣に描かれます。また、瞬間瞬間強烈なイメージと秘密を明らかにしていくエピソードは、張り詰めた緊張感を維持しながら、圧倒的な瞬間を作り出します。
このようにして、スコット·デリクソン監督は、私達の人生の恐怖を、推理、サスペンス、アクション、ゴア、そしてエクソシズムの超自然現象まであまねく描き出し、興味深いホラー映画を作り出しました。
ラルフ·サーキ刑事の心的変化
作品は、イラク戦が真っ最中の戦場で、3人の米軍によって目覚められた悪魔が、戦争が終わった後、米国についてきて、ペストのように広がっていく超自然的な現象を見せてくれます。
雨の夜、ニューヨークのブロンクスの裏通りにゴミ箱から赤ん坊の遺体が見つかったり、子供を動物園のライオンの檻に投げつけた非情な母親がいたり、手に血がにじむほど壁を掻く家庭内暴力犯がいたり、地下室で奇異な現象が起きたり…。
そして、この全ての事件を受けつけて出動する刑事が、ラルフ·サーキ。最初はとんでもない事件だと思って事件を暴いていますが、現場の壁ごとに”インボカマス”という単語が書かれていたという共通点を見つけ、次第に悪魔の存在まで認識するようになる展開です。
ここで注目すべきは、やはりカトリック信者だったラルフ·サーキ刑事が、幼い頃に無神論者になった一連の事件があったということです。
そして、酒とタバコを一緒に暮らすイエズス会神父のメンドーザが合流し、物語は典型的なエクソシズムとして展開されます。
ストーリーの流れに沿ってみると、赤ん坊を遺棄する母親と家庭内暴力を行使する父親のような不安定な家庭と相反して仕事にしがみつくが、それなりに堅実な家長の役割をするラルフ·サーキの姿を、オーバーラップする様子が見えます。
ところが、人間の内面に眠る先天的な悪を説くメンドーザ神父と同行し、次第にトラウマを現わすラルフ·サーキの本音が現われる時点になり、作品の主題が見え始めます。
それは、一連の事件で神の存在を否定するようになった主人公の超自然的な事件と遭遇する過程が、必然に縛られながら、他人に取り憑いた悪魔を追い出すエクソシズムによって、彼の宗教的な信頼を取り戻すというものです。
エクソシストという名のホラーの真意
この映画の面白い点は、まず、映画のエンディングが終わりではないという点。
ハッピーエンドではないハッピーエンドで終わります。悪霊は退き、サーキ刑事の娘や妻も命を落とすことはありません。
そして、映画の途中で黒人刑事に悪霊が入りそうになり、何かを見る人にそのような考えを植えつけさせ、何も起こさないのです。
普通このような映画は、悪霊が聞こえたと神父を呼び、最後は癒されるようですが、世に悪霊が宿ったシーンを見せながら映画は終わります。ところが、この映画は違います。ひとまず、実話の土台です。信じがたい内容ですが、最高のホラーエクソシストです。
そして、遺体が登場するシーンは、真っ昼間に突然登場するので、とても新鮮だと思いました。遺体が登場する他の映画は、何か薄暗くて密閉された所ですが、真っ昼間に道路周辺での登場! それで、記憶に残るようでした。
次に面白い点は、ラルフ·サーキ刑事のその後。彼は、事件を解決した後、現職警察から引退し、メンドーサ神父を助け、このような事件を探し回り、「死霊館」シリーズ(2013~)で有名な心霊研究家エド&ロレイン·ウォーレン夫妻とも、縁を結んだのです。
ラルフ·サーキ刑事は現在、このようなことを経験している人々を助ける為、自らエクソシズムを行っているといいます。殆どの人々は、そのようなことを経験すると、その記憶がトラウマになり、その記憶が忘れられず苦しい生活をします。
しかし、ラルフ·サーキ刑事は、事件の辛い記憶を乗り越え、他人の為に引退後も、絶えず努力しています。エクソシズムをしているラルフ·サーキ刑事の表情を見れば、決して容易なことではないことが分かります。
辛い記憶を乗り越えて、多くの人々の為に努力する姿に、本当の神を感じます。
宗教的信念と神
映画は宗教的で、神の力を見せることで、神を信じなければならないという内容のようでした。
記憶に残った内容の中で、サーキは児童性犯罪者に怒って復讐に成功しますが、それでも殺人に対する罪悪感を持って生きています。メンドーサはサーキに、「罪を告白し神を受け入れろ」と言いました。
また、サーキは「泥棒が母親の部屋に押し入った時、バットで泥棒を退けたのは神ではなく自分だった」と言います。これがきっかけになって、「神様を信じなくなった」と話しました。しかし、それは「サーキの心の中に神がいたからだ」と、メンドーサが答えます。
またサーキは、「この世は適者生存の原則に戻る」と話していましたが、メンドーサは「適者生存の原則で生きるなら、自分を犠牲にする消防士らはなぜいるのか」と尋ねます。それも、「消防士の中に神がいるからだ」と話しました。
このように、この映画はキリスト教的色彩がとても強いです。
人間は悪を受け入れるか、神を受け入れることが出来るのでしょうか。しかし結局、神に抵抗出来ず、神の前に戻って来るという内容のようでした。
実話を基に作られたからこその恐怖
ありそうもない話が、実は私達の周りで起こっている実話だという事実は、ぞっとする恐怖となって日常の中に浸透します。
そして、人々の心の中にある傷跡が突然傷跡のように蘇る時、感じる冷たい恐怖、その日常性は傷となり、かなり長く続きます。
実話を基に作られたホラー映画『NY心霊捜査官』は、実際のストーリーを基に、事件が起きた現場での撮影を通じて、向かい合ったホラーの根源が、映画の中ではなく、私達の日常の中にもあり得るという現実的な恐怖を与えます。
映画の主な背景になるニューヨークのブロンクス地域は、労働者階級が集まって暮らす所で、古い住宅街と生気のない日常が陰惨な雰囲気を漂わせる所です。
1980年以降初めて内部撮影を許可したブロンクス動物園はニューヨークで最も古い動物園で、そのイメージは、映画とぴったり合った不気味ですがすがしいものでした。
実話という話が与える説得力と共に、実際の犯罪場所という映画の背景が、また別のインパクトを与えてくれます。
映画に隠された最高級のホラー
無神論者には、一般人が悪霊や鬼に憑かれたからといって、宗教者がこれを退ける退魔ということは、シャーマニズムが行うこととそれ程、大きな違いを感じることも困難であり、その行為そのものが唯一神の存在を立証する絶対線の勝利として、完全に受け入れられるかどうかという問題があります。
悪霊はまた誰かに憑かれ、善と悪の対決は無限に繰り返されるジャンル物になるのです。
本作では、ジャンル映画の中に、このように多様な要素を偏らせない程よく混ぜた腕前は、製作者のジェリー·ブラッカイマーの力量に、支えられた所が大きいでしょう。
「CSI」シリーズ(2000~)を、かなり長い間制作してきたノウハウを反映し、『NY心霊捜査官』はホラー映画のジャンルの中に、謎を解いていくような推理的要素が、かなり味わい深い映画となりました。
主人公ラルフ·サーキ刑事のビハインドストーリーを知ると、心理的に変化するキャラクターに没頭する作品です。
原題の”Deliver Us from Evil”は、”私達を悪から救って下さい”という周期図文から取ったものですが、エクソシズム映画の内容と主人公の状況がよく合っています。
エクソシズムやオカルトジャンルが好きなら、絶対に観る価値ある作品と言えます。
まとめ
エクソシズムという心霊恐怖に、犯罪捜査というスリラー的な要素まで加味された『NY心霊捜査官』は、恐怖という基本前提の下、ストーリーを進めていく推理的要素が与える面白さまで加わった映画です。
『NY心霊捜査官』が最も恐ろしい瞬間は、映画の中に表現されたその残酷な犯罪が、全て現実で起こった実話だという事実を悟る瞬間です。
ゴミ箱から発見された赤ん坊の遺体、爪が折れるまで壁を掻く男、自分の赤ん坊をライオンの檻に投げ捨てた母親など、この不気味な話が全てニューヨークで起こったという事実は、あまりにも衝撃的です。
そして見えないだけで、これよりもっと残酷で恐ろしいことが、今も自分を取り巻く人々の日常の中に空気のように内在しています。
人為的な空間と架空のストーリーではなく、実際の空間と実話というリアルさが、他のホラー映画より一歩先んじたストーリーの説得力と臨場感ある恐怖として感じられる映画『NY心霊捜査官』。
見えないけれど、いつも自分自身と向き合っているという恐怖の根源、あるいは悪の根源に迫る映画のメッセージも強烈なのです。