「次世代ヨーロッパにおける偉大な映像作家」として称賛を浴びるニコラス・ウィンディング・レフン監督が贈る衝撃作『ネオン・デーモン』を紹介します。
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映画『ネオン・デーモン』の作品情報
【公開】
2016年(フランス・アメリカ・デンマーク合作)
【監督】
ニコラス・ウィンディング・レフン
【作品概要】
2011年の第64回カンヌ国際映画祭 監督賞に輝いたニコラス・ウィンディング・レフンの最新作。
カンヌ国際映画祭でプレミアム上映された今作は、絶賛の拍手喝采と非難の嵐で会場を真っ二つに引き裂いた問題作です。
映画『ネオン・デーモン』のあらすじとネタバレ
田舎からの上京、16歳の美少女
目を奪われるような美を持つジェシー(エル・ファニング)がトップモデルを夢見て、田舎からロサンゼルスに上京してきたところから物語は始まります。
オープニングが流れ、冒頭のシーンでは、首から血を滴らせソファに寝そべっているジェシーを不気味な表情でフォト撮影をするカメラマンの映像がゆっくりと流れます。
これはインターネットで知り合ったアマチュアカメラマンのディーン(カール・グルスマン)の力を借りてモデル事務所に送るためのプロフィール写真の撮影でした。
撮影後に、ヘアメイクアーティストのルビー(ジェナ・マローン)と出会い、ジェシーは両親を亡くしていること、今はパザデナのボロいモーテルで暮らしていることをルビーに話し、2人は打ち解け合います。
ルビーに連れられ、パーティへ向かうと、ルビーの仕事仲間であるモデルのサラ(アビー・リー)とジジ(ベラ・ヒースコート)が居ました。
2人はジェシーの美しさに嫉妬の念を抱き、彼女を性的な暴言を浴びせたり、自身の美しさの自慢を語り出しました。
ですが、ジェシーはそれに臆する事なくパーティーを楽しみます。
パーティーのメインイベントでは、ストロボ・ライトを浴びせられたヌードモデルの束縛ショー。そのショーを横目に、ジェシーを睨むサラ。
明朝、モデルの事務所に行き、面談をします。担当者は、ジェシーの美しさを見抜き採用にします。
事務所に採用されたことをディーンに報告します。ロサンゼルスの夜景と綺麗な満月が見える丘に車を止め、2人で合格をお祝いしました。
ジェシーは自分自身何一つ才能は無いが美しさには自信があることを語り、これでやっとお金を稼げることを喜んでいました。
ファッション業界と嫉妬
ルビーに紹介され、業界ではかなりの有名なカメラマン、ジャック(デズモンド・ハリントン)と出会います。
鬼の形相で睨むジャックに、物怖じするジェシーでしたが、彼女をじっと眺めた後、関係者以外を撮影所から退室させ、写真撮影をし始めます。
撮影は、彼女に服を脱がせ、金色のペンキを素手で、身体に塗りながらシャッターを切るというものでした。
撮影を終えルビーに伝えると、あのジャックが素人のモデルを撮影するのは滅多にない事だと言います。
その後も、ファッションデザイナーのオーデションに参加し、先輩モデルのサラを差し置いて、悠々と合格していくなど、トップモデルへの道を一直線にかけ上がっていくジェシーでした。
ジェシーはファッションショーのトリに新人ながらも、抜擢される程の評価を得ていました。
20歳を超えると仕事がなくなるという程、若さと美しさが求められる世界。ジェシーに全てを奪われていくサラとジジは焦りを感じ、恨みにも似た嫉妬が以前よりも増していたのです。
そんな中ジェシーは、ファッションショーのランウェイで三角形が交差する青いネオンライトの幻覚を見ます。
その幻覚を観てからジェシーの心情に大きな変化が生まれます。
夢が野心に変わる時、少女の本性が現れるのでした。
映画『ネオン・デーモン』の感想と評価
今作の肝はなんといっても映像美と音楽です。オープニングからエンディングまで徹底した映像美には、そのシーンに惹き込まれるような感覚に陥ります。
前半のパーティのストロボを使ったシーンやランウェイでの幻覚には、近代的で前衛的な音楽と映像に強烈な印象を残します。
それとは相反した映像として、ディーンとの丘から見るLAの夜景には、溜息の出るような王道の美しさがあります。
オーデイションのシーンでの映像も素晴らしいです。何十人もの下着姿のモデル達が足を組んで椅子に座わったり、壁に寄り添ったりする控え室は、無機質な空間に置かれたモデル達、肌のコントラストなど全て込みした美しい構図が描かれていました。
そして何より、モデル役を演じるエル・ファニングとアビー・リーとベラ・ヒースコートの3人の美しさ。このようなイカれた設定でも、このキャスト達なら納得出来ます。
他にも、この映画の特徴といえば、セリフ数が少なく、ワンカットを長めにして映像で鑑賞者に訴えかけてくる構成になっています。このように芸術作品としての色が強い今作は、昔のサイレント映画に近いのではないでしょうか。
まとめ
強めの色彩コントラスト映像、カニバリズム、ネクロフィリアなど目を背けたくなるような映画ではある為、万人が面白いという作品ではないことは確かです。カンヌで賛否両論を得たのはわかる気がします。
ですが、このようなジャンル映画を好む人には必見です。必ず衝撃を受けるでしょう。