映画『こどもつかい』は2017年6月17日より公開され、『呪怨』の清水崇監督が、ふたたび世界を震撼させる究極のホラー映画。
ぼぉあんがー ぼぉあんがー(Boys and girls Boys and girls)
すてぷらい すてぷらい(Step right up Step right up)
かんくろーさん かんくろーさん(Come Closer Come Closer)
おいない おいない(Oinai Oinai)
かみのごおさあかす おいないよ(Kaminogou Circus oinaiyo)
あめじん、とみーのしょうたいは(Amazing Tommy’s show time now !!)
という歌声とともに復讐されるトミーの呪いだった⁉︎
滝沢秀明主演の映画『こどもつかい』の正体とは?あらすじから謎のネタバレまでご紹介します。
1.映画『こどもつかい』の作品情報
【公開】
2017年(日本)
【監督】
清水崇
【キャスト】
滝沢秀明、有岡大貴、門脇麦、尾上寛之、河井青葉、田辺桃子、中野遥斗、玄理、山中崇、吉澤健、西田尚美
【作品概要】
17年ぶりの映画出演となる滝沢秀明さんを主演に迎え、『富江 re-birth』や『呪怨』シリーズで知られる清水崇さんがメガホンを取ったホラー作品。
地方新聞の記者役に“Hey! Say! JUMP”の江崎駿也さん、駿也の恋人で保育所に勤める尚美を門脇麦さんらフレッシュな若手俳優が集結している。
2.映画『こどもつかい』のあらすじとネタバレ
夏のある日、マンションに住む母親の柴田絵理奈は、父親に会いたいと泣き叫ぶ娘の瑠奈に手を焼き、ベランダに放置虐するなどの虐待行為をしていた。
窓ガラスを叩きながら開けてと泣き叫ぶ瑠奈を無視していると、やがて、瑠奈の声が聞こえなくなります。
不安になった母親は窓を開けベランダに出るも瑠奈の姿がありません。
部屋を飛び出した母親の絵里奈は、同マンショに住む住人に聞くなどしながら、瑠奈の行方を探しますが見つかりません。
しかし、近所の住人の勧めで警察に通報した頃に、何事もなかったかのようにベランダに座り込んでいた瑠奈。
母親の絵里奈は娘の瑠奈にどこに行っていたのか激しく問い詰めますが娘は答えません。
すると、湧き出るように白目で不気味な子どもたちが瑠奈の命を奪い、その傍に黒マントの男が立っていました…。
あくる日、朝の保育園で保母として登園の迎えをしながら働いている原田尚美。
また、今日もいつものようにモンスターペアレントの母親に彼女は迫られていました。
ふと、尚美が園の正門前に独り佇む園児の笠原蓮を見つけます。蓮は薄汚れた身なりで左手で右腕を抑えていました。
尚美はまた独りで登園したかとつぶやき、その後、蓮のTシャツの袖を捲るとそこにいくつかの痣を見つけます。
蓮は母親から虐待されたのだろうと尚美は気がつくと、表情が強張り病的に蓮の手当の治療を行います。
その日の午後。ショッピングモールの屋上で社会部の新聞記者である江崎駿也は、マンションに不審な死を遂げた柴田絵里奈について取材をしています。
すると女子生徒たちの話はいつの間にか、都市伝説の噂話になっていました。最近“トミーの呪い”という噂が広まっているというのです。
トミーは子どもの魂を操り何処かへ連れ去り、子供が戻ってくると、3日後にその親が命が亡くなる死ぬという都市伝説。
駿也の先輩の上杉は女子生徒の話を馬鹿らしいと一蹴したが、駿也は妙にそのことが気になっていました。
駿也はふたたび、柴田の遺体第一発見者で同マンションの隣人の女子生徒に話を聞くことにします。
発見時の状況を詳しく聞くと、行方不明の娘の瑠奈が戻ってきてから不思議な歌声が聞こえていたことと語り出しました。
取材を終えた駿也が帰宅しようとすると、偶然、モール内のアンティーク雑貨店を営む学生時代の同級生の近藤と再会しました。
近況報告など会話の盛り上がる2人でしたが、店先に立っている少女の姿を近藤が見つけると、その表情は一変して逃げるように去っていきます。
少女は奇妙な歌を口ずさんでおり、駿也は直感的に取材した女子生徒の話を思い出し、少女の歌をボイスレコーダーに録音しておくことにします。
尚美の働いている保育園では、夜になっても笠原蓮の母親だけが迎えに来ませんでした。
仕方なく蓮の手を引き、彼の住んでいるアパートにやって来た尚美。蓮の自宅の部屋のドアをノックしますが反応はありません。
尚美はドアノブを捻る動かしますが鍵が掛かってしました。すると、ドアの向こうで何かの物音が…。
だが、結局はドアは開かなかったので、蓮を連れて尚美は駿也と同棲している自宅に連れて帰ることにします。
寂しそうな表情を見せる蓮を元気付けようと、尚美は手作りのお守りを蓮に与え、蓮の母親が居ない間は、自分がお母さんになってあげると言います。
尚美と同棲している駿也は、幼い蓮を預かる状況に戸惑いつつも、夕食に尚美の手作りのオムライスを食べるとすっかり打ち解けて、楽しい夜を過ごします。
翌日、保育園に出勤した尚美は、彼女が蓮の自宅を訪れていた同時刻に、蓮の母親が自宅のドアノブで首を吊っていた事実を聞かされました。
また、一方で駿也の旧友の近藤も子どもたちと黒マントの男の手によって、不自然な形で命を落としていました。
その後、駿也は近藤の私物であるハンディカムで撮影したカメラのデータに、近藤が怯えていた少女に対して性的な悪戯をしていた裏の真実を知ります。
駿也は一連の奇怪な事件に繋がりが、“トミーの呪い”であることを確信します。
その頃、蓮に母親になると軽率な発言をしてしまった尚美は、児童施設に保護され連れて行かれる蓮を前に、覚悟が無かったことを思い知り冷たく突け放すてしまいます。
自宅に帰宅した尚美は、部屋の奥いた駿也がボイスレコーダーに記録された、少女が口ずさんでいた歌の文字起こしをしていました。
すると、尚美はその歌を知らないはずなのに、なぜか自然と少女の歌に合わせて口ずさみます。
駿也は尚美の歌を頼りに聞き取りができなかった箇所が「上ノ郷サーカス」だと分かり、ネットでワード検索にかけてみると、三重県伊勢地方にかつて存在したサーカスだと突き止めます。
奇妙な歌と実在したサーカスの手掛かりが掴めた駿也。すると、突如、蓮が現れます。
尚美が携帯電話で話していると、児童施設に搬送中に忽然と蓮が居なくなったのを聞かされ、そんな蓮は尚美が元気付けるために蓮に与えたお守りを彼女に返そうとやって来たのでした。
このままだと尚美は、3日後に死んでしまうことを知った駿也と尚美は、蓮を保育園の先輩保育士に預け、高速で車を走らせ伊勢地方へ向かいます。
上ノ郷町に到着した駿也と尚美の2人は地域の住民たちに聞き込みを行い、かつてあった“トミーの呪い”の手掛かりを探していると、上ノ郷サーカスの社長の息子に辿り着きます。
かつての社長の息子が教えてくれた場所は、60年もの月日が流れ、既に廃墟となったサーカス小屋の側にあった宿舎。
駿也と尚美は封鎖された廃屋の閉ざされた扉を抉じ開けて中に侵入しました。
トミーが就寝していた彼の部屋の机の引き出しから、「人形に命吹き込む偉才、トミー」と書かれた写真を発見します。
すると、なぜか尚美にだけ見える黒マントの男が現れ、彼のマントの中から現れた子どもとともに襲って来たのです。
彼こそが、“トミーの呪い”が掛けられた「こどもつかい」の正体だったのです。
襲いかかる白目を剥いた子どもに怯える尚美は、駿也とともに廃屋の中を逃げ惑います。
間一髪のところ、2人の様子が心配になってやって来た、先ほど会った老人(元上ノ郷サーカスの社長の息子)に救われます。
駿也と尚美に上ノ郷(老人)が昔あった出来事を語り始めました。
村で人気のあったサーカスに居たトミーは外国人の腹話術師。しかし、ある日、子どもたちが行方不明になった騒ぎがあり、村人がサーカス団を疑った際に火をつけられ事件があったこと知ります。
また、放火が起きた後に、当時少年だった上ノ郷は、焼け跡から焦げたトミー人形を持ち帰りましたが、それ以来、周りの人が不審死する事件が起きたことから、気味の悪いトミー人形をトラックの荷台に捨てたことも話してくれました。
3.映画『こどもつかい』の感想と評価
①幼児虐待という社会的問題をテーマにしたホラー映画
ホラー映画として作られた『こどもつかい』は、門脇麦が演じた主人公尚美をはじめ、作品の全体を支配するテーマは幼児虐待です。
登場する親子関係、あるいは、親子ではなくとも閉鎖された空間にいる大人が子どもを支配する関係の中でそれらは実行されていました。
すべてにおいて立場が優位に立つ大人から子どもたちに暴力行為の虐待や、性的な虐待をパワフルハラスメントとして行っていました。
この作品の中では、大人にとって子どもは自分の所有物でしかなく、人形のように都合よく、もて遊ぶ玩具として描かれています。
そのことが上ノ郷サーカスに在籍していた腹話術師トミーという人物の過去や人形つかいとも重なっています。
映画では詳細に描かれていませんが、小説ではウクライナ出身のトミーも幼少期に生きるために性的な虐待を受けていたことが書かれていました。
大人になったトミーは自分の思いのままに腹話術師として人形を操っていましたが、また、その行為そのものが、トミー自身が子どもの頃に受けていた虐待を癒す代償行為だったのです。
映画の中で誘拐した子どもたちを椅子に縛り付けて、圧倒的な力で弱い者を従えることに快楽を得ていた行為がそれです。
トミーは人形だけでは飽き足らず、村に住んでいた子どもたちを誘い出し幼児虐待してしまったのです。
60年以上前に上ノ郷サーカスに子どもたちを誘拐されたと村人が駆けつけた時には、すでにトミーの仕業だということは噂ではなく、事実として分かっていたのでしょう。
それが証拠に、その出来事があった事実を知っているにもかかわら図、現在の上ノ郷町の住人は固く口を閉ざしていたのがそれです。
サーカスのテントが火災にあったことぐらいでは秘密にはしないでしょう。
過去の出来事であっても悪い出来事は隠すという因習だったのです。
しかし、それでも人の口に蓋などはできず噂として全国に広まり、都市伝説となり、物語の冒頭に出て来た東京の女子学生たちの噂話になって届いていたのです。
トミーの芸である腹話術としての“人形使い”が、“こどもつかい”となっていたのです。
ハーメルンの笛吹きのように、面白いように子どもを使って悪い大人を懲らしめたのがトミー人形の呪いとなったのです。
ただし、映画の台詞にも出てきますが、これはトミーが焼死したことが原因としてはじまった呪いではありません。
親子関係や大人と子どもという力関係の構図の中で行われ続けてきた、虐待行為の連鎖にこそ原因があるのでしょう。
それぞれの子どもの念が、“トミーの呪い”という都市伝説を借りて、トミー人形と復讐の契約を結んでいるという訳です。
そのことが分かるのは、尚美が母親に言われた「これはトミーの呪いじゃない、お前自身が自分にかけた呪いだ」という場面。
一般的とまでは言い切れませんが、どのような子どもでも、親に叱られた経験があれば、悔しさのあまり、思わず、親なんていなくなっちゃえばいいのに。
そんな些細な子どもの感情こそが、呪いの始まりなのです。
あなたにもそんな記憶はありませんか。
②幼児虐待のテーマに隠された2つ事実
尚美も心の底から母親を憎んでいただけではなく、好きであったのも事実でしょう。
今度の休みに映画を一緒に見に行こうと別れ際に告げた母親の思いとの後悔からも気が付かれたのではないでしょうか。
もちろん、この作品はホラー映画ですから、これですべての謎は解決しません。
蓮がトミーの小指を虐待された次の子どもに託すラストシーンの結末は、黒マントの男の呪いの連鎖の意思ではなく、蓮の持つ虐待を受けた子ども同志の意思による呪いがけです。
この作品には幼児虐待というテーマの中に、2つ意味を読むことができます。
1つ目はストレートに大人への復讐の怒り。
2つ目は子どもが大切な人物を救いきれなかった、後悔の思いです。
復讐に関しては分かりやすい理解なので、説明は割愛します。
2つ目の後悔の思いとはどのような点に見られるか説明しましょう。
先ほどあげた尚美の母親への呪いもその後悔はありました。
そして、上ノ郷で出会った老人(社長の息子)が、現在も自分だけがあのトミー誘拐した虐待現場を見て見ぬ振りをして逃げ出したということがそれです。
大切な友達を救い出さずに置きざりで見殺しで生き残ってしまった後悔がありました。
映画には描かれていませんが、小説には駿也の過去にも友達にそのような感情を持っている様子があり、真相を知りたいという新聞記者になっています。
彼が先輩記者とは違い、子どもの事件に執着を見せていたのもそれが根底にあるからでしょう。
だからこそ、結末で蓮が知る友達に小指を託して、ふたたび、“トミーの呪い”を再生させる意味は大きなものなのです。
もしかすると、パート2になるのもその辺りが1つのポイントにもなりそうです。
また、尚美がこれから母親となり、子育てしていく時に子どもの面倒を見ながら、自身の虐待された過去はフラッシュ・バックして思い出されるでしょう。
そこで、また、虐待をしてしまうのかもしれません。
あるいは、あれだけ3日後に死ぬかもしれないという恐怖体験をした尚美が子育てする中でトラウマな人形を使わない、子育ては可能なのでしょうか?
呪いとは恐怖と支配の中に存在します。
誰かの中でそっと湧き出た心の闇がその根源にあるのですから。
4.まとめ
清水崇監督の今回の作品は『呪怨』ほど無差別的なホラー映画ではないので、ストレートな恐怖を求める人には物足りないかもしれません。
しかし、恐怖に潜む笑い…。
また、なぜ、子どもが怖いのか?無邪気なのか?また弱いのか?
そこに恐怖が潜んでいることを今日の社会問題である「幼児楽隊」をテーマに描いています。
子どもはいつか大人になってしまいます。
やがて大人になると、社会的な成熟の中で子どもの頃にあったことは忘れてしまうことがあります。
黒マントの男(こどもつかい)が尚美に忘れちゃたのと呼びかけることがあります。
本当に怖いことは、尚美のように自分が母親に呪いをかけて殺めたことを忘れちゃうことかもしれません。
それでおきながら、欲望のために子どもを自身の腹に身ごもるのですから…。
尚美母親として幸せになるのでしょうか? ふふふ…。
ぜひ、尚美役の門脇麦の演技にも注目!もちろん、タッキーの愛らしい黒マントの男にも。
ぜひ、ご覧ください、お見逃しなく!