深夜の学校で繰り広げられる、命を懸けた「カラダ探し」の行方は?
謎の少女の幽霊「赤い人」から逃げながら、深夜の学校に隠された、体の一部を探し揃えていく「カラダ探し」の恐怖を描いた、ホラー映画『カラダ探し』。
「赤い人」の心霊的な恐怖に加え、「カラダ探し」に失敗すると、同じ日を繰り返す「タイムループ」が起きるSF要素を加えた本作は、ひと味違う恐怖を味わいながらも、実は王道の青春映画という変わり種の作品です。
橋本環奈を始め、注目の若手キャストが集結した、本作の魅力をご紹介します。
映画『カラダ探し』の作品情報
【公開】
2022年映画(日本)
【原作】
ウェルザード
【監督】
羽住英一郎
【脚本】
土城温美
【キャスト】
橋本環奈、眞栄田郷敦、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠、柳俊太郎、西田尚美、柄本佑
【作品概要】
小説投稿サイト「エブリスタ」で話題を集め、2014年には漫画も発表された人気作品『カラダ探し』。
普段は接点の無いクラスメイト6人が、深夜の学校に隠された少女の体を探す「カラダ探し」に巻き込まれるホラー映画です。
主人公の明日香を『セーラー服と機関銃』(2016)で「日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞して以降、さまざまな話題作に出演している橋本環奈が演じています。
共演に『東京リベンジャーズ』(2021)などに出演し、注目されている眞栄田郷敦の他、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠ら若手キャストが集結しています。
監督は「海猿シリーズ」の羽住英一郎。
映画『カラダ探し』のあらすじとネタバレ
7月5日の朝を迎えた、女子高生の森崎明日香。
明日香は、母親が作り過ぎたコロッケを大量に入れたお弁当を持ち、学校に通う途中で、猫がバスに轢かれる光景を目撃します。
明日香は、通っている高校でクラスメイトから無視をされ、辛い日々を送っていました。
同じクラスには、バスケ部のエースで女子からの人気が高い高広と、大人びた雰囲気を持つ留美子、学級委員長をやっている理恵、暗い性格から、クラスでいじめにあっている翔太がいますが、5人は全く接点がありません。
昼食の時間になり、一緒に食べる友達がいない明日香は、1人で教室の外に出て、改修工事中の礼拝堂の近くでお弁当を食べ始めます。
その時、明日香は近くにあった古い井戸から、血で染まった無数の不気味な手が出て来る幻覚を見てしまい、戸惑います。
教室に戻ろうとした明日香は、校舎の裏に猫の死体を埋めている、不気味な雰囲気の図書室の司書、八代と遭遇します。
八代が去った後、明日香の背後には不気味な少女の幽霊が立っており「私の体探して」という声が聞こえます。
明日香が振り返ると、少女の幽霊は消えていました。
その夜、明日香のスマホに不気味なLINEが届きます。
明日香は無視しますが、深夜0時を迎えた瞬間、明日香は学校の礼拝堂にいました。
高広、留美子、理恵、翔太も礼拝堂にいる他、登校拒否をしている篤史もいます。
翔太は「カラダ探し」に関して、何かを知っているようでしたが、篤史は「馬鹿馬鹿しい」と礼拝堂の外に出ます。
その直後、篤史は何者かに襲われ胴体を真っ二つにされます。
そして、明日香達の前に、血まみれの少女の幽霊「赤い人」が、不気味な笑顔を浮かべて立っていました。
映画『カラダ探し』感想と評価
謎の幽霊「赤い人」に追いかけられながら、体の一部を探していく「カラダ探し」に巻き込まれた、6人の高校生が遭遇する恐怖を描いた『カラダ探し』。
「赤い人」のビジュアルや、かなり強烈なホラー描写もある作品ですが、実は本作はホラーテイストの青春群像劇なんです。
序盤、中盤、終盤で、それぞれ作風も変化していき、終始飽きさせない工夫もされています。
『カラダ探し』を3部構成でご紹介します。
ホラー色の強い序盤
『カラダ探し』の序盤では、強制的に集められた6人が、訳も分からないまま「赤い人」の餌食になっていくという、かなりホラー色が強いパートになっています。
「赤い人」のビジュアルも、全身血まみれで、両目がへこんでいる為、大きく黒い穴が空いているという、なかなか強烈な見た目です。
この「赤い人」が、凄まじいスピードで追いかけて来ながら、襲いかかって来るだけでも怖いですが、「赤い人」は無敵状態で、抵抗する術が無く、それぞれの殺され方も、なかなか刺激が強い場面になっています。
また、作品の冒頭は、後に「赤い人」になる少女が、謎の殺人鬼に襲われる場面から始まるのですが、完全に80年代に数多く制作された、殺人鬼が襲ってくる「スラッシャー映画」のテイストになっています。
さらに「赤い人」が『エクソシスト』(1973)の有名な場面「スパイダーウォーク」を見せたり、「赤い人」に追いかけられた翔太が、わざわざロッカーの中に隠れるなど、名作ホラー映画へのオマージュも込められています。
序盤は、本作の中で一番ホラー色が強いのですが、かなりテンション高めで、オマージュやパロディも入った、ホラー好きならニヤリとしてしまう展開が続いていきます。
群像劇としての中盤
序盤で、何度も「赤い人」に殺されながらも、理不尽な「カラダ探し」を続けさせられる6人。
ですが、殺されても同じ日の朝に戻るだけなので、それに気付いて以降、6人はゲームや部活感覚で「カラダ探し」を進めていきます。
10代って、ポジティブでいいですね。
この中盤では、序盤にあったホラー色はだいぶ薄れますが、代わりに6人の内面が描かれるパートになっています。
そもそも、この6人は普段は接点が無く「カラダ探し」を通して絆が深くなっていきます。
接点の無かった学生の間に、絆が生まれる青春ドラマと言えば『ブレックファスト・クラブ』(1985)が有名ですが、特別な状況を通して絆が生まれる展開は『ジュマンジ/ウェルカムトゥジャングル』(2017)に近いかもしれません。
『カラダ探し』では「何故?この6人が集まったか?」が1つの謎になりますが、実はそれぞれが、内面に孤独を抱えていたことが分かります。
普段は全く接点が無かったとしても、共通した悩みを抱えていたんですね。
さらに、それぞれが抱えていた孤独が「赤い人」を引き寄せたことも分かります。
この辺りから「カラダ探し」は、体の部分が次々に見つかり、どんどんクリアへ向けて進んで行きます。
1つ間違えると、同じことを繰り返す展開になりかねなかった、この中盤を、それぞれの内面にスポットをあて、スピーディーに物語を進めていった、この工夫は見事だと感じました。
最後の戦いを描いた終盤
最初は理不尽に始まりながらも「カラダ探し」のルールや、6人が集まった理由が次々に判明していき、本作はクライマックスを迎えます。
そして終盤になると、これまで少女の姿をしていた「赤い人」が、突如怪物のような姿になり、怪物に食べられると存在が消えてしまいます。
これまでは、殺されても同じ日に戻り、生き返るというルールがあった為、若干お気楽に進めていましたが、終盤は自身や友達の存在をかけた、緊迫した展開へと変わっていきます。
1人また1人と、怪物の餌食になる中、全員の犠牲を無駄にせず、想いを繋いだ明日香が、最後に「カラダ探し」を終わらせます。
終盤は、同じホラー映画でも『エイリアン』(1979)のような、クリーチャーが登場するホラー映画の作風になり、怪物と真っ向から対峙する明日香の、女性ヒロインとしての強さが堪能できる、なかなか痛快なパートとなっています。
そして「カラダ探し」を終わらせると、全員の記憶が無くなってしまい、6人は元の何の接点も無い関係に戻ります。
ですが、エンドロールで「学園祭」を成功させ、笑顔で写真に写る6人の姿が出て来るので、新たな絆が生まれた、ハッピーエンドなのかもしれませんね。
まとめ
『カラダ探し』は、エンドロール後も続きがあります。
礼拝堂の近くにあった、井戸の中へと場面が変わり、「赤い人」になった少女が殺されたニュースを報じる新聞記事が、明日香が殺された記事に変化します。
これは原作にある「そもそも『カラダ探し』とは何なのか?」に関わる重要な部分を示唆しています。
本作の続編が制作されるか?は、現状分かりませんが「まだ、終わっていない」的なエンディングは、往年のホラー映画へのオマージュでしょう。
『カラダ探し』は、終始飽きさせない工夫が光る作品で、若干展開が駆け足のようにも感じもしますが、この内容を102分の上映時間にまとめたのも見事です。
橋本環奈、眞栄田郷敦など、若手の注目俳優の王道青春ドラマとしても楽しめる『カラダ探し』は、序盤が少し強烈ではありますが「ホラーが苦手」と敬遠している方にも、是非お勧めしたい作品です。