自分の本当の居場所とは。
野性の呼び声に従え。
1903年、アメリカの作家ジャック・ロンドンが発表した名作冒険小説「野性の呼び声」が、ディズニーのクリエーター陣により、初の完全実写映画化となりました。
原作は、初出版されて以降、全世界で翻訳され、これまでに本作を含め8度も映画化されてきた名作です。
孤独な男ソーントンと大型犬バックの運命的な出会いと友情。そして、人類未踏の地への大冒険。1人と1匹が見つけた自分の本当の居場所(ホーム)とは。
壮大な冒険小説を最新のCG技術で描き出した『野性の呼び声』。あらすじと感想を紹介します。
映画『野性の呼び声』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
The Call of the Wild
【監督】
クリス・サンダース
【キャスト】
ハリソン・フォード、ダン・スティーブンス、オマール・シー、カレン・ギラン、ブラッドリー・ウィットフォード、コリン・ウッデル
【作品概要】
1903年に出版されて以降、現代も愛され続けるジャック・ロンドンの冒険小説「野性の呼び声」の実写映画化。主演は、ハリソン・フォード。監督は、ディズニー映画『リロ&スティッチ』『ヒックとドラゴン』のクリス・サンダース監督。100年以上、愛され続けてきた名作「野性の呼び声」。人間と犬との壮大な大冒険を、最新のCG技術を用い描き出しました。
映画『野性の呼び声』のあらすじとネタバレ
時代はゴールドラッシュに沸くアメリカ。カナダのユーコン準州では、犬ぞりが活躍していました。良い犬は高値で売れると、評判です。
カリフォルニア州のミラー判事の飼い犬・バックは、大型犬で力も強く活発です。売人は、バックに目を付けていました。
そんな人間の事情など知りもしないバック。今日は主人・ミラー判事のバースデーパーティーの日です。
バックは家中をバタバタ走り回り、物にぶつかり、ウサギを見つけては追いかけ、興味の赴くままに大暴走です。主人も手を焼く、わんぱく犬でした。
庭に用意されたご馳走に、大はしゃぎしたバックは、皆が記念写真を撮っている間に、飛びついてしまいます。
台無しになったパーティーに、主人もとうとうあきれ果て、バックを外に締め出してしまいました。シュンと落ち込むバック。
おとなしくなったバックを狙って、売人が捕えにやってきます。バックは箱に入れられ、売り飛ばされてしまいました。
次に箱が開けられバックが出ると、そこには棍棒を持った人間がいました。「棍棒の掟と牙の掟を教えてやる」。逆らおうとすると棍棒で殴られます。
鎖を引き千切り逃げ出すバックでしたが、外に飛び出してもそこは氷河の中を進む船の上でした。
首輪をされたバックは、アラスカの地に降ろされます。初めて見る雪に、面白くなってはしゃぐバックは、通りかかった男とぶつかります。その拍子に、男はハーモニカを落として行ってしまいました。
バックはハーモニカを拾い、男に届けます。「プファー」。音に振り向いた男の目には、ハーモニカを口に咥えた大型犬の姿がありました。
バックと呼ばれた犬に向かってお礼を言う男。これが、男ソーントンとバックの初めての出会いでした。
それからバックは、郵便配達の犬ぞりメンバーとして連れて行かれます。主人のペローとフランスワーズは、港町からドーソン・シティまで郵便物を届ける仕事をしていましたが、一度も時間に間に合ったことがありません。
犬ぞりのリーダー・スピッツは、気性が荒くプライドの高いボスです。ハーネスを付けられ犬ぞりの後方に繋がれたバックは、とても窮屈そうです。
ペローの掛け声で出発するも、バックは気が散り、他の犬と走りを合わせることが出来ません。犬ぞりデビューは、散々に終わりました。
南国育ちの飼い犬だったバックは、こんなに寒い夜を外で寝るのは初めてです。ペローのテントに忍び込みますが、フランスワーズに「犬は外で寝るのよ」と追い出されてしまいます。
前途多難に見えたバックでしたが、持ち前の体力と純真な性格で、どんどん成長していきます。
ドーソンまでの道のりは険しいものでした。氷が張った川の上を慎重に進みます。メキメキと音がした時でした。氷が割れ、フランスワーズが水の中に落ちてしまいます。
その後を追い、水の中に飛び込むバック。氷の中へと流されてしまい、氷を割らないと上がることが出来ません。氷が厚すぎます。
その時、バックは氷の上に真っ黒い大きな狼の姿を見ます。そこを目掛けて体当たりすると、氷が割れました。フランスワーズを助け出したバック。一気に絆は深まり、皆からの信頼も得られます。
面白くないのはリーダー犬スピッツです。ある晩、スピッツはバックに襲い掛かります。ボス争いです。
そこでバックは、再びあの黒い狼を側に感じます。一度は倒れたバックでしたが、力がみなぎります。スピッツを押さえつけ、遠吠えするバックは野性の狼のようでした。
次の朝、スピッツは姿を消していました。「犬にも事情があるのよ」。先頭のリーダー犬はバックとなりました。
その後も危険が訪れると、黒い狼はバックの前に姿を現し、導いてくれるようになります。
バックは見事な走りで、郵便を時間内に届けることに成功します。届いた手紙を嬉しそうに読む人々の顔をみて、バックもどこか満足そうです。
さぁ、郵便配達の時間です。いざ走りだそうとした時、ひとりの男が手紙を持ってやってきます。ソーントンでした。「息子の誕生日なんだ。お願いだ」。
「もう受け付けは終了してるわ」と、断るフランスワーズの前に、バックが顔を出し、ソーントンの手紙を咥えます。「チームのリーダーは、バックだよ」。ペローの言葉に町の人々も笑います。
「ありがとう。バック、君を覚えているよ」。ソーントンの言葉に、得意げに胸をはるバック。「任せてよ」と言っているようです。
バックの郵便配達は、町中の人気者になりました。犬ぞりにも慣れ、仲間たちと雪原を走るバックは楽しそうです。
そんなある日。ペローの元に政府から手紙が届きます。電報導入により、郵送便の廃止の命令でした。
「お別れだよ。バック、お前の旅は始まったばかりだ」。去っていくペローとフランスワーズ。人間の事情など理解出来ない犬たち。再び主人を失ったバックは、行き場も失いました。
映画『野性の呼び声』の感想と評価
長年愛され続けてきた冒険小説「野性の呼び声」が、ディズニーのクリエーターにより、初の完全実写映画化となりました。
最新のCG技術によって、どこまでも続く雪原に、氷に覆い尽くされた川、アラスカの壮大な自然が、息を飲むほどの美しい映像で堪能できます。
そして、名犬バックの動きにも注目です。いたずらっ子のお茶目な仕草から、人間の言葉を理解するような表情、そして野性の姿に戻り自然の中を走り回る勇敢な姿。
中でも、ソーントン(ハリソン・フォード)とのやり取りは、微笑ましいものがあります。肩を寄せ合い星を見上げたり、飲み過ぎるソーントンの酒を取り上げたり、怒られても知らん顔したりと、実に表情豊かです。
映画館では鑑賞後「あんな犬がほしいわぁ」と言う年配の女性の声も聞こえてきました。本当にそうです。皆、バックのファンになっていました。
ディズニー映画では、動物がしゃべったり、人間と会話できたりと、ファンタジー要素が強い映画も楽しいものですが、『野性の呼び声』のバックは、人間の言葉を理解しますが会話は出来ません。
それがリアリティを帯び、言葉を超えた絆をより深く感じます。ペットと飼い主の関係性ではなく、本当の友達のように互いを支え合うバックとソーントン。
バックとソーントンの友情は、言葉が違う者同士、肌の色が違う者同士、文化が違う者同士でも、分かり合えるということを教えてくれます。
小説「野性の呼び声」は、アメリカでは教科書に載るほど有名作品で、世界47カ国語で翻訳もされています。愛され続ける理由がそこにはありました。
まとめ
ディズニーの『アラジン』『ライオン・キング』のクリエーターが贈る、伝説の名作冒険小説、初の完全実写映画化『野性の呼び声』を紹介しました。
数奇な運命に導かれ、アラスカの地に舞い降りた名犬バック。地図にない未開の地を目指し、ひとり旅する男ソーントン。
1匹と1人の出会いは、お互いにとって必然なものでした。いくつになっても、最強の相棒がいれば、最高の冒険が始まる。たどり着いた地で、それぞれ何を見つけるのか。
神経を研ぎ澄ませ、野性の呼び声を聞け。その声は、自分の本当の居場所を教えてくれる声かもしれません。