ディズニーが贈るミュージカルファンタジー『ミラベルと魔法だらけの家』
ディズニー・アニメーション・スタジオの長編アニメーション『ミラベルと魔法だらけの家』は、『ズートピア』(2016)のバイロン・ハワードとジャレッド・ブッシュが監督を務めた楽しいミュージカルです。
南米コロンビアに住む一人の少女ミラベル。彼女の家族はそれぞれが魔法のギフトを授かり、魔法の力でその町の人々を幸せにしていました。けれどもミラベルだけが魔法が使えません。
少し哀しく思うミラベルですが、それでも自分も家族や町の人々の役に立ちたいと思い、毎日明るく振る舞っていましたが、ある日、魔法の力が徐々に弱まるという事態がおこります。ミラベルは家族を守るために奮い立つのですが……。
魔法が使えないミラベルが、どのようにして家族の危機を救うのでしょうか。『ミラベルと魔法だらけの家』をネタバレを交えてご紹介いたします。
CONTENTS
映画『ミラベルと魔法だらけの家』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
Encanto
【脚本】
バイロン・ハワード、ジャレッド・ブッシュ、シャリース・カストロ・スミス
【監督】
バイロン・ハワード、ジャレッド・ブッシュ
【音楽】
リン=マニュエル・ミランダ
【キャスト】
ステファニー・ベアトリス、マリア・セシリア・ボテーロ、ジョン・レグイザ、マウロ・カスティーリョ、ジェシカ・ダロウル、アンジー・セペダ、カロリーナ・ガイタン、ダイアン・ゲレーロ、ウィルマー・バルデラマ、レンジー・フェリズ、ラビ・カボット=コニャーズ、アダッサ、マルーマ
【声の吹き替え】
斎藤瑠希(ミラベル)、中尾ミエ(アルマおばあちゃん)、中井和哉(ブルーノ)、勝矢(フェリックス)、ゆめっち(ルイーサ)、冬馬由美(フリエッタ)、藤田朋子(ぺパ)、平野綾(イサベラ)、関智一(アグスティン)、畠中祐(カミロ)、木村新汰(アントニオ)、大平あひる(ドロレス)、武内駿輔(マリアーノ)
【作品概要】
ディズニー・アニメーション・スタジオが贈る、60本目の長編アニメーション。南米コロンビアに住む、魔法を授かった家族が住む家で暮らす少女ミラベルの活躍を描いたミュージカルファンタジーです。
『ズートピア』(2016)のバイロン・ハワードとジャレッド・ブッシュが監督を務めています。音楽を担当するのは、ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(2021)や『ハミルトン』(2020)でトニー賞、グラミー賞など数々の賞を受賞しているリン=マニュエル・ミランダ。
映画『ミラベルと魔法だらけの家』あらすじとネタバレ
コロンビアの山奥のエンカントと呼ばれる谷に、魔法でできたカシータと呼ばれる家が建っています。
そこには、魔法のギフト(才能)を持つマドリガル一家が3世代で暮らしていました。カシータには決して消えない不思議なロウソクがありました。
マドリガル一家のアルマおばあちゃんは、5歳の孫娘ミラベルにマドリガル家の伝説を話します。
そのロウソクは、昔アルマおばあちゃんとおじいちゃんが故郷を追われて逃げていたときに、おじいちゃんが掲げていたものでした。
おじいちゃんは、3つ子とアルマおばあちゃんを庇って、追っ手に殺されてしまいます。その時消えかかっていたロウソクの炎が再び燃え上がり、山々がせりあがり、皆を守る谷となりました。
ロウソクが決して消えない魔法の炎を放って、エンカントとカシータが自然とできたのです。
アルマおばあちゃんはそれからカシータで暮らし、フリエッタ、ぺパ、ブルーノという3つ子を育てました。
マドリガルの子供たちは5歳になると、それぞれに「魔法のギフト」と自分だけの部屋をカシータから授かることになり、それは今でも続いているのです。
5歳になって、ミラベルにもギフトを授かる日が訪れました。
時はたち、ミラベルは15歳になりました。今日はいとこのアントニオがギフトを授かる日です。ミラベルは町の子供たちに家族が授かったそれぞれのギフトを説明します。
癒しの魔法を使う母のフリエッタ、花を咲かせる魔法を授かった長姉のイサベラ、パワーの魔法を授かったとんでもなく力持ちの次姉・ルイ―サ、天気を操れる魔法を使う叔母ぺパ、変身の魔法を持ついとこのカミロ、エンカント中の音が聞こえるという聴力の魔法を授かったいとこのドロレス、そして未来が見える魔法を授かりながら行方不明になっている叔父のブルーノ。
「ミラベルは何を授かったの?」。子供たちの質問にミラベルは答えられません。ミラベルには魔法のギフトはなかったのです。
家族のギフトを地域のために役立てるように気を配るアルマおばあちゃんを頭に、家族は町の人々から頼りにされています。
だからミラベルもそれに恥じない生き方をしたいのですが、魔法を授からなかったミラベルは今でも哀しい思いを抱えています。
せめて、アントニオには素敵なギフトが授かるといいなと、優しいミラベルは思っていました。
さて、その当日、ギフト授与を祝うために集まってきた人々の前で、アントニオは動物とのコミュニケーションが取れるギフトを授かりました。
喜びにわく人々は庭の広場でパーティーを開きました。
一人でカシータにいたミラベルは、壁がひび割れ、ロウソクの火も消えそうになり、カシータが崩れかけるのを見ました。
大変だと思い、アルマお婆ちゃんに知らせに行きますが、戻ってくるとカシータはひび一つない、いつも通りの家になっていました。
「嘘じゃないよ」。必死で言うミラベルですが、誰もが信じてくれません。逆にアントニオのめでたい日をぶち壊すのはよくないと言われる始末で、ミラベルは落ち込みました。
その晩、ミラベルはアルマおばあちゃんが泣きながら、「ブルーノの予見通りに魔力が消えそう」と天のおじいちゃんに助けを求める姿を見てしまいます。
映画『ミラベルと魔法だらけの家』感想と評価
魔法より優る愛の力
『ミラベルと魔法だらけの家』は、魔法の家で暮らす、家族の中でただ一人だけ魔法が使えない少女ミラベルの物語。
ミラベルは、魔法の力で人々の生活を助ける家族をいつも羨ましく思っていました。なぜ彼女だけ、魔法の力を授けられなかったのでしょう。
姿をくらました、予見能力を持つブルーノ叔父さんは、いずれカシータの魔法が崩壊することを知っていました。自分の力で何とかしようとしても予見能力だけではどうすることも出来ません。
パワーのギフトを持つ逞しいルイ―サは、いつも皆の期待に添えるようにしようと、頑張り過ぎていました。
花を咲かせるギフトをさずかったイサベラは、常に優等生で完璧な女性であろうと、気を張り詰めています。
魔法のギフトを持ち、皆の幸せのために働きながらも、それぞれが本当の自分の気持ちを隠しているのが分かります。
魔法を使えないミラベルは、純粋に皆の役に立ちたいという気持から、カシータに秘められた秘密を探し出そうとしました。
魔法に頼らず、勇気を出して自分から動き出すことで、大きな奇跡に繋がりました。その根底にあるミラベルの人を慈しむ心が、魔法以上に大きな奇跡を呼び込んだと言えます。
ファンタジーなアートと楽曲
本作の舞台は、コロンビアの谷間。カシータと呼ばれる魔法に包まれた不思議な家です。
思わず踊りたくなるようなラテンのリズムに合わせて、ドアや窓が躍るように動きます。生きているように動く靴や、自らコーヒーを注ぐコーヒーポット、滑り台のように形を変える階段など、家じゅうの家具という家具が勝手に動き出します。
こんなユニークな魔法を盛り上げるのは、美しいミュージカルナンバー。手掛けるのは、ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』や『ハミルトン』でトニー賞、グラミー賞など数々の賞を受賞しているリン=マニュエル・ミランダです。
『ふしぎなマドリガル家』『奇跡を夢みて』『増してゆくプレッシャー』『秘密のブルーノ』『本当のわたし』『2匹のオルギータス』『奇跡はここに』『愛するコロンビア』という8曲が本作で登場します。
ストーリーの節目で歌われるこれらの曲は、登場人物たちの気持ちをリアルに表現し、物語の世界観を一層深めるのに役立っていました。
吹き替え版では、ミラベル役の斎藤瑠希やアルマおばあちゃん役の中尾ミエをはじめ、皆ノリノリでキャストに命を吹き込んでいました。
一方、描かれているコロンビアの景色やカシータの外観および室内、それに魔法のギフトでそれぞれに与えられた部屋の室内装飾や扉の美しくリアルな仕上がりのアートにも注目です。
ユニークなのは動物とコミュニケーションをとれるアントニオの部屋。ジャングルと化し、いつも彼と一緒にいるカピバラに癒されます。
まとめ
ディズニー・アニメーション・スタジオの60本目の長編アニメーション作品として制作された『ミラベルと魔法だらけの家』。
魔法が使えないミラベルが、魔法が崩壊するという不安に暮れる家族のために動き出します。
一人だけ異質な存在と思っていたミラベルですが、魔法のギフトがあってもなくても、家族は家族なのです。家族を思う心に、魔法が使える使えないは、関係ありません。
勇気と相手を思う心があれば、どんな苦難にも耐えられて奇跡を起こせます。本作はそれを分かりやすく描いた作品でした。
エンディングでは、作品で歌われた8曲のミュージカルナンバーが順に流れます。ミラベルをはじめとするマドリガル一家の物語を再び、思い起こして楽しめます。