人間に恋した天使の純愛ストーリー
『パリ、テキサス』(1984)、『PERFECT DAYS』(2023)のヴィム・ヴェンダース監督が10年ぶりに祖国ドイツで製作した傑作ファンタジー作品。
1987年・第40回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞しました。脚本はノーベル文学賞作家、ペーター・ハントケが務めます。
主演はブルーノ・ガンツ。コロンボ役で知られるピーター・フォーク、ソルヴェーグ・ドマルタンが共演します。
ベルリンの街を空高くから見下ろす天使ダミエル。気の遠くなるほどの長い時間、悩める人々に寄り添いながら生きてきましたが、人間に恋したことから大きな決心をします。幻想的で美しい世界観が魅力の本作をご紹介します。
映画『ベルリン・天使の詩』の作品情報

(C)Wim Wenders Stiftung – Argos Films
【公開】
1987年(西ドイツ・アメリカ合作映画)
【監督】
ヴィム・ヴェンダース
【脚本】
ヴィム・ヴェンダース、ペーター・ハントケ
【編集】
ペーター・プルツィゴッダ
【キャスト】
ブルーノ・ガンツ、ソルヴェーグ・ドマルタン、オットー・ザンダー、クロト・ボウワ、ピーター・フォーク
【作品概要】
『パリ、テキサス』(1984)、『PERFECT DAYS』(2023)のヴィム・ヴェンダース監督による傑作。
壁崩壊前のベルリンを舞台に、人間に恋してしまった天使の運命を、美しく詩的な映像でつづります。世界中で大ヒットとなり、ハリウッドでもリメイク作品『シティ・オブ・エンジェル』(1998)が製作されました。
1993年には本作の続編『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース』が製作されています。
『ヒトラー~最期の12日間~』(2005)のブルーノ・ガンツが主演を務め、テレビドラマ「刑事コロンボ」のピーター・フォークが本人役で出演しています。
脚本には後にノーベル文学賞を受賞する作家ペーター・ハントケが参加しました。散文詩を思わせるような美しい脚本に注目です。
映画『ベルリン・天使の詩』のあらすじとネタバレ

(C)Wim Wenders Stiftung – Argos Films
人間たちの心の声を聴くことができる天使ダミエルは、苦悩する人々に寄り添い、心をなだめてやっていました。
サーカスの空中ブランコで舞う女性マリオンに出会ったダミエルは、孤独を抱える彼女に強くひかれるようになります。サーカスは経営不振から閉めることとなり、マリオンは打ちひしがれていました。
コーヒースタンドにいる刑事コロンボ役で知られるピーター・フォークを見つけたダミエルは、そっと近づきます。するとピーターは、「見えないけれどいるのは感じる」と言って、ダミエルに握手を求めました。
そっと手を握ったダミエルに、ピーターは「兄弟!」と嬉しそうに呼びかけます。
マリオンへの恋心から、ダミエルは天界から人間界に降りることを決意し、仲間の天使カシエルにそのことを告げました。
映画『ベルリン・天使の詩』の感想と評価

(C)Wim Wenders Stiftung – Argos Films
彩り豊かな世界で生きる幸福
日本に造詣の深いことで知られる巨匠ヴィム・ヴェンダース監督の傑作です。長い時間、人間たちに寄り添ってきた天使が、サーカスのブランコ乗りの女性に恋したことから大きな決心をします。
天使というと年若い少年を思い浮かべがちかもしれませんが、本作に出てくるのは、中年の男性の姿をした天使です。長い長い時間を生き、様々な人間の悲しみに寄り添ってきたことを思うと、これぐらい年齢を重ねた天使の方が説得力がある様に思えます。彼らは、とても穏やかでやさしい瞳をしています。
天使から見える世界はモノクロームで描かれ、常に静謐です。対照的に、人間界に降り立った天使ダミエルの見る世界はカラフルに様変わりし、色と共に大きな喧噪に包まれます。ごちゃごちゃした雑然とした世界。そこはまさに「色付き」の世界で、ダミエルは喜びにスキップせんばかりに軽やかな足取りで街を歩き出します。
彼の世界は、ブランコ乗りのマリオンに恋した時からもしかしたらすでに色付きになっていたのかもしれません。彼女を見つめるダミエルの身体中からは、生きる喜びがほとばしります。
何かに触れることも話すこともできずにいた天使ダミエルが、初めて経験する色のある世界。彼の喜びを通して、私達自身も自分が生きる喜びを改めて教えられるように感じます。
お茶目なコロンボの存在感

(C)Wim Wenders Stiftung – Argos Films
本作でヴェンダース監督のユーモアセンスが感じられるのは、ピーター・フォークの存在です。刑事コロンボ役で知られる名優が、本人役でお茶目で魅力的な演技で魅了します。
彼は実はダミエルと同じく元天使で、人間界をたっぷり楽しみながら生きています。ダミエルがまだ天使の頃にコーヒースタンドで出会い、「見えないけどいるのはわかる」と言って握手した仲です。
その後、人間になったダミエルはコロンボに会いに行き、全部教えてほしいと頼みます。しかしピーターはその問いに答えず、「自分で発見しろ。面白いよ」という素晴らしい言葉をかけるのです。
わからないからこそ、自分で見つける楽しみがあります。何もかも手軽に情報を得られる現代に生きていると、その喜びを忘れがちです。人生とは、自分の目や耳、足を使って、自分の喜びを見つける旅路といえるでしょう。
そんな大切なことも教えてくれる素敵な人生の先輩として、ピーターはとても重要な役を果たしています。
まとめ

(C)Wim Wenders Stiftung – Argos Films
人間に恋した天使のドラマを通して、カラフルな人生を生きる喜びを教えられる傑作『ベルリン・天使の詩』。
天使の視線を映し出す幻想的なモノクロームの前半から、賑わいある色彩豊かな人間界への切り替わりが見事で、ハッとさせられることでしょう。いつの間にか、ダミエルの心にシンクロさせられていたことに気づかされます。
ヴェンダース監督の見事な仕掛けにうならされるばかり。ユーモアに満ちた温かな監督の視線と、素晴らしい映像美が融合した唯一無二の傑作です。




































