映画『八日目の蝉』は日本アカデミー賞では作品賞を含む10冠を獲得。
映画『八日目の蝉』の原作は、ベストセラーとなった角田光代原作の同名小説。
「愛する人の子供を一目見たかった」最初はたったそれだけだった女の4年間の悲しき逃避行の物語『八日目の蝉』。
角田小説を演技派女優として知られる井上真央と、永作博美のW主演に迎え映画化。演出は『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』『いのちの停車場』など務めた、成島出監督が担当しています。
映画『八日目の蝉』あらすじや作品の感想や見どころをご紹介いたします。
1.映画『八日目の蝉』の作品情報
【公開】
2011年(日本映画)
【原作】
角田光代
【監督】
成島出
【脚本】
奥寺佐渡子
【キャスト】
井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子、田中哲司、渡邉このみ、市川実和子、余貴美子、平田満、風吹ジュン、劇団ひとり、田中泯
【作品概要】
『最優秀作品賞』『最優秀監督賞』『最優秀主演女優賞』『最優秀助演女優賞』など日本アカデミー賞で10冠に輝いた、成島出監督の代表作となるサスペンス。小池栄子の怪演にも注目です。
2.映画『八日目の蝉』のあらすじとネタバレ
野々宮希和子は妻子ある、秋山丈博と交際していました。
希和子は丈博の子どもを妊娠をします。すると丈博は、妻恵津子と離婚して、希和子と結婚する意志はあるものの、子どもはいらないと言われてしまい中絶する事になります。
そして今度は恵津子の妊娠。希和子が得るはずだった1人の女性として幸せはなくなり、所詮不倫は不倫と運命を受け入れます。
希和子はきっぱり丈博とは別れ、新たな人生を歩もうとしました。
希和子は「最後に一目、愛した丈博さんの子どもを見れば諦めがつく」と、秋山家を訪ねます。
すると丈博と恵津子が生まれたばかりの赤ん坊を置いて外出するところでした。
秋山家へ侵入する希和子は、ベビーベッドで寝ている女の子見つけます。
「カオル」と声をかける希和子。希和子は丈博との間に生まれた子どもにつける名前は、「カオル」と決めていたのです。
一目見たら満足なはずだった希和子。
しかし、希和子は衝動的にカオルを抱きかけて秋山家を飛び出しました。
誘拐。そして希和子の逃避行のはじまります。
友人に嘘をついて泊まらせてもらうなどして、生活していく希和子。
いきなり母親となった希和子は、育児に戸惑いながらも毎日を必死で生きていきます。
その頃、秋山の娘恵理菜は誘拐されたというニュースが世間に広まり、希和子は警察の目をかいくぐりながら生きていくことになります。
エンジェルハートいう女性だけを対象にした宗教団体施設に入所する希和子は、閉鎖的な環境下でその団体に身をゆだねるようにしながら、“親子として過ごす日々”をかみしめながら生活を続けていきます。
ある日、突然、エンジェルハートに警察の手が伸びます。
希和子はとっさにカオルを抱きかかえエンジェルハートから脱走します。
夜通し山道をさまよいながら逃げる希和子は、エンジェルハートで仲が良かった友人の久美の実家がある小豆島へ向かうのでした。
久美の実家の家業を手伝うことになる希和子。
やがて久美の母親から「すっかり島の人間になったね」と言われるまでになります。
カオルも友達ができて親子ともども安住の地が見つかったと思いましたが、ここにも警察の手が伸びてきました。
慌てて身支度を済ませ、島を出る準備をする希和子は「友達と離れたくない」とすがるカオルの姿に心が張り裂けそうになります。
「もうこれまでかな……」と悟った希和子は、カオルと一緒に写真館へ行きます。
「写真を撮って下さい。家族写真です」と写真館の主人に告げる希和子。
友達と離れる事になり落ち込むカオル。カオルとの時間は長くはないと悟り、泣き顔の希和子は記念写真を写します。
写真館を出た希和子は船の中で食べるものを売店で買い、停留所へ向かいます。
3.映画『八日目の蝉』の感想と評価
誘拐は犯罪です。許される行為ではありません。
でも、希和子のカオルへの愛し方がすごいんです。
自分の夫の不倫相手で夫の子どもを中絶した希和子に対し「子どもをおろすなんて最低な女。あなたの心はからっぽのがらんどうだ」とののしるような恵津子よりも、希和子に育てられた恵理菜は幸せだったのではないか、と思えるぐらいの、命がけの愛なのです。
血の繋がり云々よりも、どれだけ濃密な時間を過ごしたか、どれだけ互いが互いを思い合ったのかが重要なんですかね、やっぱり。
ストーリー展開は、現在と過去が交互に描かれている事もあり、ある程度は今後がどうなるかは分かった上で映画を見ていくことになるのですが、分かっているにも関わらず、希和子にこのまま逃げ切って欲しい!
思わず心の中で叫んでしまうほど、感情移入させられてしまう命がけの深い愛を感じさせてくれます。
また希和子自身、恵理菜から愛されていることや求められていると感じていたのでしょう。
希和子は自分と恵理菜の絆に絶対の自信があったことから、裁判では謝罪ではなく、「かけがいのない4年間をありがとう」と感謝が口から出てきたのだと考えられます。
その気持ちの裏付けとなっているクライマックスの写真のエピソードは名場面です!
刑務所に服役していた希和子が、カオルと一緒に撮った写真を受け取った時の表情を想像すると鳥肌ものです。
希和子がその写真を宝物のように「カオル」と、微笑みかけながら生きていっている光景が目に浮かぶようです。
まとめ
永作博美の鬼気迫る“母親っぷり”も見ごたえ十分ですが、脇を固める小池栄子や森口瑤子も輝いた演技を見せてくれます。
また、今やドラマや映画に引っ張りだこの吉田羊が、クライマックスで恵理菜を抱きかかえて警察車両に乗せる刑事役で出ています。
他にも希和子の不倫相手の秋山を田中哲司が演じているなど、今あらためて見ると超豪華キャスティング!
角田光代の小説と合わせて、映画『八日目の蝉』は必見な作品です。