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映画『叫びとささやき』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。ベルイマン監督が家族の愛憎と人の欲望を“強烈な赤”で彩る

  • Writer :
  • 中西翼

アメリカでのベルイマン代表作『叫びとささやき』

1973年にスウェーデンで公開された映画『叫びとささやき』は、死を間近に控えた次女と、その看病を任された二人の姉妹、そして召使の4人を描いたヒューマンドラマ映画。

監督と制作、そして脚本を務めたのは『野いちご』や『第七の封印』のイングマール・ベルイマンです。

数多くのベルイマン作品に出演したイングリッド・チューリンが主演をし、ハリエット・アンデルセン、そしてリヴ・ウルマンが共演しています。

死を前にした女性とそれを見守る家族を、芸術的に美しい映像で捉えた本作品『叫びとささやき』は、第46回のアカデミー賞作品賞にノミネートされています。

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映画『叫びとささやき』の作品情報


(C)1973 AB SVENSK FILMINDUSTRI

【公開】
1973年(スウェーデン映画)

【原題】
Viskninger Och Rop

【監督・脚本・製作】
イングマール・ベルイマン

【キャスト】
イングリッド・チューリン、ハリエット・アンデルセン、リヴ・ウルマン、カリ・シルヴァン、ヨールイ・オーリン、ヘニング・モリッツェン、エルランド・ヨセフソン、アンデルス・エク

【作品概要】

映画『野いちご』(1957)や『第七の封印』(1957)のイングマール・ベルイマン監督作品。上流貴族のアグネスは病気になり、姉のカーリンと妹のマリア、そして召使のアンナに看病されます。3人の女性が、死にゆくアグネスを見守るまでを描いたヒューマンドラマ。

『魔術師』(1957年)など多くのベルイマン作品に出たイングリッド・チューリンが主演をし、『鏡の中にある如く』(1961)のハリエット・アンデルセンと『仮面/ペルソナ』(1966)のリヴ・ウルマンが、姉妹を演じています。

映画『叫びとささやき』のあらすじとネタバレ


(C)1973 AB SVENSK FILMINDUSTRI

霧の立ちこめる森の中、木漏れ日が差す先には、大きな屋敷があります。屋敷には、数々の時計があり、カチカチと、時を刻みます。

三姉妹の三女、マリアが退屈そうに座っていました。次女のアグネスは目を覚まし、水を飲みます。

アグネスは、病気を患っていました。苦しそうな表情を浮かべるアグネスを、長女のカーリンとマリア、そして召使いのアンナが看病していました。

朝になると、カーリンは机に向かって仕事を、そしてアンナは神への祈りを捧げます。アンナは、幼い娘を亡くしていて、安らかな死後を過ごすよう、祈っていました。

アグネスは、幼い頃を思い出していました。母親は、マリナには慈愛の表情を浮かべていましたが、アグネスには冷たく接していました。教会でもアグネスは常に疎外感を感じていたのです。

アグネスはある日、カーテン越しに母親を見ていました。美しい母がアグネスに気付くと、こっちに来るよう、優しく手招きしました。それが今でも、忘れられないのです。

ベッドで寝たきりのアグネスの元を、主治医が訪ねます。温かく診察する主治医でしたが、去り際に余命わずかであると、カーリンに知らせました。

帰ろうと支度する主治医を、マリアが待っていました。かつてアンナの娘を診察した時に2人は、身体を重ねていました。

それは、マリアの夫ヨーアキムがいなかった嵐の夜でした。帰れなくなった主治医を泊めた翌日、帰ったヨーアキムの腹に、小さなナイフが刺さっていました。

マリアは、昔より美しくなったと主治医に言われますが、そのあと、口元には欲求不満が、そして肌には皺が、といった風に不満を並べられます。

「私たち、似たもの同士よ」マリアはそう言い、唇を重ねます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『叫びとささやき』ネタバレ・結末の記載がございます。『叫びとささやき』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)1973 AB SVENSK FILMINDUSTRI

アグネスの容態が、これまでにないほど悪化しました。

医師を呼ぼうと急ぎますが、その日は留守にしていました。マリアとカーリンはたじろぎ、アンナが、アグネスの側へと駆け寄ります。

そしてカーリンとマリアが看病する中、ようやく症状は回復します。弱々しい様子ですが、さきほどのような悲痛な叫びは上げませんでした。

しかし再び、激痛がアグネスを襲います。「アンナ!」声にもならぬ叫びで、そう呼びます。そしてアンナを枕元に置き、アグネスは生命を終えました。

カーリンは、外交官の夫フレドリックと食事をしていました。カーリンはフレドリックがよそおうとするおかずを断ります。フレドリックはワインのガラスを割ったことにも無関心でした。

食事を終えて部屋に戻ったカーリンが、アンナに服を脱がせてもらいます。鏡越しに覗くアンナに、声を荒げて怒った後、謝ります。

部屋に1人になったカーリンは、フレドリックが割ったガラスで、陰部を傷つけました。

そして、血にまみれた姿を夫に見せつけます。陰部から溢れる血を、汚らしく口周りに塗ります。

カーリンは屋敷を売り、そのお金を姉妹で分けることにしました。

アグネスが亡くなり、マリアとカーリンが話をしていました。仲良く慰め合おうと近づくマリアを、カーリンが拒絶します。

カーリンは、マリアに心ない言葉を浴びせます。マリアは傷つきますが、カーリンがその場で謝り慰めます。

2人は心を許し、抱き合い、慰め合います。

アンナが目を覚まし、アグネスの部屋へと近づきます。カーリンもマリアも硬直した表情で、目を合わせようともせずに突っ立っています。

扉を開くとそこには、死んだはずのアグネスがいました。アンナは姉妹を呼びますが、マリアもカーリンも、アグネスが伸ばす手に応じず、拒絶します。

アンナだけがアグネスの手を取り、抱きしめました。

アグネスの葬式が終わりました。アンナは暇を出され、その報酬としてアグネスの形見を持ち去るよう、言われます。

しかしアンナは、何も欲しがりませんでした。

姉妹とその夫は屋敷を去ります。アンナは、生前アグネスが書き記していた日記を開きます。

そこには、姉妹とアンナの4人で過ごした、美しい日の記憶が書かれていました。満たされていたと、アグネスは感じていたのでした。

叫びもささやきもかくして沈黙に帰した。その一言で、映画は幕を閉じました。

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映画『叫びとささやき』の感想と評価


(C)1973 AB SVENSK FILMINDUSTRI

アメリカでのベルイマンの代表作であり、第46回アカデミー賞の撮影賞を受賞した映画『叫びとささやき』

4人の女性の渇望や孤独、死と性を描き、真っ赤な幕が映画を彩っています。

不安感を煽るような赤い壁紙。そして確かに落ち着きがなく、みっともない女性役の4人の女優は、見事に愛に飢える中年女性を演じきりました。

カーリンやマリアは夫への愛に渇き、別のところに愛を見出そうとします。また、子供を亡くしたアンナも、傷ついた心の隙間を埋めるように、献身的にアグネスの看病をしていました。

アンナにあったのは、家族を超えた愛という類いのものではありません。

子供をあやすように片乳を放り出してアグネスを抱いていたことから、ただ子供への愛の矛先を無くし、それをアグネスにぶつけていました。

ラストシーンの真っ赤な光に照らされたシーンに、死んだ子供の泣き声が聞こえていたことから、そう解釈することができます。愛とは常に、自分本位なものです。

また、家族だからといって無償の愛が担保されているものではないといったメッセージも、本作品には含まれています。

カーリンとマリアは心を開いて許し合ったように見えましたが、ラストシーンに既に、すれ違いの兆候が見えていました。

自分を愛で満たすため、相手を慈愛で受け止める振りをしていたのです。

カーリンもマリアも、醜く愛を求め、ささやき、叫んでいました。ガラスで身を削る行為や、夫とは別の男に抱かれようとする行為が、その欲望の表れです。

己を満たすために必死になる4人の女性の姿を、ベルイマンは容赦なく撮影しました。

まとめ


(C)1973 AB SVENSK FILMINDUSTRI

森の奥の屋敷を舞台に、愛憎渦巻き絡み合う家族の姿を描いた映画『叫びとささやき』は、沈黙に帰したという言葉とともに、虚無的な結末を迎えました。

芸術的で美しい映像は、真反対とも言えるほどの生々しい女性の感情を浮き彫りにしていました。

赤と白で描かれていた家族の仮初の愛情の形に、アグネスの死から黒色が混ざってバランスを崩していきます。

色彩感覚を大事にするヨーロッパ映画らしい演出が、観るものを映画の世界に引き込み、魅了しました。

ベルイマンの代表作は、難解な物語で死や孤独をテーマにするとともに、美しい映像を後世に残しているのです。



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