人生が上昇(UPSIDE)する!
本国フランスで2011年の興行No.1を獲得し、日本でも大ヒットを記録した『最強のふたり』をハリウッドでリメイク!
全米初登場1位、オリジナル版の200倍の大ヒットを記録した映画『THE UPSIDE 最強のふたり』をご紹介します。
映画『THE UPSIDE 最強のふたり』の作品情報
【公開】
2019年公開(アメリカ映画)
【原題】
THE UPSIDE
【監督】
ニール・バーガー
【キャスト】
ブライアン・クランストン、ケヴィン・ハート、ニコール・キッドマン、ゴルシフテ・ファラハニ
【作品概要】
フランスで2011年に公開されその年の興行収入一位に輝いた『最強のふたり』(監督:オリヴィエ・ナカシュ、エリック・トレダノ)をハリウッドでリメイク。全米で大ヒットを記録した。
「ペット」シリーズのケヴィン・ハート、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のブライアン・クラストンが偶然のきっかけで友情を育む“ふたり”を演じる。共演はニコール・キッドマン。
『ダイバージェント』のニール・バーガーが監督を務めた。
映画『THE UPSIDE 最強のふたり』あらすじとネタバレ
ニューヨークの街をフルスピードで飛ばす一台の車。パトカーが追ってきても運転しているデルは自信たっぷりの様子です。彼の思惑通り、パトカーをまんまとまいたかに見えました。ところが今度は前からパトカーがやってきて、さすがのデルも身動きが取れません。外に出されて、パトカーに手をつかされるデル。
助手席に乗っていたフィリップも降りるように命じられますが、彼はハンディキャップを背負っており、動くことができません。
デルがフィリップが痙攣しだしたから救急病院につれていくところだったと言うので、警官が助手席を覗き込むと、フィリップが泡を吹き出し瀕死の状態でした。
パトカーに誘導してもらって病院へ。警察が行ってしまうと、デルはフィリップに笑いかけるのでした。「たいした演技じゃないか」
6か月前。
デルは服役して最近出所したばかり。職を探している証拠を示すためサインを3つ集めて翌日までに提出しなければなりません。やっと2つサインを集め、最後のサインをもらうため、マンハッタンの高層ビルを訪ねました。
何か仕事を求めてやってきたらしい人のあとについていくと、豪華な待合室に、面接を待つ人々が座っていました。清掃業の応募者にしてはネクタイをしている人もいて腑に落ちません。聞けば、四肢麻痺の大富豪・フィリップの介護者の面接が行われているといいます。
1時間以上待たされたデルは息子を迎えにいかなければならないから、サインだけくれと面接の部屋に入っていきます。
これまで誰が何を言おうとまったく反応しなかったフィリップがデルには関心を持ったようでした。
君を雇おうと言われますが、デルは介護人になる気はさらさらなくサインだけがほしいのです。それならこうしよう、一晩考えて、明日ことわりに来たらサインしようとフィリップは言いました。
デルが学校についたときは、息子のアンソニーは母親が迎えに来たあとでした。デルはアンソニーと元妻ラトリスを訪ねますが、ラトリスは養育費も長い間支払ってくれないデルにすっかり失望していました。
デルはアンソニーの誕生日プレゼントに『ハックルベリー・フィンの冒険』を贈りますが、それはフィリップの本棚から失敬してきた本でした。
アンソニーにつれなくされ、ラトリスに追い出されたデルは眠る場所もなく、翌朝、フィリップの家を訪ねました。
イヴォンヌという女性が「来たのね。サインするわ」と声をかけてきましたが、彼が介助人になると応えると途端に機嫌が悪くなりました。彼に介助人は務まらないと考えているようでした。
地下鉄代を要求すると、この仕事は住み込みだと聞かされます。部屋に案内されたデルはその豪華な部屋にすっかり驚きます。
フィリップからは自分が呼吸をしなくなったときは、無理な蘇生はしないようにしてくれと約束させられます。こうしてフィリップを介助する日々が始まりました。
夜中にフィリップがヘルプの合図を送ってもぐっすり寝込んでいたり、初任給をもらった日は、妻に届けるため外出して行方不明になるなど、気ままな行動をするデルにイヴォンヌからかみなりが落ちます。
そんなデルも介助の仕事に慣れてくると、車椅子が動きやすいように改良を加えたり、持ち前の人懐っこさを発揮してフィリップと心を通わせていくようになりました。
ある日デルは、彼を散歩に連れ出し、どうしてこんなふうになったのかを尋ねました。パラグライダーの事故のため、彼は手足の自由を失ってしまったのでした。天候が悪いのに、いつものチャレンジ精神を働かせたため、無謀な行動に出てしまい事故にあってしまったのだと彼は語りました。
癌で苦しんでいる妻を喜ばせたいと思ったのに・・・。今でも時々、死んだ妻のことで彼は夜中にうなされていました。
事故以降、彼は人の手を借りることで生かされている自分に絶望しており、ただ毎日を空虚に過ごしてきたのです。しかし、そんな彼もデルが介助人になったことで笑顔が増えていきました。
デルが大麻をフィリップに吸わせると、フィリップはすっかりハイになり、ホットドッグ屋でホットドッグを14本も注文しました。
ある時、デルは、フィリップがリリーという女性と文通していることを知りました。デルは、リリーは絶対インターネットで調べてフィリップのことを知っているはずだと主張します。手紙だけのやり取りより実際会ってみたらいいとデルは勧めますが、フィリップとイヴォンヌは、今のままでいいと応えます。
デルがリリーの手紙を見ると、そこには彼女の電話番号が書かれているではありませんか。フィリップとイヴォンヌが止める中、デルはイヴォンヌの携帯を取り上げ電話しますがあいにく留守電でした。デルに携帯を渡されたフィリップは落ち着かない様子で名乗り、電話をくれるようにと伝言を残すのでした。
フィリップを車に乗せ、デルが向かったのは息子の、アンソニーのところでした。アンソニーも車に乗り込み、三人は楽しいひとときを過ごしますが、別れ際にデルがアンソニーに誕生日にあげた「ハックルベリー・フィンの冒険」の本を返してくれと言うと、一度もらったものをなんで返さなきゃいけないの?とアンソニーはへそを曲げ、「盗んだものなの?」と言うと、鞄から本を取り出し、フィリップに手渡しました。
アンソニーはそのまま帰っていきました。「雇われる前なんだ」とデルは言い訳をし、ちゃんと返したかったんだと続けました。「長年の養育費不払いは半日では取り返せない」とフィリップは言うのでした。
二人が帰宅すると、会社の役員や階下の住人たちがフィリップの誕生日をサプライズで祝ってくれました。しかしフィリップはそのようなものを望んでいなかったので、イヴォンヌに客を追い払うように頼みました。
デルはフィリップの望みを悟り、置物やガラス類を粉々に破壊します。驚いてやってきたイヴォンヌにフィリップはパーティーを続けるように言い、デルは遠慮するイヴォンヌを踊らせることに成功します。フィリップはイヴォンヌがダンスが上手なのに驚きました。
そんな中、イヴォンヌの携帯がなり響きました。リリーから電話がかかってきたのです。リリーの声は感じがよく、2人は夕食を共にすることとなりました。
数日後、レストランでリリーを待つ間、フィリップは、デルに5万ドルの小切手を手渡しました。デルが遊び半分に描いた絵を、才能のある新人画家が描いたのだと勘違いした金持ちの隣人が投資のためにその絵を買ったというのです。フィリップはそれでビジネスを始めるようにと言うのでした。
映画『THE UPSIDE 最強のふたり』の感想と評価
この作品が心地よく感じられるのは、人生の中で、まったく交わるはずもなかった二人の男が、偶然の出会いから親交を深め、互いに影響し合い、たかめあっていく姿が描かれているからです。
裕福な白人男性とスラム育ちの黒人男性が、互いを認め合い、それぞれが生きる証をみつけていくストーリーは素直に好感のもてるものになっています。
四肢麻痺でニューヨークのマンハッタン(パークアベニュー)のペントハウスに引きこもっている大富豪フィリップに扮するのは、人気ドラマ『ブレイキング・バッド』のウオルターことブライアン・クランストン。刑務所から出てきたばかりで妻と子にも白い目で見られているデルを、コメディアンで俳優のケヴィン・ハートが演じています。
フィリップとデルが童心に帰ったようにはしゃいだり(大麻でラリっているので童心とは程遠いのですが・・・)、デルが起業に関するくだらないアイデアを次々と出すといった会話のやり取りは、愉快で朗らかなものであり、顔の表情だけで演技するブライアン・クランストンがとてもいい表情をみせています。
その穏やかで自然で、押し付けがましさもなければ、妙な遠慮もない関係は、偽善ぽさはひとつもなく、フィリップに生きる喜びを与え、同時にデルを成長させていきます。その相互作用がいいのです。
またこの作品は、オペラからHIPHOPまで、全編音楽にあふれているのですが、オペラがフィリップの趣味でポップス系はデルというふうにはじめはそれぞれの領域の範囲内におかれています。
やがてデルが本物のオペラを劇場で見たことからすっかり虜になり、その境界があやふやになっていきます。
そして最後の最後に紹介されるオペラと、デルが愛してやまないアレサ・フランクリンが出逢っていたという事実には、デルと同じくらいの叫びを心の中であげてしまうことでしょう。
まったくありえないと思っていたことや、期待すらしなかった事柄が、奇跡でなくとも起こりうるという希望の欠片のようなものが、ここに静かに立ちあらわれているのです。
まとめ
ニューヨークがとても魅力的に描かれているのもみどころのひとつです。アクション映画かと思わせるような冒頭の鮮やかなカーチェイスは、グランドセントラルステーションや、エンパイアステートビルディングなど、マンハッタンのシンボル的な建物や、NYの街には欠かせないニューヨーク市警の姿を紹介したいからこその展開ではと思わせるくらいです
また、フィリップの住まいに飾られている様々な現代アートにも注目です。面白いのは、デルが殴り書きした絵が、それなりのアートに見えて、それがフィリップの部屋の壁に飾られていれば、新進作家の作品かと勘違いして投資目当てで購入するものがいることです。アートの世界への辛辣な皮肉といえます。
ニコール・キッドマンが控えめな演技に徹しながら、可愛らしいと思わず口にせずにはいられないようなキュートな魅力を発揮しています。
手の届く身近なところに幸せが転がっているのに、人間っていうものはそれに気づくのに随分手間取るものなのだと、ラストの二人の姿を観て、しみじみと感じるのでした。