映画『トールキン 旅のはじまり』は2019年8月30日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかで全国ロードショー!
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの原点『指輪物語』の作者として知られるJ・R・R・トールキンの自身の半生を描いた人間ドラマ『トールキン 旅のはじまり』。
自身に強く栄光を与えた人々との出会いと別れの場面、それはまさしく自身が生み出す物語の、旅のはじまりでした。
今なお人気を誇る小説『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』の作者の生涯を追った本作は、『トム・オブ・フィンランド』などを手掛けたフィンランドのドメ・カルコスキ監督が演出を務めます。
また「X-MEN」シリーズなどのニコラス・ホルトや、『あと1センチの恋』などのリリー・コリンズ、『ゲーム・オブ・スローンズ』のアンソニー・ボイル、『ダーケスト・マインド』『ネバーランド』のパトリック・ギブソン、『ダンケルク』のトム・グリン=カーニーらがキャスト陣に名を連ねています。
CONTENTS
映画『トールキン 旅のはじまり』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【英題】
『TOLKIEN』
【監督】
ドメ・カルコスキ
【キャスト】
ニコラス・ホルト、リリー・コリンズ、デレク・ジャコビ、トム・グリン=カーニー
【作品概要】
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの原作『指輪物語』や『ホビットの冒険』を手掛けた作家J・R・R・トールキンの、自身の半生で得た様々な出会いと別れの姿を描いた人間ドラマ。母親や生涯の友となる学生時代の仲間との出会い、運命の女性との恋模様などを描きます。
演出は『トム・オブ・フィンランド』などを手掛けたフィンランドのドメ・カルコスキ監督。主人公のトールキン役を「X-MEN」シリーズなどのニコラス・ホルト、彼女の最愛の女性を『あと1センチの恋』などのリリー・コリンズが演じます。
さらにトールキンの友人役として『ゲーム・オブ・スローンズ』のアンソニー・ボイル、『ダーケスト・マインド』『ネバーランド』のパトリック・ギブソン、『ダンケルク』のトム・グリン=カーニーらが名を連ねています。
映画『トールキン 旅のはじまり』のあらすじ
第一次世界大戦。激戦を展開していたフランス・ソンムの塹壕で、体調の不調を訴えながらもトールキンは友人の安否を確認すべく、戦いの前線に向かおうとしていました。
幼いころに両親を亡くしたトールキンでしたが、学校で知り合ったその友人と自身を含む4人のグループは生涯の友となり、時に絶望の淵に立ったトールキンを叱咤激励し支えてくれていました。
戦火はますます激しくなるばかり、前線に立つ兵士には絶望的な運命が待っていましたが、トールキンは彼を探すことをあきらめませんでした。
やがて激しさを増す戦場を進みながら、いつしかトールキンはかつて過ごした青春の日々を振り返っていました…。
映画『トールキン 旅のはじまり』の感想と評価
神話の身近さを感じさせる描き方
物語は第一次世界大戦の戦火の中、そして主人公・トールキンの回想が交互に映し出されることで展開していきます。特に印象として強くなってくるのは、トールキンが学校で一生の親友となる3人の学友と知り合い、自分たちの秘密クラブ“T.C.B.S”を結成してからの回想部分になります。
「芸術の力で世界を変える」とスローガンを掲げた彼らは、なじみの店であるバロウ書店に度々入り浸っては、お茶を飲みながら様々な芸術論を戦わせます。一方、その話の中で多く話されるのが、いにしえから伝えられた神話的な物語の数々であります。
その内容はウィットに富んだものでありますが、あくまでいにしえのもの。芸術という分野では、現代社会を論ずるより昔の話に向けた思いの方が強かったのでは、と思えるところでもあります。そしてその思いはかなり彼らの生活にも根差していたことが、この映画からはうかがえます。
それは、例えばここ日本という国で古くから伝わる民謡をどのように認識しているのかともまた違う、それぞれの人生に大きく影響するものだったようにも見えます。そういった英国人風のバックグラウンドが、本作では4人の親友同士のシーンをはじめ、様々な場面に見られます。
極端な例ですが、英国といえば80年代に発生した音楽のムーブメントとしてNWOBH(ニュー・ウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)と呼ばれる、ヘヴィメタル音楽を大きく広めたムーブメントが存在します。
このムーブメントの中で傾向の一つとしてあったのが、歌詞にドラゴンや古代の王子、お姫様、そしてお城といった古い神話的な内容に触れるということ。これはいまだにそういった流れを汲むバンドもあります。
こういったイギリスという国の傾向は、いにしえの話と密接に生きている彼らだからこそと思える部分であり、そういったバックグラウンドがしっかりと映像にも描かれており、物語の世界観を一層深いものにしています。
『指輪物語』につながる光景
物語の光景は、トールキンがのちに『指輪物語』を創作するに至る経緯につながるエピソードが様々に描かれています。親友、そして生涯の伴侶との出会いもそうですが、もっとも衝撃的に表されているのが、第一次大戦化の戦場の場面です。
シーンは当時多くの犠牲者を出したというフランス・ソンムの塹壕における壮絶な戦いの場面を描いています。色彩感あふれるトールキンの回想シーンとはあまりにも対照的で、すべてがほぼモノトーンで描かれているシーンは、思わず目をそむけたくもなる悲惨な状況を表しています。
トールキン自身は、『指輪物語』の様々なシーンは、世界大戦の実話からとったものではないと常々明言していたといいます。しかしカルコスキ監督はまた違った解釈を行いました。
戦場でのトールキンは常に死と隣り合わせで、そういった場での恐怖や闇の経験は彼自身に刻み込まれ、影響を与えたに違いないと考え、敢えて戦場での影響が、後のトールキンの捜索に影響を与えたことを思わせる映像を取り入れています。
それは、トールキンが戦場で諸々の幻を見るというもので生かされています。凄惨な戦い、殺し合いの場面で、闇にうごめく得体の知れないもの。あるいは最期を迎える多くの兵士の中を、我関せずと走り抜ける、馬に乗った仮面の騎士。
このシーンは、そのスケール感もあって映画「指輪物語」シリーズで見られた、広大でダークな雰囲気を持つシーンに強くオーバーラップするようでもあり、まさにあたかもこの物語が『指輪物語』へと続くものと思える、強い印象を醸し出しています。
本作で表されているものは、実際にトールキンが話した内容とかけ離れている点は間違いありません。
しかしそれを超越し、今日それを読んだ人に様々な想像力をかき立てる要因になった『指輪物語』が、いかに生まれたかを改めて考えると、カルコスキ監督が本作で行った脚色、演出は、あながち否定されるものではないともいえるでしょう。
まとめ
この映画のポイントは、まさにタイトルにも描かれているとおり「旅のはじまり」、いかにトールキンが自身の物語を書くに至ったか、という部分が表されているかどうかにつきます。単なるドキュメントフィルムではありません。
本作では小説、そして近年大きな人気を獲得した映画作品へ、彼の頭にあるものがいかに実体化したのかを、監督自身の仮定で描かれており、これはこれで大きな意味を持つ一本となったことを表しております。
トールキンが様々な出来事からインスピレーションを受ける様は、見ている側の想像力をかき立ててくれるようでもあります。
映画『トールキン 旅のはじまり』は2019年8月30日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開されます!