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Entry 2021/03/26
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映画『約束の宇宙』あらすじ感想評価と考察解説。宇宙飛行士とその開発の裏にある“人間の心理”をシングルマザーを通して鮮明に描く

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『約束の宇宙』は2021年4月16日(金)より全国順次ロードショー!

夫と別れ7歳の娘と二人で暮らす宇宙飛行士候補の母。彼女はある日突然課せられた願ってもないチャンスと、子供への愛情のはざまに置かれることになる…。

シングルマザーの宇宙飛行士と幼い娘の愛と絆を描いた映画『約束の宇宙』。撮影は欧州宇宙機関(ESA)の協力により、ドイツ、ロシア、カザフスタンの関連施設で敢行され、現在熱い注目を浴びる宇宙開発現場の裏にある人間模様の一幕を描きます。

2016に『ラスト・ボディガード』の演出を手がけたアリス・ウィンクール監督が、自らオリジナル脚本を執筆。キャストにはエヴァ・グリーンやマット・ディロンら実力派俳優と、多くの応募者によるオーディションで選ばれた子役ゼリー・ブーラン・レメルら個性的な面々が名を連ねています。

映画『約束の宇宙』の作品情報

(C) Carole BETHUEL (C) DHARAMSALA & DARIUS FILMS

【公開】
2021年(フランス映画)

【原題】
PROXIMA

【監督・脚本】
アリス・ウィンクール

【音楽】
坂本龍一

【キャスト】
エヴァ・グリーン、ゼリー・ブーラン・レメル、マット・ディロン、ザンドラ・ヒュラー、ラース・アイディンガー

【作品概要】
シングルマザーの女性が宇宙飛行士という待望の任務に選ばれるも、キャリアと娘への愛情のはざまで苦悩する姿を描きます。『ラスト・ボディガード』などのアリス・ウィンクール監督が作品を手掛けます。

キャストには主人公であるシングルマザーのエマ役を『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』などのエヴァ・グリーン、その娘をおよそ300人の中からオーディションで選ばれたゼリー・ブーラン・レメルが演じます。

他にも『ハウス・ジャック・ビルト』などのマット・ディロン、『ありがとう、トニ・エルドマン』などのザンドラ・ヒュラーら実力派が名を連ねています。また音楽は坂本龍一が担当、壮大なスケール感と人々の繊細な心情を見事に表現しています。

映画『約束の宇宙』のあらすじ

(C) Carole BETHUEL (C) DHARAMSALA & DARIUS FILMS

夫と離婚し、7歳の娘ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)と二人で暮らしているサラ(エヴァ・グリーン)。一方、彼女は欧州宇宙機関(ESA)で日々過酷な訓練に励んでいる宇宙飛行士候補でもありました。

ある日、サラは幸運にも「Proxima(プロキシマ)」と呼ばれる宇宙飛行ミッションの一員に任命されます。

出発日が迫る中、母と娘は「打ち上げ前に、二人でロケットを見る」という約束を交わします。

しかしミッションのためにはステラと長い間離れ離れになってしまうことに不安を抱えたサラは、苦しい訓練に耐えながら、娘の成長に伴う日々の振る舞いにも悩むのでした。

映画『約束の宇宙』の感想と評価

(C) Carole BETHUEL (C) DHARAMSALA & DARIUS FILMS

宇宙飛行という重大なミッションを抱えた母親というストーリーは、近未来に向けた希望をにおわせますが、本作の主題となるのはもっと普遍的なものです。

物語の焦点はサラという女性が、母という立場と名誉あるミッションの板挟みで苦悩するというもの。たとえば近年日本でも総務省の調査結果などでは、シングルマザーが増加傾向にあることが示されています。

この状況で母親は子供を育てる責任を持ちながらも、一人の人間として自身の道を選択する権利をいかに保っていくかという課題は、様々に議論されていることでもあります。

そしてこの課題を踏まえたシチュエーションとして、シングルマザーをテーマとした作品は多く作られていますが、本作はこの課題にストレートに向き合った形の物語となっています。


(C) Carole BETHUEL (C) DHARAMSALA & DARIUS FILMS

さらにこの母親の希望となるものが宇宙飛行という並大抵では得ることのできない特別な事由であり、二つのことに板挟みになる様は「究極の選択」にまで発展していきます。

まさに大きなスケールの話ではありますが、だからこそこの課題の本質が物語の中で鮮明に浮彫りにされているのです。

またそのサラの動向と相反するように振る舞う娘ステラの表情は、サラの心の変化をさらに際立たせています。

オーディションで選ばれたゼリー・ブーラン・レメルの表情は、どちらかというと感情がそれほど強く表れたものではありませんが、母子という関係の振る舞いに強い説得力を感じさせ、この作品に選ばれるべくして選ばれ登場した、と思わせるものを持っています。

劇中で見せる揺れ動くサラの感情は、時に倫理的に見てどうかと疑問に思わせるような行動に出ます。

ある意味そんな行動に出なければならないほどに人間同士のつながりがいかに難しいか、そして深いものであるかを示しており、ラテン語である原題のPROXIMA(隣接した、隣にある)という意味合いを深く感じさせるものとなっています。

まとめ

(C) Carole BETHUEL (C) DHARAMSALA & DARIUS FILMS

2021年2月18日、NASAは探査車「パーサヴィアランス」の火星着陸に成功したことを報じており、いよいよ「宇宙」が日常に近づきつつあることを予感させており、その意味でこの物語は遠いところにある話ではないと感じることでしょう。

「宇宙」という舞台は新たな開拓、開発、そしてビジネスなどの競争の場となることも予想されますが、そんな活性化される状況に向き合う人たちはどうしていくべきなのか、その人たちを周りの人たちはどう見ていくべきなのか、この作品はそんな新たな課題を提唱しているようでもあります。

物語ではマット・ディロンが演じる、違う家族の親としての立場を持つ同僚たちの存在など、様々な人々がサラとステラ、そしてさらに課せられた壮大なミッションとの関係に立体感を与え、こうした先進的な舞台の裏にある人間的な課題をリアルに描いています。

宇宙開発を目指す未来は、その可能性の大きさにポジティブな印象ばかりを描きがちですが、人間がそこにかかわる以上、捨てきれない人間的な感情、つながりという部分はどうしても付きまとってくるでしょう。

この映画はそんな「素晴らしい未来」の裏にある現実の一面を描いているものであります。

映画『約束の宇宙』は2021年4月16日(金)より全国順次ロードショー

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