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Entry 2019/06/19
Update

映画『ハウス・ジャック・ビルト』ネタバレ感想と解説。主人公ジャックの実際のモデルはラース・フォン・トリアー自身という快作

  • Writer :
  • 白石丸

カンヌ映画祭を出禁になった鬼才中の鬼才ラース・フォン・トリアーが5年の時を経て完全復活!

強迫性障害の殺人鬼の12年間の記録、凶行の果てに彼が見たものとは。そして彼が建てた“家”とは?

上映途中の退出者が続出するという超猛毒ブラックコメディ『ハウス・ジャック・ビルト』を紹介します。

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『ハウス・ジャック・ビルト』の作品情報


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【日本公開】
2019年(デンマーク・フランス・ドイツ・スウェーデン合作映画)

【英題】
The House That Jack Built

【脚本・監督】
ラース・フォン・トリアー

【キャスト】
マット・ディロン、ブルーノ・ガンツ、ユマ・サーマン、ライリー・キーオ、シオバン・ファロン、ソフィエ・グロベル、ジェレミー・デイヴィス

【作品概要】
『ニンフォマニアック』以来5年ぶりの作品となったラース・フォン・トリアー渾身の一作。

様々な問題作を作ってきたトリアーが挑む題材は、連続殺人鬼の12年の記録。カンヌ映画祭では途中退出者続出ながらスタンディングオベーションも巻き起こした必見の作品。

殺人鬼ジャックを演じるのはかつての青春映画スター、マット・ディロン。そして2019年惜しくも亡くなったドイツの名優ブルーノ・ガンツほか、ユマ・サーマン、ライリー・キーオ、シオバン・フォロンなど豪華なメンツが脇を固めます。

『ハウス・ジャック・ビルト』のあらすじとネタバレ


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暗闇の中、男と老人の声が聞こえます。老人が「話してみたまえ。ここに来た人間はどうせ話さずにはいられない」というと男は自分が12年間殺人を続けてきたことを話し出します。

彼の話す内容は思い出した順でした。第一の出来事

男の名はジャック。

1970年代、彼は技師として働いていましたが、本当は建築家になるのが夢でした。

ある日、田舎道で愛車の赤いワゴンを運転していた彼は、車が故障して立ち往生している中年女性と遭遇します。

彼女は修理用のジャッキが壊れたといい、ジャックに助けを求めます。

ジャックは彼女を近くに有る知り合いの鍛冶屋に連れて行き、ジャッキを修理させました。

中年女性は不躾な人間で「あなた殺人鬼っぽい見た目ね」といきなりジャックを挑発。

ジャックは適当にあしらっていましたが、もう一度車の場所まで送り届ける際も彼女は彼を馬鹿にし続けました。


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そして中年女が「撤回するわ。あなたに人を殺す度胸なんてないでしょ」と言った次の瞬間、ジャックは彼女が持っていたジャッキを手に取って女の顔面に叩き込みそのまま殺害してしまいます。

ジャックは以前知り合いから冷凍ピザの倉庫を買い取って所有しており、使い道に困っていたその場所に中年女の死体を運び込みました。

ジャックはその頃から田舎に土地を買って、材料を揃えて自分の理想の家を建てようとしていました。彼は建築は材料が大事だと語ります。

そして彼にとっては殺人やそれによって手に入る死体も材料でした。彼はそれから殺人衝動に取り憑かれ出します。

それには周期があり、彼にもどうすることもできないものだったといいます。また彼は、強迫性障害と潔癖症を持ち合わせており、自分がサイコパスであることにも自覚的でした。

第二の出来事。ジャックは今度は夫を亡くしたばかりの未亡人クレアの家にやってきます。

最初は警官になりすましますが、バッジがないので信用されず、彼はとっさに「警官というのは嘘だ。本当は保険調査員で年金が増額する手続きをしに来ました。」と言いました。


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するとクレアはあっさりジャックを招き入れ、その後彼に殺されてしまいます。

ジャックはクレアの死体を袋に包むと車に積んで帰ろうとしますが、そこで強迫性障害の発作が出てしまい、血痕を拭き忘れたのではないかと何度もクレアの家に戻って確認をしてしまいます。


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そんなことを繰り返しているうちにパトロール中のパトカーがやってきてしまい、ジャックはクレアの死体を林に隠しました。

警官はクレアの家の前にいたジャックを不審がりますが、彼はクレアの知り合いを装い、彼女が失踪したかもしれないと心配するふりをします。

警官が家の中を確認している最中もジャックは家具の下などを確認していました。

クレアがいないことを確認した警官は勝手に室内の物を触っているジャックを捜査の邪魔だから出て行けと追い払います。

ジャックは外に出ると、時間がないのでワゴンの荷台の扉とクレオを包んだ袋を紐で繋いで引きずりながら冷凍倉庫の建物まで逃げ出しました。

当然道路には夥しい血痕が残ったのですが、そこで奇跡的に大雨が降り証拠は完全に洗い流されたのです。

ジャックはこの出来事で自分は神に守られていると感じ始めたといいます。

話を聞いていた老人は彼の残虐さを避難しますが、ジャックは気にせず、殺人とアートの関連性などを淡々と語り続けました。

ジャックは殺人を続け、その度に強迫性障害の症状が和らいでいったといいます。

しかし殺人衝動は強くなる一方で、ある夜、運転中に見かけた散歩中の老婆をわざわざUターンしてまで轢き殺してしまいました。

その出来事で吹っ切れた彼は部屋を借りるとそこに冷凍倉庫に隠していた死体を並べて芸術的な写真を撮り、田舎の新聞社に送りつけます。

彼はその写真に”ミスター洗練”と署名しました。

第三の出来事。ジャックは交際中のシングルマザーとその2人の連れ子と一緒に森に趣味の狩りにやってきます。

長男ににこやかに銃の扱いを教えていたジャックでしたが、それからしばらくすると近くの見張り台に登って親子を狙撃し始めました。彼は母鹿と子鹿を狙う狩りをイメージします。

まずは子供2人を射殺したジャックは、絶望で抜け殻になった母親と一緒に彼女が作ってきたお弁当を食べました。

そしてその後再び見張り台に上がるとヨロヨロと逃げる母親を射殺しました。

ジャックはその日撃ち落としたカラスの死体と親子の死体を並べて狩りの成果を誇るように写真を撮ります。

そしてジャックは長男の死体を冷凍倉庫で剥製にし、笑ってピースサインをしているような姿に作り変えました。

一方、家を建てる目標はどうなったのかというと、1980年のセント・ヘレンズ山の噴火のニュースを見たジャックは、家をブロックで作るのはやめて、木材で作り直し始めて振り出しに戻っていました。

第四の出来事。彼はジャクリーンという気弱な美女と親密な関係になり、彼女に執心します。

ある夜、ジャクリーンの家に来たジャックは突然彼女のことをシンプルと呼び始めました。

ジャクリーンが不審がっているとジャックはいきなり「俺は殺人鬼で今までに60人を殺した」と告白し出します。

ジャクリーンは怖くなって外に飛び出し、表に停まっていたパトカーに助けを求めますが、警官は信用せず彼女をあしらいました。

ジャックも外に出てきて「俺は殺人鬼だ!」と叫びますが、警官は彼らがただの酔っ払いだと思い走り去ってしまいます。

叫んだあとに泣き出したジャックを見てジャクリーンは同情して再び彼を部屋に招きました。しかしジャックはその後本性を現し、ジャクリーンに迫ります。

ジャクリーンは彼こそが昨今世間を震え上がらせている”ミスター洗練”だと気づきました。彼女は大声で叫びますが誰も助けに来てくれません。


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ジャックは一緒になって叫び、窓から外に「今から人を殺すぞ!」と怒鳴りますが周りの家は灯りすらつきませんでした。

ジャクリーンは諦めたのかジャックに縛られ座り込みます。彼はジャクリーンの服を脱がせると、彼女の乳房をナイフで切り取り始めます。

ジャクリーンの絶叫が響き渡りました。ジャックは切り取った乳房の片方を外の車のフロントガラスに置き、もう片方は加工して財布として使い始めました。

老人はそこまでの話を聞いてあまりに残虐なジャックを非難しますが彼は気にせず、自身の殺人による芸術と、ナチスが開発した爆撃機やベルリンに建てた建築物を並列して語りだします。

しかし当初の目的だった彼の家は全く出来上がっていませんでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ハウス・ジャック・ビルト』ネタバレ・結末の記載がございます。『ハウス・ジャック・ビルト』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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第五の出来事。ジャックは老人に女性しか狙わないのかと聞かれ、男をターゲットにしたこともあると語り出します。

冷凍倉庫が死体で埋め尽くされたころ、ジャックは男性を6人誘拐してきて、倉庫内で彼らの頭が一列に並ぶように固定しました。

ジャックは弾が不足してきていた時代のナチスの処刑法を真似て、一発の銃弾で全員を殺せるか試そうとしていたのです。

彼は威力抜群のフルメタルジャケット弾を使おうとしましたが、被害者の中に軍人が混ざっており、それは本物のフルメタルジャケットではないと指摘しました。

ジャックは弾を買いに出かけます。彼は行きつけの銃器店の店員アルに怒鳴り散らし、フルメタルジャケット弾を一つだけ買おうとしますが、不審に思ったアルは警察に連絡してしまいます。

ジャックは仕方なく狩猟仲間の老人の家に行きました。

狩猟仲間はジャックが良からぬことをしているのを知っており、彼に銃を突きつけて警察を呼びます。

ジャックは隙をついて狩猟仲間を刺し殺し、やってきた警官も殺してフルメタルジャケット弾とパトカーを奪います。


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ジャックは狩猟仲間の赤いガウンを着て、サイレンを鳴らしながら冷凍倉庫まで戻ってきました。

彼はサイレンを切るのも忘れて中に入るとフルメタルジャケット弾を銃に装填。いざ男達に向けて引き金を引こうとした瞬間、ジャックの背後で彼の名前を呼ぶ声がしました。

振り返ると謎の老人が座っています。彼こそが冒頭からジャックと話していた老人で、名前をヴァージといいました。

ヴァージは12年間間近でジャックの殺人を見ていたといいます。彼はジャックに「君の家はどうなった。自分の材料で家を建てろ。」と促しました。

その頃、冷凍倉庫の外のパトカーが音を鳴らし続けていたため、別のパトカーがやってきます。

警官たちが冷凍倉庫の壁を焼き切って入ろうとしている最中、ジャックは今まで殺した数十人の死体を組み立てて、ついに自分の小さな家を完成させました。

ヴァージは家の下の倉庫の床に穴を開けて、ジャックをそこに飛び込ませました。

エピローグ。飛び降りた先には地下水道があり、どこかへと通じています。

促されるままヴァージに着いて行くジャック。


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そこは地底深くの地獄のような場所だといいます。

変な重低音が鳴り響いていましたが、ヴァージはそれは責め苦に会う罪人たちの声だと語りました。しばらく行くと開けた緑の多い楽園のような場所がありました。

しかしヴァージはそこを素通りし、人びとが溺れている川をジャックと小舟で渡り、そして地底でマグマが燃え盛る洞窟までやってきます。

下にマグマの海が待ち構える大きな穴があり、そこには真ん中が崩れた石の橋が架かっていました。橋の反対側には光の差す通路があり、ヴァージはあそこを通れば地上の世界に戻れるといいます。

橋が壊れているのでジャックは、意を決して洞窟の岩肌を伝って反対側まで渡ることにします。ヴァージはそんな彼を見ながら元来た道を引き返していきました。

中ほどまでやってきたジャック。しかし、途中で足場を崩した彼は、マグマが湧きたつ地下深くまで飲み込まれて行ってしまいました。

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『ハウス・ジャック・ビルト』の感想と評価


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ラース・フォン・トリアー監督の5年ぶりの作品で、連続殺人鬼が題材、R18指定、カンヌ映画祭で途中退出者続出、という情報を知ると、本作に対し「観に行くの怖いな」と思っている方が多いのではないでしょうか。

多くの観客は見に行く前の期待と同時に、この映画に対する恐怖が湧き上がってくることでしょう

2000年の映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『奇跡の海』(1996)、『ドッグヴィル』(2003)、『アンチクライスト』(2009)など、トリアー作品で絶望的な気分を味わったことは数多くあるからです。

ですが、『ハウス・ジャック・ビルト』は、これらの作品群よりも観易く、これまでのようには後に引きずらないしあがりになっています。

これまでのトリアーの作品群では、主人公が徹底的に理不尽に辛い目に遭って、報われないどころかどんどんどん底に落ちていくことが多かったのですが、本作の主人公ジャックは、多少病的で気の毒な部分もあるとは言え、やむを得ずそうなったわけではないまごう事なき殺人鬼です。

回想形式の構成も含めて色情狂の女性の半生を描いたトリアーの2013年の映画『ニンフォマニアック』2部作が一番近いですが、本作は分かり易く主人公が完全に倫理的な人物ではなく、また同情的にも描いていないため、ある程度距離を置いて見ることができます

それに話題の残虐描写も必要以上には見せすぎず抑制が効いています。そして本作のジャンルはブラックコメディです

殺される被害者たちが明らかに間抜けに描かれている上に、ジャック本人が強迫性障害で何度も現場に戻ってしまったり、家を作れない代わりに死体を加工したりするエクストリームな場面も笑えるように撮られています。

ジャックの回想に老人ヴァージがツッコミを入れるさまも辛辣でユーモラスです。

ちなみにジャックはピアニストのグレン・グールド(彼もジャックのように完全主義者で強迫性障害のため苦労しました)やデヴィッド・ボウイなどのアーティスト、その他有名な絵画や芸術作品、歴史的事実などを引用して語るので、あまり見識のない方は少し気後れするかもしれませんが、これも最低な殺人鬼が自分の悪事をなんとか高尚なもののように語ろうとしていると思えば滑稽です。

倫理的な揺さぶりをかけてくる映画


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『ハウス・ジャック・ビルト』は、観客の倫理観を揺さぶる意地悪な要素もあり、こちらをゾッとさせてきます

トリアー監督はインタビューで「本作のメッセージがあるとすれば、それは誰でもシリアルキラーになりうるということだ」と語っています。

最初のエピソードでジャックが一番最初に殺害する中年女を演じるユマ・サーマン。彼女の見事な嫌な女性の演技も相まって、殺された瞬間少しスカッとしてしまうように撮られています。

殺人を犯すまでの境界線が大したことではないと強調する幕開けです。

そしてもっと意地悪なのは4章まであっさり成功していたジャックの殺人が、5章ではなかなか実行できず観客をやきもきさせるような展開になっていることです。

章ごとに残虐性がアップしていって最後には「フルメタルジャケット弾で6人を一撃で殺す」というすさまじい犯行に及ぼうとするのですが、2時間ジャックの凶行を見ていると「こいつならそれくらいやるだろう」と感覚がマヒしてきていますし、彼が実行に手間取ると同じようにイライラしてしまう自分がいることに恐ろしくなりました

そして最後の殺人は実行されないまま終わり、消化不良感が残ります。

SNSの感想などでも「6人同時殺しが見たかった」という意見が散見しており、トリアーの「あなたの中にもジャックはいますよ」という意地悪なメッセージが響いているようです。

主人公ジャックの存在の真意とは


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この映画の殺人鬼ジャックは有名なハンサム殺人鬼テッド・バンティなどがモデルになっていますが架空の人物です。

主人公ジャックが誰の投影なのかといえばそれは間違いなくラース・フォン・トリアー本人でしょう。彼自身も強迫性障害を抱えており、また完璧主義で知られるアーティストです。

ジャックが作る殺人アートはトリアーが作ってきた今までのセンセーショナルな映画と重なります。どんどん過激さが増していくのも同じです。

またジャックの話でナチスやヒトラーの話が言及されるのも、7年前にトリアーがヒトラーに共感する発言をしてカンヌ映画祭を出禁になったことと関係しています。

5章でジャックがナチスの処刑法を試そうとして失敗し地獄に連れていかれるのも、ナチス擁護発言で苦い思いをしたトリアーに重なります。

トリアーの問題発言の内容は「ヒトラーの気持ちは理解できる。ただ彼はいい人間ではない」というものでした。本作におけるトリアーのジャックの描き方のスタンスもこの発言と重なります。

ジャックは最後に容赦なく地獄へ堕とされます。またエンドロールではレイ・チャールズの『Hit the road Jack 』という曲が流れサビでは「ジャック!二度と戻ってくるな!」と繰り返し歌われるのです。

トリアーも自分の中のジャックのような部分は到底許されないものであるということは自覚しているのでしょう。

しかしそれでもジャックが作ってきた死体のアートは残り、最終的に理想とは違ってもその材料を使って彼は念願の家を建てます。

この家こそがトリアーにとっては『ハウス・ジャック・ビルト』という映画なのではないでしょうか。

問題だらけの人生でも今までの自分の作品は確かに存在するし、それでしか自分は表現できない。

そんなトリアーの叫びが詰まった個人的な作品ですが、結果この映画は彼が出禁になったカンヌ映画祭でスタンディングオベーションを巻き起こすほどの絶賛を受けました。

単に面白いから、過激だからという訳ではなく、「実は自分の中にもジャックはいる」と無意識に自覚した人が多かったのではないでしょうか

そして公開されるや否やこの映画は様々な議論を呼んでいます。このような状況を作り出せた時点でトリアーは大勝利したといえるでしょう。

まとめ


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本作品『ハウス・ジャック・ビルト』は、過激ながらも笑えるブラックなエンターテイメント。トリアーファンなら間違いなく必見です。

それにジャックは最後にしっかりと罰を受けるので、実は彼の作品の中では一番後味がいいのではないでしょうか

デヴィッド・ボウイの曲の引用や、終盤のダンテの『神曲』のような地獄描写など知的好奇心をくすぐられる要素も多いので見終わってから色々調べて人と議論しつつ「あそこが笑えたよね」と楽しむのもオススメです。

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