夢みてしまった。絶望の国で———
日本で生きるふたりのクルド人青年を5年以上取材した、日向史有監督のドキュメンタリー映画『東京クルド』。
映画『東京クルド』が、2021年7月10日(土)より渋谷 シアター・イメージフォーラム、大阪・第七藝術劇場にて緊急公開が決定しました。ほか全国順次公開となります。
あわせて、チラシビジュアル、場面写真、日向監督からのメッセージが解禁されましたのでご紹介します。
映画『東京クルド』について
本作で日向監督が追うのは、難民申請を続けるトルコ国籍のクルド人である18歳のオザンと19歳のラマザン。彼らは故郷での迫害を逃れ、小学生のころに日本へやってきました。
2021年5月、入管の収容者に対する非人道的な行為や環境を問題視する世論の高まりを背景に、入管法改正案は事実上、廃案となりました。しかし「難民条約」を批准しながら難民認定率が1%にも満たないという日本の現状に変わりはありません。
5年以上の取材を経て描かれるふたりの若者の青春と「日常」から浮かび上がるのは、救いを求め懸命に生きようとする人びとに対するこの国の差別的な仕打ちです。
かれらの希望を奪っているのは誰か? 救えるのは誰か? スクリーンから問いが投げかけられます。
日向史有監督からのメッセージ
2021年、入管法「改正」案が閣議決定され、審議の末に成立は見送りとなった。しかし、私には、今も日本が難民を排除する方向に向かっているとしか思えない。 この原稿を書いている今、ニュースでは収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの続報が伝えられている。だが、なぜ彼女が亡くならねばならなかったのかについては、未だ明らかにされていない。 今回の「改正」案が見送られたからといって、この映画に出演してくれた人たちの置かれている過酷な状況は、何ひとつ変わらない。 今回の映画公開にいたるまでには約5年かかった。少しでも多くの人に、日本で生きるクルド人について知ってもらいたいと思っている。
日向史有監督のプロフィール
本作で監督を務めた日向史有(ひゅうが・ふみあり)は、1980年東京都生まれ。
2006年、ドキュメンタリージャパンに入社。東部紛争下のウクライナで徴兵制度に葛藤する若者たちを追った『銃は取るべきか』(2016・NHK BS1)や、在日シリア人難民の家族を1年間記録した『となりのシリア人』(2016・日本テレビ)を制作。
本作『東京クルド』(2021)の短編版『TOKYO KURDS/東京クルド』(2017・20分)で、Tokyo Docsショートドキュメンタリー・ショーケース(2017)優秀賞、Hot Docsカナダ国際ドキュメンタリー映画祭(2018)の正式招待作品に選出。
また、ドホーク国際映画祭(2018)にて上映、DMZ国際ドキュメンタリー映画祭(2019)コンペティション部門にノミネートされました。
テレビ版『TOKYO KURDS/東京クルド』(2018・テレビ朝日・30分)は、ギャラクシー賞(2018)選奨、ATP賞テレビグランプリ(2018)奨励賞。近作に、『村本大輔はなぜテレビから消えたのか?』(2021・BS12)。
映画『東京クルド』の作品情報
【日本公開】
2021年(日本映画)
【監督】
日向史有
【撮影】
松村敏行、金沢裕司、鈴木克彦
【編集】
秦岳志
【クルド語翻訳】
チョラク・ワッカス
映画『東京クルド』のあらすじ
故郷での迫害を逃れ、小学生のころに日本へやってきたオザン (18歳)とラマザン(19歳)は、難民申請を続けるトルコ国籍のクルド人。
入管の収容を一旦解除される「仮放免許可書」を持つものの、身分は“不法滞在者”です。いつ収容されるか分からない不安を常に感じながら夢を抱き、将来を思い描くふたり。
しかし、住民票もなく、自由に移動することも、働くこともできません。また社会の無理解によって教育の機会からも遠ざけられています。
東京入管で事件が起きました。長期収容されていたラマザンの叔父メメット(38歳)が極度の体調不良を訴えたんですが、入管は家族らが呼んだ救急車を2度にわたり拒否。
彼が病院に搬送されたのは30時間後のことでした。在留資格を求める声に、ある入管職員が嘲笑混じりに吐き捨てます。「帰ればいいんだよ。他の国行ってよ」と……。
まとめ
2021年5月、入管法改正案は事実上廃案となったものの、日本にやって来た難民たちが置かれている過酷な状況は何ひとつ変わっていません。
差別的な入管法、1%に満たない難民認定率。それでも青春を生きるふたりの青年の物語を、ぜひ劇場で見届けてください。
映画『東京クルド』は、2021年7月10日(土)より渋谷 シアター・イメージフォーラム、大阪・第七藝術劇場にて緊急公開決定。ほか全国順次公開です。