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映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』あらすじ感想と評価考察。おばあちゃんがオレオレ詐欺犯捜索のミッションに挑む!

  • Writer :
  • 松平光冬

オレオレ詐欺犯を捕まえろ!93歳のおばあちゃんが大活躍

オレオレ詐欺に遭ったおばあちゃんが、独断で犯人を捜索する様を描いた映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』が、2025年6月6日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショーされます。

『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013)でアカデミー助演女優賞にノミネートされたジューン・スキッブが、93歳にして初主演をはたしたコメディの見どころをご紹介します。

映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』の作品情報

(C)Courtesy of Universal Pictures

【日本公開】
2025年(アメリカ・スイス合作映画)

【原題】
Thelma

【監督・脚本・編集】
ジョシュ・マーゴリン

【製作】
ゾーイ・ワース、クリス・ケイ、ニコラス・ワインストック、ベンジャミン・シンプソン、カール・スポエリ、ビビアナ・ベッツァーニ

【製作総指揮】
ジューン・スキッブ、フレッド・ヘッキンジャー、トビアス・グーツビラー

【撮影】
デヴィッド・ボーレン

【音楽】
ニック・チューバ

【キャスト】
ジューン・スキッブ、フレッド・ヘッキンジャー、リチャード・ラウンドトゥリー、パーカー・ボージー、クラーク・グレッグ、マルコム・マクダウェル

【作品概要】
1929年生まれの女優ジューン・スキッブが、製作時93歳で、その実年齢と同じ93歳のおばあちゃんを演じたコメディ。

本作が長編デビューとなるジョシュ・マーゴリンが、自身の祖母との実体験を元に脚本も手がけました。

主な共演に、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024)のフレッド・ヘッキンジャー、本作が遺作となった『黒いジャガー』(1971)のリチャード・ラウンドトゥリー、『ボーはおそれている』(2024)のパーカー・ボージー、ドラマシリーズ「エージェント・オブ・シールド」(2013~20)のクラーク・グレッグ、『時計じかけのオレンジ』(1971)のマルコム・マクダウェル。

映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』のあらすじ


(C)Courtesy of Universal Pictures

夫を亡くし、寂しくも気楽な一人暮らしを送る93歳のテルマは、ある日、孫のダニエルが事故を起こし刑務所にいると聞き保釈金1万ドルを送金。ところがそれは典型的なオレオレ詐欺でした。

わずかな手がかりを元に、独断で犯人を捜すことを決意したテルマは、養護施設に暮らす旧友の老人ベンを巻き込み、電動スクーターに乗って捜索に出ます。

テルマがいなくなったことに気づいたダニエルら家族が大慌てで行方を探す一方で、テルマとベンが口論になってしまい……。

映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』の感想と評価


(C)Courtesy of Universal Pictures

93歳にして初主演、今注目の女優ジューン・スキッブ

舞台でキャリアを積み、60歳を過ぎてからウッディ・アレン監督の『アリス』(1990)でスクリーンデビューを果たした女優、ジューン・スキッブ。以降、『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』(1992)やアレクサンダー・ペイン監督作『アバウト・シュミット』(2002)といった作品で脇を固めるバイプレーヤーとして活躍します。

2014年、ペイン監督作『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』で、その年のアカデミー賞とゴールデングローブ賞の最優秀女優賞にノミネートされ、よりその名を知られるように……。

年齢が90代に入っても、ディズニーアニメ『インサイド・ヘッド2』(2024)で声の出演を務めた彼女が、本作『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』で、ついに93歳(2025年3月現在95歳)にして初主演を果たしました。

女優のスカーレット・ヨハンソンが初監督した『Eleanor the Great(原題)』(2025)でも主演を務めるジューンは、超遅咲きながらも、今要チェックな女優なのです。

ABC「ジミー・キンメル・ライブ」にゲスト出演したジューン・スキッブ

おばあちゃんのミッション:インポッシブル

(C)Courtesy of Universal Pictures

ジューン扮する93歳のテルマは、2年前に夫を亡くしてからは一人暮らし。最低限の身の回りのことは自分でこなす平穏な日々を送っていたある日、近所に暮らす仲良しの孫ダニエルから、自動車事故を起こして刑務所に入れられたと連絡が入ります。

保釈金の1万ドルを求められたテルマは、慌てて現金入りの封筒を投函。ところがそれは典型的なオレオレ詐欺だったのです。

ダニエルら家族に迷惑をかけてしまい落ち込むテルマ。ですが、新聞に載っていたトム・クルーズの写真に添えられた「ミッションはポッシブル(可能)」の見出しに一念発起、郵送した宛先を手がかりに、友人のベンを巻き込んだ犯人捜索の旅に出ます。


(C)Courtesy of Universal Pictures

本作の監督・脚本は、これが本格長編デビューとなるジョシュ・マーゴリン。自身の祖母テルマが、実際にオレオレ詐欺に遭いかけた体験を元に制作しました。

年々心と体が衰えていくのを実感するも、「自分らしさを保ち続けていたい」という祖母の執念が作劇の源になったという監督。本作のテルマも、自分が家族のお荷物になっていくのではと悲観しながらも自ら犯人捜しに出ますが、その姿は自律心を失いたくないという姿勢の表れといえます。

トム・クルーズがバイクに乗ってチェイスするのと、テルマが電動スクーターで制限速度を守って進むのは大きなイコール。デヴィッド・リンチの『ストレイト・ストーリー』(1999)のような牧歌的テイストを漂わせつつ、社会生活に適応できず悩む孫ダニエルの存在にも焦点を当てているのも注目です。

まとめ

(C)Courtesy of Universal Pictures

犯人捜しのミッションに出るも、立て続けに予期せぬ事態に遭ってしまうテルマ。やはりそれは、インポッシブル(不可能)なリベンジだったのか?

2025年3月に日本公開された『ジェリーの災難』(2025)では、巨額詐欺事件に巻き込まれた老人男性が主人公でしたが(しかも実際に被害に遭った当事者が主演)、お年寄りを騙す手口は万国共通。

ですが、お年寄りだからといって、特殊詐欺に泣き寝入りするのは納得できない――笑ってホッコリしつつ、ちょっぴりハラハラなテルマおばあちゃんのミッションの行方に目が離せないでしょう。

映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』は、2025年6月6日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219





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