新しい朝が来た。
今日もそこそこ元気に楽しくやりましょう!
国民的スター草刈正雄が、定年退職を迎えた冴えないお父さんを演じます。
シングルファザーで家のことは娘に任せ、仕事ばかりしてきたお父さんが、定年退職を機に娘から「親離れ」宣言をされてしまいます。
家事もまともに出来ないお父さんが、ラジオ体操を通して人々と関わることで少しづつ変わっていきます。
第二の人生の始め方のバイブル的映画『体操しようよ』を紹介します。
映画『体操しようよ』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督】
菊地健雄
【キャスト】
草刈正雄、木村文乃、きたろう、渡辺大知、徳井優、諏訪太朗、川瀬陽太、山田真歩、片桐はいり、大島蓉子、稲川実代子、木村八重子、加藤満、菅野久夫、平澤宏々路、余貴美子、小松政夫、平泉成、和久井映見
【作品概要】
定年退職したお父さんが、ラジオ体操を通して、第二の人生を考えていく物語です。
監督は『ハローグッバイ』『望郷』と連続公開で注目の新鋭、菊池健雄監督。
主人公の冴えないシングルファザー道太郎を演じるのは、永遠の二枚目スター草刈正雄。娘の弓子役は、数々のヒロイン役を演じてきた人気女優、木村文乃が演じます。
さらに体操会のマドンナに和久井映見、会長にきたろう、娘の彼氏役には黒猫チェルシーのボーカルとしても活躍の渡辺大知と、個性豊かなキャストが揃いました。
映画『体操しようよ』のあらすじとネタバレ
佐野道太郎は定年退職の日を迎えていました。38年間無遅刻無欠勤で勤め上げた会社の最後の日です。
部下たちは特に寂しそうでもなく、形ばかりの送別会が行われます。主役の道太郎をよそに盛り上がる部下たち。最後の挨拶も誰にも響きませんでした。
一足先に定年退職をした先輩、並木の言葉だけが残ります。「これからのこと考えておけよ。人生はまだまだ長いぞ」。
送別会の帰り道、酔っ払いに絡まれゲロをかけられた道太郎。海の見える公園で洗い流し、ひとり缶ビールをあおります。あまりにも切ない定年退職の日でした。
酔っぱらった道太郎は公園のベンチで夜を明かします。
朝早く公園にやって来たのは、ラジオ体操をする人々でした。邪魔にされその場を去る道太郎。
家に帰ると、一人娘の弓子からの手紙が置いてありました。「お父さんの定年と一緒に佐野家の主婦を卒業します。これからは自分のことは自分でやって下さい」。
妻を亡くしてから道太郎は一人で弓子を育ててきました。仕事一筋だった道太郎は、家のことはすべて弓子にまかせ、気付けばひとりで何も出来ない父親でした。
娘の厳しい仕打ちに意地になり、家事に挑戦する道太郎。しかし、掃除に洗濯、料理、どれをとっても上手く出来ません。娘にも呆れられる始末です。
髭も伸ばし放題、リビングもぐちゃぐちゃ、昼間から酒を飲む道太郎を、妹の喜久子が訪ねてきます。
「自由になった時間で酒を飲むより、やることがあるでしょ」と叱られる道太郎。「子離れして、ゆみちゃんを解放してあげないと結婚もできないわよ」と、弓子に彼氏がいたことも初耳です。
道太郎にはイラストを描く趣味がありました。弓子の小さい頃を描いた絵を眺め、小さい頃は可愛かったなぁと感傷に浸ります。
家からも出なくなった道太郎を先輩の並木がラジオ体操に誘います。
付き合いで顔を出す道太郎に並木は「楽しまなきゃもったいないぞ。俺たちの人生はこれからだ」と励まします。
しかしそう言っていた並木は、まもなく死んでしまいます。孤独死でした。
ひとり弁当を買って公園で食べる道太郎。そこに、ラジオ体操にいた女性・のぞみがやってきます。泣いているのぞみが気になり、道太郎は後をつけます。のぞみは喫茶オリビエの店主でした。
店の前でウロウロしていた道太郎は気付かれ、中へと招き入れられます。
のぞみの優しい人柄に癒され、ラジオ体操の誘いを受ける道太郎。のぞみの腕には火傷のようなアザがありました。
ラジオ体操の公園には子供からお年寄りまで、たくさんの町人が集まっていました。のぞみはラジオ体操会のメンバーで、おじさま達のアイドル的存在でした。
ラジオ体操会の会長・神田にまで「お前も、のぞみちゃん目当てだなぁ」と怪しまれます。
ラジオ体操の後は喫茶オリビエでお茶タイムです。手伝いをする道太郎に、のぞみは仕事を勧めます。その仕事は神田の手伝い、便利屋の仕事でした。
仕事内容はというと、飲み屋のママの子どもの子守、ペーパードライバーのタクシー運転手の指導、車いすの老人の世話、電球の交換と、地域密着型の面倒な仕事ばかり。
「自分のことは自分でやるべき。頼まれてやる仕事じゃない」と、自分のことを棚にあげ文句を言う道太郎。
道太郎とは息子ぐらい年の離れたバイト仲間・薫に「あなたの常識が他人の常識とは限らない。まわりを良く見ないと本当の老害になりますよ」と言われてしまいます。
薫は天体観測が趣味で、夜の観測のために時間の融通がきくバイトで生活していました。実家は米屋で、親から跡を継ぐように言われ悩んでいます。
便利屋では夜の天体観測とバーベキューを楽しむ会を開催していました。集まる町民たち。その中に、のぞみもいました。
キャンプファイヤーの火を前に震えるのぞみ。次の朝、のぞみはラジオ体操に来ませんでした。心配する道太郎に神田は、プライベートに踏み込まないのがこの会のルールと否めます。
ある朝、ラジオ体操にやってきた神田は足を骨折していました。治るまで会長は、のぞみにやって欲しいと言う神田に一同は賛成します。道太郎も張り切ります。
のぞみのために、道太郎は得意のイラストでラジオ体操のマニュアルを製作。参加者に配り、遅刻は厳禁、厳しく指導をしていきます。サラリーマン時代の真面目な性分が出ていました。
皆はもっと気軽に参加したい。方向性の連れがクーデターを起こします。一緒にやっていた仲間が別の場所でラジオ体操を始めたのです。分裂する町民。
私はただみんなと一緒に体操したいだけです。落ち込むのぞみのために、仲間を増やそうとバイト仲間の薫を誘う道太郎。一方、のぞみは道太郎の娘、弓子を誘っていました。
父親との交流を拒む弓子に、のぞみは「親子っていつまでも一緒にいられるわけじゃないのよ」と助言します。家で父のイラストを発見する弓子。
翌朝、道太郎がドアを開けると弓子の姿がありました。一緒にラジオ体操の公園に向かいます。並んで歩くなんて何時ぶりでしょうか。穏やかな時間が過ぎます。
映画『体操しようよ』の感想と評価
定年退職を迎えたお父さんで第二の人生を楽しんで生きている人は、どのくらいいるのでしょうか。
仕事一筋、家族のために働き続けてきたはずが、いざ自由の時間が出来ると何をしていいのか分からない、ひとりじゃ何も出来ない、家族から邪魔扱いされ、肩身の狭い思いをしているお父さんも多いことでしょう。
映画『体操しようよ』は、そんな世のお父さんの第二の人生を送るバイブル的映画です。
映画ではラジオ体操を通して、人との交流を深めていく不器用な主人公の姿に励まされます。ラジオ体操でなくても、何かを一緒にやり遂げるという作業は、人生を豊かにしてくれます。
親子関係や友達関係など人間関係で悩んでいる人にも見て欲しい映画です。
どんなに辛くても新しい朝はやってきます。
主人公の道太郎役の草刈正雄は、そんな疲れ果てたお父さんを体当たりで演じています。不器用ながらも一生懸命でほっとけない道太郎がとてもチャーミングです。
また娘役の木村文乃は、そっけない態度で父を突き放すも、父の将来を心配する娘の心境を見事に表現しています。
まわりの個性派揃いのキャスティングも緩くて笑えます。何と言っても、きたろうの体操会会長というポジション。普段は便利屋をやりながらも、ボーイスカウト姿で指導も行うという活躍っぷり。近所にいて欲しいオジサンです。
また主題歌はRCサクセションの「体操しようよ」。映画タイトルそのままの曲は、ほのぼのとした曲調で、忌野清志郎らしい楽しい歌詞と癒される歌声が、映画の世界観とピッタリはまっています。
まとめ
定年退職したお父さんが、ラジオ体操を通して、第二の人生を考えていく物語『体操しようよ』を紹介しました。
主人公の冴えないシングルファザー道太郎を演じる永遠の二枚目スター草刈正雄に注目です。
自戒の念を込めて。世のいい歳のオジサン、オバサン。意固地になって、周りに目を向けないと、ただの老害になりますよ。
同じ時間を共有することは、親子、友達、恋人関係、すべての人間関係を深める近道です。一人より二人、皆でやった方が楽しさも膨らみます。
人はひとりでは生きていけない。自立しながらも、人との関りを大切に生きていきたいものです。映画『体操しようよ』をみて、新しい朝の迎え方を考えるきっかけにしてください。