次々に公開されるオリジナル作品の品質が高いため、どれから見ようかなといつも迷ってしまいがちなNetflix。
今回はそんなNetflixによる独占配信作品の中でも、ひときわポスターの「SF」的な装備が印象的な『スペクトル』を紹介していこうと思います。
映画『スペクトル』の作品情報
【公開】
2016年12月9日(Netflix限定)
【原題】
Spectral
【監督】
ニック・マチュー
【脚本】
イアン・フライド
【キャスト】
ジェームズ・バッジ・デール、エミリー・モーティマー、ブルース・グリーンウッド、マックス・マーティーニ
【作品概要】
紛争地帯を舞台に、肉眼には見えない物体との戦いを描いたSF映画。
主演は『アイアンマン3』(2013年)や『ザ・ウォーク』(2015年)などで印象的な役を演じた実力派俳優ジェームズ・バッジ・デール。
映画『スペクトル』のあらすじとネタバレ
紛争地で戦う米軍の兵士、デイビスは味方とはぐれ1人で戦地を駆けていました。
彼は通信兵に、不可思議なものが見えると伝えるとその「何か」に突進され倒れてしまいます。
国防高等研究計画局のクラインは、レンズを直列させ、そこに特殊な光線を放つことによって、照射先の温度を自在に変化させる装置を上層部に披露します。
敵軍の貯水槽を凍結や沸騰させれば敵軍を撤退に追い込める、と説明しますが、研究を見に来た軍の人間は、その装置を生物に向けて照射した際の結果を知りたくてたまらない様子です。
あくまでも防御や迎撃用に装置を開発すると説明されていたクラインは、この装置が攻撃用に使われることを快く思っていませんでした。
そのことを上司に告げると、クラインは荷造りをするように命じられます。
それは同盟軍と反乱軍による戦争が長く続く東欧のモルドバで、クラインの製作したゴーグル越しに「何か」が目撃され、兵に動揺が広まっているのでその正体を解明して欲しいと言う軍からの依頼でした。
詳しい映像も情報も送られず、解明のためには現地に赴く必要がある依頼でしたが、兵士を守る任務であることがクラインを動かしました。
国を挙げて武器の開発を進めていたとされる現地の状況は想像以上のもので、米軍の兵士は連日戦闘行動を余儀なくされている状況でした。
米兵を率いるオーランドはクラインに、進軍中のゴーグルの映像を見せます。
一瞬の違和感に気が付いたクラインは、映像に人の形をしたような青白いものが映っていることに気が付きます。
更に詳しい映像を見るために基地の深くにある情報隔離施設に来たクラインは、今回の作戦を統括するCIAの女性職員フランから渡された、情報を漏らしたら終身刑に処する、と言う誓約書にサインします。
その先で見た映像には、兵士のデイビスが「何か」に襲われ、死亡する映像が映されていました。
「何か」は現地では幽霊と言う意味を持つ「アラタレ」と呼ばれており、アラタレの犠牲となった人間の遺体は内部が凍り付いているにも関わらず、表面の皮膚は焼けただれる不思議な死に方をしていました。
その場で様々な仮説を出し合うオーランドとフランとクライン。
フランは、可視光線を遮蔽するクローキングと言う技術を使った装置を使用し、不可視の状態となった兵士であると推論を述べますが、クラインはデータも証拠もないと現段階での断定を危険視します。
確たる情報を掴むため、自身が開発した高精度なカメラを携え、前線に向かうことを決めるクライン。
装甲車から機銃を取り外し、カメラを搭載したことをセッションズ少佐らに非難されますが、セッションズはその装甲車の装甲をクラインが開発したことを知り黙り込みます。
反乱軍との戦闘中であるチームがアラタレを目撃したとの情報を聞き、救出に向かうクラインたち。
アラタレがいるとされる建物内に兵士たちは侵入し、その様子を装甲車の中からモニター越しにクラインとフランは眺めます。
建物内は敵味方の死体だらけでしたが、ひっくり返った陶器のバスタブの中から生き残りの兵士コムストックが見つかります。
仲間は全員アラタレに殺され、自分はずっとバスタブの中でアラタレに怯えていたと語るコムストック。
仲間が死んだとされる5階に辿り着いた兵士たちは、次々にアラタレに襲われます。
フランの推測であるクローキング装置を使った兵士であれば、不可視となっているだけで銃弾は当たるはずですが、アラタレには銃弾は当たらず、次々と兵士たちが犠牲となっていきます。
撤退を始めた兵士たちはフランとクラインの乗る装甲車に乗り込みますが、ロケット弾すらアラタレには効いていない様子でした。
装甲車を発進させた兵士たちでしたが、道には反乱軍の仕掛けた地雷があり、装甲車は転倒、コムストックを含めた多くの兵士が死亡します。
何とか工場にまで逃げ込んだ生き残りの兵士たちとフランとクライン。
来た道をクラインの作ったカメラで映してみると、そこには先ほどよりも数の増えたアラタレが工場に向かっている姿が映し出されます。
しかし、アラタレは工場の周りに敷かれた砂のようなものを通過することが出来ていません。
その砂のようなものが手に刺さったと言う兵士の手を見てみると、それは砂ではなく細かくされた鉄クズでした。
何者かが、アラタレが鉄を通過できないことを知り、この工場の周りに撒いたことから工場内に人がいると悟ったセッションズたちが工場内を捜索すると現地の子供、サリとボドガンが見つかります。
彼女たちの父はアラタレがマサロフと言う発電所のある地域から来ていることを知り、対抗する術を見つけていましたが、鉄クズを外に撒いている間に襲われ命を落としてしまっていました。
工場から脱出するため、本部と連絡を取りますが、送電線の影響で、少し離れた場所にある広場までいかないと助けが来ないことを知ります。
クラインは工場内にある鉄クズを武器として使うようにセッションズたちに告げ、兵士たちはグレネードを改造し鉄クズを拡散させる爆弾を製作していきます。
一方、クラインは高精度カメラを改造し、アラタレを可視化するライトを作成し、救出に来る戦車にも同じものを搭載するように無線で指示します。
準備が整ったと同時に、アラタレが送電線を伝い工場内に侵入してきました。
各々が迎撃用の爆弾を使い、広場へと逃げますが、想像を絶する量のアラタレに包囲されます。
もうダメかと思った矢先、巨大なライトを搭載した戦車がクラインたちの救出に来て、一命をとりとめたかのように思えました。
しかし、救出部隊の武器は通常の武器であり、アラタレには通用しないため、戦車を含め兵士は次々と倒されていきます。
ボドガンもアラタレによって命を落とし、絶望的な状況となりますが、ヘリコプターが到着し、クラインたちは間一髪で助かるのでした。
モルドバの本部の基地は、各地に現れた途轍もない数のアラタレによって崩壊し、既に残っている基地として機能する場所は難民キャンプだけです。
難民キャンプに辿り着いたクラインたちは、大多数の兵士を失ったオーランドと合流します。
少なくなった兵士、ヘリコプターで脱出しようにも20分しか飛べない量の燃料など兵士たちは悲観のあまりバラバラになりかけるのでした。
映画『スペクトル』の感想と評価
「未知の生物」と「軍人」が戦う、と言うプロットは珍しいものではなく、『プレデター』(1987)など多くの映画が通ってきた道です。
今作はプロットそのものは目新しいものは特にないのですが、1つ1つの要素がとても高水準で出来ていて魅力的な作品でした。
序盤はアラタレと言う幽霊に攻撃する術もなければ身を隠す方法すらもなく、触れるだけで死亡すると言う無敵さが、モンスターパニックの敵としての圧倒的な存在感を見せつけていました。
しかし、作品内に散りばめられた伏線から主人公が謎を解くと、終盤にかけてド派手で熱いSFミリタリーアクションが展開されます。
序盤が序盤だっただけに、アラタレに対しフラストレーションがたまっていた私自身も、SF的な武器を身に纏った兵士がアラタレを爆破するシーンは熱く燃え上がりました。
登場人物もモンスターパニック作品にありがちな、トラブルメーカーなキャラなど不快さを感じさせる登場人物が存在せず、信念を持ち敵に対抗しようとする熱い軍人が描かれています。
絶望的な序盤、理知的なアラタレの正体探し、アラタレ対人間の乱戦を描いた終盤、と「モンスターパニック」や「SFミリタリー」好きの人におススメのシーンが目白押しの作品です。
まとめ
Netflixオリジナル映画初の「モンスターパニック」と「SF」が組み合わさった作品でしたが、『スペクトル』はこのジャンルにありがちな「低予算」や「シナリオの雑さ」は一切無く、「SF」は好きだけど「モンスターパニック」はあまり……と言う方でも最初から最後まで、食い入るように鑑賞できると保証します。
長期休みが始まる季節にもなりましたし、SF好きの方は『スペクトル』を鑑賞してみてはいかがでしょうか。