映画『ソング・トゥ・ソング』は2020年12月25日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!
ある男女4人の交差する姿から、音楽を背景としてその間に絡み合う感情を描いた『ソング・トゥ・ソング』。
ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、マイケル・ファスベンダー、ナタリー・ポートマンらのトップ俳優陣に加え、ケイト・ブランシェット、ホリー・ハンター、ベレニス・マルロー、ヴァル・キルマーらベテラン、実力派俳優陣、さらには著名ミュージシャン陣と、映画ファンなら見逃せないビッグネームが揃い繰り広げるラブストーリーです。
一方で、単なるエンターテインメントの枠に収まらない斬新な作風が魅力の注目作。テレンス・マリックが監督を務めました。
CONTENTS
映画『ソング・トゥ・ソング』の作品情報
(C) 2017 Buckeye Pictures, LLC
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【英題】
SONG TO SONG
【監督・脚本】
テレンス・マリック
【キャスト】
ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、マイケル・ファスベンダー、ナタリー・ポートマン、ケイト・ブランシェット、ホリー・ハンター、ベレニス・マルロー、ヴァル・キルマー、リッキ・リー、イギー・ポップ、パティ・スミス、ジョン・ライドン、フローレンス・ウェルチ
【作品概要】
アメリカ有数の音楽の街・テキサス州オースティンを舞台に、ある男女4人の人生が時に交わり、離れていく姿の中で、それぞれが幸せを模索する姿を描きます。
監督を務めたのは、『天国の日々』(1978)『シン・レッド・ライン』(1998)などを手掛けたテレンス・マリック監督。メインキャストには『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)などのルーニー・マーラ、『ラ・ラ・ランド』(2016)などのライアン・ゴズリング、『スティーブ・ジョブズ』(2016)などのマイケル・ファスベンダー、オスカー女優ナタリー・ポートマンら、さらにケイト・ブランシェット、ホリー・ハンター、ヴァル・キルマーらベテランが脇を固めます。
さらにリッキ・リー、イギー・ポップ、パティ・スミス、ジョン・ライドン、フローレンス・ウェルチらさまざまなジャンルの有名ミュージシャンが、幅広い音楽とともに物語の世界を広げていきます。
映画『ソング・トゥ・ソング』のあらすじ
(C) 2017 Buckeye Pictures, LLC
アメリカ・テキサス州のオースティンで、フリーターとして毎日を過ごしていたフェイ(ルーニー・マーラ)は有名プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)と内密に交際していました。
ソングライターとしての野望を持つBV(ライアン・ゴズリング)は、そんな彼女に恋心を抱いていました。
一方、ゲームのように恋愛を楽しんでいたクックは、ある日夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマン)にアプローチを仕掛けます。
そしてこれを機にそれぞれに幸せを求めながら生きてきた4人の男女の人生が、誘惑と裏切りに満ちた世界で重なり合っていきます。
映画『ソング・トゥ・ソング』の感想と評価
(C) 2017 Buckeye Pictures, LLC
役者をクリエイションの場に引き込む手法
メインキャラクターにキャスティングされた注目の俳優4人をはじめ、名だたる名優の布陣に目を引かれ、それぞれがどのような立場の人間を演じるのか、どのような画を見せるのかに非常に気を引かれるところでしょう。
そういった期待を、この作品はいい意味で大きく裏切ります。恐らく近年のエンタ―テインメント系映画を見慣れた方は、かなり面食らうことでしょう。
本作では、演技の大半はまるで役者同士のアドリブ合戦、演技のワークショップのようなイメージに見えてきます。
台詞らしい台詞もなく、どこまでが脚本なのか、どこからはアドリブなのか、という感じです。しかしこれは視点を変えれば非常に実験的であり、斬新な試みにも見えます。
近年の大作では大まかなショットがほぼ決まっており、その決まったフレーム内に収まる演技、展開を役者は見せるわけです。
対してこの作品では、シーン毎の演技をかなり役者の感性に依存しているようにも見えます。つまり監督をはじめとしたスタッフだけでなく、役者自信の制約を解き、クリエイティブな面にかなり突っ込ませている形で作られています。
この作り方では、シーンそのものの展開やシーン毎のつながりをいかにバランスをとるか、という点で大きな懸念が出てくるわけですが、そこはむしろクリエイティブ性の良い面が浮き彫りとなっており、ある男女の物語という大筋があるにもかかわらず、文字通り「今までに見たことのない」と思わせる展開が見えてきます。
また一方で、ベテランのケイト・ブランシェットやヴァル・キルマーといった役者は、それぞれにかなり個性的な役柄として登場。「まさかこの人がこの役を?」と思わせる、少々サプライズ的なキャスティングが行われています。
そしてその配役で、どの役者も生き生きとした演技のぶつかり合いを見せています。それはある意味役者同士のバトルのようでもあり、本当の意味での「ケミストリー」に近い緊張感があり、リアリティーが映像からは見てとれます。
ある意味大作、大作と作品のスケールにこだわり過ぎている映画業界に対して、本当のクリエイティブとは何かという命題を投げかけたような試みともいえるでしょう。
撮り手の意志が見えてくる映像世界
(C) 2017 Buckeye Pictures, LLC
また映像の印象にも、この作品には特徴的な所管を覚えることでしょう。本作はPOV的に手持ちのカメラですべての場面を追うアングルで作られています。
カメラマンは登場人物ではないので当然POV作品ではありませんが、この視点にしている以上、見ている側があたかもその現場にいるような臨場感を醸し出します。
その一方で画の作り方は注目すべきものになっています。大概においてPOV作品は映像として、テレビやPCで見る場合、映画として映画館で見る場合と基本的には視聴のためのメディアを選ばない構図、アングルとなっています。
ものによってはどちらかというと前者のポータブルなメディアで見ることが前提になっている作品も、近年の映像配信市場の拡大傾向を考えれば、多くなっているとも考えられます。
しかしこの作品はどのシーンでも画面の広がりを非常に意識した撮り方をしており、「できれば大きなスクリーンで見たい」と思いたくなる作品作りの意思が随所に伺えます。
こういった点に関しても、例えば近日のコロナ禍のように映画という芸術の必要性というものを問われ、その存続の危機を迎えている現在において、「広いスクリーンで見る意味のある映画」作りを目指すとともに、映画文化存続の是非を敢えて問うたようなメッセージすら感じられます。
まとめ
(C) 2017 Buckeye Pictures, LLC
この物語には、ストーリーの明確なアウトラインが存在しません。例えば最初から最後までの一音一音が明確に決められた音楽がクラシックのオーケストラであるのに対し、感性に従ってさまざまな起伏を見せるコンテンポラリーなジャズのような作品のようでもあります。
その意味では気軽に見てしまうと内容を理解するのが難しい映画ですが、突き詰めてみると非常に先進性を狙った、攻めた作り方をしており、繰り返してみる意味のある作品であることがわかるでしょう。
また出演陣が名優揃いであると同時に、イギー・ポップ、レッドホット・チリペッパーズ、パティ・スミス、ジョン・ライドンなどの著名なアーティストが、それぞれにシーンの中で重要なポイントの役割を果たしています。
その登場の仕方は、意味深な言葉を述べたり、単にパッと出て、パッと消えたりとさまざまですが、それこそがこの「ソング・トゥ・ソング」というタイトルながら、いわゆるBGMという形で音楽を使用していない、それでもこの物語でまさしく「歌から歌へ」とつながっていくストーリー展開を巻き起こしていく上で、重要な役割を果たしています。
映画『ソング・トゥ・ソング』は2020年12月25日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショーされます!