映画『PLAY 25年分のラストシーン』は2020年11月6日(金)に新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、kino cinéma立川髙島屋S.C.館ほかで全国ロードショーほかで全国ロードショー!
13歳から友人、家族とのひと時を常にカメラに収め続けていたマックス。その映像で人生を振り返りながら、彼は一つの想いを胸に抱いていました。
幼少から撮り続けてきたホームビデオのラッシュフィルムから1人の男性の人生を綴ったドラマ『PLAY 25年分のラストシーン』。ほぼ全編をPOV映像(視点、主観映像)で時にユーモラスに、時に生々しく物語を描きます。
作品を手掛けたアントニー・マルシアーノ監督は、これまでもたびたび仕事を共にしたマックス・ブーブリルと本作でもタッグを組み、90年代のパリを鮮烈に描き出しています。
映画『PLAY 25年分のラストシーン』の作品情報
【日本公開】
2020年(フランス映画)
【英題】
PLAY
【監督・脚本】
アントニー・マルシアーノ
【共同脚本】
マックス・ブーブリル
【キャスト】
マックス・ブーブリル、アリス・イザーズ、マリック・ジディ、アルチュール・ペリエ、ノエミ・ルヴォウスキー、アラン・シャバ
【作品概要】
13歳から自身とその周りの人たちの生活をホームビデオで撮りためた1人の男性の25年を、彼の思いを中心に描いたヒューマンドラマ。
作品を手掛けたのは、フランスのアントニー・マルシアーノ監督。自身が手掛けた『Les gamins』(2013)では主人公マックス役を務めたコメディアンのマックス・ブーブリルと共同で脚本を担当。さらにコメディ映画『Robin des Bois,laveritablehistoire』(2018)でもタッグを組んでおり、3回目のタッグとなる本作では、再び共同で脚本を担当しています。
共演にはヒロインのエマ役に『令嬢ジョンキエール -愛と復讐の果てに-』(2019)などのアリス・イザーズ、マックスの友人・マチアス役に『ダゲレオタイプの女』(2016)のマリック・ジディ、マックスの母に『カミーユ、恋はふたたび』(2012)などのノエミ・ルヴォウスキーらが名を連ねています。
映画『PLAY 25年分のラストシーン』のあらすじ
1993年のフランス、パリ。マックスは両親からプレゼントされたビデオカメラで撮影を始めました。
以後友達といるとき、家族といるときにマックスは常にビデオカメラを回していました。
そして現在38歳になったマックスは、25年間の映像を編集しようと、これまでの思い出を見返します。
友人や家族と過ごした遊びや旅行、サッカーのワールドカップ、新たなミレニアムへのお祝いなど。
そしてこのフッテージによる回想が終わるころ、マックスはある一つの決心とともに、この映像のラストシーンに向けた準備を考え始めました。
映画『PLAY 25年分のラストシーン』の感想と評価
POV映像は、1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以降、特に低予算で手軽に撮影できるという副産物的な効果も相まって、近年のB級ホラー映画などで多く見られる表現方法となりました。
しかし一方で、2015年のアクション映画『ハードコア』のような例など、特殊な映像技法に傾いてしまったり、ジャンル的にはホラー、パニック系などの作品に偏る傾向がありました。
本作はそんなPOV映像のドキュメンタリー風な映像感が得られる効果をうまく利用し、特殊技法に頼らずにある1人の男性とそれを取り巻く人たちの関係を、ユニークなタッチで描いたヒューマンストーリーとして仕上げています。
映像がPOVによるものという点を除くと、物語は『フォレスト・ガンプ』(1994)を彷彿させるラブストーリーに、周囲の人間との関係を交えて描いた人生ドラマ風な展開を見せていると解釈できます。
そしてそれに加え、手持ちのカメラによるリアリティーや手作り感だけでは推し量れない明確なイメージを、主演兼脚本担当のマックス・ブーブリルが持っていたことで、新鮮かつ主題をしっかりと含んだ映像として仕上げています。
POV映像ならではの要所に見えるラフさは作品の特徴といえますが、90年代のフランスにおける若者のライフスタイルを表現した映像、その中で一見アドリブの連続と見えながらも、しっかりと物語の芯をブラさずつなぎ合わせてシーンを作り上げている点など、非常に緻密に計算しつくされた上で出来た印象すらあります。
劇中では同じ役柄の人間を3世代分用意し、それぞれの時代に合わせて演技をさせていますが、「役者が変わった」と思わせない工夫もかなりの配慮を見せています。
そこには、世代を通して演じる役者が共通して、キャラクター一人ひとりの性格を認識していることがうかがえます。
その意味ではPOV映像という技法が先行せず、あくまで撮りたい映像のイメージを追究したところでこの撮影方法に行きついたといえます。
主人公がカメラでずっと周囲の人間を撮り続けるというアイデアに対するブーブリルのこだわり、その映像に対するアントニー・マルシアーノのゆるぎない世界観こそが、この物語を作品としてうまく成立させた要因であるといえるでしょう。
フッテージのつなぎ合わせで、25年という長い期間を見事に成立させた手腕からは、この技法に対する新しい可能性を見出した印象もあります。
まとめ
物語は一見、ある人々の人生を追ったヒューマンドラマでありますが、新たな時代を迎えるにあたり、人との関係について国を越えてさまざまなことを考えさせられる側面も持ち合わせています。
この物語のタイムラインを考えると、物語のスタートは1993年。1990年代の初頭から2000年に至る時期は、世界的にはちょうどMicrosoft社のWindows OSが発表され、インターネットというインフラが急速に発達し一般的なものとなり始めたころでした。
その一方、日本ではバブルが崩壊し、韓国では2000年直前に通貨危機を迎えるなど、激動の時代でもありました。
また、フランスという国の目線でもさまざまな出来事のあった時代ですが、この物語では敢えてそういった局所的な出来事に一切触れていません。
この世代に生まれた人たちを、時代の裏側にあった別の目線として描く……。その前の世代の人、つまり彼らと親世代の人とのコントラストで表現することで、この世代はどんな風に育ってきたかを、ストレートな視点で描いています。
そういった時代背景を裏で考えながら物語を辿っていくと、すっと受け流して見てしまうには惜しい作品だと改めて気づかされることでしょう。
映画『PLAY 25年分のラストシーン』は2020年11月6日(金)に、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、kino cinéma立川髙島屋S.C.館ほかで全国公開されます!