映画『パピヨン』の日本公開は、2019年6月21日より全国ロードショー。
映画『パピヨン』は、アンリ・シャリエールの自伝小説『パピヨン』を『氷の季節』で知られるデンマーク人監督マイケル・ノアーが映画化した作品です。
絶海の流刑地に投獄されたシャリエールの数奇な運命を原作に沿い忠実に再現。
1973年公開のスティーヴ・マックイーンとダスティン・ホフマンが出演したオリジナルとは一線を画しています。
胸に蝶の刺青を入れていたことから、シャリエールは「パピヨン」と呼ばれていました。
映画『パピヨン』の作品情報
【公開】
2019年6月21日(アメリカ、セルビア、モンテネグロ、マルタ合作映画)
【原題】
Papillon
【監督】
マイケル・ノアー
【キャスト】
チャーリー・ハナム、ラミ・マレック、ローラン・モラー、トミー・フラナガン、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン、イヴ・ヒューソン
【作品概要】
最初にキャスティングされたアンリ・シャリエール役のチャーリー・ハナムと監督を務めたマイケル・ノアーは、現代の民営刑務所が抱える倫理的問題の話題で意気投合します。
舞台となった孤島における囚人の扱いに注目し、原作『パピヨン』(Papillon)と『パピヨンは死なない』(Banco)を基に映画を製作することに決めました。
映画『パピヨン』のあらすじとネタバレ
1931年、パリ。金庫破りの名人アンリ・シャリエールは罠にはまり、犯していない殺人罪で終身の労役を課された流刑を言い渡されます。
アンリは、南米のフランス領ギアナにある徒刑場へ護送される船の中、服役囚ジュロから国債偽造で大金を手にし、周囲から体内に隠した金を狙われているルイ・ドガの存在を聞かされます。
既に脱獄を考えていたアンリは、ルイに護衛をする代わりに資金調達を打診します。自分で対処できると断るルイですが、隣に寝ていた囚人が胃の中に隠していた金目当てに殺害されるのを目の当たりにし、アンリの申し出を受け入れます。
アンリは、島の監獄に収監された後も約束を守り、体を張ってルイを守ります。劣悪な環境下で肉体労働を強いられる中、知り合ったセリエがお金を用意できれば船を手配するとアンリに持ち掛けます。
度々襲われたルイも、アンリが居なければ生き延びられないと気付き、一緒に脱獄すると言い始めます。
ある日、ジュロが単独で脱走。捕まったジュロは、看守を1人殺害した罪で、ギロチンに掛けられ公開処刑となります。
刑務所長に指名されたアンリは、ルイと一緒にジュロの遺体を運ばされます。足場の悪いジャングルを歩いているうちに、ルイの囚人服が真っ赤に染まり、ルイは気が動転します。
座り込んだルイを看守が鞭で何度も叩きました。見かねたアンリが側にあった石を拾い看守を殴り付け逃走します。後方に居た看守達が怒鳴り声をあげてアンリを追跡しました。
拘束されたアンリに対し、所長は「お前を壊してやる」と告げ、2年間の独房収監を命じます。コンクリートの壁と格子がはまった天井で、常に看守が監視しています。食事は液状で栄養も殆ど無く、後は完全な孤独が支配する毎日でした。
そんなある日、バケツに入ったココナッツの半身がアンリの独房に配られます。メモが挟まっており、毎日ココナッツを届けるとあります。ココナッツを噛みしめるアンリの顔に笑顔がこぼれ、ルイの名前を呟きました。
しかし、程無くして看守にココナッツが見つかってしまいます。所長が具のたくさん入ったスープをアンリの鼻先に近づけ、誰がココナッツを寄こしたのか白状しろと迫ります。
沈黙を守るアンリに腹を立てた所長は、一切の食事や水も取り上げ天井を閉じて明かりをも奪います。
映画『パピヨン』の感想と評価
脱獄に焦点を当てた1973年のオリジナルとは異なり、人間性と友情を重要視したのが2017年に製作された『パピヨン』です。
見所は、主演を演じたチャーリー・ハナムとラミ・マレックの見事な演技です。そして、本物にこだわりCGを殆ど使わずに撮影した監督のマイケル・ノアーは、過酷な環境で生きる囚人に照り付ける太陽の暑さをも映像化しています。
原作『パピヨン』は、世界中で読まれたベストセラーです。歴史家やジャーナリストがその信憑性を調査し、様々な憶測を呼んだことでも知られています。
内容の殆どは嘘だと断じる専門家も居ますが、アンリ・シャリエールは死亡率の高い非人道的な流刑地に投獄されても生き延び、1970年に恩赦を受け晴れて自由の身になったことは確かです。
凄まじい減量に挑んだハナムは20キロ近く体重を落としました。独房のシーンは撮影終盤に行われ、ハナムは8日間断食し水も飲まず独房で過ごしています。
これが出来なければシャリエールを演じる資格が無いと信じたストイックなハナムの提案でした。
また、ラミ・マレックしかルイ・ドガを表現できる俳優は居ないと考えたハナムは、直にマレックに連絡を入れ出演して欲しいと頼んだそうです。
日本でも大ヒットしたテレビドラマ『24』のシーズン8 (2010年)に、マレックはゲスト出演しています。当時と殆ど変らない若さを保ち、主演のキーファー・サザーランドに引けを取らない演技を披露。当時から強い存在感を残しています。
本作の製作は2017年。翌年公開された『ボヘミアン・ラブソディ』でマレックはアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。
まとめ
アンリ・シャリエールは、無実を訴えたまま島に流されます。囚人の精神を壊すために造られた独房で彼を支えたのは、ルイがリスクを犯して贈ったココナッツ。
歯で齧った果実の甘さに込められた友の思いがアンリの正気を保ちます。
監獄に不当に長く収監される囚人達の処遇に異を唱えるノアー、ハナム、そして所長を演じたヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン。
彼等の知恵と個人の尊厳に対する敬意が凝縮された『パピヨン』は、1930年代に生きた男達の汗と泥を描いた秀作です。