無作為に選んだ相手をただ尾行する”だけ”という、ソフィ・カル著『本当の話』からのアイデアを使い、修士論文のために他人の生活を覗き込んでしまう女子大生…。
映画『二重生活』に登場する女子大生の白石珠役を『ナミヤ雑貨店』などに出演の門脇麦が熱演。
今回は門脇麦主演の『二重生活』をご紹介します。
東京の閑静な街から雑踏に至るまでひたすら追いかける映像も密かな見どころ!
1.映画『二重生活』の作品情報
【公開】
2016年(日本)
【監督】
岸善幸
【キャスト】
門脇麦、長谷川博己、菅田将暉、リリー・フランキー、烏丸せつこ、篠原ゆき子、西田尚美
【作品概要】
小池真理子の原作小説を、『あゝ、荒野』の岸善幸監督により映画化し、ドキュメンタリー出身ならではの生々しいカメラワークに、どんどん他人の私生活にのめりこんでしまう心理をつぶさに描き出しています。
劇伴もあえてサスペンスな曲調ではなく、どこか優雅ささえ漂わせていることによって、確かに全く新しい心理エンターテイメントとなっています。
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2.映画『二重生活』のあらすじとネタバレ
大学院生で哲学を学んでいる白石珠は、ゲームデザイナーの卓也と、東京の閑静な住宅街にあるアパートで同棲をしています。
珠は修士論文のテーマを見せるために篠原教授の研究室に顔を出します。
篠原は珠にアドバイスとして、無作為に選んだ対象者を尾行し、行動を観察・記録する「哲学的尾行」を提案し、これにより人間とは何なのかを考察したらどうかと指導されます。
珠はそんな理由なき尾行の提案に最初は躊躇っていましたが、立ち寄った本屋に近所の立派な一軒家に住むエリート編集者・石坂をたまたま見つけたことで、早速尾行を実践してみることにします。
卓也からの電話も適当にあしらってしまうほど、知らず知らずのうちに尾行にのめり込む珠は、石坂に続いてカフェに入ります。
なんと石坂は妻子ある見にもかかわらず、ここで女性と密会していたのです。
カフェを出た後も後をつけると、石坂と愛人は、突然、裏路地に消えていき2人は屋外にも拘らず身体を重ね合っていました。
唖然とする珠ですが、ついつい何度もその前を通り過ぎるフリをして、2人の様子を覗き見してしまいます。
ことが終わると、石坂はタクシーに乗って去ったので、尾行の対象を愛人に変えます。
彼女の住居が分かり、名前をネットで調べると、そのしのぶという女性はデザイナーとして活躍している女性でした。
珠は家に帰ると、アパートの大家が、石坂のことについてべらべらと喋り、珠は偶然にもあらかた彼の情報を仕入れることに成功します。
珠は卓也の話も聞かず、論文の執筆に取り掛かり始めます。
次の日、珠は編集者から石坂が出てくるのを待ち伏せしています。
彼は喫茶店で作家と現行の打ち合わせを始め、帰りに家族にケーキをお土産ろして購入したのち戻ります。
その際、愛人から電話がかかると、会話の内容から後日恵比寿のホテルにて逢引することが分かります。
一方、篠原は自身の母の見舞いに訪れ、既に余命いくばくも無い母に、妻を紹介します。
母の喜ぶ顔を見る篠原はどこかうかない表情ですが、やってきた看護師に、3人で写真を撮って欲しいと頼みます。
休日、石坂の家をアパートのベランダから観察していると、家族揃って出かけていくのを見つけます。
卓也にどこに行くのかと聞かれても、あいまいな返答しかしない珠に、彼の表情は翳ります。
石坂は家族との水族館に訪れますが、彼はその際にも隙を着いて愛人のしのぶと連絡を取り合っていました。
そして逢引当日、ホテルのフロントに怪訝な目で見られながらも、珠は2人の尾行を続けます。
しかしホテルを出て、レストランで食事をしている際、しのぶは怒って出て行きます。
さらにレストランの傍には、石坂の妻子がその一部始終を見ていました。
妻は激怒し、娘を置いて歩きさってしまい、状況に追いつけない珠は迷った挙げく妻を対象に変えて尾行を続けます。
妻は自棄酒をしながら、深夜の東京を徘徊しつづけ、誰もいない公園で泣き崩れるのでした。
そして石坂家では事件が起こります。
妻が薬を飲んで自死を図り、閑静な住宅にサイレンが響き渡りました。
珠は家を飛び出し、野次馬に紛れていた大家と担架で運ばれる妻を見てますが、その際石坂と目が合ってしまいます。
翌日、駅で石坂がたまに接触してきて、妻に頼まれて尾行しているのかと詰め寄ります。
哲学的尾行の事は言えず、ただ何も教えれないというと珠は全速力で駅のホームへ逃げ込み、電車に乗って逃げ切ります。
対象者に接触してはいけない決まりだったので、動揺した珠は篠原に至急連絡を入れます。
しかし彼は母の最期に立ち会っているところでした。
篠原は一緒に立ち会っている妻に「終わりました」と力なく言いますが、妻は母を前に泣き崩れます。
帰宅した珠を無表情で見つめる卓也。そんな時、大家から番号を知り得た石坂から電話がかかってきて、会って話そうと提案してきます。
この電話を教授からだと珠はごまかしますが、卓也にウソだと見透かされます。
正直に尾行のことを話しても、理解してもらうことができなかった珠は泣くことしかできません。
後日、石坂に尾行の件をきちんと話すも、彼はずっと珠に否定的な態度をとり、自分のことを論文にするなと言い出します。
飲み屋で酒を飲む2人ですが、珠ここで尾行をしているとき、自分はどこか見らされていたと、正直に告白し論文を書かせて欲しいと懇願します。
挙句珠は酔いもあって石坂とホテルへとなだれ込んでしまいます。
3.映画『二重生活』の感想と評価
原作では登場する人物が登場しなかったり、ストーリーにオリジナルの部分が出てきたりと脚色もいくつかありますが、一番良かったと思った脚色がラストシーンです。
原作のネタバレはここでは言及しませんが、映画と違ってややサスペンス調で終わります。
映画は石坂を対象にしているときはサスペンス寄りですが、篠原を対象(これも原作にはない脚色)にしているときは、かなりドラマ寄りの話になっているのです。
ゆえにあのラストになるのでしょうが、個人的にあの穏やかでどこか前向きなところさえ見て取れるラストシーンに感動してしまいました。
原作が化けたとは、このことを言うのかとさえ思いました。
しかし、篠原はなぜ自死をしたのでしょうか?
遺言も何もないし、明らに死んだシーンも無いので、そもそも本当に死んだかどうかも若干微妙なところもありますが・・・
珠はこの論文で、秘密を持つことは人生の苦痛を軽減できると書きました。
篠原は自分の妻が代行者という秘密を、珠に間接的ですが打ち明けたことによって、苦痛を軽減する秘密をなくしたと言えます。
残ったのは母と、代行者とはいえ妻と送った生活の喪失感でした。
珠の論文を読んで採点(90点代!)した後、彼は首をくくったので、彼の死は、論文を非常に高く評価していることへの表れとも言えるかも知れません。
まとめ
この独特の脚色は、評価に個人差が分かれそうですが、珠が石坂の尾行にのめり込むのと同じように、私たち観客もその生活をもっと見たいと思うようになる不思議な画力があります。
ほとんどの画面が、人の目線で追いかけるので、散歩好きの人なんかは、意外なところで好きになる要素があるかもしれません。
また、今作は門脇麦初主演となっていますが、彼女の自然な魅力が非常に詰まってて素敵でした。
恋人役の菅田将暉も、他作で見られるハイテンションはどこへやらと言いたくなるほど、かなり落ち着いた様子なので、彼の新境地を見たい方もぜひ。
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