映画『ミッドウェイ』は2020年9月11日(金)より全国公開。
『インデペンデンス・デイ』のローランド・エメリッヒ監督が、歴史的海戦を20年に及ぶリサーチを経て鮮明に描いた映画『ミッドウェイ』。
第二次世界大戦の中でも、歴史を左右するターニングポイントとなった激戦として知られるミッドウェイ海戦を、そのきっかけとなった真珠湾攻撃から描いて行きます。
史実に真正面から切り込んだ、シリアスなストーリーや人間関係に引き込まれる本作ですが、ふと見回すと、エド・スクライン、ウディ・ハレルソン、ルーク・エヴァンス、アーロン・エッカート、ニック・ジョナスと、個性の異なる魅力的な俳優たちがずらり。
本記事では、アメリカ軍人を演じた俳優たちとそのキャラクターに熱い視線を送ってみましょう。
CONTENTS
映画『ミッドウェイ』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
MIDWAY
【監督】
ローランド・エメリッヒ
【脚本】
ウェス・トゥック
【製作】
ハラルド・クローサー
【キャスト】
エド・スクライン、パトリック・ウィルソン、ウディ・ハレルソン、マンディ・ムーア、ルーク・エヴァンス、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、デニス・クエイド、アーロン・エッカート、ニック・ジョナス
【作品概要】
戦う男たちを真正面から捉えたのは、『インデペンデンス・デイ』(1996)のローランド・エメリッヒ監督。
観客のド肝を抜く一大スペクタクル映像の第一人者が、20年に及ぶリサーチと新たに発見された日本軍側の貴重な資料をもとに、両軍に敬意を捧げて史実を再現。
キャストには、山本五十六、チェスター・ニミッツをはじめとした実在の人物を演じるために、ウディ・ハレルソン、パトリック・ウィルソン、デニス・クエイド、アーロン・エッカート、豊川悦司、浅野忠信、國村隼など日米の実力派俳優が集結しました。
映画『ミッドウェイ』のあらすじ
1941年12月7日の日本軍による奇襲とも言える真珠湾攻撃。
戦争の早期終結を狙う山本五十六連合艦隊司令官(豊川悦司)の命により、山口多聞(浅野忠信)や南雲忠一(國村隼)がアメリカ艦隊に攻撃を仕掛けました。
大打撃を受けたアメリカ海軍は、新たな太平洋艦隊司令長官に、兵士の士気高揚に長けたチェスター・ニミッツ(ウディ・ハレルソン)を立てます。
両国の一歩も引かない攻防が始まる中、日本本土の爆撃に成功したアメリカ軍の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画。
一方、真珠湾の反省から、日本軍の暗号解読など情報戦に注力したアメリカ軍は、情報部のレイトン少佐(パトリック・ウィルソン)がその目的地をミッドウェイと分析、限られた全戦力を集中した逆襲に勝負を賭けます。
そして遂に、アメリカ軍のカリスマパイロット、ディック(エド・スクライン)率いる上空から攻撃をする戦闘機の空中戦と、山口艦長や南雲艦長率いる海上からの戦艦の砲撃の壮絶な激突へのカウントダウンが始まり…。
エド・スクラインがストーリーの柱を担う
群像劇である本作ですが、その大きな柱となっているのが、エド・スクライン演じるアメリカ海軍のパイロット、ディック・ベストの成長です。
初登場時は生意気で自信過剰なだけの若者だったベスト。哨戒飛行を終え、空母エンタープライズに戻る際に、訓練と称してわざとエンジンを切って着艦してみせます。
その姿は、「死」というものをリアルに考えておらず、ただただ己の強さを誇示したいだけの薄っぺらな人間に見えました。
ですが、真珠湾戦争で親友を亡くしたことで、「死」を身近に感じ、日本に対する明確な敵意を持つようになります。
そして、昇進したことによる責任感や、自分の判断ひとつで部下を失うことへの罪悪感が、彼を大きく変えました。
ミッドウェイに向かう艦上機に積んだ酸素の配合が誤っていたため、肺を痛めてしまうとわかっていながらも、隊長である自分が退くわけには行かないと、腹を据えて真っ直ぐに飛んでいく姿は頼もしく写ります。
本作で良いなと感じたのは、成長=別人格になる、とは描かなかったことです。
確かにベストは大きく変化します。自分のことだけではなく、他者のことを考えられるようになります。
しかし、彼の傲慢で大胆な性格は変わらぬまま、それが長所として、何者にも迎合しないカリスマ的リーダーになって行くのです。
この微妙な匙加減を、エド・スクラインが絶妙に演じました。
ベストは発艦時にルーティーンとして、妻と娘の写真を飾り、ガムを口に入れるんですが、その仕草が戦いを重ねるごとに大きな意味を持ち始めていく様子を、目線と指先の動き一つで伝えてくれます。
また、ベストの妻アンを演じたマンディ・ムーアも、ほぼ男所帯の本作に華を添え、強い意志を持った女性として内なる戦いを体現。
彼女がストーリーのラストでベストに掛けた一言が、ひとつの戦いの終わりと、新たな戦いへの始まりを感じさせました。
ルーク・エヴァンスの包容力とダダ漏れる色気
参考:ルーク・エヴァンスのインスタグラムより
ディック・ベストの上官であるウェイド・マクラスキーは、「ワイルド・スピード」シリーズや、『美女と野獣』(2017)のガストン役でお馴染みの、ルーク・エヴァンスが演じています。
ベストの自分勝手さを窘めながらも、彼の才能を認め、導いて行くマクラスキー。
マクラスキーはベストの性格を熟知していて、彼の良さをどうにか伸ばしてやれないかといつも思案しています。
軍隊もので見られる大きな声での恫喝や叱責も一切しません。
ベストの妻アンが、かなり失礼な発言で詰め寄っても、大人の余裕でひらりとかわします。「この妻あってのベストか」と、楽しんでいるようにも見えます。
ベストの昇進をクールに喜び、ベストの帰還を誰よりも信じている。最高に理想の上司、それがマクラスキーなんです。
そしてなにより、たいへんセクシーで100点満点です。怪我をしてもセクシーでした。
ニック・ジョナスの軽妙さが作品のスパイスに
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)では隠れキャラのように登場した、ニック・ジョナス。
本作でも、彼が出演していたことを知らず、本編を観て驚いた方も多いんではないでしょうか。
ニック・ジョナスは、航空整備員のブルーノ・ガイドー役として顔を出します。
しかもその登場の仕方に痺れます。空母エンタープライズに特攻してきた日本軍に立ち向かうため、咄嗟の判断でデッキに止めていた艦上機に乗り込み、撃ち落とすんです。
おかげでエンタープライズは守られ、彼は昇進します。
どうしてそんなに勇敢でいられるのかと尋ねた仲間に、彼の生き方を決定づけた、父の交通事故死の話をするガイドー。「先のことはわからないから心配してもしょうがない」。
その過去を、悲しみでも後悔でもなく、悟ったようにあっけらかんと語ったニック・ジョナスの表現力に心を奪われました。
常に微笑んでいるような甘いマスクと、身軽な立ち居振る舞いが、重々しい本作の空気をカラッと明るくしてくれます。
まとめ
本作を見応えのある作品に仕上げているひとつの要素として、俳優たちの演技力があげられます。たとえ出番の短い役でも、経験豊かで高い演技力を持った俳優をキャスティング。
ニミッツ大将役には、いるだけで安心感が得られる稀有な存在、ウディ・ハレルソンが扮し、情報将校のレイトン少佐を信じて行動して行く有能な指揮官として印象付けました。
そのレイトン少佐を演じたパトリック・ウィルソンも、冒頭の豊川悦司との緊迫感に満ちた駆け引きで物語に引き込みます。
デニス・クエイドは、病を隠しながら、部下を鼓舞し慕われる司令官を体現。
陸軍でありながらも日本本土空襲を指揮したジミー・ドゥーリトル中佐役にはアーロン・エッカート。彼の存在が、日本とアメリカだけでない、別の視点から第二次世界大戦を見せてくれます。
群像劇として、役者の演技合戦もみどころの本作。ぜひスクリーンで圧倒されてください。
映画『ミッドウェイ』は2020年9月11日(金)より全国公開です。