映画『マティアス&マキシム』は2020年9月25日(金)全国順次ロードショー
映画『マティアス&マキシム』は、『Mommy』や『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』のグザヴィエ・ドラン監督による最新作です。
ルカ・グァダニーノ監督の『君の名前で僕を呼んで』に感銘を受けたドラン監督が製作した自身初の純愛映画となっています。
監督の実際の友人たちをキャストに迎えて、地元ケベックで撮影されたという初めての試みが満載な本作。
また、ドランが自身の作品に出演するのは、2013年の『トム・アット・ザ・ファーム』以来7年ぶりになり、その演技にも注目が集まっています。
映画『マティアス&マキシム』の作品情報
【日本公開】
2020年(カナダ映画)
【監督】
グザヴィエ・ドラン
【キャスト】
ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス、グザヴィエ・ドラン、ピア・リュック・ファンク、サミュエル・ゴティエ、アントワン・ピロン、アディブ・アルクハリデイ、ハリス・ディキンソン、アンヌ・ドルヴァル、ミシュリーヌ・バーナード、マリリン・カストンゲイ、キャサリン・ブルネット
【作品概要】
グザヴィエ・ドラン監督が『君の名前で僕を呼んで』(2017)にインスパイアされ、友情と恋のはざまで揺れる青年の12日を描いた純愛映画です。
冒頭にクレジットで「エリザ〈『ブルックリンの片隅で』(2017)〉、フランシス〈『ゴッズ・オウン・カントリー』(2019)〉、ジョエル〈『ある少年の告白』(2019)〉、ルカ〈『君の名前で僕を呼んで』(2018)〉に捧ぐ」と出てきます。4作品とも、ホモセクシュアルの作品という括りを通り越して、繊細な心の動きやジェンダーの問題を観るものに訴えかける作品です。
ケヴィン役のハリス・ディキンソンは『ブルックリンの片隅で』の主演を務めたことで評価を得た俳優。ほかにはダニー・ボイル制作のFXドラマ「TRUST/トラスト ゲティ家のスキャンダル」に出演し、2020年公開予定の『キングスマン:ファースト・エージェント』ではレイ・ファウンズと共に主役に抜擢されている新鋭俳優の一人です。
上記の4作の映画に影響を受けたドランは、自分は本当に作りたいものをごまかしていたのではないかと感じたと言っています。自身はゲイを公言し、過去作の登場人物にも投影していたものの、さらけ出すのを躊躇していた部分があったのかもしれません。本作が率直で生の感情が伝わる映画となっているのは、監督の覚悟と新たな挑戦だといえるでしょう。
映画『マティアス&マキシム』のあらすじ
婚約者がいるマティアスと、あと数日で街を離れるマキシム。
幼馴染みのふたりは、友人宅のパーティーで友人の妹から頼まれて、映画の撮影のためにキスシーンを演じることになりました。
そのキスをきっかけに互いへの想いに気づき始めるふたりでしたが、マキシムが街を出ていく日は刻一刻と迫ります。
映画『マティアス&マキシム』の感想と評価
友情の物語
本作はこれまでのドラン作品とは違い、全体を通して親近感が漂う映画だと感じました。それは、ドラン作品の中では初めて「仲間の存在」が軸になっているというのが一因といえます。
友人たちによってとめどなく交わされる何気ない会話や戯れ、何の意味もなさそうなシーンから感じられるのは、日常感です。
監督の実際の友人らがキャスティングされているということで自然体なゆるさがよりその雰囲気を醸しだしているのではないでしょうか。
その日常感が観る者に「もし自分が同性の友人を好きになったらどうするか」と考えさせるのです。
繊細な心の揺れの表現
ドラン監督作品の素晴らしい点は、クライマックス以外のシーンでも心を奪われるような美しいシーンがあることだといえます。それは本作も同じでした。
一度芽生えた感情が止まることなく走り続けることを思わせるような映像や音楽表現は健在で、ピアノの旋律に乗せて繊細な心模様をエモーショナルに描いています。
細かな目配せや、距離感の変化など心の揺れ動きを見せる主演ふたりの演技は見事です。ドラン演じるマキシムは顔に痣がある役で、どこか陰のあるキャラクターでした。
この痣を、自身の心の傷を表現したものだと監督は語っており、人目を気にして生きるということの辛さと気の置けない友人たちこそが唯一の救いになるというメッセージが込められています。
友人たちといるときに得られる安心感はほかに替えがきかないもので、友情と恋の間で葛藤するマキシムの切ない表情には心を揺さぶられました。
まとめ
公開されるのが初秋ということで作中の季節にマッチしていて、帰り道きっと気持ちよく劇場を後にすることができるはずです。
グザヴィエ・ドランの新境地、ぜひスクリーンで堪能するのをお勧めします。
映画『マティアス&マキシム』は2020年9月25日(金)全国順次ロードショー。