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Entry 2017/02/21
Update

映画『マリアンヌ』あらすじネタバレ感想とラスト結末の評価解説。実話モデルにブラッドピットとマリオンコティヤールが紡ぐ“偽りが生む愛”

  • Writer :
  • 西川ちょり

“偽り”の果てに、真の愛はあるのか?
究極の愛を試される男女を描くラブストーリー映画『マリアンヌ!

ブラッド・ピットとマリオン・コティヤールが共演を果たした映画『マリアンヌ』。

『フォレスト・ガンプ 一期一会』など数々の名作映画を手がけてきた名匠ロバート・ゼメキスの監督作です。

第二次世界大戦下のカサブランカを舞台に、秘密諜報員とレジスタンス活動家の男女が“偽り”に翻弄されながらも真の愛を求めようとするラブストーリーである本作。

本記事では映画『マリアンヌ』をネタバレあらすじ有りで紹介いたします。

映画『マリアンヌ』作品情報

【公開】
2017年(アメリカ)

【原題】
Allied

【監督】
ロバート・ゼメキス

【キャスト】
ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス、サイモン・マクバーニー、リジー・キャプラン

【作品概要】
戦時下のカサブランカ。秘密諜報員のマックスとフランス人のレジスタンス活動家のマリアンヌは、ドイツ大使暗殺の使命を担っていた。

夫婦を装い、カサブランカにおけるドイツ社会に潜入する二人はやがて惹かれ合っていく。作戦は成功。二人は結ばれるが、予期せぬ疑惑が浮かび上がる。

映画『マリアンヌ』のあらすじとネタバレ

カサブランカでの使命

第二次世界大戦下の1942年、カナダ人の空軍情報員マックスは、フランス領モロッコの砂漠にパラシュートで降り立ちます。砂漠を歩き続けていると迎えの車がやってきて、彼らはカサブランカへと向かいました。

目的地に着くと運転手は車を止め、指輪をマックスに渡し「女の目印はハチドリだ」と告げます。マックスは車を降りてキーを受け取ると別の車に乗り込みました。

目指すクラブに到着。入って行くとハチドリの女はすぐにわかりました。女はマリアンヌ・ボーセジュールというフランス人のレジスタンス活動家です。

マックスとマリアンヌは夫婦という設定で、この地のドイツ人社会に潜り込み、ドイツ人大使を暗殺するという任務を負っていました。

マリアンヌは既に周りに溶け込み、友人関係を築き上げていました。二人が実は夫婦でないということを周囲に悟らせてはいけません。彼らは夜になるたび、ホテルの屋上に上がりました。

なぜなら、ここカサブランカでは、夫婦の営みが終わったあとは、屋上に上がってくるのが習わしなのです。勿論二人は別々のベッドに寝ているのですが。

マックスはフランスの実業家として振る舞わねばならないのですが、マリアンヌは彼のフランス語がケベック訛だとからかいます。そしてフランス人と接する時には慎重にと忠告するのでした。

彼らは銃の演習を行うとともに、ドイツ大使館に出向き、ターゲットである大使のパーティーに出席する許可を正式に得ることに成功します。

「行きたいところはある?」というマリアンヌの問いに「メディシンハット」と応えるマックス。カナダ西部のアルバータ州にある都市で、「つらい時に想いをはせる場所」なのだとか。

夫婦として行動していくうちに二人は惹かれ合っていきます。作戦の成功率は極めて厳しいもので、生きて帰れないのなら誰にも気付かれないと二人は砂嵐の中、車の中で結ばれます。

いよいよ決行の日。パーティーが始まりましたが、肝心の大使がなかなか姿を見せません。あと数分すれば屋外で爆発が起きる予定なので、二人は気がきではありません。

ようやく大使が現れ、演説を始めました。手はず通り爆発が起き、その瞬間、二人は机をひっくり返し、その下に隠されていた武器を取ると大使を射殺、ドイツ兵との撃ち合いとなります。

作戦に成功し、生きて歩いていることに興奮を隠せないマリアンヌ。マックスは彼女に「ロンドンに一緒に行って結婚しよう」とプロポーズします。

ロンドンでの試練

3週間後、マックスはロンドンにいました。上官のフランクから、審査の結果、マリアンヌの英国入国が認められたことを知らされます。

二人は結婚し、マリアンヌは女の子を出産しました。女の子はアナと名付けられました。

一年後、ロンドン郊外のハムステッドで幸せに暮しているマックスのもとにVセクションから呼び出しがかかります。それは驚くべき内容でした。マリアンヌがドイツのスパイだというのです。

マリアンヌ・ボーセジュールは既に死亡しており、彼女は成りすましの別人であること、殺害した大使は反体制派でヒットラーから暗殺命令が出ていたことなど、マックスには信じられないことばかり。

Vセクションの男は72時間の作戦をマックスに告げます。メモの内容をマリアンヌの見えるところに起き、ドイツが受信した情報を解読、その内容が一致すれば君の手で彼女を殺せ、と。

翌日、ベッドで本を読んでいるマックスの元に予定通り電話がかかってきます。彼は妻の見える場所でメモを取り、それをそのまま放置しておきます。

妻の二重スパイ疑惑を打ち消すために、マックスは独自で行動を取り始めました。まず、フランス北部のディエップでかつてマリアンヌと共にレジスタンス活動を行っていたガイという男を訪ね、マリアンヌの写真をみせて、本物かどうか確認させようとします。しかし、彼は片目を負傷し、もう片方の目も視力を失っていました。

次にマックスはディエップに救援物資を届けるためにプロペラ機に乗る任務を受けた青年を訪ね、ドラマールという男にこれを見せてイエスかノーが聞いてくれ、とても重要な任務だ、とマリアンヌの写真を手渡します。

マックスの行動を知ったフランクが怒って訪ねてきます。月曜日にはわかることだ、と彼は言い、青年はドラマールのことに時間を取られたせいで爆撃を受けて死亡したと聞かされます。

マリアンヌは自宅でパーティーを開きました。賑わう中、一人の老人がマリアンヌと深刻そうに話しているのを見たマックスはマリアンヌを問い詰めますが、彼は宝石商で、宝石を買わないかと言われただけだと答えます。宝石商をつかまえると、やはり彼も同じことを言うだけです。

その時、突然夜空に鉄砲の音が花火のよう鳴り響きました。敵機に向かって砲撃を行っているのです。空襲警報が遅れて鳴り始めました。一機が撃ち落とされ、それが家の方に墜落してきました。

家の屋根をかすめると、ドイツ機は広場に落ちて炎上。人々は翌朝、イギリスの国旗をたてかけ、そこから100メートルほど離れたところでマックスは妻と子供とともにピクニックを楽しむのでした。

マックスは自らディエップに飛び、レジスタンスとして活動する人々と合流。ドラマールは酔って地元の警官に収監されていると聞き、出かけていきます。見張りの男に銃をつきつけ、仲間に頼むと、ドラマールをみつけ写真を見せます。

彼の証言はあやふやで判然としません。マリアンヌとわかる明らかな特徴を教えろというマックスの問いに、彼女はピアノを弾いたとドラマールは答えます。彼女は大勢のドイツ兵がいる中で、フランス国家「ラ・マルセイエーズ」を弾いたのだと。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『マリアンヌ』ネタバレ・結末の記載がございます。『マリアンヌ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
翌朝、自宅に戻ってきたマックスはマリアンヌをパブにつれていきます。ピアノに座らせ、「ラ・マルセイエーズ」を弾けと命じます。

驚き、ためらっていた彼女ですが、やがて静かにピアノのふたを閉めます。「その話は知っているわ。とても勇気のある女性だったのね」。

彼女はマリアンヌ・ボーセジュールではなかったのです。

ハムステッドに落ち着いてからもドイツ軍は彼女のことを見つけ出し、娘を人質にスパイ活動を強いたのだと彼女は泣きながら告白します。親切そうな子守りはドイツのスパイだったのです。

あなたを愛する気持ちに嘘偽りはない、と訴える彼女に、「メモの内容はドイツに送ったのか」と問うマックス。うなずくマリアンヌを見てマックスは絶望感にかられます。しかし、すぐにメディシンハットは他の国にもあると言い、二人で遠くに逃げる決心をするのでした。

子守が扉を開けるとマックスが銃を構えてたっていました。マックスは女を撃ち殺すと、アナを抱きあげ、車に乗せます。三人が乗った車は宝石商の店の前で止まり、マックスだけが店に入っていきました。

じっと待つマリアンヌたち。しかしなかなか出てこないマックス。マリアンヌは不安にかられますが、やがて銃声が聞こえ、出てきたマックスは車に乗り込みます。

車は飛行場までやってきました。飛行機で飛び立とうとしている最中に、フランクたちが駆けつけてきました。

「君を大逆罪で逮捕する」とフランクがマックスに告げていると、マリアンヌが降り立ちます。マックスに「愛しているわ、ケベック人」と呼びかけ、「アナを頼みます」と言うと銃で顎を撃ち自死しました。

泣き叫ぶマックス。フランクはあとからやって来た部下たちにマックスが妻を射殺したと告げます。

マリアンヌは前日に手紙をしたためていました。こうなることを予期していたのでしょう。「ハムステッドでの生活は最高に楽しかったわ。どうか私を許して欲しい。マックスとアナがメディシンハットに行けますように」。

マックスと大きくなったアナは今、メディシンハットで暮しています。

映画『マリアンヌ』の感想と評価

冒頭、夜明けの砂漠の風景が映し出されます。西部劇なら遠くから馬に乗ったガンマンが現れるところですが、本作では突然、人の足が画面手前に降りて来て、驚かされます。ブラッド・ピット扮するマックスがパラシュートでモロッコの砂漠に降下してきた場面です。

その後、マックスはカサブランカに到着するのですが、戦時下のカサブランカといえば、あのハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマン主演の名作『カサブランカ』を想い出さずにはいられません。そう、本作は『カサブランカ』に壮大な目配せをした作品なのです。

レジスタンスの女性が大勢のドイツ兵がいる中で「ラ・マルセイエーズ」を弾いたというエピソードはボガートの経営する店で起こった出来事を想起させますし、飛行場での上官の事件の処理の仕方なども『カサブランカ』でのフランス人署長の行為を連想させます。

本作は『カサブランカ』というハリウッドを代表する作品を身にまとうことで、古典の風格を醸し出すことに成功しています。

そして、ボガートとバーグマンのイメージを背負わせることで、主役のブラッド・ピットとマリオン・コティヤールを一層輝かせているともいえるでしょう。

後半、ロンドンに舞台を変えると、ヒッチコック映画のような疑惑が、登場人物だけでなく見ている観客にも襲ってきます。マリオン・コティヤールの一挙手一投足を見逃すまいとしてしまうのです。そのようなカメラワークがなされているのです。

しかし、決定的瞬間をとらえてみせるというカメラに対して、マリオン・コティヤールは一切、怪しい素振りをみせません。彼女は夫を気遣う主婦であり、優しい母にしかみえません。

実際のところ、彼女は私たちを欺いていました。しかし、カメラがとらえていた彼女の穏やかな表情や健気な姿は嘘偽りのないものだったのではないでしょうか。

「愛」にすら疑惑が生まれる中、彼女は最後の行動で、「愛」に偽りがないことを証明してみせたのです。

まとめ

本作は今どき珍しいスター映画の風格を備えています。ブラッド・ピットとマリオン・コティヤールが実に魅力的なのです。

ブラッド・ピットは若々しく、『ジョー・ブラックをよろしく』の頃の貴公子のような面影すら感じられます。

マリオン・コティヤールは、作品によってがらりと雰囲気を変える女優ですが、本作でも前半と後半でまったく違う顔を見せてくれます。

二人が結ばれるシーンは、車の中で、カメラが何度も場所を変えながら、二人の周りをぐるぐると周り、気づけば車の外は激しい砂嵐になっているという印象的なものでした。

車といえば、映画の終盤、車に乗っているマリアンヌの姿だけをカメラがとらえた場面がいくつかあります。

彼女の視点となってドアや遠くをみつめ、彼女の動揺や決心を映し出す。緊張感溢れるシーンになっています。ロバート・ゼメキス監督の職人技ともいえる演出に脱帽するしかありません。



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