迷った距離1万キロ、探した時間25年、道案内はGoogle Earth…
『英国王のスピーチ』の製作陣が贈る、圧巻の感動ドラマ『LION ライオン 25年目のただいま』をご紹介します。
CONTENTS
映画『LION ライオン 25年目のただいま』の作品情報
【公開】
2016年(オーストラリア)
【原題】
Lion
【監督】
ガース・デイヴィス
【キャスト】
デヴ・パテル、ニコール・キッドマン、ルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェンハム、サニー・パワール、アビシェーク・バラト、ディープティ・ナバル、プリヤンカ・ボセ、ディヴィアン・ラドワ
【作品概要】
インドで迷子になった5歳の少年が、25年後にGoogle Earthで故郷を探し出したという実話を基に、本作が長編作品初監督となるガース・デイヴィスが映画化。
主演に『スラムドッグ$ミリオネア』のデブ・パテル、共演にニコール・キッドマンやルーニー・マーラら豪華キャストが集結した感動のヒューマンドラマ。
第89回アカデミー賞(2017年)作品賞、助演男優賞(デヴ・パテル)、助演女優賞(ニコール・キッドマン)、脚色賞(ルーク・デイビス)、撮影賞(グレイグ・フレイザー)、作曲賞(ダスティン・オハローラン)ノミネート。
第74回ゴールデングローブ賞(2017年)ドラマ部門最優秀作品賞、最優秀助演男優賞(デヴ・パテル)、最優秀助演女優賞(ニコール・キッドマン)、最優秀作曲賞(ダスティン・オハローラン)ノミネート。
映画『LION ライオン 25年目のただいま』のキャスト一覧
サルー・ブライアリー / デヴ・パテル
1990年4月23日、イギリス、ロンドン生まれのデブ・パテルは、テレビドラマ『スキンズ』(2007)でデビュー。
この時イギリス国内で注目を集めたことでダニー・ボイル監督の目にとまり、2008年にあの『スラムドック$ミリオネア』に主人公のジャマール・マリク役として主演することになったのです。
第81回アカデミー賞では作品賞を含む8部門を受賞、デヴ・パテル自身もナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞などを受賞し、英国アカデミー賞にノミネートされるなど、世界的にその名を知られることに。
その後は、M・ナイト・シャマラン監督の『エアベンダー』(2010)、大ヒットした『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(2011)とその続編『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』(2015)などに出演し、俳優として世界的地位を確立しました。
本作『LION ライオン 25年目のただいま』で彼が演じているのは、主人公サルー・ブライアリー。
オーストラリアで養父母の下、幸せに暮らしていた青年サルーでしたが、実は彼は5歳の時にインドで迷子になったことで、家族と生き別れたという過去を持っていたのです。
そして彼は家族を見つけようと決意するのですが、そこに行き着くまでの葛藤や、今の養父母との関係性の変化などにも注目したいところです!
スー・ブライアリー / ニコール・キッドマン
10代のころからミュージックビデオなどに出演をしていたニコール・キッドマンが映画デビューを果たしてのは1983年の『BMXアドベンチャー』。
1988年には『デッド・カーム/戦慄の航海』に出演し注目を集めます。この出演をきっかけにトニー・スコット監督の『デイズ・オブ・サンダー』(1990)に出演することに。(この作品がトム・クルーズとの出会い)
その後は『バットマン フォーエヴァー』(1995)、『誘う女』(1995)、スタンリー・キューブリックの遺作『アイズ ワイド シャット』(1999)など話題作に次々出演を重ねます。
2001年、バズ・ラーマン監督の『ムーラン・ルージュ』ではゴールデングローブ賞で主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞、同年のアレハンドロ・アメーナバル監督の『アザーズ』でも数々の賞レースを席巻。
さらにスティーヴン・ダルドリー監督の『めぐりあう時間たち』(2002)でアカデミー主演女優賞受賞などあらゆる賞を総なめにし、その後も『コールド・マウンテン』(2003)、『ラビット・ホール』(2010)、『ペーパーボーイ 真夏の引力』(2012)など話題作に出演し続け、トップ女優としての座に君臨していますね。
そんなニコール・キッドマンが本作で演じているのは、サルーの養母スー・ブライアリー。
どちらかといえば妖艶な女性のイメージが強いニコール・キッドマンですが、今回演じるのはサルーを優しく温かい目で見守る母親役。
最近はこういう役も増えてきており、ニコール・キッドマンの柔らかな表情に注目です!
ルーシー / ルーニー・マーラ
2005年に女優としてデビューを果たしたルーニー・マーラですが、彼女が注目を浴びることになるのは2010年、デヴィッド・フィンチャー監督に『ソーシャル・ネットワーク』でしょう。
この時エリカ役を演じたことで注目を集め、翌年には同監督作『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)に抜擢。
アカデミー主演女優賞やゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされるなど、その高い演技力は世界中で賞賛を浴びることとなりました。
2013年には『セインツ -約束の果て-』、『サイド・エフェクト』、『her/世界でひとつの彼女』と話題作に立て続けに出演を果たし、2015年には『キャロル』でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞するなど、若手女優ながら抜群の存在感と演技力を見せつけ、実力派女優としての地位を確立。
本作『LION ライオン 25年目のただいま』では、サルーの恋人ルーシーを演じています。
監督のガース・デイヴィスが…
「全てが彼女の顔に映し出される。黙っていても、隠された感情がビリビリ裂くように表面に現れてうるさいくらい。並外れた能力だ。ルーニーは一言も発さずに、全てを表現できる。ルーシーとサルーのシーンは沈黙が多いから、想像以上のインパクトが出たね。」
…語っている(公式サイトより抜粋)ように、ルーニー・マーラの沈黙の演技に要注目ですね!
ジョン・ブライアリー / デビッド・ウェンハム
オーストラリアで最も尊敬される俳優の一人と称されるのが、デビッド・ウェンハム。
1996年に映画デビューを果たし、2001年にはニコール・キッドマン主演の『ムーラン・ルージュ』に出演しました。
世界的に注目を浴びるようになったのは、ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでしょう。
3部作の2作目に当たる『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(2002)からの出演でしたが、続く『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003)でも演じたファラミア役で世界的にも名を知られるようになります。
他にもザック・スナイダー監督の『300〈スリーハンドレッド〉』(2007)、『オーストラリア』(2008)、『パブリック・エネミーズ』(09)など話題作に出演し続けていますね。
今回彼が演じているのは、サルーの養父ジョン・ブライアリー。面白くて優しく、安心できる存在であるジョンのキャラクターとしての全ての要素を備えている(制作陣談)というデビッド・ウェンハムの温かい表情に注目しましょう。
サルー(幼少期) / サニー・パワール
本作が映画初出演となるサニー・パワール。幼い頃のサルーを演じるインド人の男の子を探し回っていた制作チームが何千人もの子らをスクリーンテストを行った末に出会ったのだそう。
ガース・デイヴィス監督曰く…
「彼にレンズを向けると、僕が思い描いていた少年を彼に感じた。サニーは自然体でいるだけで80%の演技になり、過ごしてきた時間や美しい素養など、目の奥に秘めたものを持っていた。部屋に座る彼にカメラを向けるだけで、観る者は彼の物語と表情の虜になるんだ。」(公式サイトより)
…そしてさらに…
「撮影が始まってから1週間ほど経った頃、明らかに彼は自分のしていることを理解して、演技をコントロールする完全なプロへと変身した。想像を超えた理解力で、私たちが指示した以上のものを演技にもたらしたんだ。自分で感情を組み立て、物事を感じ、泣き、叫び、持てる限りの力を発揮してくれた。」 (公式サイトより)
…と、俳優としての才能の輝きを見出したようですね。本作では数々の賞にノミネートされるなど、世界中から賞賛を浴びる初めてとは思えないその演技に注目です!
映画『LION ライオン 25年目のただいま』の監督紹介
映画『LION ライオン 25年目のただいま』の監督はガース・デイヴィスです。
オーストラリア出身のガース・デイヴィスが監督として知られるようになったのは、2013年のテレビシリーズ『トップ・オブ・ザ・レイク〜消えた少女〜』(シーズン1)。
この時、『ピアノ・レッスン』(1993)や『ある貴婦人の肖像』(1996)を手掛けたことで有名なジェーン・カンピオンとの共同監督を務めたことで、エミー賞と英国アカデミー賞にノミネートされるなど、批評家たちから高評価を得ることに。
その一方でCMディレクターとして活動し、ロンドン国際アワードショーで金賞、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでゴールド・ライオンを受賞するなど、広告業界でもその名を知らしめます。
その後もドキュメンタリー作品の『P.I.N.S.』(2000)、短編映画の『Alice』(2003)などを発表し、本作『LION ライオン 25年目のただいま』でようやく初の長編映画作品を手掛けることになりました。
2017年にはマグダラのマリアを主人公にした『Mary Magdalene』(ルーニー・マーラ、ホアキン・フェニックス、キウェテル・イジョフォー出演)の公開が決定しており(日本では未定)、これからの活躍がますます期待できる監督ですね!
本作でプロデューサーを務めるエミール・シャーマンとイアン・カニング(共に『英国王のスピーチ』の制作に携わった)はガース・デイヴィス監督について…
「これは私たちの人生を支える“家族”との、切っても切れない絆についての物語。ガースは感情を大切に描きつつ、それをリアルに生々しく、鋭く捉える。彼は他のどの監督よりも上手く、運命と希望という2つの要素を共鳴させることができるんだ。」(公式サイトより)
…と述べています。日本ではまだそれほど知られていないガース・デイヴィスという監督が人々の“感情”を一体どう捉え、描き出しているのか…注目して見ていきましょう!
映画『LION ライオン 25年目のただいま』のあらすじ
舞台はオーストラリア。
青年サルー・ブライアリーは家族や恋人と幸せな人生を送っていました。
しかし、そんなサルーには隠された驚愕の過去があったのです。
サルーが生まれたのはインド。ここオーストラリアではありません。
5歳の時に迷子になってしまったことで、家族と生き別れになったサルーは、そのままオーストラリアへと養子に出されたというのが、現在の養父母であるブライアリー夫妻と出会った経緯なのです。
幼い頃は感じなかった疑問も成人になって自分自身の人生を送っていくにつれて、少しずつ彼の中で膨らんでいき、同時にインドの家族への思いが募っていくサルー。
あの日、母と兄に言えなかった“ただいま”という言葉…
そして、遂に彼は決意を固めます。人生を取り戻し、未来へと歩みを進めるために。
家族と我が家を探し出すことを…。
果たしてサルーを待ち受けている奇跡とは一体…?!
映画『LION ライオン 25年目のただいま』感想と評価
良くも悪くも予想通りの内容の映画です。
ー 幼少期に家族と離れ離れになり、養子としてオーストラリアのボランティア精神溢れる家族に引き取られ成長し、Google earth で故郷を探して25年目に再会する実話。ー
そのままのストーリーとなっていて、タイトルと予告動画で物語の全編を公開しているという、いわゆるネタバレ映画。見事に予想通りの展開で物語が始まり、物語が終わります。
なのですが、予想通りに感動して、予想していた以上に泣けます!!
25年目のホームカミングとタイトルである「LION」の意味が明かされるラスト。圧倒的な感動を呼び起こす事間違いない最高のヒューマンドラマとなっています。
さすがはアカデミー賞ノミネート作品です。
Google earth で帰郷する事が大きく話題になっていますが、母親の愛情色もかなり強めです。
継母であるスー・ブライアリーを演じるニコール・キッドマンの演技には、温かい母親のかたちが表現されていて、子供からの視点だけでなく、母親からの視点でも楽しめる作品となっています。
全体的にどのキャストも素晴らしい演技で、マントッシュを演じる
ディヴィアン・ラドワもかなりいい味を出しています。
それ以上にキャストの演技で驚かされたのが、幼い頃のサルーを演じたサニー・パワールです。
幼少期の迷子。知らない土地に1人で生きる絶望感と恐怖。実際は、幼すぎて事の重大さには本人気づいていなかったかもしれませんが、サルーは、一切泣かずに前だけ見据えていた彼の大きな瞳には、セリフだけでは無い、強い意志がしっかりと描かれていました。
さすが、何千人もの子供をテストしただけあります。彼の演技に驚かされました。
もちろんストーリー的にも、Google earth で探し当てるシーンも最高に上がります。
いつものように自宅のソファでPCを開いて、諦め半分でGoogle earthをスクロールしていくあのシーン。今まで忘れいた記憶が一気に蘇っていく記憶と同時に盛り上がっていく音楽。
最高に上がっていきます。後半はずっと感動しています。
ですが、最初から最後まで良いかというとそれは違くて、強いて言うなれば、青年期のサルーへの感情移入が少し難しいです。
継母に対する愛情の葛藤はすごく感じました。難しい演技であったと思います。さすが、デヴ・パテルです。
ですが、彼女と別れて、仕事を辞めて。それはどうなんですか?あなた、マントッシュの事、哀れみの目で見てましたよね。こんな大切に育ててくれた親をどうして悲しませるんですか?
この兄弟には本当にガッカリします。せめて仕事は辞めないで下さい。ちゃんと働いてください。髭剃ってください。
アルバムをめくるような速度では、感情は付いていきません。継母への思い、彼女への思い、義兄への思い、実母への思い、話がポンポン進んでいくので、どれも中途半端な思いしか伝わって来ず、サルーの青年期の感情移入は少し難しいものがありました。
まあ実話なので、しょうがないんですけど。
若干の中だるみ感は否めませんが、本作の映画的な演出、映像、音楽、演技。どれも最高点だと思います。
後半の主人公の帰郷では、とても懐かしい気分にさせてくれます。他人の帰郷を観ているだけであるはずなのに、ただいまを言いたくなったのは、私だけでしょうか。
予想通りの展開に、安心して感動出来る、素晴らしい作品でした。
まとめ
サルー・ブライアリーというのは実在の人物だということは、この物語の感動をさらに大きなものにしてくれるはず。
そもそも、サルー・ブライアリーの著作である“25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語”(静山社刊) という原作を基にしており、このストーリーが実際に起こったことだというだから驚きですよね。
ご本人は今もインドとオーストラリアを行き来する生活を送っており、養子縁組のサポート活動などを行っているのだそう。