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Entry 2025/06/27
Update

【ネタバレ】映画『国宝』あらすじ感想と結末の評価考察。吉沢亮×横浜流星の艶やかな女形が魅了する圧巻のエンターテイメント

  • Writer :
  • 星野しげみ

映画『国宝』が描き出す、歌舞伎の世界で生きる主人公の壮絶な人生ドラマ

李相日監督が、『悪人』(2010)『怒り』(2016)の作品に続いて、吉田修一作品3作目となる『国宝』を映像化

歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の人生ドラマを描き出します。

生まれは任侠ながらも、類まれな‟芸の才能”を持っていた主人公・立花喜久雄は、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込みます。

半次郎の息子で同い年の俊介とともに、芸の道を突き進む2人。ライバルとして互いに競っていきますが、成長するにつれ、多くの出会いと別れが2人の運命を狂わせていきます。

映画『国宝』をネタバレありでご紹介します。

映画『国宝』の作品情報


(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

【日本公開】
2025年公開(日本映画)

【原作】
吉田修一:『国宝』(朝日新聞出版 2018年出版)

【監督】
李相日

【脚本】
奥寺佐渡子

【編集】
今井剛

【撮影】
ソフィアン・エル・ファニ

【美術】
種田陽平

【音楽】
原摩利彦

【主題歌】
原摩利彦 井口理

【歌舞伎指導】
中村鴈治郎

【キャスト】
吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、嶋田久作、宮澤エマ、中村鴈治郎、田中泯、渡辺謙、芹澤興人、瀧内公美

【作品概要】
吉田修一の小説『国宝』を、『流浪の月』(2022)の李相日監督が映像化しました。任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の人生を描いた人間ドラマです。

主人公・喜久雄を吉沢亮、喜久雄の生涯のライバルとなる俊介を横浜流星が演じます。喜久雄を引き取る歌舞伎役者・半二郎は渡辺謙、半二郎の妻・幸子を寺島しのぶ、喜久雄の恋人・春江を高畑充希、当代一の女形で人間国宝の小野川万菊を田中泯が担当。

歌舞伎演目は『積恋雪関扉』『藤娘』『二人道成寺』『曽根崎心中』『鷺娘』。歌舞伎役者としても出演している四代目中村鴈治郎が、歌舞伎指導を行いました。2025年・第78回カンヌ国際映画祭の監督週間部門出品。

映画『国宝』のあらすじとネタバレ


(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

1964年のこと。長崎の任侠一家・立花組の宴席に招かれた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)は、余興として歌舞伎の『積恋雪関扉』を披露する美少年に会います。

「長崎には凄い舞妓がいますね」という半二郎に、組長の立花権五郎(永瀬正敏)は「あれは自分のせがれの喜久雄です」と言いました。

その後、宴席の場に敵対する組が襲い掛かり、抗争となりました。15歳だった立花喜久雄(黒川相矢)は、この抗争で組長の父を亡くし、天涯孤独となってしまいます。

喜久雄は背中に彫り物をして抗争相手に復讐を誓いますが、襲撃してあえなく失敗に終わりました。

喜久雄の天性の才能を見抜いた花井半二郎は、そんな彼を引き取ります。こうして、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことになりました。

半二郎には、喜久雄と同い年の息子・俊介(越山敬達)がいました。当代一の女形で人間国宝になった小野川万菊(田中泯)にも紹介してもらい、2人は兄弟のように育てられます。

最初はよそよそしかった俊介ですが、やがて、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていくようになりました。

7年後、喜久雄(吉沢亮)は花井東一郎と名乗り、半二郎の正式な部屋子となりました。俊介(横浜流星)とともに半二郎の厳しい稽古に耐える毎日です。

喜久雄の癒しは、喜久雄を追って上阪して影ながら喜久雄を支える幼馴染みの恋人・福田春江(高畑光希)の存在でした。

ですが、喜久雄は京都の花街の舞妓・藤駒(見上愛)から猛アタックされ、そのまま愛人にしてしまいます。藤駒にはその後、娘も産まれました。

超美形の女形2人でする『藤娘』や『二人道成寺』の演目は評判を呼び、2人の女形は一躍スターとなりました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『国宝』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『国宝』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

そんなある日、半二郎が事故で怪我をし、入院することになりました。半二郎が主役のお初を演じる『曽根崎心中』の舞台に穴をあけるわけにはいきません、

半二郎は、自身の代役に跡取りである俊介ではなく、喜久雄を指名しました。これには世襲制を常とする歌舞伎界の人々は驚き、喜久雄と俊介の友情も歪み始めました。

喜久雄が躍る『曽根崎心中』の舞台を観ていた俊介は、実力の差がある現実に耐えられなくなり、会場から去ろうとします。

そんな異変に気付いたのは、同じように喜久雄の舞台を見に来ていた春江でした。

喜久雄を通して俊介とも仲良くなっていた春江は、涙にくれる俊介をほっておけず、そのまま俊介と一緒にいずこへか立ち去って行きました。

それから何年かたちました。家をでたままの俊介のことは諦めて、糖尿病を患っていた半二郎は、三代目を喜久雄に譲ることにしました。


(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

襲名パレードのとき、藤駒と娘が晴れ姿を見に来ました。喜久雄は気がつきますが、知らないふりをします。襲名舞台で二代目半二郎の病が悪化し、そのまま亡くなってしまいました。

襲名する以前、「日本一の歌舞伎役者になるために、他のものは何もいらないと悪魔に約束した」と娘に言っていた喜久雄。三代目として頑張りますが、なかなか思うようにいきません。

そんなころ、花井家を飛び出した俊介が、春江と子どもを連れて帰って来ました。花井半弥と名乗り、万菊の後押しで徐々に歌舞伎界に戻ってきます。

その反面、喜久雄には悪評がたちます。彫り物をしていること、名門花井家を乗っ取ろうと企んだという根も葉もない噂、「7歳の隠し子がいる」と襲名パレードで隠し撮りされた写真など、今までの半生が全て悪い方へ見られてしまいます。

落ち込む喜久雄は、歌舞伎の家の当主吾妻千五郎(中村鴈治郎)の娘・彰子(森七菜)と深い関係になり、吾妻の怒りをかってしまいました。

花井家に泥を塗ってすみませんと詫びを入れ、俊介と春江が住む屋敷を出た喜久雄。自分と一緒にいると言う彰子とともに地方巡業をすることにしました。

地方巡業にも疲れ果て、彰子も去ったころ、引退した万菊が喜久雄に会いたがっていると聞き、喜久雄は会いに行きます。寝たきりの万菊は喜久雄に「踊れ」と言いました。

そして、数年後。歌舞伎界には、花井半弥とともに『二人道成寺』を踊る喜久雄の姿がありました。なんとか仲直りができた俊介と喜久雄ですが、俊介は糖尿病で片足を切断することになりました。

片足でも『曽根崎心中』をやりたいという、俊介の気持ちを汲んで、喜久雄は一緒に『曽根崎心中』をやり遂げます。この舞台ののち、俊介は病気が悪化しあの世に旅立ちました。

その後、人気を博する女形として活躍を続けた喜久雄は、ついに人間国宝に指名されます。

記者会見の場で喜久雄の写真を撮っていた女性カメラマンが、喜久雄に「藤駒っていう舞妓を覚えていますか?」と言いました。

彼女は藤駒と喜久雄の娘でした。悪魔との約束を果たした喜久雄のことは、父だと思ってはいないと言い放ちます。

ですが、「舞台をみているとどこか知らない場所へ連れて行ってくれるような気がして、もっとそこへ行きたいと思って、思わず拍手をしていた」と告げました。喜久雄は黙って深く頷きます。

※※※

白いものが混じった頭になった喜久雄は、国宝となった記念舞台『鷺娘』を上演。

舞台が終わり幕が降ろされた時、そこから見えたのは、喜久雄がずっと探していた景色でした。「きれいだな」と喜久雄はつぶやきます。

映画『国宝』の感想と評価


(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

インパクトある2人の友情

原作は上・下巻からなる長編小説です。15歳で天外孤独となった任侠の生まれの少年が、歌舞伎の世界で身を起こし、人間国宝になるまでの半生を赤裸々に描いています。

原作では映画以上に、不慮の事故や女性関係など身内の不幸も喜久雄の周囲で次々と起こり、浮き沈みの激しい人間ドラマが展開。ずたずたに傷つきながらも、才能の命じるままに、ただひたすら芸の道を究める喜久雄が鮮烈な印象を与えます。

3度目の吉田作品とのタッグとなる李相日監督は、この長編作を、歌舞伎界で互いに切磋琢磨する喜久雄と俊介の友情と試練にスポットをあてて、壮大な人生ドラマに仕上げました

世襲制の歌舞伎界は、‟歌舞伎役者の血”がものを言うと言われます。名門の生まれの御曹司の俊介坊ちゃんと、裸一貫で歌舞伎界にデビューした彫り物付きの喜久雄とでは、最初の立ち位置から違っています。

ですが、いつのまにか喜久雄の才能が‟血の掟”を越えようとしていました。これが2人の女形の運命を狂わせたのです。

原作で描かれる喜久雄の数々の不運を、映画では少しスリムにし、喜久雄に関わった女性たちのその後も深く描かれていません。

それでもインパクトがあるのは、喜久雄の‟歌舞伎への思いと俊介との友情”を突き詰めて描いているからでしょう。

煌びやかな歌舞伎演目に注目


(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

本作の見どころは、美しい女形の喜久雄と俊介の友情と、華やかな歌舞伎と言えます

普段見ることができない歌舞伎の稽古シーンや舞台の裏、そして歌舞伎上演中の様子なども頻繁に登場。もちろん、現実はもっと大がかりで大変なものでしょうが……。

役者が白粉を顔に丁寧に塗って、男性から女形へ変身する様子も丁寧に描かれているので、歌舞伎役者の日常を垣間見る思いがすることでしょう。

華やかな衣装や舞台装置、役者の迫力ある演技が観客を魅了する歌舞伎。それに心底惚れ込んだ喜久雄は、日本一の歌舞伎役者になるためなら、他のものは何もいらないと悪魔に約束したと言いました。

血をわけた娘に父親らしいこともせず、家庭を持たず、恩人を裏切り、悪魔との約束通りに、喜久雄は芸の道一筋に生きていきます。

国宝となっても、己の道を究めようとするその芸は怖ろしいほどの美しさを持っていました

2人の女形を演じたのは、実力派俳優の吉沢亮と横浜流星。厳しい役作りと稽古があったのでしょうが、イケメンである彼らが美しい女性に変身し、指先まで女性としての感情移入する演技は、観る者を魅了します。

田中泯の女形や劇場風景も見応えたっぷりで、3時間という長い物語の世界へ導いてくれました。

まとめ


(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

キャストや監督を始め、撮影や美術も超一流のスタッフを取り揃えて、生み出されたエンターテイメント作品『国宝』。

芸を極めようとする主人公には、非道な一面が見いだせます。ですが、磨き上げられた歌舞伎の技能に、人間国宝に至るまでの苦難の道のりを確認して感動を覚えることでしょう。

京都の南座や東京の歌舞伎座などでの上演も取り入れて、リアルな歌舞伎観劇をしているような作品に仕上がっていますので、歌舞伎ファンならずとも楽しめます

『国宝』は、人間国宝をめざす歌舞伎役者の唯一無二の芸道映画でした。






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