Netflix海外ドラマ『コブラ会』シーズン1
1984年に公開された映画『ベスト・キッド』は、いじめられっ子の少年ダニエルが、空手の達人であるミヤギさんに出会い、空手を通じて成長していくストーリー。
その後もシリーズが4作まで続いた後に、2010年にはジャッキー・チェン主演でリメイクもされた人気作品です。
そして、その34年後のダニエルとジョニーの新たな物語を描いた、海外ドラマシリーズ「コブラ会」が、2018年からスタートしました。
これまではYouTubeのオリジナルドラマだった『コブラ会』ですが、2020年からNETFLIXへ移籍し、2021年には新シリーズが制作される予定になっています。
今回は、『コブラ会』のシーズン1に注目し、その魅力をご紹介します。
CONTENTS
ドラマ『コブラ会』シーズン1の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原案・制作】
ジョッシュ・ヒールド、ジョン・ハーウィッツ、ヘイデン・シュロスバーグ
【キャスト】
ウィリアム・ザブカ、ラルフ・マッチオ、ショロ・マリデュエナ、コートニー・ヘンゲラー、タナー・ブキャナン、メアリー・モーサ、ジェイコブ・バートランド、ジャンニ・ディセンゾ、マーティン・コーヴ、ペイトン・リスト
【作品概要】
『ベスト・キッド』で、敵役だったジョニー・ローレンスを主人公に、新生「コブラ会」の誕生と、ジョニーとダニエルの因縁を描いたドラマシリーズ。
『ベスト・キッド』でジョニーを演じたウィリアム・ザブカと、ダニエルを演じたラルフ・マッチオが、34年ぶりに同役を演じた事でも話題になっています。
ドラマ『コブラ会』シーズン1のあらすじ
かつて存在した武闘派の空手道場「コブラ会」。
ジョニー・ローレンスは、「コブラ会」の創設者であるジョン・クリースの一番弟子として、空手大会のチャンピオンに輝いていました。
ですが、ジョンの教えを守るが故に、ジョニーは高校時代は不良として暴れていました。
ジョニーが高校3年生の時に、突然現れたのが、転校生のダニエル・ラルーソでした。
当初はジョニーにいじめられていたダニエルですが、空手の達人であるミヤギさんに出会い、空手を教わった事で、ジョニーと対峙するようになります。
ジョニーはダニエルと、オールバレー空手選手権大会の決勝戦で激突しますが、「コブラ会」の卑怯な戦い方を用いてもダニエルには勝てず、決勝戦で敗北します。
それから34年後。
ジョニーはダニエルに敗北して以降、荒れた生活を送っており、街では「負け犬」と呼ばれています。
荒っぽい性格は、大人になってもそのままで、仕事でトラブルを起こしてクビになり、妻には一方的に離婚を突き付けられていました。
ある時、夜中の駐車場で隣に引っ越してきた少年、ミゲルが不良グループに暴力を受けている所を、ジョニーは目撃します。
会社をクビになり機嫌が悪いジョニーは、不良グループを空手で倒しますが、直後に警察に捕まります。
次の日、ジョニーは義父のシドに保釈金を支払ってもらい、出所します。成功者であるシドは、ジョニーの事を良く思っておらず、「手切れ金」として小切手を渡します。
ジョニーもシドの事を嫌っている事から、小切手を破き、ゴミ箱に捨てます。
ミゲルを助けた事で、ジョニーは「空手を教えてほしい」とミゲルに頼まれますが、頑なにこれを拒否します。
ある夜、ジョニーはオールバレー空手選手権大会の会場に行き、当時の思い出に浸ります。
それは、二位になった事で、ジョンの怒りを買い、「コブラ会」を破門になった辛い過去でした。
その時、停車していたジョニーの車に、少女達が運転していた車が追突します。ですが、少女達はそのまま逃げ去って行きました。
ジョニーは車を修理に出しますが、修理先がダニエルが経営する自動車販売店「ラルーソ・オート」である事が分かります。
「ラルーソ・オート」を立ち上げ、成功者になったダニエルに劣等感を抱き、心底嫌っているジョニーは、他の場所で車を修理する事を望み、「ラルーソ・オート」を訪ねますが、そこでダニエルと再会してしまいます。
さらに、自分の車に追突した少女は、ダニエルの娘であるサマンサである事が判明します。
それでも、事を荒立てずに立ち去ろうとするジョニーでしたが、ダニエルに「悪いのは君じゃない、コブラ会だよ」と言われてしまいます。
自身が身も心も捧げた「コブラ会」を侮辱された事に、ジョニーの怒りが爆発し、一度は捨てたシドの小切手を使い、ジョニーは「コブラ会」の道場を立ち上げます。
ジョニーは、ミゲルを「コブラ会」の一番弟子として入門させ、自身を「先生」と呼ばせます。
ミゲルは学校で、ディミトリとイーライという友達ができますが、常に学校の隅っこにいる冴えない2人でした。
ミゲルは「コブラ会」の教え「先に打て」を実践し、学校の食堂でサマンサに声をかけようとしますが、ミゲルに駐車場で暴行を加えた、不良グループのリーダー、カイラーがサマンサに声をかける様子を見て諦めます。
サマンサは、カイラーを自宅に招き、家族と食事をします。
その際に、ダニエルはカイラーの体に痣がある事に気付き、カイラーから「空手の達人にやられた」と聞きます。
ダニエルは「コブラ会」の道場に行き、ジョニーに詰め寄ります。
ジョニーは「カイラーが弱い者いじめをしていた」事を話しますが、ダニエルは信じず、両者の因縁が再燃します。
ドラマ『コブラ会』シーズン1感想と評価
映画『ベスト・キッド』では、ダニエルとミヤギさんが対峙していた、敵側の空手道場だった「コブラ会」。
その「コブラ会」の指導者である、ジョン・クリースの一番弟子だった、ジョニー・ローレンスの34年後の姿を描いたのが、ドラマシリーズの『コブラ会』です。
『ベスト・キッド』では、ジョニーはダニエルをいじめる、手の付けられない荒くれ者として描かれています。
なので『ベスト・キッド』のクライマックスの大会で、敗北したジョニーが「その後、どうなったか?」など、正直考えた事もありませんでした。
ですが、『コブラ会』の原案と制作を務めた、ジョッシュ・ヒールド、ジョン・ハーウィッツ、ヘイデン・シュロスバーグの3人は「コブラ会」の大ファンで、ジョニーの視点で、新たな「コブラ会」を描き『ベスト・キッド』の世界を広げています。
『コブラ会』は、2018年のYouTubeドラマの頃から話題になり、多くのファンを生んでいるのですが、その魅力は何処にあるのか?探っていきましょう。
負け犬の復活劇
いきなりですが、『コブラ会』最大の魅力は、負け犬となってしまったジョニーの、復活劇を描いた作品であるという事です。
34年前にダニエルに負けて以降、ジョニーは仕事も私生活も上手くいっておらず、荒れた生活を送っています。
一方のダニエルは、自動車販売店の事業を起こし、成功者となっています。
その為、ジョニーがテレビを点ければダニエルが現れ、自身の会社のCMを始めるので、ジョニーからすると、たまったものではありません。
ここで、ミヤギさんに空手を教わったダニエルと、ジョンに空手を教わったジョニーの差が、明るみに出ています。
ダニエルが、自動車販売店の事業を起こしたのは、間違いなくミヤギさんの影響です。
ダニエルが、ミヤギさんに空手を教わる際に、ワックスがけを行いながら、防御の型を学ぶのですが、最終的にダニエルが磨き上げた車を、ミヤギさんにプレゼントされます。
大人になったダニエルは、少年時代の経験から、自動車販売店の事業を起こしたのでしょう。
一方、ジョニーが「コブラ会」で学んだのは「相手を叩き潰す」事
です。
『コブラ会』シーズン1の第9話で、ジョニーはジョンを「父親代わりに感じていた」と語っている為、ジョンの教えは絶対だったのでしょう。
しかし、その結果が、街中の人に「負け犬」と呼ばれる人生でした。
『コブラ会』シーズン1の第10話で、ダニエルはロビーに「悪い生徒はいない、悪い先生がいるだけだ」という、ミヤギさんの言葉を伝えますが、少年時代の出会いで、2人の人生は対極のものになってしまいました。
しかし、ジョニーは隣に引っ越してきた少年ミゲルと出会った事から、新たな「コブラ会」を立ち上げます。
そして、対極の人生を歩んでいたダニエルと、新たな因縁が勃発します。
これまで、自堕落な毎日を送っていたジョニーが、新生「コブラ会」を立ち上げた事で、急速に人生が変化していき、徐々に復活をしていくというのが、シーズン1前半の主な展開となります。
父親として指導者としての敗北
ジョニーが新生「コブラ会」を立ち上げたキッカケは、不良グループに暴行を受けていた、ミゲルを助けた事でした。
いじめられっ子の少年を助けた事で、空手を教えるという展開は、『ベスト・キッド』のミヤギさんと同じですが、ここで問題は「ジョニーは良い先生になれるのか?」という点です。
これまで、ジョンから受けた荒っぽい指導しか知らないジョニーは「3つの掟」を生徒に教え、先手必勝で相手を叩きのめす、攻撃的な空手を教えます。
ジョニーが「コブラ会」の空手を通じて教えたかったのは「人生は厳しいが、負け犬になっても戦い続ける精神」のはずでした。
『コブラ会』シーズン1の第10話で、大会前に生徒達を鼓舞するジョンの言葉には、間違いなく「戦い続ける事の大切さ」が込められています。
しかしその結果、最初は純粋で優しかったはずのミゲルが、荒っぽい性格に変わってしまいます。
ジョニーは、自分が育てた生徒達が、大会で反則もいとわない戦い方をする様子を見て、かつての自分を思い出し、焦りを感じます。
ですが、ミゲル達は言う事を聞かなくなっており、空手大会で優勝しますが、ジョニーは素直に喜べません。
さらにジョニーは、ダニエルに空手を習い始めた息子のロビーが、純粋で真っすぐな性格になっている所を目の当たりにします。
「何が何でも勝て」と、生徒に教え続けたジョニーの「コブラ会」は優勝をしますが、ジョニーはダニエルに、指導者としてだけでなく、父親としても敗北した事を痛感します。
ジョニーは気が付けば「悪い先生」になってしまっており、道場でトロフィーを眺めている時の表情から「こんなはずではなかった」という想いを感じます。
新生「コブラ会」の行き着く先は?
『コブラ会』は、ジョニーとダニエルだけの物語だけでなく、ジョニーの弟子であるミゲルと、ダニエルの弟子のロビー、そしてダニエルの娘、サマンサの物語でもあります。
当初は優しく純粋なはずだったミゲルが、ジョニーの教えを純粋に守ったが為に、武闘派になってしまいました。
これは『ベスト・キッド3/最後の挑戦』(1989)で、反則技を使う空手を学ぶようになる、闇に落ちたダニエルに共通する部分があります。
ミゲルがサマンサへの想いを強くすればするほど、サマンサは離れて行ってしまっており、皮肉にも先生である学生時代のジョニーと同じ事になっています。
サマンサは、同じダニエルの門下生である、ロビーとの距離が近づいている為、今後は、ミゲルとサマンサ、ロビーの三角関係も物語の重要な部分となるでしょう。
また、ダニエルは「コブラ会」に対抗する為、「ミヤギ道空手」を正式に立ち上げました。
「コブラ会」を正しい方向に導く必要に気付いたジョニーですが、その前に、かつての先生で父親同然に慕っていたジョンが現れた所でシーズン1は終了します。
果たして、ジョニーが創り出した新生「コブラ会」は、どこへ行き着くのでしょうか?
まとめ
「負け犬」となってしまったジョニーの復活劇を描いた『コブラ会』は、コメディタッチの作品となっています。
特徴的なのは、かなり練り込まれた脚本で『ベスト・キッド』へのオマージュネタだけでなく、作品の精神も引き継ぎ、現代にアレンジしたような内容ですので、『コブラ会』を100%楽しむには、最低限『ベスト・キッド』を先に鑑賞しておくのがおススメです。
『ベスト・キッド』の精神と言う部分に少し触れると、オリジナル版では、ダニエルがミヤギさんと出会う事で、空手だけでなく盆栽などの「東洋の精神」に触れていき、成長していく部分が作品の魅力でした。
『コブラ会』では、1980年代で時間が止まっていたジョニーが、現代っ子のミゲルと会う事で、世代間の交流を経験していき、成長するという展開になっています。
ジョニーが、自宅で観ている映画が『アイアン・イーグル』(1986)というのも、その後の展開を示唆していますね。
このように、『コブラ会』は細かい部分まで練り込まれ脚本となっており、1話約30分が、あっという間に過ぎていきます。
また、オリジナル版の主演俳優である、ラルフ・マッチオとウィリアム・ザブカが、それぞれ、34年後のダニエルとジョニーを自ら演じている部分も凄いです。